インフィニット・ストラトス 忘れ去られた恐怖とその銀龍   作:妖刀

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どうも、毎日仕事の疲れで湯船でつい寝てしまい、そのまま毎度のように沈みかけてる妖刀です。


怪獣学 2

最初の授業は怪獣学。航と一夏はいつも通りやる気満々でシャーペンを握っている。

 

「さて今日の怪獣学はこれね」

 

燈が電子黒板を操作して映像や画像がたくさん出される。いつもはめんどくさそうな顔をしていた女子達だったが何人かの女子はその姿をまじまじと見ていた。

 

「きれい……」

 

一人の女子がそう呟く。極彩色の大きな羽、青い複眼にモフモフの毛を生やした体。昆虫の姿をしているのにその姿は美しく、まるで天女だ。

 

「これはモスラね。まあ、昭和の時代に現れた種と平成になって表れた種、それらの幼虫と共に紹介していくからそれなりに長くなるけど勘弁してね。それじゃあ最初に昭和に現れた方を紹介していこうか」

 

そして電子黒板を操作して写真をいくつか出す。全部が白黒写真で少しわかりにくいが、その中にどう見てもおかしいのがあった。

その姿はまるでとても大きな芋虫であった。それが町を破壊しながら突き進み、通った後は綺麗に均されたかのように何もない。

他の写真は東京タワーに張り付いているが、どう見ても大きさがおかしい。さっきの写真と見比べても大きくなっており、おそらく大きさが100メートルを超えてるだろう。

 

「これはモスラの幼虫ね。体長は40メートルから180メートル。体重は大きさが変わるからそこまでわかってないけど恐らく1万トンは優になるわね」

 

あまりの大きさに何も言えなくなる女子達。180メートルという大きさはあまりにも大きく、想像がしにくいだろう。

 

「大きさが実感わかなかったらいつかISに乗った時に高さ180メートルまで上がってみなさい。そしたらどれだけ大きいか分かるから」

 

そして写真を少しずつ変えてく燈。航は高速で写真を模写していっているが、少し追いつけていないのか焦りの表情が見え隠れしている。

 

「まずなんでモスラが現れたかを説明していくわね。時代は1961年。今はない国、ロリシカ国が日本と一緒にインファント島という島に調査に言った時に小美人、もとい妖精を見つけるの」

 

『妖精!?』

 

その言葉に西洋系女子達が反応する。まあ、向こうは妖精の伝説とかいろいろあるからそれに反応したのだろう。セシリアもその中の一人だ。

 

「まあ怪獣がたくさんいるんだから妖精や宇宙人が現れてもおかしくないでしょ。で、調査団の内の一人が小美人をさらって日本で見せ物にするわけ。で、その小美人を攫ったのが原因でモスラが日本に上陸したの。まあ上陸するまでに豪華客船一隻を沈めてしまったらしいけどそこまでは真相は知らないわ」

 

攫った結果怪獣を呼び寄せる、これほど恐ろしいことはないだろう。ことわざに『触らぬ神に祟りなし』というのがあるが、まさにそれを具現化させたかのようだ。

 

「で、そのあと小美人を探しに東京をあちこち走り回った後、東京タワーを真っ二つに折ってそこに繭を作るの。なおこれが東京タワーの初めて破壊された時よ。そしてこれテストに出るから忘れないように」

 

テストの単語を聞いたとき女子達はぎょっと燈を見る。燈はどうしたのって疑問の表情をしており、そのあと本気で板書をするぞ女子達がちらほら増えた。

怪獣学は普通に普通教科外の専門教科に含まれており、たいていの女子は本気で取り組んでないため大半が赤点を出すのだ。燈はこのことをわざと言わず今まで進めていた。

なおこの時、燈が黒い笑みを浮かべていたような気がするが気のせいだと思う。

 

「じゃあ続けるわね。その後繭を作ったのはいいけど、当時ロリシカ国から貸与された原子熱線砲で繭が焼かれるわ。だけどモスラは成虫に成長して繭から姿を現すの。それがこの画像ね」

 

そして出された画像に映っていたモスラはでかかった。ただでかかった。先程写っていた折れた東京タワーと比較しても東京タワーが小さく見えるほどだ。

 

「体長80メートル、翼長250メートル。今まで現れた怪獣で一番大きい怪獣よ。この100メートル超えの大きさは後先このモスラ以外にいないわ」

 

その大きさに唖然とする女子達。

 

「その後モスラは移送された小美人を連れ戻すためにロリシカ国へ向かうわ。そしてここらは情報が全くわからないけど何かがあって小美人を取り戻してインファント島に戻って行ったわ」

 

「せんせー、何でそこの情報がないんですかー?」

 

一人の女子が聞く。まあそこの部分の情報がなかったらどうしても気になるだろう。

 

