インフィニット・ストラトス 忘れ去られた恐怖とその銀龍   作:妖刀

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ジュラシックパーク見てると、ここのメガヌロンと小型獣脚類のヴェロキラプトル(だったっけ?)が何か似てきた。


さて久々の最新話をどうぞ!


脱出

「痛い、よ……。たす……け、て」

 

その言葉は刀奈を再起動させるには十分な言葉だった。ハッとした表情を浮かべた刀奈は蒼流旋を展開し切っ先を地面に突き刺す。

すると刀奈の周りに水が集まり始める。いや、水を生成してるというのだろうか。そしてその水が血の色というかのように赤く染まり、刀奈の指と連動するかのように水がユラリと動いた。そして腕を上げると同時に水も盛り上がり、指先をメガヌロンに向けた時だ。

勢いよくメガヌロンに向かってた水、アクアナノマシンは得当たるの居るメガヌロンの足元に向かって一気に広く広がったあと、その場から一気に分裂しながらメガヌロンの柔らかいと思われる腹側へと向かい、そして一瞬にして凍りながらメガヌロンへと大量に突き刺さり、そのまま背中を氷柱となったアクアナノマシンが貫いた。

 

「キギィ!?」

 

メガヌロンは体を剣山で貫かれたかのように体中が穴だらけになっており、そのまま上へと押し上げられる。この時まだ息があったのか足などがピクピクと動いていたが、そのまま動かなくなりそして体全体が凍り始める。

その後血を流しながら倒れてる航を凍ってないアクアナノマシン優しく包み、衝撃を与えない様にすばやく刀奈の元へと手繰り寄せる。

そして航を自分の胸元に持ってきた後、強すぎない様に彼を抱きしめた。

 

「か……た、……」

 

「航、ごめんね……。痛かったよね。ごめんね……」

 

謝りながらポロポロと涙を流す刀奈。航はもう話す気力がなくなったのか、小さく口を動かすだけだ。。服が血で汚れるが構わない。ただそれを抱きしめる刀奈。

この時メガヌロンが襲ってきそうなものだが、いきなり仲間が穴だらけにされたとあってか警戒しており、威嚇音を出しながら刀奈がいるところから半径10メートルほど全部離れている。

この機を逃さず刀奈は抱きしめるのをやめて、ボロボロの上着をアクアナノマシンで切り刻んで航の現状を確認する。横腹に何かで大きく切り裂かれた傷と、右肺の部分に穴が開いている。他にもあちこちに傷があり、そこらから血が止まることなく流れている。

 

「航、痛むけど我慢して!」

 

「っ……!ぁ……!が、ぁっ!」

 

刀奈はアクアナノマシンを使って体の大きな傷、右胸と横腹を止血するが、その痛みからか航は悲鳴を上げ、刀奈の右腕の二の腕をガッシリと掴む。その力は異常に強く爪も立っており、刀奈の二の腕の骨がミチミチと軋み爪の刺さってる部分から血が流れるが、航の今味わってる痛みに比べればマシだとそう言い聞かせて傷口の止血をしていく。

 

「っ……!ぁ……」

 

だが航は痛みに耐えきれなったのか、気絶をしてしまう。だが痛みをずっと感じるよりはマシのため、刀奈は安堵の息を吐くが血を多量に流しすぎたため長居はできない。

 

「さて、あの虫たちをどう調理してあげようかな……?」

 

刀奈は無表情ながら怒りが強くにじんでおり、そして蒼龍を完全展開して航を左手で抱え、そしてハイパーセンサーを使って周りを見渡すが……。

 

「っ、ハイパーセンサーで反応しない……?あの体、生身でステルス性があるのかしら……?」

 

そう、ハイパーセンサーで影等は確認できても、どこに何体いるかが把握できないのだ。唯聞こえるのは、威嚇する大量のメガヌロンの声だけ。

街灯に影や姿が映ってる時はハイパーセンサーが捉えるが、光の当たらないところになると『目標LOST』と表示され、刀奈は右手に持ってる蒼流旋を固く握る。

 

(ハイパーセンサーは全く意味がない……。敵の数は未知数。航は重傷。さて、どうやってここから逃げ出そうかしら?)

 

一瞬上空に逃げるという手が思いついたが、上からもメガヌロンの声が聞こえるため、飛んだ時に一気に跳び付かれるという状態になったら終わりだ。重量で飛べなくなる可能性もあるし、何より航が死んでしまう可能性が高い。

その時だ、おそらく死んでたであろう街灯に明かりが灯り、チカチカとなりながら奥の道を照らす。この時ハイパーセンサーが捉えたものを見て、刀奈は冷や汗をドッと流す。

 

「嘘……。今、30体近くいなかった……!?」

 

先程よりたくさん増えている。しかもこれで真正面の道にいた数であって、真後ろの道に何体いるか把握できてない。そのため先程の怒りより一気に焦りが勝り始める。

 

「ぅ……ぁ……」

 

