魔法少女あまた☆マギカ   作:星屑アマタ

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六話眼 言葉を発する時は考えて発しましょう

 これまでの互いの出来事を話し合いながら初夜を終え、翌日の夕方、杏子ちゃんと私は出掛けました♪

 さぁ、ここで問題です♪

 私と杏子ちゃんは何処に出掛けたでしょうか?

 

①うどん屋に夕食に

②デパ地下にて試食

③美樹さやかと接触

④キュウべえの住処

 

 さぁ~、ど~れ―――

 

「遊び半分で首突っ込まれるのってさぁ、本当ムカつくんだぁ……」

 

 おぉっとぉ!!美樹さやかのサーベルと杏子ちゃんの槍との間で拮抗していた力が、杏子ちゃんの軽い一押しで均衡が崩され、美樹さやかはバランスを崩し後ろずさる!!

 生まれた隙を、杏子ちゃんは逃す訳も無く……

 突如として槍に無数の堀りが生まれ堀に沿って無数の棒へと分離し、槍が無数の棒と鎖で連結された無数の長獲物へと変形する。

 それは軌跡を美樹さやかに読ませぬ不可思議な動きをし、彼女の腹部へと突き刺さる。

 先端部の槍は消していた為、殺傷能力は一切ないが、肋の大半が粉砕され全治2、3カ月は確定だろう……

 そして、地面へと倒れ伏す彼女の真横に、墓標と言わんばかりに彼女の武器であるサーベルが地面へと突き刺さる。

 

 うっひゃぁ~、杏子ちゃん新人に対しても手加減無いなぁ……

 あっ、答えは③ダヨ♪

 

「さやかちゃんっ!!」

 

 美樹さやかと同伴していた鹿目まどかは、地面へと倒れ動かぬ友人を見、悲痛な叫びをあげる。

 う~ん……杏子ちゃんがテリトリー確保の為に動くのは別に構わないけど、鹿目まどかの直ぐ傍にキュウべえが居るのが拙いなぁ……

 鹿目まどかがキュウべえと契約しそうになったら止めに入らないと……

 

 あっ、今私は路地裏の戦闘を見守る為に、路地裏に面した建物の屋上で双眼鏡にて観戦なう♪

 うん、やっぱりスポーツ観戦にはポップコーンとコーラに限るね♪

 

「どうして貴方は止めに入らないの?」

 

 スポーツ観戦は当然一人では盛り上がらない。

 私の横には魔法少女の姿で待機している暁美ほむらの姿。

 

「う~ん、杏子ちゃんに私事だから介入するなって言われたのも有るけど、私の目的は鹿目まどかの観察だからね♪彼女に深刻な何かが起きようとしない限り、動く気はないわよ♪」

 

 致命的な攻撃を受けた物の、何故か立ち上がる美樹さやかに、杏子ちゃんは不思議そうにもするものの、再び手を休めぬ乱撃の嵐を再開する。

 ちなみに、私が動く深刻な何かとは、鹿目まどかのキュウべえとの契約や命にかかわる時等である。あと、杏子ちゃんがピンチな時ね♪

 

「そう……悪いけど、止めに入らせて貰うわよ。そろそろ、キュウべえがまどかに契約を持ち掛けるから……」

 

 暁美ほむらの吐く台詞。それは予想でも推測でもない断定の言葉。

 私でもキュウべえが取りそうな行動は予想できるが、断定する事は不可能である。

 

「あれぇ、貴方は全てを知ってるような口振りね?暁美ほむら?」

 

「えぇ……じゃあ、行くわね……」

 

 肯定するや否や、彼女の姿が目の前から消えて、気付けば杏子ちゃんと美樹さやかの間に割り込むように出現した。

 ただ、その際に驚いた事が一つある……

 彼女が瞬間的に消える事は、最初の接触と、倉庫の一件で体験済みである。

 私が驚いたのは、杏子ちゃんの一撃は地面に倒れている美樹さやかに的中し、完全な止めを刺す筈だった……

 だけど、杏子ちゃんの一撃は地面を穿つ。そして、攻撃対象の美樹さやかは動けない筈なのに杏子ちゃんと離れた位置に瞬間移動していたのだ……

 