「ロリシカ国が消えて情報が一気に消えたの。まるで元からそんな国がなかったかのようにね」

 

まるでそんな国がなかったかのように、この時全員は何か背筋がゾッとした感覚に襲われた。

この時航は教科書の隅に書かれていたロリシカ国の簡単な説明に目を通す。

『ロリシカ国は当時ソビエト連邦、現在ロシアの東側にあるアメリカに一番近い国でニューカークなどのアメリカに影響されたかのような名前の都市があり、当時の人口1000万人を超える国であった。モスラの来襲後に人口は激変。そして1970年、国家崩壊後にソビエト連邦に吸収される』

自業自得だな、航はそう思うのであった。

 

「さて、次は平成になって現れたモスラの方を紹介するわね」

 

燈は電子黒板を操作して昭和版モスラの画像を消した後、カラー画像で平成版モスラの画像を出していく。

 

「体長36メートル、翼長108メートルと最初に現れたのより半分以下の大きさだけど、速度はマッハ3と結構な速度で飛んでるわ。なお昭和版はどれくらいの速度が出るかわからないけど、おそらくマッハ4は出ると思うわね」

 

あの大きさでマッハ4。誰もが想像できないでおり、キョトンとした状態の生徒たちを見た燈はクスッと笑う。

 

「最初に確認されたのは2004年、アメリカ空軍のレーダーがマッハ3で日本を目指すモスラを確認してるわ。そのあと戦闘機を近くの基地から飛ばしてるんだけど機銃、ミサイル等はすべてかわされた挙句何かをしてレーダーから姿を消したわ」

 

「え、そんな大きいのがどうやってレーダーから消えるんですか?」

 

「それは電磁鱗粉という蝶や蛾のモスラ特有の鱗粉でレーダーから消えたらしいわ。この時戦闘機も鱗粉のせいで戦闘不能なったらしいし。あとこの鱗粉は攻撃にも使えるけどちょっとね……」

 

生徒の質問をサラッと返していく燈。だが最後は何か茶を濁された感じだが授業はまだ進んで行く。

 

「その後ゴジラが品川地区沿岸から東京に上陸し、三式機龍が眠っている特生自衛隊八王子駐屯地を目指し始めるの。それで当時10歳であった今の日本政府官僚の一人である中條瞬さんがモスラを呼ぶための紋章を小学校の校庭に作ったわ。それがこの映像よ」

 

そう言って一つの映像を流す。これはヘリからの撮影だろうか、高いところから撮影されておりヘリのプロペラの音が鳴り響く。ゴジラが町を破壊していく様を撮影してリポートしているときにいきなりカメラが動いて地面を映す。そこは小学校の校庭だが、机やいすを使って何か紋章みたいのが描かれており、その近くには一人の老人と子供が立っていた。

その時である。いきなり空が暗くなったかと思うと、画面が大きく揺れる。そして揺れが収まったかと思ったら、学校の屋上にモスラが滞空していたのだ。

その後ヘリはこれ以上は危ないと思ったのかゴジラのいるところから遠ざかっていく。そして映像はそこで終了した。

 

「現れたモスラは東京の空を飛行し、ゴジラに戦いを挑んだわ。最初はこの大きな羽で強風を起こしたり、体当たり攻撃なんかでゴジラを翻弄していたんだけど、だんだん押されていって、ついには最後の手段--鱗粉でゴジラを攻撃したわ。だけどその最後の手段でもある鱗粉があんまり効いてなくて、羽がボロボロになっていくの」

 

「え、どうして……」

 

「なんで羽がボロボロになって言うのか疑問に思う子がいると思うから説明するけど、そもそも蝶や蛾は鱗粉がないと空を飛べないの。だけどモスラはその鱗粉を武器に使うから、羽を羽ばたかせたときの風圧等で羽がボロボロになっていくの。そして飛ぶのも精いっぱいになってしまったモスラはゴジラに撃ち落されてほとんど飛べなくなってしまうわ。そしてゴジラにとどめを刺されようとしたとき、日本の切り札でもある三式機龍改がモスラを助けるの」

 

ここまで説明した後、燈は軽く教室を見渡す。航と一夏はいつも通り真剣に授業に取り組んでいてくれるが、やはりさっきの半分脅しを言っても真剣に取り組んでる女子生徒が少ない。ばれない様に溜息を吐いた後、燈は説明に戻るのであった。

 

「その後機龍改はゴジラと戦うんだけど、ゴジラの攻撃にどんどん追いつめられていったわ。でもその時、二匹のモスラの幼虫がやってきたの」

 

その時電子黒板にモスラの幼虫の写真が写しだされる。色は茶色で、目の色は綺麗な青色だ。大きさは昭和版に比べてとても小さいが、それでも普通に大きい。それが2匹写し出されており、他には、その2匹がゴジラによって墜落させられた成虫に寄り添う写真もある。

