インフィニット・ストラトス 忘れ去られた恐怖とその銀龍 作:妖刀
今回の話は短いうえにそこまで進みません。
次の日、航は楯無と一緒に部屋で朝食を食べていた。
「あーあ、機龍があそこまでオーバースペックだったから大量に制限つけられちゃったよ。全くシールドエネルギーが元の10分の1ぐらいって……」
「しょうがないわよ。あそこまで性能が高すぎると
そう聞かれたため航は確認するが、顔が少し青くなる。
「機能してない……。解除されてる……」
「えっ!?」
楯無は慌てて確認するが、設定は解除されており、この部分は一次移行後の初期設定のままだ。
「どういうこと!?航、何か触った?」
そう言って航の方を見るが、航は顔を横に振り否定する。楯無はもう一回設定してみる。すると
「え、勝手に外れた……?」
そう、僅か3秒ほどで勝手に設定が解除されたのだ。ハッキングやそんなものではない。なのに勝手に解除されたのだ。
「なんで……、ん?何これ」
楯無は設定が勝手に解除されたことに驚きを隠せなかったが、そのときいきなり言葉が表示されたのだ。楯無はその時表示された言葉に目を通す。
「えっと、何々?『我従ワヌ。人、全テヲ奪ッタ。家ヲ、家族ヲ、我ヲ。許サナイ。タトエ我ラノ血ヲ持トウト、人ヲ許セヌ』……何よこれ……」
「……機龍?」
航は腕に着けてある手甲を見る。銀色の何も語らない手甲だが、何か恐怖を感じるのであった。
航はその後楯無と一緒に学園へと向かい、そして途中で別れた後に教室に入る。この時多数から畏怖の視線を感じ、航は何かしたのかと少し首を傾げた。。
「航!お前大丈夫なのかよ!?」
「お、おう。心配かけたな」
航はその後教室に入ったはいいが、いきなり一夏が詰め寄ってきたためとりあえず返事をしておく。
「よかった、いきなり吐血するから心配したんだぜ?」
「いやー、あれは本気でビビった。内臓と骨がやられてたからさ。何でも肺に肋骨が刺さってたとか何とか」
そう言ってハハハと笑う航だが、周りは結構ドン引き状態になっている。
「おまっ、肺に刺さっていたのかよ。
普通それ死ぬぞ。いくら航がそう簡単に死なないとわかっていてもこっちは心配するんだけどな」
「あー、心配掛けてすまん」
航は素直に頭を下げて謝る。
だが航は簡単に死なないとは一体どういうことなのかというと中学生の時、鈴を合わせた3人で買い物にいてたら、信号無視で突っ込んできたトラックに航だけ轢き逃げされたり何だったり。他にもいろいろ航の人外伝説はあるが、それはまた別の機会に語るとしよう。
「それにしても俺、何か嫌われてるって感じがするのは気のせい?」
航は周りを見渡すが、大半の生徒が一気に目を逸らす。
「あー、たぶんこの前の試合が原因だと思う」
「なるほど」
今までのISの常識を覆すかのような機体、四式機龍。あれは女子達の考えを打ち砕くには十分すぎるほどの戦闘を見せつけ、代表候補生であるセシリアを一方的に倒すという戦果を見せている。
「そういや一夏、ここのクラス代表は誰になったんだ?」
「あ、何か俺になった」
「……は?」
この時航は自身の耳を疑った。一夏がクラス代表?確かにISに全く乗っていたなかったのにセシリアに肉薄した戦いを見せつけたがそれでも勝ったセシリアが代表になるだろう。
「いったい何があったんだ?」
「実は……」
一夏は何があったかを話すのであった。
それは時が2日前に上る。
試合翌日、ホームルームで一夏は電子黒板に書かれていたことに自身の目を疑っていた。
「ではクラス代表は織斑一夏君ですね。あ、一繋がりで縁起がいいですね」
真耶が嬉しそうに言うが、一夏にとっては冗談かのような出来事である。とりあえず一夏がすぐに挙手をした。
「先生!なんで俺がクラス代表なんですか!?俺、セシリアに負けましたよ!?」
「それはですね「私が辞退したからですわ!」
真耶が説明しようとしたとき、セシリアが言葉を遮るように答える。おかげで真耶は涙目になっているが、セシリアは気付いていない。
「代表候補生であるわたくしを素人である一夏さんが追いつめたため、IS技術を取り込んで行ったらどれほど強くなるか気になったから辞退したのですわ」
「さすがオルコットさん、わかってる!」
「男子がクラス代表、これは売れるわね!」
周りは何か言ってるが一夏にとってはどうでもいい話だ。
「なら航は……。あ、うん。今のは聞かなかったことにしてことにして」
一夏は航はどうなのかを聞こうとしたが、昨日に吐血したのを思い出してこの話題をすぐに打ち切る。なお航の話題を出したときにクラスの半分程が嫌そうな顔をしたのは気のせいだと思いたい。
「せんせ~、わーたんはなんでここにいないんですか~?」
航がいないことが気になったのか、本音が挙手して質問した。
「それは私が説明しよう」
この時教室に入ってきた千冬が説明をする。
「篠栗は昨日のオルコットと戦った後、吐血をして病院に緊急搬送された。あいつの使っていた機体の生体保護機能がほとんど働いていなかったことが原因とされている」
この時教室が一気にざわめいた。生体保護機能が働いていない。これはジェットコースターなら安全バーがまったく機能していない状態とほぼ同じだ。最悪死亡していてもおかしくない事態に一夏は席を立って千冬に詰め寄る。
「千冬姉!航は大丈夫なのかよ!」
友人が重傷を負ってパニクっていつもの呼び方になってしまったため、一夏は出席簿で頭を叩かれる。
「織斑先生だ。篠栗は折れた肋骨が臓器に刺さっていたが、一命をとりとめて今は安静に眠っている。護衛ここの生徒会長である更識がいるから侵入者等も大丈夫だろう」
「よかった……」
一夏は航が助かったという知らせを聞いて安心したのか自身の席にへたり込む。
「篠栗が戦えない。オルコットは辞退した。なら織斑、お前がクラス代表をしろ。いいな」
「……わかりました」
「ではクラス代表は織斑君で決定ですね」
真耶がそう言って締めくくり、周りからは拍手が送られる。一夏は気を引き締めて頑張ろうと思うのだった。
「とういうことがあったんだ」
「なるほど」
一夏の説明に一応納得する航。
「そういや俺が死にかけてその2日後にここにいるって相当可笑しい?」
「うん、相当可笑しい」
この時周りの畏怖の視線の理由がやっとわかった。昔から味わった自分を化け物を見るかのような視線と同じなのだ。中学の途中から引っ越してこの視線の感覚を一回も浴びていないため少し忘れていたがやっと思い出した。
「まあいいか、独りは慣れてるし」
「ん?何か言ったか?」
航はボソッと言ったが一夏に聞こえてしまったのか何でもないと返す。
そんなことを話してるうちにチャイムが鳴ったため、教室にいた全員はさっさと席に着く。そして先生たちが入ってきてホームルームが始まるのであった。
次回の話は完成してるけど、その次の話が1000文字ほど書きあがったら投稿します。楽しみにしていてください。