 さぁ……推理を始めようか読者(ワトソン)君……

 

 全貌を理解する暁美ほむら、そして瞬間的に移動する暁美ほむら、何時の間にか別の場所へと移動した美樹さやか……

 これより、私の知恵の泉で推測できる彼女の能力……

 

 候補としては『時間干渉能力』、『物質転送能力』、『読心能力』である。

 

 一番確率が高いのは、候補その①『時間干渉能力』。

 これならば、過去や未来を知る事も出来るし、時間を止めて移動が出来る。

 ただ問題は、これ程の魔法を発動する事が出来るのかって話だ……

 私の使い魔召喚ですら、ソウルジェムの負担が非常に大きい。

 時間に干渉する程に強力な能力だったら、ソウルジェムにどれ程の負担がかかるなんて想像する事すら出来ない……

 

 なので、候補その②『物質転送能力』。

 暁美ほむらや美樹さやかの瞬間移動は肉体を転送した為。ただし、この候補だと全貌を理解出来てる理由が説明出来ない。

 

 そして、最後に候補その③『読心能力』。

 これならば、キュウべえの心を読めるので全貌を知る事が可能だし、私と出会った時に私の目的等に気付ける。

 ただし、今度は瞬間移動が説明出来ない……

 

 魔法少女は契約時の願いによって扱える能力が異なる。

 なので、もしかしたら②と③の条件を同時に満たす願いだったりしたらどうだろうか?

 

 でも、②と③を同時に満たす願いなんて有るだろうか?

 私の発想で思い浮かぶ物は一つも無い……

 

 それともやっぱり、時間干渉能力なのだろうか……

 ソウルジェムへの負担が少ない時間干渉能力を得る御願いって、どんなんだろう?

 恐らく、ここで関わって来るキーワードは鹿目まどか……

 暁美ほむらの興味は鹿目まどかにのみ向けられている。現に美樹さやかが杏子ちゃんに凹られてても、急いで介入する様子は無く、鹿目まどかが契約しそうになった瞬間に動いたのが将にそれを証明する。

 

『鹿目まどかを助けれる強い力が欲しい』

 

 例えば、こんな願いはどうだろう?

 仮に未来の世界ではどうしようもない圧倒的な力の前に鹿目まどかが死んだとする。その際に、暁美ほむらがキュウべえにこの御願いをすれば、この願いを叶える為に鹿目まどかがまだ生きてる過去に戻る事も出来るし、同時に鹿目まどかを助ける為に必要な強い力を得れる。

 その強い力こそが、燃費良く時間を操作する力なら、合点が行く……

 

 さてと、これが本当か否か確かめる為に、ちょいっと乱入してみますかい♪

 もしこの候補①が本当ならば、私の能力を全て理解している筈……

 それに、暁美ほむらだけ私の全てを知ってるのは不公平だよね。

 

『杏子ちゃん、悪いけど乱入させて貰うね♪』

 

 乱入するとは言うが、下に降りて戦うつもりは微塵も無い。念話を杏子ちゃんにのみ繋ぐ。

 

『キュウべえの言ってたイレギュラーが乱入してきやがったから、助かる』

 

『あと、今から魔力砲撃をするから暁美ほむらから距離を取ってね♪』

 

 さぁ~て、杏子ちゃんの攻撃を軽く往(い)なす暁美ほむらを見て、私はニヤリと笑い……

 杏子ちゃんが距離を取るのを確認すると、ソウルジェムをギュッと握り締め……

 

「ティロ!!」

 

 右腕付近の空間を歪まして、巨大なマスケット銃を召喚し、右腕と一体化させる。そして、屋上の手すりから銃口だけ覗かせ、その線上に暁美ほむらを捕らえる。

 自分へと向けられる殺意に気付き、こちらを暁美ほむらは睨む。

 

「フィナーレっ!!」

 

