インフィニット・ストラトス 忘れ去られた恐怖とその銀龍   作:妖刀

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やっと原作1巻目の話がおわる……、ふぅ……。


激突

「もー!何なのさ、あの女達は!」」

 

束はゴーレム二機が、IS学園教師たちによって沈黙させられたことにいら立ちを隠せないでいた。怒りに任せて散らばっていた資料等をあちこちに投げ、頭を強く掻き毟っている。

 

「もぉぉぉ!!ぁぁぁぁぁ!!!」

 

完全に頭に血が上っており、まさにトチ狂ってる状態である。その状態は5分ほど続き、いきなりぱったり止んだ。その時の顔は、誰かが見たら恐怖で顔を真っ青にするかのような気持ち悪い笑みを浮かべており、口は三日月のように口角が上がってる。

 

「そうだ。あれを使えばいいんだ」

 

束はさっさと先程の席に着き、キーボードを高速でタイピングする。色々な画面が現れるがそれを流すかのように処理をしていき、束は最終項目までたどり着く。

 

「これ使うと箒ちゃんやちーちゃんやいっくんに危害を与えそうになるから使いたくなかったけど、あの化け物を倒すためならしょうがないや」

 

そして最終項目の承認のところを押し。

 

「ゴーレム!起動ぉぉぉぉぉ!!」

 

そして画面は真っ赤に染まるのであった。

 

 

 

 

 

 

ゴーレムたちを縛り上げた後、教師たちは一安心からか武器を格納している。

 

「ふう、終わったわね」

 

「本当。全く生徒たちの晴れ舞台なのにこういうトラブルは勘弁だわ」

 

「あーあ、この後の処理が面倒ね……」

 

「まあそうだけど、その前にやることがあるでしょ?」

 

「そうね」

 

そして全員は縛り上げられたゴーレムたちを見る。

遠距離型は完全に沈黙しており、近距離型もカメラアイが動く程度で体を動かすかのように見えない。この時全員はあとはISを剥いで、中の人を捕まえれば終わりと思っていた。

だが

 

「ちょ、こいつ動き出した!?」

 

「え!?」

 

近接型ゴーレムが暴れ出したのだ。ワイヤーで縛ってあるとはいっても、その暴れ方は尋常ではなく教師たちはいったん離れていつでも鎮圧できるように武器の選択を始める。

その時だ。近接型ゴーレムの壊れたチェーンソー部分がパージされ、いきなり眩しい閃光が教師たちの目を襲う。普段ならハイパーセンサーが処理して効かないはずなのに、この時は効いたことに戸惑う教師たち。

この時ワイヤーが千切られる音がした。そしてチェーンソーの動く音がする。

そして閃光が収まり、恐る恐る目を開くとそこにいたのは近距離型ゴーレムであった。だが腕は先程現れてモノとは違い、チェーンソーが3本になっており、背中のスラスターが多く増設されている。

チェーンソーは刃の数が減ったとはいえ、長さが先程の倍近くある。

カメラアイも先程とは違て赤く光っており、先程とは全く違う雰囲気をさらけ出す。

 

「ちょ、さっきよりやばいような……」

 

一人が呟く。だが千切られたなら再び捕えるまで。全員がワイヤーをいつでも使えるようにし、一人がバズーカを展開して狙い撃つが、それを振り向きざまに切り裂いて、瞬時加速(イグニッション・ブースト)ともいえる速度で遠距離型ゴーレムの元へ立つ。

この時全員が振出しに戻る、いや、さらにやばくなる思われた時だった。

近接型ゴーレムは片手を高く振り上げた後、チェーンソーを起動し、そのまま遠距離型ゴーレムの胸の部分を串刺しにして、そのまま手首を回して粉々にしたのだ。

 

『なっ!?』

 

いきなりのことで固まる教師たち。何人かは中の人が死んだと思って顔を逸らしており、残りは武器を構えている。

この時とある教師は気付いた。あれ、血が出てない……、と。それに疑問に思った教師の一人は黙秘回線(プライベート・チャンネル)を使って他の教師に伝え、全員でガトリングを展開する。

 

「撃てぇ!」

 

一人の合図とともに全員は引き金を引き、放たれた弾幕はゴーレムへと向かって行く。だがゴーレムは両手にある3本指ともいえる状態のチェーンソーを大きく開き、手首ともいえる部分を回転さえてその弾幕を防ぎ、そのまま教師たちに向かって突進を繰り出す。

教師たちはまさか突っ込んでくるとは思わず、油断したせいで回避の遅れた教師の一人が巻き込まれ、一気にシールドエネルギーが削られて戦闘不能になってしまう。

 

「しまっ……!?」

 

教師の一人は戦闘不能になった教師の下へと向かい、その穴を埋めるかのように他の教師たちはガトリングでの弾幕を絶やさない。

 

「こいつ!さっきのは手を抜いてたってこと!?」

 

「ならさっさと潰すだけ!」

 