 

「このモスラ幼虫は小笠原諸島に卵が産えつけられていて、この戦闘中に孵化したと言われてるわ。その後普通の船なら東京小笠原諸島間は6時間から7時間は掛かるけど、この幼虫たちは生まれてすぐに2時間で東京に到着したらしいわ。これ、相当な速さよね」

 

「その後機龍改を機能停止させたゴジラに戦いを挑むのだけど、やっぱり体格の差で押されるわ。その後、吹き飛ばされたりしながらもこの時幼虫と成虫が初めて顔を合わせるんだけど、ゴジラは親と話す時間も与えず熱線ですべて吹き飛ばそうとしたわ。そのときよ、モスラ成虫は幼虫をかばって熱線を受けて死んだのは」

 

この時再び電子黒板に一つの映像が出される。

空は夜なのにあちこちで上がってる炎のせいで明るくなっており、航空機からとってるのだろうか、上空から映像が撮られている。

この時モスラ成虫は完全に飛べないのか地に這いつくばっているが、そこに幼虫2匹が寄り添っていく。

 

「チューイ」

 

「キューイ」

 

顔を合わせることができてうれしそうにしているが、その時間は長く続かない。

 

「グォォォォ!」

 

その時だ。後ろにいたゴジラの背びれが光ったのは。そして熱線が放たれた瞬間、親モスラが最後の力を振り絞って幼虫の盾になる。成虫はその後一気に体全体が燃え上がり、そして爆散した。

 

「チューイ、チュアー……。キ、キューアァ……」

 

そして声が怒りに染まったかのように重くなり、幼虫2匹の目が青から赤に変わっていく。

そしてここで映像は終了した。

 

「これは自衛隊からお借りした映像よ」

 

燈はそのあとすぐに生徒たちの反応を見たが、ほとんどがあまりの光景に茫然としている。目の前で親が殺されたのだ。その光景を見た幼虫の心境は相当の物だっただろう。それを思ったのか泣き出しそうな生徒もいる。

燈は少しはまともになったかなと思い、授業の続きを始める。

 

「そういえば今のがまともにゴジラの映像を見る子もいるでしょうね。先程の映像で後ろにいた黒くて大きいのがゴジラよ。この後幼虫たちは再起動した機龍改と共にゴジラを追い詰めていき、そして機龍改の攻撃でほとんど動けなくなったゴジラに、幼虫たちは口から出す粘着質の糸で動きを止めていくわ。その後ゴジラは完全に沈黙。機龍改がとどめを刺そうとしたんだけど機龍が暴走してゴジラと共に日本海溝へと消えて行ったわ。そしてモスラはインファント島に帰って行ったわ」

 

やっとここまで話せて疲れたのか、燈は小さくため息を吐く。あとは締めくくりだ。そう言い聞かせて燈は口を開く。

 

「あと鳳凰のモデルはモスラとも言われており、他にも狛犬、ヤマタノオロチのモデルにもなった怪獣もいるらしいわ。そう考えると、ちょっと日本人以外には分かりにくいと思うけど、古事記や日本書紀の書かれた時代にはモスラなどの怪獣が既に存在していたと考えるわね。あとそれについて書かれた伝記物があったらしいけど、今は行方不明になってるわ」

 

あの鳳凰のモデルがモスラ。それを聞いた日本人生徒は驚きの表情を見せる。

 

「さて、ここまでで質問ある人はいる?」

 

「先生、そういう情報とかってどこから仕入れてるんですか?」

 

この時一夏が挙手して質問する。周りの女子も何で女性なのにここまで情報があるの気になったのか燈の顔を見る。

 

「元は自衛隊で怪獣学の講義が行われてたからそれを取り入れたのと、私の祖母が当時ゴジラと戦った自衛官だったから祖母や祖母の知り合いとかに聞いたり、自衛隊から情報をもらったりしてまとめて授業に使うの。だから途中で情報がなかったりして授業が早く終わったりすることもあるかもしれないけど勘弁してね?さて他は?」

 

この時航が挙手した。

 

「ゴジラと機龍の説明っていつですか?」

 

「あー、そこ来ちゃう?普通だったら現れた怪獣の順番で行こうと思ってるんだけど、実際モスラの後にやってもいいのよね。そこは考えておくわ。じゃあ次誰かいる?」

 

「先生、インファント島ってどこにあるのですか?」

 

「インファント島は南太平洋のミクロネシア・カロリン諸島にあるわ」

 

そして怪獣学に関心を持った数人の生徒の質問に答えていき、そして授業は終了するのであった。

 

 




燈さんが言ってますが、怪獣学は過去の情報を基に作られてるのでいろいろ史実と異なってる部分や書かれない部分があります。あと数体怪獣の過去設定を変えたりするので、本当にその怪獣について気になったらDVDなどで見てください。

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