 だけど、既に遅いよん♪

 銃口の中に眩い光が溜めこまれ、暁美ほむらへと砲撃が放たれる。

 だが放たれると同時に、彼女の姿は路地裏には無く、私のすぐ後ろに……そして、手には拳銃が有り、その銃口を私の頭部に当てている……

 ちなみに、攻撃は路地裏の誰にも被弾せず、攻撃は路地裏に大穴を空けましたぁ~カッコ笑いカッコ閉じ♪

 

「星屑アマタ……今の攻撃は何?」

 

「いやぁ~、貴方だけ私のことを知ってて不公平だと思ったから、分析をしようと思ってね♪貴方の能力は『時間操作』かしら?」

 

「どうしてそう思ったの?」

 

「私の能力は分かってるわよね?魔法の眼球で様々な場所を見る事が出来るの……現に路地裏でも、地面に配置した奴で貴方と美樹さやかの下着の色を……」

 

「ふざけないで……貴方の能力で、どうやって分かったの?」

 

 今、貴方の台詞で確信しました♪次は過去や未来を体験したかの裏付けが要るわね……

 とりあえず、鹿目まどかのことに感づいた素振りは見せずにボケつつ腹の探りあいでもするとしようかな。

 

 それと下着の件だけど、服はグレーだが、アレは純白なガールには御気に召さなかったかな?

 ちなみに、私の好みは魔法少女が持つカラーのストライプ下着かな?出来れば、ブラもそちらで揃えて頂ければ、その魔法少女に対する高感度アップだよ!!

 いや~、杏子ちゃんの下着の色をチェックする機会が昨夜の銭湯で有ったけど、赤×白のストライプで無いのが残念だよぉ~♪

 ちなみに、杏子ちゃんの下着の色に関してはCMの後っ!!

 

「そうねぇ……もし、貴方が瞬間移動系の能力者なら、スカートが出現と同時に動いてるかしら?貴方はここまで別の手段を用いて来たのでは?例えば自分以外の時間を止めたりとか……」

 

 まぁ、ここはビルの屋上なので風が強く、それで動いたと言われればそれで終わるが……

 先の馬鹿発言の布石がここで来るのだ!!

 馬鹿発言を繰り返す事で、彼女の冷静さを奪った筈。冷静さを欠いた彼女がそんな事に気付く筈が……

 

「そう……でも、ここはビルの屋上よ?風が強くこの場に居るだけでスカートが靡くのは普通じゃないかしら?」

 

 ちきしょぉおおめぇ!!お~っぱいプルンプルン!!

 総統閣下もお怒りだよ、ちきしょぉおおめぇ!!

 ここは何時もの澄ました顔で髪を掻きあげて『流石ね、星屑アマタ……私の能力を見破ったのは貴方が初めてよ』や、地面に片膝をついて『ぐふっ、流石は私の好敵手(ライバル)……一筋縄では行かないわね』的な発言しろよぉ!!

 

「まぁ、良いわ……貴方の発言より私の推測が正しかった事が分かったし、今回は見逃してあげるわ!!」

 

 下での杏子ちゃんと美樹さやかの戦闘が終わったのも有るしね……

 杏子ちゃんが暁美ほむらの出現と横槍で、戦う気が失せたみたいね……

 

「あと、暁美ほむら……貴方に聞いておきたい事があるのだけど♪」

 

「見逃してやるは私の台詞だと思うけど、そこには突っ込まないでおいてあげるわ……で、聞きたいこととは何かしら?」

 

「貴方の目的は、鹿目まどかの幸せかしら?それとも、自分の幸せ?」

 

「私の目的は……」

 

 暁美ほむらは悩む事も無く、口を動かす……

 

「まどかの幸せよ……」

 

 それは嘘偽りの無い明確な想い……

 

「そっか……じゃあ、貴方にとって私は何?」

 

「私と同じ存在……一人の女性の為に動く存在……」

 

 恐らく、彼女が言いたいのは……

 

「私達は似た者同士だから、貴方も助けたいの……」

 

 そう、私と彼女も分かり合えると……

 

 ならば、私はその友好の言葉に免じて、彼女の目指す先に貢献してあげようではないか?