この時航が苦悶の声を上げる。刀奈は傷を覆ったアクアナノマシンはリミッター解除で赤くなってるが、そのほかに赤黒い液体が多量に混じってることを気付き、本気でやばいためここを抜け出すための最短ルートを算出する。

 

「キキキ」

 

だがいい加減メガヌロンたちが距離を詰め始めたため、刀奈は串刺しで冷凍状態になってたメガヌロンを蒼流旋で叩いて砕き、その砕いたときの音でビビらせて下がらせる。

そして蒼流旋に装備されているガトリングが火を噴いた。

 

『!?』

 

メガヌロンたちはその攻撃を避けようとするが、数が多すぎたことが災いしたのか、前にいたメガヌロン数体に当たっていく。だが外皮の硬さが予想以上に硬く、弾はほぼ弾かれてしまう。せいぜい効いたのは、関節に刺さったり、1メートル半以下の個体がハチの巣になった程度だろう。

 

『ギギガイギアイギアョ!!!』

 

もう数が多すぎて何て鳴いてるのか分からないが、怒ってることは確実だろう。だが航を傷つけられたせいで刀奈も怒っており、殲滅させたいとは思うがこの数だ。どこかのアニメみたいに一騎当千ができるはずもなく、空に向けて急いで逃げ出そうとするが、

 

「ギギィ!」

 

「嘘っ!?」

 

後ろのマンホールの蓋が大きく吹っ飛び、中から2メートル弱ほどの大きさのメガヌロンが出てきたのだ。刀奈はいきなりの不意打ちに対応できなかったため、蒼流の後ろに爪を引っかけてそのまま蒼龍の背中に飛び乗り、そして爪や牙を使って刀奈を攻撃する。

 

「きゃあ!」

 

攻撃はシールドで阻まれるが、いつまでも憑りつかれていたら機動力も遅くなるし、いつシールドエネルギーが無くなってもおかしくない。

 

「っ……、この!離れな、さい!」

 

刀奈はアクアナノマシンを使って無理やり引きはがし、そのまま壁に叩きつける。この時にアクアナノマシンの一部を氷柱化させて叩きつけると同時にメガヌロンの腹部を串刺しにして仕留める。

だが今の攻撃で飛行機能の一部が破壊されてしまい、上空の高速移動が出来なくなってしまう。ISにはPICが付いてるが、推進機構とは別物のため飛行機能を破壊されたとなると移動は地上に限られる。

そのためホバーの真似事するかのように高速移動をする後ろにはメガヌロンが多数いたが、蒼流旋のガトリングの弾をばら撒いていく。牽制程度でしかないが、無いよりはマシだ。

刀奈は逃げながらガトリングを連射するのであった。

 

 

 

 

 

それから極力ルートに沿って移動をつづけた刀奈は一回立ち止まって後ろを振り向く。メガヌロンたちの足音は聞こえず、ただシンとしていた。

 

「一応撒いたわね……。さて、もうすぐ出口だから……」

 

 

この時刀奈は自分のスマホをISで繋いで、近くにいる従家の者に急遽迎えに来るように言い渡す。

 

『分かりました。では○○のところですね?』

 

「ええ、お願い」

 

そして通信を切り、目線を航の元へと下ろす。肌の色は出血多量が原因で青白くなっており、呼吸が通常通りではない。

 

「航、もうすぐだから我慢して」

 

「ガァ!」

 

「きゃあ!?」

 

その時だ。刀奈が通ろうといた道の壁にひびが入ったかと思うと、大きな音を立てて砕け、中からメガヌロンが現れる。だがさっきいたメガヌロンと違い、大きさが一回りは軽く大きいのだ。体長3メートル。航が最初に見たメガヌロンだ。メガヌロンは頭を低くして両腕を高く上げており、威嚇音を出している。

 

「ガガガガ……」

 

「さっきのよりでかいわね……。でも1体なら」

 

蒼流旋を構える刀奈だが、なぜ1体しかいないことに疑問に思う。先程みたいに軍勢のごとくいるのではないのか?

そう考えると何かがおかしい。刀奈は蒼流旋を何時でも突き刺せるように構えてるが……。

この時、肩に何かが落ちてきて、それを見た刀奈は顔を真っ青にする。

 

「カカカ」

 

「きゃあぁぁ!?」

 

肩には大きさが50センチのメガヌロンが乗っており、刀奈は一気にそれを振り払い、そのまま地面に叩きつける。

だが何かが足に当たったことをISが知らせる。何が当たったのかが気になったのか、刀奈は視線を下に向けたらそこにあったのは……。

 

『キキキ』

 

「な、何よこの数は!?」

 

そう足元には体長が先程の小型のメガヌロンが少なくとも30体はおり、それが刀奈の足元に群がってるのだ。しかも足を上ってくるとあってとても気持ち悪い。

 

「は、離れなさい!」

 

