インフィニット・ストラトス 忘れ去られた恐怖とその銀龍   作:妖刀

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どうも、久々の2連休に喜びを隠せない妖刀です。今回はオリジナル回なので頭をひねりましたが完成しました。

では本編どうぞ。


デート 1

時は6月成上旬。航はこの前楯無に約束した通りデートのため、待ち合わせ場所のモノレール乗り場の入口に立っていたが……。

 

「うん……。ファッションセンスがないってこういう時苦労するんだな……」

 

航の服装は黒のTシャツの上に緑色の迷彩色のパーカー。下にはジーンズで、靴はスニーカーという地味ともいえるファッションだった。あと手には機龍の待機状態である銀色の手甲がされてる。一夏でさえまともなファッションだというのに、自分の適当さと言ったら……。航は溜息をもらす。

こういうとこを適当に過ごしてきた自分を恨むが何も始まらない。現在の時間は9時54分。楯無と約束した時間は10時のため、航はいろんな不安(主に服装)に駆られている。

 

「航ー、待った~?」

 

その時だ。待ち合わせ人の声がしたため、超えのした方を向くと、学園の正門からちゃんと服を着こなした楯無が現れる。まあ、国家代表だからなのか、サングラスをしていたが。

航は自分の惨めさに打ちひしがれながらも、笑顔で迎えるが……。

 

「航……」

 

「うん……」

 

「ファッションを少し覚えようか」

 

「……うん」

 

可愛らしい笑顔のはずなのに有無言わせぬ迫力におとなしく返事をする航。

 

「大丈夫よ。私がちゃんと教えるからね♪」

 

人差し指をピンと立て、笑顔で言う楯無。その時とあることを思いだし、それを航に伝える。本人にとっては結構重要なことを。

 

「後ね。今日は知り合いがいない限り、刀奈って呼ぶこと。いいね?」

 

「え、いきなりそう言われても……」

 

「そもそもなんで私の名前をちゃんと呼ばないの?嫌なの?」

 

悲しそうな顔で見つめてくるため、航はそれを否定するかのように顔を横に振って、手も横に振る。

 

「なら何で?」

 

「いや、その……。ちゃんとよぶのが何か恥ずかしいから……。ほら、俺。刀奈姉って呼んでたからね。ね?」

 

目を逸らして頬をポリポリ掻く航。その姿を見た楯無は腰に手を当て溜息を吐く。

こんなことで言わなかったのか……。呆れた刀奈はそれを矯正しようと、ビシッと航に人刺し指を向ける。

 

「いい!彼女の名前ぐらいはっきりと言いなさい!ほら言ってみる!」

 

「へっ?いきなり「早く!」は、はい!」

 

いきなりのことでそう返事したものの、呼びなれてないため、いまいち言うことができない。

そのため……。

 

「か、刀……奈」

 

「声が小さい!」

 

「刀……奈」

 

「もっとはっきり!」

 

「か、刀奈!」

 

「あと一息!」

 

「刀奈!」

 

「うん!それで完璧♪」

 

そして航の右手を自分の左手とつないで、上機嫌の楯無……、いや刀奈。航はデートする前にすでに疲れ果てており、そんな状態の航を見た楯無は首をかしげる。

 

「どうしたの?」

 

「いや、何でもない。そういや買い物行くと言ってもどこにするか決めてないんだよね」

 

「大丈夫よ。私が決めてるから」

 

「す、すまん」

 

「べつにいいよ。じゃあ行こうか!」

 

そして航の手を引いてモノレール乗り場へと向かう刀奈。やっぱり航とのデートが嬉しいのか、顔はとてもうれしそうな表情を浮かべているのがまる分かりだ。

そしてモノレールに乗ったはいいが、この車両には誰もおらず、移動中暇だったから二人はいろいろしゃべっていた。

 

「そういやこの前弾……、まあ友人のとこ行ったんだけどさ。そこ食堂なんだけど、そこの店主である厳さんがゴジラを見たときの話をしてくれたんだよね」

 

「やっぱりゴジラ世代の人っていたんだ。ねえ、どういう話だったの?」

 

ゴジラ世代とは今から40年前のゴジラ襲撃の際の被害者たちがいる世代である。今で言うなら40代後半からがゴジラ世代ともいえるだろう。

 

「それは……」

 

それをこと細かく刀奈に説明する航。それを刀奈は真剣に聞いており、そうしてる間に気付けばすでにモノレールは駅についていた。二人は急いで降りて、その後改札駅までその話をする。

そして改札駅を出ると同じに話が終わり、バス停のベンチに座った後、刀奈は真剣な顔のまま口を開く。

 

「やっぱり私のおじいちゃんも同じ感じだったな……。おじいちゃん、ゴジラの話はしたがらなかったもん」

 

「やっぱり記憶から呼び起こすのって怖いのかな……」

 