 運命という濁流にたゆたい流されるだけではなく、必死に抗う彼女を助ける藁ともなれるであろう。

 この星屑アマタ様ならね♪

 

「そっか♪じゃあ、手ぇ出しなさいな♪」

 

 私の言葉に暁美ほむらは戸惑いながらも手を差し出す。

 私はその手をギュッと握り……

 

「既に私の名前を知ってたみたいだけど、‘もう一度’言わせて貰うわね♪私の名前は星屑アマタ。アマタって呼んでね♪」

 

「ありがとう、アマタ……」

 

 ありがとウサギぃ~♪魔法の言葉で楽しい~仲間がぁ~♪ぽぽぽぽ~ん♪

 とか言うKY発言が喉から出そうになったが、しっかりごっくんしたよ♪

 やったね、アマタちゃん♪KY発言防いだよ♪

 

 しっかし、無表情の暁美ほむらの表情も和らぎ、互いに友情を結ぶ握手♪実に感動的な場面だね♪

 さってと、感動のクライマックスを迎えた事だし、私は杏子ちゃんを回収して帰るとしますか♪

 

「じゃぁね~、ほむらちゃん♪もし、協力して欲しい事が有ったら言って頂戴な♪」

 

 私はそう言い残して、少し離れたビルの壁に八つ当たりをしている杏子ちゃんの所に向かうためビルの屋上より飛び降りた……

 

「お疲れ様、杏子ちゃん。美樹さやかはどうだった?」

 

「あんな奴に、こんな良い場所を任せるなんて勿体無い。今回はキュウべえの言ってたイレギュラーって奴が横槍入れやがったから、仕留め損ねたけど、次会ったら絶対に潰してやる」

 

 合流と同時に労いの言葉をかけ美樹さやかについての感想を聞くが、まだまだひよっことのこと。

 確かに魔法少女になったばかりの少女に、こんなに魔女や使い魔が頻出する良い餌場は勿体無いのは分かる。

 なんたって碌に魔法も使えない魔法少女に大量のグリーフシードなんて宝の持ち腐れだもんね。

 

「まぁ、確かに素人だったねぇ~♪ だけど、下着の色は水色ストライプで素晴らしくグレイトっ!! あそこには魔法少女上級者の匂い香が感じ―――」

 

「手前は、私が戦ってる間に何してたんだよ!!」

 

 ポップコーンとコーラを食べながら、魔法少女達の下着を見物してました♪

 なんて事は口が裂けても言えないし、言ったら言ったで、般若と化した杏子ちゃんによって私の口が裂かれるであろう……

 

「美樹さやかの観察だよ♪ 彼女のあの尋常な回復能力は、癒しの力とみたよ……」

 

「あぁ? どういう事だよ?」

 

「つまり、杏子ちゃんのあの一撃を喰らっても立ちあがって来たのは、彼女の契約時の願い事が『治癒』に関する物だった為だと思うんだよねぇ」

 

 詳しく噛み砕いて説明。

 杏子ちゃんは少々考えた後、成程と納得してくれる。

 

 そう言えば、杏子ちゃんの御願いは『話を聞いてくれ』と云う物……

 この願いの結果が魔法には現れてるように見えないのだが、気のせいだろうか?

 もしや、まだ技を隠し持ってるのかなぁ?

 

「でもね、『治癒系』の願いを叶えて貰った魔法少女は、成長しても攻撃に関しては駄目駄目だよ。現に私がそうだしね♪」

 

 私が武器として銃を選択しているのは、マミさんの影響が殆どだが、実はこれも理由として少しある。

 肉弾戦を得意としないので、返り討ちにあうのは目に見えている……

 今の美樹さやかの様に……

 あぁ、でも喰らった傷をその場で治し、戦い続ける狂戦士(バーサーカー)戦法なら、行けない事もないね♪

 ただ、そんな美しくない戦い方はしたくもないけどね♪

 

「ふ~ん、じゃあ、アイツを倒したいなら、手も足も再生できないくらいに粉々にすれば良いって事か?」

 

「うん、そうだね♪ でも、下手をすればそれでも治して襲ってくるかもだから、首をもぐのが一番かな?」

 

「それをしたら流石に死ぬだろ……」

 

 えっ? 殺しちゃ駄目なの?

