屋上、風に吹かれ靡くスカートと髪……私は目を瞑り、色々と思いふける……
もし、今回の作戦が成功しなかったらどうなるのかと……
私一人が独断行動を取っている……
万が一、それが原因で最悪な結果を迎えた場合は、一斉に皆から村八分されてしまう恐れを……
美樹さやかは、杏子ちゃんの友達でまどかちゃんの親友だ。
ほむらちゃんにとっては、未来を掴む為のピースの一つになりうるかもしれない存在。
上条恭介にとっては、大事な大事な存在……
でも、私にとっては、どうでも良い存在。寧ろ、敵として認識される存在……
ほむらちゃんや、まどかちゃん、杏子ちゃんの為に助けてやる存在……
もし、彼女達が居なければ、その場で容赦なく魔女を殺し、グリーフシードとして私の糧(かて)にしているだろう。
「何、悩んでんだ?」
そんな悩む私の隣には、何時の間にか杏子ちゃんの姿。
口にはロリポップを咥え、学校制服を身に纏う彼女は、一昔前のスケバンって感じがする。
「ちょっとね。ねぇ、杏子ちゃんは、‘もし’、もしだよ……皆と一緒の事をしろって言われても、自分の案が一番良いと思うとしたらどうする? それで、独断専行したらどうなると思う?」
「さやかの事か?」
やっぱり、このタイミングで言うと、美樹さやかに関する作戦って一発でバレちゃうね……
「さぁ、どうかな? やっぱり、皆から責められるかもな……」
ですよね……
「でもな……悔いは出来ねぇだろ? もし、皆に合わせて失敗したら、自分の信じた事をすれば良かったって、一生悔やんじまう。だから……自分の信じる道を進むだけだ……っていうか、誰だっけな? アタシに散々説法説いた奴は?」
ニヤリと犬歯を出して、笑いながら意地悪に聞いて来る。
「あははは、誰だったかな? 私は覚えてないなぁ~♪ いやぁ~、教会の神父さんの娘さんに説法説くなんて、よっぽど徳の高い方なんだろうねぇ♪」
なので、惚けつつ返す。当然、突っ込みが返って来るだろうけどね……
「アマタだろ!! アタシだって、先日、アマタや暁美ほむらの奴の言う事を聞かずに、動いた事を確かに後悔はしてる。だけど、もし、アマタ達の作戦でさやかが助からなかったら、もっと悔やんでたと思う」
ほら、返って来た……杏子ちゃんとほむらちゃんは絶対に突っ込み入れて来るもんな……
「だから、もし、アマタが良いと思う事が有るのなら、それを実行すれば良いさ」
「うん、そうするよ……じゃあ、悪いけど、私抜きで作戦を進めててくれないかな?」
「分かった。だけど、アタシ達がさやかを助け終わった後に、のこのことやって来たら、学食奢れよ?」
「御財布に相談しつつ善処するよ♪」
こっちに来てから、食費とか2倍以上に膨れ上がってるし、銭湯の御金、コインランドリーで服を洗濯及び乾燥させる御金、エトセトラエトセトラ……と、予想以上の出費が嵩み、色々と財政を圧迫している……
でも、その代わりに、御金で買えない程に大切な友達や、思い出を彼女達から沢山貰った。
そして、これからも彼女達から沢山の思い出を貰うだろう……
『私よ。今から、美樹さやかの魔女の元に向かうわよ。アマタと佐倉杏子は下駄箱に来て頂戴』
チャイムの鳴る音と共に、ほむらちゃんより下駄箱に来るようにと念話が入る。
『分かった。それと、アマタだけど、アタシがちょっと別に行動するように頼んでるから、アタシ達だけで行くぞ』
ほむらちゃんに独断行動をする事を告げようとするが、杏子ちゃんが自分が依頼したと言って、私が行動しやすいように擁護してくれる。
『貴方が!? 一体何をするように頼んだの?』
物凄く意外そうな反応。というか、このほむらちゃんの反応の仕方は、私が何かを仕出かすのを知ってたみたいだね。
やっぱり、あの教室の騒ぎの一件で気付かれてるね……でも、何をするのか全く把握できてないって事は、キュウべえは一つも口を割ってないみたいだね。
感心感心♪
『悪いけど、そいつは言えねぇ。だけど、絶対に悪い事にはならないから、アタシを信じな』
『分かったわ。アマタ、頼んだわよ?』
『任しときなさい♪ 大船(タイタニック)に乗ったつもりでいなさいな♪』
『『『それ、沈没するっ!!』』』
一斉に三人に突っ込まれる……
って、あれ? まどかちゃんにも念話繋がってたんだ……
『おりょ? じゃあ、泥船だっけ?』
『幸先心配になって来てわ……』