「そりゃ怖いわよ。自分が死ぬかと思ったトラウマなんかすぐ記憶から消した方がいいだろうし」

 

「だよなぁ……」

 

そう話してる間にバスが来た為、二人は乗って後ろの二人乗りの席に着く。この時楯無が窓側で、航が通路側だ。

先程の空気を払拭するかのように刀奈が航の肩に頭を乗せ、

 

「航。今からどこに行くか分かる?」

 

「いや、わからんな……」

 

まあ航はこっち方面はいかないから仕方がないか。

刀奈はふふふと笑っており、航はそんな彼女を見て首を傾げる。だが、刀奈の体臭だろうか、いい匂いが鼻腔をくすぐり、どうでもいいやと思うのであった。

そして10分後、バス停を降りたところは

 

「ここ、秋葉原だよね?」

 

「うん、秋葉だよ♪」

 

そう、若者が多く集まる街、秋葉原だ。周りはたくさんの建物で囲まれており、航は始めてくるところなのかあちこちをキョロキョロを見まわしている。

 

「初めて来た?」

 

「初めてきた。何ここ、楽しそう」

 

航は来たことない街というのもあって目を輝かせており、刀奈はそんな航を微笑ましい顔で見ている。こうのんびりしてるのもいいが、刀奈は自分が行きたいとこを現在地から照らし合わせ、最短距離のルートを思い出す。

 

「じゃあ行こうか」

 

「うん、わかった」

 

「じゃあ、えい♪」

 

そして航に腕組みをして体を寄せる刀奈。いきなりのことで顔を赤くしてる航だがこんなのも悪くない。刀奈も頬を赤く染めてるため、やっぱりこれがいいなと思う。

おまけに周りはカップルが割といたため、こういう風にしておくのがいいだろうと判断するのであった。

 

「そういやどこに行くんだ?」

 

「こっちよ」

 

そして刀奈に道案内され、歩くこと約10分。着いたところは『ホビーショップAKIBA』という店だった。

 

「おもちゃ屋?」

 

「うん。買いたいのがあるの。いい?」

 

「いいけど「じゃあ行こう!」うお!?そう引っ張るな!」

 

腕組み状態のため、いきなり引っ張られてこけそうになる航だが、どうにか刀に付いて行って店の中に入る。中に入ると、そこにはたくさんの模型が置いてあり、航は感嘆の声を上げる。

目に映るのだけでもプラモデル、フィギュアなどがたくさん見えるのだ。

 

「どう?航、こういうとこ好きでしょ?」

 

「めっちゃいい。刀奈、よくこんなとこ知ってたな」

 

「前に簪ちゃんに教えてもらってね」

 

「なるほど。簪ならこういうとこ知ってそうだしな」

 

「でしょ?じゃあ中見て行こ?」

 

「おう!」

 

そして一緒に中を見ていく二人。その光景は周りからしたら、可愛い彼女と二人で見ているのだから自分が悲しいのだろう。二人の周りからどんどん独り身の男が離れていく。

 

「あ、見てこれ。可愛い!」

 

「刀奈!これみろよ!」

 

「それも可愛い!航ー。こっち来てー!」

 

「おー、わかった!」

 

様々な商品を見て回っており、それを手に取って買うか買わないか話し合う二人。その姿は本当に楽しそうで、お互い笑いあってる。

その時、航がとある商品を見つけて手に取った。

 

「あ、刀奈。これ……」

 

「ん、何?あ、ちょ、それ……」

 

航が手に持ってるもの。それはIS搭乗者とそのISを1/12スケールでフィギュア化したものだ。そしてその搭乗者とは……。

 

「まさか刀奈がフィギュア化してるとは……。でもすげえ!武器やバックユニット……って重装備型も出来んのかよ!」

 

そう、1/12蒼龍装着版更識楯無の可動フィギュアなのだ。箱で中身が分からないが、日本の誇る技術なら相当いい完成度なのだろう。

箱をクルクルと回して書かれてるのを見た後、航はそれをわきに挟みこむ。

 

「ちょっと、航。何買おうとしてるの!」

 

「いや、何か欲しくなった」

 

顔を真っ赤にして怒る刀奈。まあ自分がフィギュア化したのを、好きな人が目の前で買おうとしてるなら誰でも止めようとするだろう。

その箱を奪い取ろうと手を伸ばす刀奈だが、航が臨機応変に動いて死守するため奪い取ることができない。

そんな刀奈の姿を航はニヤニヤと見ており、ムカッと来たのか更識流武術の歩法を用いて航の意識の外から箱を奪い取る。

 

「え、えっ!?」

 

いきなり箱が消えたと錯覚して驚く航。あちこちをキョロキョロして刀奈の方を向くと、箱がそっちに移ってることに目を点にしており、刀奈は自分のフィギュアの箱を元の商品棚に戻す。

 