 テリトリー占拠なら、殺した方が良いと思うんだけどなぁ~……

 回復した後に、また襲われたら困るのにねぇ?

 

「あぁ!! でも、あの澄ました野郎が本当に腹が立つ!! 今からゲーセン行くぞ!! 気分転換だっ!!」

 

 あっ、不機嫌になった要因はほむらちゃんの方でしたか。てっきり、美樹さやかから餌場を奪取できなかったことかと思ってた。ていうか、今からゲームセンター?もう結構遅い時間だよね?

 腕時計をチラッと見てみる、現在時刻PM9時45分……

 女子校生二人が出歩くには、ちょっと危険な時間である。プリチーな私達なら、欲求不満な狼たちに襲われる危険性もあるしね♪

 まぁ、襲ったら襲ったで、手足を引き千切って、コケシにしてやんよ♪

 

「良いよ♪ じゃあ、徹夜で遊びますかい♪」

 

「勿論だっ♪」

 

 意気投合。そしてゲームセンターに向かい、いざ店内に入ろうとした時だ……

 禍々しい気配を感じる……

 

「ちっ、魔女か!! でも、さっきの使い魔を操ってた奴じゃないな……」

 

 あっ、さっきの使い魔って何って思われる方が多いので説明ね♪

 杏子ちゃんが美樹さやかと戦闘を開始する前に、美樹さやかが魔女の使い魔を追っていたのだよ。

 使い魔が人間を食べる事で魔女へと成長するらしく、その習性を利用して、『卵を産む前に鶏を〆てどうする』と難癖をつけて、口喧嘩になった所で、戦闘を開始した訳♪

 

「こいつぁ、気配的に大物だねぇ~♪ ちと、潰しますかい?」

 

「あぁ、勿論だ。行くぞ、アマタっ!!」

 

 魔女の気配を感じる位置は偶然にも、私達が入ろうとしていたゲームセンターの隣の路地だった……

 良く目を凝らして見ると、確かにそこには空間の歪みが見え、この世と魔女の作りだした世界を繋げる入口を作りだしていた……

 

「それじゃ、暴れますかい♪」

 

「おうっ!!」

 

 私と杏子ちゃんは魔法少女の格好に変身し戦闘態勢に移行する。

 

「じゃあ、ちょっと中の確認するから、少し待ってねぇ~♪魂之眼球♪」

 

 私は5個の眼球を召喚し、それを結界内へと飛ばして、中の様子見を行う。

 今回は敵の魔女の気配が強いだけあって、念入りな調査を行う予定だ。

 

「今の眼球は何だ?」

 

 召喚されたグロテスクな眼球に引きつつも、その能力が知りたくて訪ねてくる。

 

「私の魔法だよ♪ 眼球に映す物を、自分の目で見たと同様に認識する事が出来るの♪ 結界内の状況把握、複数の敵と戦闘する際の全ての敵の認識等に用いてるわ♪」

 

「ふ~ん、別にそんなんいらねぇだろ? アタシが居るんだからさ?」

 

「そうは言っても、中は結構凄い事になってるよ?」

 

 眼球に映し出される結界内の景色。

 それは、真っ赤な夕日をバックにした広大なる草原に群れる無数の羊の姿をした使い魔と、それを追いかける1人の猟犬の姿をした魔女……

 羊は白色ではなく真っ黒な体、ピジョンブラッドのむき出し眼球、荒い鼻息と、進入させた私の眼球に対し既に好戦的な構えをしている。

 そして、それを従える猟犬は、闇夜の草原に身を隠すかのような緑を濃くしたモスグリーンに、漆黒の眼……

 こちらも、既にそのギラギラとさせた眼を私の眼球へと向ける……

 