教師たちはそう言って攻撃を再開するが、ゴーレムはそれを次々と回避をしていき、そして恐れていたことが起きる。

ガトリングはいきなり弾を排出しなくなり、空撃ちの音が空しく響く。そう、弾切れだ。他の射撃武器も先程の戦いで弾切れを起こしており、残りは近接武器しかない。

ゴーレムは一気に方向転換して、観戦席の方へ高速で移動し始めたのだ。教師たちは装備を変更して追撃するが、やはり先程より機動力が上がってるのか、ゴーレムはほとんど攻撃を躱し、そしてチェーンソーを起動させた後、右腕の手首を回転させてシールドを突き破ったのだ。

 

「しまっ、あそこにはまだ避難が遅れている生徒が!」

 

教師たちは急いで突き破られたとこから突入をする。

そして中で見たのは、

 

「ぐおぉぉ……!」

 

機龍の両手でチェーンソーを受けている航の姿だった。

 

 

 

 

時は観戦席にゴーレムが現れたまで戻る。

 

『きゃぁぁぁ!?』

 

観戦席で逃げ遅れた生徒たちの悲鳴が一気に木霊する。シャッターを打ち破って現れたのは近接型ゴーレムだった。ゴーレムは偶然ながら誰もいないところに着地し、一瞬だけカメラアイを動かした後、目の前にいる航にロックし、カメラアイを一瞬だけ光らせる。

航はいきなりのことでびっくりしてしまい、その場に尻餅をついてしまう。そしてゴーレムが両腕を引いて3枚のチェーンソーを二つ、ドリルみたいに回転をし始める。

 

「航!」

 

楯無は通路入口から航のところまで飛ぼうとするが間に合わない。航も手で顔を覆って、誰もが万事休すと思った時だ。

 

「っ!」

 

「……え?機龍?」

 

航は何時の間にか機龍を展開しており、両腕で両方のチェーンソーを受け止めているのだ。この時回転してる刃によって火花が散っているが、

 

 

この時航の目の前にとあるメッセージが表示される。

 

『勝手ニ死ンデモラッテハ困ル。貴様ガイナイト我、動ケヌ』

 

機龍に助けられた。どちらかというと自分に利用価値のあるかのような言い方だが、今はどうでもいい。

 

「行くよ!機龍!」

 

太腿部のブースターを使いたいが、航の後ろにはへたり込んだままの女子達がいるから使うことができない。だがゴーレムはスラスターをフルスロットルで使ってくるから困る。その時だ。

 

「航!任せなさい!」

 

「楯姉!」

 

楯無は村雨をゴーレムの横っ腹に直撃させて一気に誰もいない観戦席の方へと吹き飛ばす。この時教師たちも観戦席に入ってきたため、教師に避難誘導を任せ、二人ゴーレム討伐へと移るのであった。

 

「更識さん!本当に大丈夫なの!?」

 

教師の一人がそう叫ぶが、楯無は振り返ってピースをするだけ。だが教師達は知ってる。この時は楯無が絶対勝利するの時のポーズだと。

ゴーレムは吹き飛ばされたところから瓦礫を落としながら立ち上がり、航に再びロックオンを向けるがいきなり何かにそれを塞がれる。

 

「無視しないでね♪」

 

可愛く言う楯無だが、手に持ってる大型ランス『蒼流旋』をすばやく突き出す。まさに俊足ともいえる速度だが、ゴーレムはそれをすばやく回避する。だが楯無の顔がニコニコだったことに疑問を思がもう遅い。

ゴーレムの動きがいきなり止まったのだ。

 

「!?」

 

「はい、掛かった」

 

ゴーレムはいきなり自分が動けなくなりことに戸惑う。周りもいきなり無人機が動きを止めたことに驚きを隠せず、唯一笑みを浮かべているのは楯無だけだ。

この時航は楯無の足から、何か水みたいのがゴーレムの方につながっていることに気付く。この時ゴーレムの四肢に何かが巻き付いてるのが航のハイパーセンサーが捉える。

そして楯無は蒼流旋を構え、

 

「さて、皆を不安にさせた代償は高くつくわよ?」

 

そして瞬時加速(イグニッション・ブースト)で一気に加速して、ランスの切っ先がゴーレムにあたろうとした瞬間に拘束を解いてシールドに激突させ、アリーナ内へと送り返す。

ゴーレムは後ろが空いたため、スラスターを器用に使ってランスから逃れるが楯無が目の前から消えたことに驚く。

 

「はぁぁっ!!」

 

楯無は体を前に一回転させ、そのままゴーレムの頭部に踵落としを綺麗に決める。ゴーレムはそのまま地面に落ちていき、叩きつけられる前にスラスターを使って軟着陸をする。このとき目の前に航がいたためチェーンソーを前面に突き出し、そして航目掛けて突っ込んだ。

だが航も太腿部ブースターを展開、そしてゴーレム目掛けて一気に突っ込む。

そして二機はアリーナの中心で激突する。

だが考えてほしい。14トンの金属の塊と3~4トンの前者より脆い金属の塊。この二つがぶつかればどうなるか……。

この時ゴーレムの装甲全体に一気に罅が入り、チェーンソーの刃も砕け、カメラアイが衝撃で粉々に砕け散る。破片を散らしながら吹き飛ばされたゴーレムは体制を立て直そうとサブスラスターを使おうとするが、