「航。私がダメって言ったらダメ。分かった?」

 

優しい笑みを浮かべているが、全く目が笑ってない。若干を流しながらわかったと返事をした後、刀奈の顔はいつもの優しい顔に戻る。

そして航はあの商品がほしかったのか若干残念そうな顔をしていたが他の商品を見ていくことにした。

 

「本物がいるのに本人のフィギュア買おうとか……。航の好みのコスプレぐらい……」

 

「えっ!?」

 

刀奈がいきなりとんでもないことを言ったような……。

航は驚いて刀奈の方を向くと、少し顔を赤くした刀奈と目が合い、お互いにごまかすように笑いあう。

そんなことがあったが、現在いるとこはプラモコーナー。いろんなプラモデルがあるため、二人はいろいろ見ていたが、航はとんでもないものを見つけてしまい、目を大きく見開く。

 

「刀奈!すごいのがあった!」

 

「何~?……って嘘ぉ!」

 

刀奈もそのプラモデルを見て驚きを隠せない。

なんせ、ショーケースの中で売られてるプラモデルが『1/50スケール 90式メーサー殺獣光線車』と『1/90スケール AC-3しらさぎ』だ。航はその2つの存在感に目を奪われ、目を子供のようにきらきらと輝かせている。

何か子供みたいで可愛いと思っているのか、刀奈はそんな航を後ろから微笑ましく見ている。その時刀奈はショーケースの下を見てとあることに気付く。

 

「ん?航。そのショーケースの下。2機の箱があるよ?」

 

「え?……おお!」

 

下を見ると2機の箱がたくさん積んであり、航はさらに目を輝かせる。もう雰囲気が子供だ。

この時航が自分の財布の中身を確認してる限り、おそらく欲しいのだろう。だがデートでこれを買うとなると空気が読めない。ならどうする。

 

「じゃあ買っちゃう?私もこれ、買いたいし」

 

「え、刀奈プラモ作るの!?」

 

航は驚きの表情をを浮かべ、振り向くとそこには腰に手を当て、ドヤ顔の刀奈がいた。

 

「当たり前よ。簪ちゃんにプラモ製作のテクニック等々を教えてもらったんだから作れるわ」

 

そして刀奈はしらさぎの箱を手に取る。縦60センチ、横40センチと大型であり、刀奈は両手で抱える。だが前がうまく見えず、若干足取りが不安だ。

航は刀奈から箱を取り上げ、右肩で担ぐ。刀奈はいきなり箱を取り上げられたことに驚いたが、持ってくれることを嬉しく思い、

 

「何か不安だから俺が持つ。あと、メーサー車の方を俺の左肩の方に持ってきてくれない?」

 

「うん、わかった」

 

そしてメーサー車の箱を左肩に載せ、一緒にレジに向かう。

そして値段を見たとき、航の目が一瞬だけ見開く。

 

「2点で値段が46,320円です」

 

高い。予想通りだが高すぎる。

だが払えないってわけでもなく、自分の財布から5万円を出そうとする航。だが刀奈に止められ、自分も出すって言いだしたのだ。それに少し渋る航だったが

 

「だってこの値段だと航に負担が大きすぎるでしょ?私も出さないと航、いろいろときつそうだし」

 

「ん、ありがと」

 

そして二人で払い、商品は航が持つ。刀奈は自分で持つと言ってたが、航はこれを譲らない。仕方がないと刀奈はあきらめ、そして『ホビーショップAKIBA』を後にした二人は町中を少しぶらついていた。

 

「もうそろそろ昼か。刀奈、どこかで昼食取る?」

 

「そうね。でも……どこにしよう?」

 

困った顔で首を傾げる刀奈。いろんな店があるせいで昼食をとるところが決められず、時間は12時半となってしまう。

 

「そういや、簪ときたときは何食べたんだ?」

 

この時頬を赤くして目を背ける刀奈。

 

「あ、えっと……。その、メイド喫茶に行ってね……」

 

「なるほど、理解した」

 

恐らく恥ずかしかったのだろう。航は刀奈がそういうところが苦手ってことがわかり、頭の中からそういうのを除外する。

だが、どこかで食べないと腹が減る。

その時、航の目にファミレスが入り込んできたのだ。

 

「刀奈、ファミレスでいいか?」

 

「あ、私ファミレス行ったと来ないから行ってみたかったの!」

 

この時目を輝かせる刀奈。航はまさかの反応で驚きを隠せない。

 

「え、マジで?」

 

「だって、私の家。あれだから……」

 

「あぁ……、なるほど。そういえばお前、お嬢様だったな」

 

「ねえ!行ってみようよ!」

 

「わかったわかった。だからそう引っ張るな」

 

刀奈に引っ張られながら、航は自然と笑みを浮かべているのであった。




航の服装、リアルに自分の服装です。ファッションセンスがないって実際に結構つらいですね。

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