「どうなってんだ?」

 

「にゃはははは、かなりの数の羊の姿をした使い魔に、結界内では保護色と化したボディを持つ猟犬の魔女……私が侵入させた眼球には既に気付き、荒ぶってるよ……」

 

 どれくらい荒ぶっているかを表現する為に、片足で立ち、両の手を頭の上で翼(アーチ)を描くように伸ばし、荒ぶる鷹のポーズを取ってみる。

 

「何が偵察だよ!? 気付かれてるじゃねぇかよ!!」

 

 が、ポーズに対して杏子ちゃんは反応すらせず、ばれた事にひたすら突っ込みを入れられる。

 うん、杏子ちゃんのどんどんスルースキルが上達している……

 

「う~ん、普通は気付かれないんだけどねぇ……やっぱり、それだけ上級の魔女って事なのかなぁ……」

 

「まぁ、上級つっても、アタシとアマタなら大丈夫だろ?」

 

 杏子ちゃんより、『アマタなら』とちょっぴり嬉しい発言。

 これは、少なからず私の事を評価及び信頼してくれているととっても良かろう♪

 

「そうだね♪ じゃあ、取り敢えず向こうさんも御待ちですから、片付けよっか? あっ、敵さんのグリーフシードはどうする?」

 

 これを求めて魔法少女が戦う訳であるし、共闘するならこれをどうするかは話し合っていた方が良いと判断し、先ずは持ち出す。

 

「アタシはストックが結構あるから、アマタにやるよ」

 

「気前良いねぇ♪ でも、流石に丸々貰う訳にはいかないから、杏子ちゃんのソウルジェムを一旦浄化してから貰う事にするよ♪」

 

 グリーフシード1個有れば、穢れの規模にもよるが大体2人分のソウルジェムを回復させる事は出来る。

 なので、杏子ちゃんのを回復させても問題は無いし、それにグリーフシード本体を貰えると云う事は、好きな時に自分のソウルジェムを回復させれるので、共闘の謝礼として穢れをその場で取り除いて貰うよりは有効的に用いる事が出来る。

 

「そんじゃ、行くぞ?」

 

「オッケ~♪」

 

 私と杏子ちゃんは一気に結界内へと突入し、突入と同時にこちらに突進してくる羊の群れに私は銃弾の嵐を浴びせる。

 突進に対して真っ向から向かうのは命取りなので、ここは遠距離を得意とする私が対応し……

 

「先ずは私が使い魔の殲滅をするから!! 殲滅終了まで、杏子ちゃんは一人で魔女の相手を御願い!!」

 

「分かった!!」

 

 そして、近距離戦を得意とする杏子ちゃんには、猟犬の姿を取った魔女の対応を御願いする。

 使い魔の数もあるし、今回は共闘故にパートナーに迷惑は掛けたくないので、赤字にはなりそうだが手短に決めるとしよう……

 

「それじゃ、始めますか♪」

 

 私はスカートの端と端を軽く摘まみ持ち上げる。すると、スカートの中より8本のマスケット銃が現れ、それは地面へと落下した後に銃口を地面へと突き刺す。

 地面へと突き刺さった武器の内各手1本ずつの、両手合せ計2本のマスケット銃を地面より引き抜いて、先よりもなお私に接近している羊へと構える。

 

「魂之眼球!!」

 

 次に召喚するのは先に潜入させた物に加えて、新しい眼球を。

 これで先と合わせて計36個の眼球が、私の頭上で等間隔に円を描くように配置される。

 これぞ、私がマミさんの戦闘方法を再現する為に、編み出した物である。

 360度全ての景色が私の脳内に焼き付けられ、敵の位置を厳重に事細かく把握。

 

