東方日々綴   作:春日霧

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 お久しぶりです。

 時折更新催促の感想をくださった方々、ありがとうございました。最後の方はもうちょっと待ってくださいと返事を書くのもあまりに説得力が無いので、更新した上でお待たせしましたと返事が書きたかったのですが、お待たせしすぎていくつか感想が消されてましたね。ごめんなさい。お待たせしました。

※永夜抄編と花映塚編の間(秋→春)に日暮がやってそうなこと※
 ・プリズムリバー三姉妹の一週間ゲリラライブ(よく考えたら永夜抄と同時期)
 ・ミステリーサークルを見に行ったりしたかもしれない
 ・猫の棲む里を探して
 ・博麗神社での年明け神事、天香香背男命討伐の儀式の見学
 ・賽銭詐欺
 ・ゆかりん冬眠中だし藍さんに会ってるかも知れない
 ・香霖堂「紫色を超える光」から「幽し光、窓の雪」まで


その二十一 九冊目

 月 日 ( )

 

 休日。

 昨晩、珍しく人里の居酒屋で蛮奇さんと飲み明かしたせいで頭が痛かったってのもあるけど、春の気持ち良い気温と風を感じて起きるに起きられず昼頃まで寝ていた。

 そんで眠気覚ましに適当に歩いて蕎麦屋で昼を済ませ、そのまま道具屋や怪しい露店なんかを回り、花の匂いにつられて花屋を覗いたりした。

 花屋でカフェとかやれば流行りそうって昔から思ってるんだけど、そういう試みを見かけたことは一度としてない。

 

 丁度その花屋の娘さんが寺子屋から帰ってくるところに出くわして、その子は俺に見覚えがあったらしくちょっと話をしてきた。まあ何度か寺子屋も覗いたことあったし、そこで見かけたんだろうと思う。生憎俺はさっぱり覚えていなかったけど。

 話と言ってもちょっとした愚痴みたいな話で、寺子屋の授業が退屈らしい。よくある話だ。

 それに上白沢さんは割と硬い人だから、あの人の授業に面白味というのはあまりなさそうってのを前から思ってたし。けどそれは教えていることに無駄がないと考えることもできるのではなかろうか。

 

 そんなことを言ったら自分の半分ほどの齢の少女が呆れた顔をしてくれやがったので、折角知り合いがたくさんいるんだからたまには別の人も呼んだりしたら退屈も紛れそうなのにね、という無責任な話もしておいた。ほら、たしか妹紅さんとかと知り合いだったじゃん上白沢さん。人里の顔役みたいな扱いされてたりするし。

 

 ところで、確か上白沢さんって半人半妖じゃなかった半人半獣だし結構寿命長いんだよね。てことは人里で結構な人数の人が上白沢さんにお世話になってるんだろうな。

 そう考えるとちょっと面白い。

 きっと上白沢さんが初恋だった人もいるんだろうな。

 

 そんな感じに花屋での長話で思ったより時間が潰せたので、そのまま夕飯買って帰った。

 今思うと長話したし花の一つでも買ってきた方がよかった気がする。

 

 案の定夕飯は蛮奇さんがたかりに来たのでご一緒した。

 どうやら一日中寝てたらしい。さすが妖怪である。

 

 

 

 

 

 月 日 ( )

 

 最近は上がり下がりが激しかった収入も安定してきて毎日朝食を食べられるのが嬉しい。と、思い出したので書いておく。意外と射命丸さんのくれる原稿料いい値なのよね。

 ついでに言うと、ここで暮らし始めてから随分と料理が上手くなった気がする。

 具体的な意見として、手料理から男らしさがいい感じに抜けてきたとは蛮奇さん談である。

 そら半ば強引とはいえ人に出しているのだし、気を使うのは当然と言えば当然なのだが。

 

 女性の手料理を食べたいんだけどなぁと思っても蛮奇さん滅多に作ってくれないから仕方ない。

 あ、でも霊夢ちゃんの神社で宴会があると裏方に回る咲夜ちゃんとか妖夢ちゃんの手料理が食べられるからおススメな。

 霊夢ちゃんは質素ながら深い味の料理を作るけど、咲夜ちゃんは丁寧な料理(主に洋風)を作る。丁寧というより豪華とでも言うのか。盛り付けが綺麗。で、妖夢ちゃんも主人に仕える人だからかやたらレパートリーが豊富だけど、イメージ通り和食が上手い。包丁捌きは怖いくらいだ。

 

 しかし魔理沙ちゃんは茸料理しか作らない。普段何食べてるんだろう。

 宴会じゃあそれだけってだけかね。

 

 さて今日は仕事だったわけだけど、森近君がやたら香霖堂の桜をちらちらと見ていた。そろそろ花見なのだろうか。いつだったか春告精も見かけたので季節なのは分かるが。

 去年はアレで香霖堂の桜はあまり見れなかったけど今年はきちんと顔を出すとしよう。さすがの鬼もあんな辺鄙な場所の店へは来まい。……なんて言うと来そうだけど口に出しているわけではないのでおそらくセーフ。セーフ。