そしてメガヌロンが足をよじ登ってくるとあって、刀奈は必死に振り払うがそれでも上ってくる小型メガヌロン。

業を煮やしたのか刀奈はアクアナノマシンを自分にまとわせようとするが

 

「っ!?」

 

いきなり嫌な予感がした刀奈は、まだ使えるスラスターを利用して無理やりその場を離れる。それが幸いだったのか引っ付いてたメガヌロンが剥がれ、そして先程いたところにメガヌロンが頭突きをしてきたのだ。

そして壁を陥没させながらも、ゆっくりと引き抜いて刀奈の方を向くメガヌロン。足元には踏み潰されたメガヌロンがたくさんいるがお構いなしだ。

それを見た刀奈は冷やせを流しており、蒼流旋を構えたまま若干ながら口元が笑ってる。いや、引き攣った笑いになっている。

 

「こんなの喰らったら下手したら大ダメージじゃない……!」

 

「カラララ……!」

 

メガヌロンは再び頭突きの姿勢になり、刀奈は蒼流旋を突きの構えに取る。このとき航を左腕で抱えてるから片腕だけになってしまうが、それでも力強い構えを取った。

そして

 

「ガガァ!」

 

メガヌロンは神速ともいえる速度で頭突きを放ち、刀奈は蒼流旋の切っ先をメガヌロンの頭部の甲皮に直撃させるが、頭部には一切ひびが入らず、ガリガリ音を立てながらも突きに耐えていたのだ。刀奈もメガヌロンの頭突きによく耐えられたのだが、後ろに2メートルほど押されている。この時苦悶の表情を浮かべているが、メガヌロンにとっては関係ない話だ。

お互い一歩も譲らず、メガヌロンが脚に力を入れ一気に押そうとしたときだ、刀奈に笑みが浮かんだのは。

 

「……甘いわね」

 

その時、刀奈の口角が上がり、蒼流旋を格納して体を逸らす。すると、支えを失ったメガヌロンは勢いよく壁に突っ込み、壁に大穴を開けるが痛みを感じていないのかそのまま顔を引っこ抜く。そして見たのは勢いよく自分から逃げ出す刀奈の姿だった。

 

「あなたと相手してる暇はないの。じゃあさようなら」

 

「ギギッ、ンギギギイ!!!」

 

メガヌロンはそのまま去っていく刀奈を追いかけようとしたが、足元にあった赤色の水たまりに気付かなかった。そして走り出そうとしたら、赤色の水たまりから氷柱が数本伸びてメガヌロンを貫く。そしてそのまま体を持ち上げられたメガヌロンは脚を動かすがまったく前に進まない。

いきなり何があったのか分からないのか、首を動かして状況を確認しようとする。だが動かないことに大きな違和感を覚える。

そしてメガヌロンは気付く。自分が串刺しになってることに。

 

「ガ、ァギ……キリリ……ィ!」

 

そして今更ながら遅れて断末魔を上げ、口からゴパッと体液を大量に吐き出して動きを止める。

 

「キィ……キ、キィ……」

 

そして小さく鳴いた後、目に光が無くなるのであった。

 

 

 

 

 

「楯無様!こっちです!」

 

「ありがとう!早く病院へ!」

 

「わかってます!」

 

あれから急いで路地裏を抜け出し、そこにいたのは無精ひげを蓄えた20代後半の男、従家である霧島家の長男、霧島大輔がいた。彼の車であるワゴン車に刀奈はISを一瞬で解いて航を抱きかかえた後、そのままワゴン車に飛び込むのように乗り込む。

このころには航の目は虚ろになってきており、刀奈はそんな航を見て体が小刻みに震え始めている。時折「航、大丈夫よね……?」や「お願い、神様……」とつぶやいており、ただ航の右手を両手で包むかのように握っていた。

この時傷口を覆っているアクアナノマシンはすでに全て赤黒くなっており、肌は逆に青白い。

この様子を見ていた大輔は刀から楯無の威厳がまったくないことに軽く呆れていたが、自分も似たようなことがあればああなるかも、と思いそして車のエンジンを始動させる。

 

「では飛ばしますよ」

 

大輔は車を法定速度以上に飛ばし、叔父のいる病院へと急ぐ。途中からパトカーに追われているがお構いなしだ。どうせ家の力でねじ伏せればいいと考えてる大輔は時速100キロで飛ばし、約10分後には目的の病院へと着き、そしてすでに待機していた救急隊員によってストレッチャーに乗せ換えられ、そのまま病院の中へと消えていく。

この時刀奈も付いて行くが、ここでいなくなったら出血多量で死んでしまうため、付いて行くのであった。

そして病院の前でただ大輔だけが残っており、胸ポケットから煙草を出して口にくわえて火をつける。

 

「こんなんだが、まあいいか。それにしても刀奈ちゃん、何であんな男がいいのかな~?」

 

そして月明かりが照らす夜空に向けて煙を吐き、つぶやきと共に煙が空に溶けるのだった。




さてようやく逃げ切った刀奈と航。果たして航の生死や如何に!?

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