 

「させるか!」

 

航は一気にゴーレムに近づいて、二の腕をガッシリと掴む。そしてアリーナの壁に向かって一機に突っ込み始めたのだ。ゴーレムは引きはがそうとチェーンソーを機龍に当てるが、速度が落ちるはずもなく、そして。

 

「おぉぉらぁぁぁぁ!!!」

 

そのままゴーレムを壁に激突させる。衝撃で腕はもげ、装甲は粉々になる。だが勢いはそこで収まらず、壁に約1メートルほどの穴をあけた後にようやく停止する。

そして穴から機龍が出てきた後、穴の中に残っていたのは粉々になったゴーレムのISコアとボディの残骸だけであった。

 

 

 

 

 

その後ゴーレムの残骸は教師たちによって回収され、生徒たちには緘口令がひかれる。なお、教師たちは錬度不足で鍛えなおすそうだ。

航たちも事情聴取を約30分ほどしたのち、全員解放されて今は4人で寮に向かってる途中だった。

 

「あーあ、機龍でのタックルするの禁止されちまったよ……」

 

航は教師に近接攻撃幾つか制限され、軽く不貞腐れていた。楯無はにが笑いを浮かべ、そんな航の頭を優しく撫でる。

 

「しょうがないわよ。14トンの塊がISに突撃するだけでスクラップになっちゃうし。絶対防御があっても助かると言いにくいからね」

 

「そうだけどさー」

 

「そういえば一夏。部屋はどうなったの?」

 

この時鈴が部屋の問題子のとこを思い出し、一夏の方を見る。

 

「部屋?ああ、航と一緒の部屋になるってさ」

 

「マジかよ」

 

初耳だったのか、航は驚いた顔で一夏を見る。一夏はどうしたんだ?と首を傾げており、その後楯無の方を見るが、困り顔を浮かべている。

 

「楯姉、これってマジ?」

 

「うん……」

 

申し訳なさそうな顔をする楯無。彼女もこのことを残念に思っており、航は楯無に何か言おうとしたがすぐにやめる。

 

「わかった。じゃあ一夏、これからよろしく」

 

「おう!」

 

そしてお互いに握手をし、そして寮に着く。その後箒はいつの間にか引っ越していたのか部屋には荷物がなく、元から荷物の少なかった航は楯無に別れを告げて部屋に向かおうとするが……。

 

「あの、刀奈姉?」

 

「んー、何?」

 

「何で俺、後ろから抱き付かれてるの?」

 

ベッドに腰掛けていた時、楯無が後ろから首に手を回して抱き付いてきたのだ。いきなりのことで少し驚いたが、女性特有なのかわからないが甘い匂いが航の鼻腔をくすぐる。

 

「嫌?」

 

「いや、めっちゃ柔らかい感覚がしてうれしい・・・・・・ハッ!?」

 

「……航、むっつりスケベだね」

 

「いや、その……」

 

この時航は顔を真っ赤にする。後ろにいるからわからないが、楯無はにやにやと笑ってるのだろう。だが確かめようがないため、航は抵抗は一切せずそのままでいた。

そして30分ほど抱き付かれていただろうか。お互い無言だったが安心できる心地よい感覚でいるため、いきなり離れられた時に寂しい感覚が航を襲う。

 

「……よし、航に3日分抱き付いたわ。でも……」

 

この時航が寂しそうな眼をしていたため、楯無は航の頭をなでる。

 

「航、今度部屋に行くからそのときね」

 

「……わかった」

 

そして荷物をまとめたバッグを持って部屋を出て行く航。楯無はそれを見送った後、つまらなさそうに小さくため息を吐いて、自分も荷物をまとめて2年生寮へと向かうのであった。

 

その後航は途中で若干顔の赤い箒とすれ違い、これからの部屋になる1025室に入り、一夏といろいろしゃべりあう。そして就寝時間になったため、さっさと眠るのであった。

 

 

 

 

 

「うきぃぃぃぃいぃ!!!ゴーレムが負けたあぁぁぁぁ!!!」

 

ここは束の研究室。結局ゴーレムが負けたことにいら立ってる束は、あちこちに物を投げていた。それで者が散乱しており、掃除ロボットが忙しそうに動いている。

 

「にゃぁっぁぁぁあっぁ!!!……ふぅ。やっぱり5連装チェーンソーなんかしてるのはだめだね、次」

 

そして席に着き、これからする予定の資料をあさる束。そこに書かれていたのに『DT計画』と書かれていたのがあったが、束はそれをゴミ箱に捨てる。

 

「あーあ。ゴーレムもダメだし、前にディメンション・タイドは宇宙に打ち上げたはいいけど一発の試射で壊れて大気圏で燃え尽きちゃったし、ダメだなー私」

 

四肢を投げ出し、だらんとした束は暗い天井を見上げる。

 

「次はどうしようかなー。どうやってあのゴジラモドキを消そうかなー」

 

この時ニヤリと笑っていた束だが、それは本人も気づいていないのであった……。




次話から最新章に入ります。お楽しみに

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