 

 帰り際、里の揚げ物屋で目立つ毛並みを見かけたので寄ってみると案の定八雲さんちの藍さんだった。冬もすっかり明けたので主人の八雲さんも目覚めて通常業務に戻ったらしい。

 自分へのご褒美だといいつつ油揚げを頬張っていた。

 それとなく尻尾を眺めながら、狐だなぁと思った。

 

 影狼さんも羊肉とか好物なんかな……。

 

 

 

 

 

 月 日 ( )

 

 香霖堂に客が来るってどれくらい運を使えば成し遂げられるんだろうか。

 一度もやったことないけど相当いりそうだよなと思った。霊夢ちゃん達が来るのもある意味幸運だからまともな客っていう幸運は奇跡に近いと思うんよ。うんうん。

 絶対にやらないでおこう。後々不幸続きになりそう。

 

 結局今日も大した仕事なしに帰った。

 

 夕飯を何にしようかと店やら屋台やらを物色していたら、妹紅さんを荷物持ちに歩く上白沢さんと会った。彼女らも夕飯の支度らしく、以前の印象通り仲良く仲睦まじく買い物をしていた。その仲良さもそうだけど、服装もやたら奇抜なので遠目からでも一目で二人だとわかった。

 どこか焦げ臭い妹紅さんは今日も竹林のお姫様と、柔らかく言うと喧嘩……すなわち殺し合いをしてきた後らしく、どこかすっきりとした表情を浮かべていた。上白沢さんの表情は苦笑いに近かった気もするけど。

 あの物騒な間柄はどうにかならないものだろうか。ならないんだろうなぁ。

 

 しっかし、見るからに少女な妹紅さんに対しても敬語な上白沢さんはちょっと不思議に見えるけど、年齢的にはあれで正しいんだよなって。本当に変なところだなぁ幻想郷。そもそも上白沢さんは生真面目だから誰にでも敬語だったりするんだけど。

 あと妹紅さんと上白沢さんのコンビは不良生徒と熱血教師って感じに見えて面白い。

 

 二人と世間話して別れた後、どうやらお使いを頼まれたらしい小鈴ちゃんに遭遇した。

 てか昨日も八雲の藍さんに会ったし、人里もまあまあ広いけど幻想郷って狭いんだなぁ。

 知り合いが増えすぎただけだろうか。

 

 そうそう。あの春告精ってリリーホワイトという名前らしい。さっき誰かから聞いたって蛮奇さんが言ってた。春告精なんていう和名な種族名なくせして随分と西洋かぶれな名前だなぁと思ったけど、この土地にはそういうの多いから仕方ない。

 

 

 

 

 

 月 日 ( )

 

 今日は店に魔理沙ちゃんがやってきて、しかも手には懐かしい宇宙食が握られていた。よく都会の科学ミュージアムとかで面白半分に買って思った以上にまずくてびっくりするアレだ。

 俺がうわぁって思いつつ魔理沙ちゃんと森近君の会話を聞いていると、何やら宇宙の味がするとかなんとか色々語っていた。僕はただまずいよとだけ言っておいた。お前食べたことあるのかこれ!?と魔理沙ちゃんはやたら驚いて俺を見てたけど。

 

 まぁ見るからに食べ物が入ってるパッケージには見えんしあの反応は分からないでもない。その後に実に興味深そうにパッケージとにらめっこしてる魔理沙ちゃんはちょいと不思議だったけど。

 よっぽど腹でも減ってるのだろうか。宇宙の味か……なんて呟いてた。

 あ、そういえば魔理沙ちゃん宇宙好きなんだっけか。時たま天体観測もしてるって聞くし。

 

 ついでに加えれば魔法使いって化学に通じるところあるから、やっぱり魔理沙ちゃんは理系だよなぁ。親近感親近感。霊夢ちゃんは神道系だし文系かな。小鈴ちゃんとか森近君も多分文系。そもそも幻想郷って民俗学的に文系の匂いがぷんぷんする。

 芸術系と体育会系の子っていたっけ。あ、妖夢ちゃん体育会系っぽい。

 

 以上、今日の香霖堂の来客は魔理沙ちゃんだけでした。

 売り上げはもちろん皆無。

 

 さて、明日は休みなので何かしようかなと思うけど正直毎日何かしてるから多分寝るだけだと思う。明日は明日の風が吹くわけだし。

 あとそうだ、そろそろ花見の季節だから酒を買い溜めでもしておこう。前回のリンゴの果汁酒は飲みきっちゃって三回目作ってる途中だし。今回のは夏みかんだからすぐ飲めるらしいけど、流石にまだ無理。

 

 

 

 

 

 月 日 ( )

 

 やたら朝早くに目が覚めたので、小鳥のさえずりを聴きつつ散歩してたら妖怪に絡まれた。絡まれたというか、物陰から唐傘お化けがぐわーっと来て驚けーって来た。

 いや、まあ、もしかしたら驚いたかもしれないけど、出てくる前から水色の髪の毛とかが割と見えてたから、大声の声量に少し驚いただけだった。ごめんね。

 

