前書き
どうしてもアマタの魔女を出したかったので、この様な形で容姿だけ書く事にしました。
魔女の結界風景は以前投稿してサイトでとある別の作者様から戴いたアイディアを使っています。
また、魔女の容姿は完全に乙一さんの暗黒童話の表紙の影響を受けてます。
というかまぁ、この作品自体がそうなんですけどね。
乙一さんの暗黒童話という本があるのですが、そちらのストーリーの影響を受けた少女がアマタとなっています。
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純白のドレスを身に纏う少女と、淡いピンク色のドレスを纏う少女。
淡いピンク色のドレスを纏う少女は涙を流し目を何度も擦る。純白の少女は鬼気たる形相で睨み、敵意を通り越して殺意を向ける。
「鹿目まどか……アンタ見てると本当にイライラするんだけど? 何時も、いじいじと悩んで、それに周りを巻き込む……はっきり言って、反吐が出んのよ!! アンタを見てっと!!」
純白の少女の非道な言葉がまどかの心を切り刻む。
「どうして……どうして、アマタちゃんはそんな酷い事を言えるの……」
純白の少女、アマタの口から次々と吐露される罵声に、まどかは堪え切れず怯えながら涙を流して尋ねる。
「アンタの所為でマミさんが死んだんだよ!? アンタが・・・アンタがぁあああああああああ!!」
アマタは何故まどかが自分が怒ってる事を理解できないのかが苛立たしく、地面を強く踏みならし、目を一杯見開き、地面に横たわっているアマタの大好きで大切な女性を指さす。
その女性は、二人とは異なり変わったドレスには身に纏っておらず、何処かの学校の指定制服を身に纏っている。
そして・・・見開かれた眼球の瞳孔が開き切っており、生気すら感じさせていなかった・・・
そんな女性の姿を見て、さらにまどかは目から涙を零し始め、何度もごめんなさいと謝り嗚咽するまどかの内罰的な姿を見て、更にアマタの逆鱗に触れる。
アマタも心の中ではまどかに当たるのは筋違いだと分かっていた。だけど、誰かに当たらずには居られなかったのだ。
命の恩人、妹の様に自分を可愛がってくれた姉のような存在。初恋の王子様、彼女の唯一の恋愛対象で傍にずっと一緒に居たいと止まない女性。
その彼女が、魔女から鹿目まどかを守る為に身代わりになって死んでしまったのだ。
マミ自身の命よりもまどかの命を優先し救ったと云うまどかへの子供の嫉妬。
それは、新しく生まれたばかりの弟や妹を母親や父親が凄く可愛がるのを、親を取られたと嫉妬し勘違いする幼い兄や姉の感情と似ている。
「鹿目まどか!! アンタがマミさんを……私のマミさんを……アンタなんか私とマミさんの前に現れなかったらよかったのに!!」
アマタは激昂しまどかの首に両手を伸ばし、ギュッと握りしめる……
何度も呪詛の様に、「アンタの所為」と攻め続けて……
「ごめんね……アマタちゃん……私の所為でマミさんを奪っちゃって……」
マミしか拠り所の無かったアマタの気持ちが痛い程まどかには分かった。
迫り来る魔女達の前に死んで逝った他の魔法少女達。その中にはまどかの友人も居た。でも、彼女にはその友人以外にも拠り所が有ったから、何とか立ち直りこれまで以上に魔女の退治と皆を守る事に使命を燃やせた。
けど、アマタにはその拠り所が一切ないのだ……
自分がヘマをして奪ってしまったと云う内罰的な気持ちに押し潰され、自分はどうなっても良いと諦め、まどかは全てをアマタに委ねる事にした。
首を絞められた事で、苦しみに耐えきれず、まどかの顔は次第に醜く歪み始め……
最後にはゴキャッという鈍い音と共に、まどかの目が床に転がっている少女と同じように見開かれて、生命活動を停止する。