 羊をギリギリまで引きつけて、マスケット銃の長い銃口で、先頭の羊の頭部を横殴りし、トリガーを引く。

 羊の使い魔の頭部の側面より銃弾が減り込み、的確に敵急所へと叩き込む。

 そして、銃弾を放ったマスケット銃は、投擲武器として後続の羊へと投げつけ、武器を投げた事で軽くなった手の方で、また新しいマスケット銃を引き抜く。

 その引き抜く作業中に、もう片方の手に握られたマスケット銃のトリガーを引いて攻撃し、武器を投擲。

 武器を引き抜いて、トリガーを引いて、武器を投げつけるだけの簡単な作業です♪

 嘘です、タイミング良くやらないと、確実に羊の群れに飲み込まれて死にます♪

 

 召喚した8本のマスケット銃全てを使い切っても、慌てず次のマスケット銃を足元に素早く召喚し、また攻撃を再開。

 私の方は単純作業みたいな物で済んでるけど、肝心な杏子ちゃんの方はと云いますと♪

 

 狼の魔女と激しい接近戦なう♪

 いや~、あれだけ素早い動きをする魔女に対して、あそこまで上手く立ち回って戦えるのは流石だねぇ~♪

 槍を華麗に振り回し、狼の振り下ろした爪を弾き、隙有らば槍を突き刺して魔女を傷付ける。

 

 うんうん、私も格好良い所を見せないとね♪

 

「一気に決めるよぉお♪ ティロっ!!」

 

 現在のソウルジェムの汚染度は、ほぼ皆無なので相当な魔法を放つ事が可能である。

 通常放っている物とは比べ物にならない巨大さを誇るマスケット銃を右腕に装着。

 その大きさ、口径だけで2メートル越え、全長は10メートル。あまりの巨大さに私の足が地面へと付かず、宙へと持ち上げられる形になる。

 はっきり言って、右腕だけでぶら下げられているので非常に腕の腱が痛い……

 

 冗談はさておき……

 

「フィナーレっ!!」

 

 羊の大群に放つ。マスケット銃より放たれた巨大な砲撃は、羊の使い魔を撃ち抜くではなく、飲み込む。

 白色の光に飲み込まれた黒い羊達は瞬時にその眩い光によって脱色され、存在その物を消滅させられる。

 当然、砲撃は勢いを弱める事も無く次々と後続の使い魔を消滅させてゆく。

 

 そして、直線状の使い魔を全滅させた後には、魔女の結界に突き刺さり、巨大な罅を入れて結界を揺るがす。

 うん、結界を破壊しなくて良かったよぉ……他にも、杏子ちゃんに着弾しなくて……

 

 私の砲撃の予想外の威力に、あちらこちら飛び廻って戦闘を繰り広げている杏子ちゃんも何か怒鳴ってるし……

 

「だっはっは、めんごめんご~♪ 今から、狙撃でそっちの援護入るからねぇ~♪」

 

 と親父っぽく返し、あらかた使い魔を消滅させたので、私も魔女本体の討伐に参加する。

 とはいっても、当然接近戦はする気は無い、寧ろ杏子ちゃんの邪魔にしかならないので、遠距離での銃による攻撃に専念するつもりである。

 リボルバー拳銃よりも、威力が高く命中精度の高い十字スコープ付きフリントロック式マスケット銃を1丁召喚し、魂之眼球を十字スコープに密着させて、脳内に十字マーク付きの新しいヴィジョンを呼び出す。

 

 接近戦する仲間が居る戦いなんて初めてするので、実はちょっぴり引き金を引くのが怖かったりする……

 もし、杏子ちゃんに攻撃を与えたりしたらとか思ってしまうので……引き金に掛けた指が少し震えている……

 

「アマタっ!! 今からコイツを抑えるから、トドメ頼むぞ!!」

 

 槍を多節棍へと変化させて、猟犬の魔女に絡まらせる。

 近距離で多節棍を絡ませてその場から動けなくしているので、杏子ちゃんと魔女との距離は無い。

 

「アマタぁ!! 長くは抑えれないから、一気に止めを刺してくれ!!」

 

 十字スコープを覗いてる眼球……その眼差しを猟犬へと向ける……

 

 私は十字スコープの真ん中の部分に猟犬の頭部を入れる様にマスケット銃の銃口を向けて……

 

 引き金を引いた……

 

 


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