 しばらく開いた唐傘越しにじっと見つめて来たけど、その程度しか驚かないとは何事かーってカランコロンと音を立てつつ去って行っちゃって結局名前は聞けなかった。けどまあやっぱり女の子だった。しかも、そうしかもだよ、オッドアイだったんだよ赤と青の。凄いよあれは。

 場所は我ながらどうしてそんなところ行ったのか不思議だったけど墓地だった。

 また行けば会えるだろうか。

 

 夕食時蛮奇さんに聞けば、あの唐傘お化けは人間の驚かすことで腹を満たしているらしい。

 でもそれって人間を食べることがあるから割と嫌われてる妖怪にしては、結構良い方なのではなかろうか。だって人間食べなくてもよさそうじゃん。

 

 ちなみに蛮奇さんは以前会ったことがあって人間に間違えらえて不意に脅かされ、首をぽろっと落としてしまって逆に驚かしたらしい。そんな縁ですっごくたまーに話すことがあるそうだ。奇妙奇天烈過ぎる。

 というか驚かすのに驚くんだ。

 

 害のない感じでいいなぁという言葉に、別に妖怪だからって人間食べないと死ぬわけじゃないし、と蛮奇さんは苦言を零した。

 そんなこと言ったら自分だって害は無いぞという意味だろうか。まぁ確かに。

 幻想郷の妖怪は今一つよくわからんなぁ。今が平和だからだろうか。

 管理者とかいうあの八雲さんがよくわからない妖怪だからかな。

 

 

 

 

 

 月 日 ( )

 

 ほどよく雲のある晴天だった。

 やっぱり春はこうでなくっちゃね。

 とか言うと去年を思い出してほんの少し寒気がする。去年は今頃も雪が降ってたからなぁ。後になってみれば笑い話だけれども。

 

 して、パッチワーク二号も何となく面倒になったし今のところ食うに困ってないのでどうもやる気が出ない気がする。これといって目的のない日々は退屈だ。

 なので一日中ぼーっと天井を眺めつつ、なんかこう、ないかなと考え込んでた。

 面白いことというか、熱中できるような何かがないかなと。

 

 まぁ元よりどちらかというとやる気のない人間ではあったけれど、幻想郷に来て最初の頃はなんとなく食っていこうと思って頑張ってたような気がする。というより幻想郷の環境とか妖怪達を相手にはしゃいでただけな気もする。

 ともかく最近はそうでもないし。

 

 蛮奇さんに聞いてみようかなぁと天井の染みを眺めていたけれど、どうやら今日は蛮奇さんは仕事の日だったようで家にはいなかった。

 ふむ。けど妖怪って人間より随分と長く生きてるのに元気だよな。やっぱり人間脅かしてると幸せなのかな。

 でも話によれば幻想郷じゃあ妖怪もあまり人を襲えないみたいだけどなぁ。

 

 そういや幻想郷っていつからあるんだろ。

 今度阿求嬢に聞いてくるか。

 

 あー眠い。

 春眠。

 

 

 

 

 

 月 日 ( )

 

 おっ仕事おっ仕事楽しいなーってのはいささか過言。

 森近君は商売っ気がないしむしろ静かな店の状況が楽しいみたいだけど。最近知ったんだけど食事もとらなくていいから半ば趣味で食い物食ってるっていうし、そらお金に無頓着にもなるわなって思った。というかずるいよね。ずるい。

 光熱費がほぼ存在しない幻想郷人里において目下重要な出費というのは当然食費になるわけだけど、森近君にはそれがないわけだし。外と違って税も無いし(法も無いけど)半妖だから身体も強いし寿命も長い。

 え、ヤバい。森近君最強なのでは。

 

 そんな幻想郷最強候補森近君は今日ものんびりと道具を弄り物思いに耽っていた。

 いい人生を送っていると思う。

 それに対して彼の財政を圧迫する俺は今日ものんびりとうたた寝をしていた。

 いい人生を送りたいなと思う。

 

 香霖堂の桜の蕾が破裂しそうに膨らんでいるのを遠目ながら確認した。そろそろ咲き始めそうだ。来週あたりに満開になるんじゃないだろうか。

 おそらく博麗神社の桜もそろそろだろう。んーでも、あそこは場所が場所なだけに咲き具合を確かめるためだけに行くのは正直面倒。誰かが教えてくれたりしないだろうか。ふらふらっとやってきて「今日はあそこの桜が満開ですよ」とか。超便利。

 あ、そうだ花の妖怪が一人いたじゃないか。

 いや、けどあの人は、まぁ無理だな。うん。

 

 今思い出したけど、桜の木の下には死体が埋まっているってのは、なんの文章だっけか。

 誰かの文学作品だった気がしたんだけど、そこまでは思い出せてない。悔しい。

 だざいさんじゃなくて、夏目さんでもなくて、誰だったか。

 確か檸檬書いた人だった気がする。

 

 あれ、檸檬はどんな話だったかな……?

 ああそうだ、本屋で檸檬置いて爆発する奴だ。


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