彼女の首にぶら下がっている宝石も、少女の生命活動の停止と共に輝きを無くす。
「殺してやった……殺したのよ……マミさんの仇を取ったの……ねぇ、マミさん起きてよ……ねぇ、目を開けてよ!!」
アマタは殺したまどかの首から手を離し、その場に寝かせて、マミの側に歩み寄って必死に体を揺さぶる。
「また、またなのね……貴方はどうして……」
そんなアマタの姿が、何度も何度も世界をやり直してまどかを救おうとする自分の姿に、何処か重なりを感じるほむら。
まどかが契約をした時点でこの世界はもう駄目だと判断した為、この時間軸に関しては彼女達に関わる事を止めて情報収集に精を出していた。
だから、彼女がまどかを手に掛けるのには手を出さなかった。手を出してまどかを助けた所で、何も変わらない。
まどかとの約束を守る事には繋がらないからだ。
だが、まどかの顔が醜く歪み死んで逝く様には、当然ほむらにとってもキツイ物は有った。
だけど、目の前の少女はもっと悲しい思いをしている……そう考えると涙すら出て来る……同じように一人の少女の御願いの為に動いている魔法少女として……人間として……
「あれぇ、暁美ほむらじゃん? どうしたのぉ? あぁ~、そぉかぁ~……アンタもコイツと仲良かったんだよね? だから、マミさんが目を覚まさないんだぁ……まだ、仇を取れてないから、マミさんが目を覚まさないんだよね? 待っててねマミさん……今、コイツを殺して助けてあげますから」
目の前のアマタの胸元のソウルジェムは純白の服とは相反してドロドロしたタールの様な黒さを放っており、既にソウルジェムには罅が全面に奔りちょっとした衝撃で砕けそうだった。
その衝撃がアマタが叫ぶ事で奔り、ガラスの割れる澄んだ音と共に空間には暴風と共に闇が溢れ支配を開始する。
俗に言う魔女化である。
先程まで居た場所は一瞬にして色彩豊かな色で花や緑に溢れたメルヘンなカラフルな世界へと変貌する。
その一方で、ほむらの眼前に居るのは、深紅の椅子に座るツインテールの髪をした少女。
気になる事は、結界内は色が飽和する綺麗な世界でありながら、その結界を生み出した存在は黒一色で塗り潰されていたのだ……
また、世界に異彩を放っていたのが、魔女の後ろに居る首を吊った二つの死体と、山積みにされたマミの映像だけが流れる無数のブラウン管テレビ。
そして、自分達の主である魔女よりも、その異彩を守ろうと鎮座する犬顔の執事、眼球を咥えた烏、全身に目玉のような模様を持つアケビコノハの幼虫達。
「アマタ……ごめんなさい……」
その言葉はせめてもの懺悔……
そして、少女だった者への手向けだった……
<魔女及び使い魔の説明>
眼球の魔女 『ガンカ』(眼窩(眼球を入れる窪みの事)より)
象徴『台覧』 『※台覧:高貴な人間が物を見る事』
世界を見る為に様々な物を失い、最後には周りが見えなくなり何もかもを壊してしまう悲劇のヒロイン。
人の愛には敏感で、怨み妬みそれを割こうとする傾向が有る。
盲導犬の使い魔 『ウィルヘルム』(盲導犬の創始者ウィルヘルム・クラインより)
眼の見えない主の身の回りをこなす執事。
主の暴挙には何時も頭を悩ませている。
烏の使い魔 『テノン』(テノン嚢より)
少女に世界を見て貰う為に人の子供の眼球を抉り奪う使い魔。
パン屋の子供、洗濯屋の子供、政治家の子供と色んな子供の眼球を奪い主に献上をしている。
アケビコノハの使い魔 『オウハン』(黄斑より)
「次の魔法少女との戦いが終わったら、成長して蛾の魔女になるんだ」と周りの魔女や使い魔に豪語している使い魔。
見事それは死亡フラグとなり、魔法少女達に踏みつぶされて羽化する事無く一生を終える。