うん、きっとほむらちゃんは、今頃頭のカチューシャの端の部分付近を、拳でグリグリしながら頭痛を凝り解してるに違いないわね……
『まぁ、良いわ。じゃあ、早く来て頂戴ね』
念話が切れると、杏子ちゃんは八重歯をチラつかした笑顔を再び私に向ける。
「杏子ちゃん、ありがとね」
「良いってことよ。それと……昨日はごめんな……怪我とかさせて……」
昨日? あぁ、昨日の杏子ちゃんとの戦闘の事か♪
「気にしなくて良いよ♪ もし、気にしてるなら今晩にでも体で払ってよ♪」
「ばっ!? 人が真面目に言ってるのに、ふざけて返すな!!」
顔を真っ赤にして叫び返して来る。
む~、何を想像しちゃって顔を真っ赤にしちゃってるのかなぁ~♪
「にひひひ、私は何時も真面目だよ♪ あっ、そうだ♪ 美樹さやかを救った暁には、美樹さやかにも体で払って貰うとしようかな♪ あぁ、見えてもあの子は着痩せしてそうな感じだし♪ そして、あぁ云う性格の子ほど乱れると―――」
「だぁあああああああ!? アタシはもう行くからな!!」
私の発言を大声で打ち切り、顔を真っ赤にして屋上から飛び降りる杏子ちゃん。
意外と杏子ちゃんは、この手のトークは苦手みたいだね♪ 初(うぶ)で可愛いなぁ♪
さてと、顔を真っ赤にした杏子ちゃんは、下駄箱でほむらちゃん達と合流し、美樹さやかの魔女が引き籠っている結界の方へ向かい始めたから、私もそろそろ上条恭介と向かうとしようかな♪
『へろ~へろ~、上条恭介君や? 聞こえる~? 至急、屋上に来なさい♪』
と、念話を送る。
また、教室に呼び出しに向かっても良かったけど、また騒ぎになったら困るしね♪
私が念話で呼び出して2分後には屋上のドアを勢い良く開けて、屋上へ出て来る上条恭介の姿。
このキューティーアマタちゃんに発情してる所為か、ぜぇぜぇと荒い息を……
冗談冗談♪ 恐らく荒い息の理由は、教室からここまで走って来たからかな?
意外とこの学校が大きい事も有り、教室から屋上までの距離が結構有るからね~♪ 階段も登らないといけないし♪
「早い御出ましありがとね♪」
「早く、さやかを助けに行こう!!」
「その前に、上条恭介。貴方に今回の作戦内容を話しておくよ。貴方には、先ず美樹さやかが魔女になったモノに対峙して貰う必要が有るの。相手は例え貴方であろうとも攻撃してくる可能性が高い。いや、貴方だからこそ攻撃する可能性も有る……貴方は非常に危険に晒されるけど、覚悟は出来てる?」
「僕がさやかを魔女にしてしまったようなものだ。僕はさやかに殺されても構わないつもりでいる。だから、そんな事は気にしない」
さっきの台詞の後半部の、上条恭介だからこそ攻撃するは、これから起きる事に対しての半分脅しを含んだ物である。そして、覚悟して欲しいと云う意味も孕む。
けど、私の思いは杞憂だったみたいね。これなら、作戦内容を簡単に話すだけで、現状は問題無いみたいね……
まぁ、口では言ってても、実際に会うとどうなるかは分からないけど……
「美樹さやかの魔女に対峙して、貴方には彼女へ自分の思いを告げて欲しいの……もし、運が良ければ美樹さやかは魔女ではなくなり、元の生活を取り戻せると思う……そもそも、魔女から元の姿に戻れた魔法少女は一人だけで、それは超レアなケースだったって事だけは頭に入れておいてね」
「つまり、100%助けれるって訳じゃないんだね……」
「そうよ。あと、貴方は私が守るから、美樹さやかの魔女に呼び掛ける事に専念して良いわよ。じゃあ、行きましょうか、上条恭介……美樹さやかを救いに……」
「うんっ!!」
<~オマケの没ネタ~>
「大丈夫、まどかは美樹さやかの魔女に呼び続ける事にだけ専念すればいいわ。まどかは私が守るから」
「ほむらちゃん……」
「さぁ、ここに入って頂戴」
そう言って、自分の腕に付けているラウンドシールドを指刺すほむら。
彼女のラウンドシールドは異空間と繋がっており、様々な物質を収納出来るようになっている。
「えっ!?」
そんな彼女の行為に驚き、一歩後ずさるまどか。
誰だって、安全とは云えど、そんな場所に収納されるのは御免である。
いや、中には爆弾や銃火器がわんさか入っている。それを知ってる人間なら、魔女に対峙する以上に危険と判断するので、尚更御免である。
「さぁ、早く!! まどか!! ここなら、安全に美樹さやかに呼びかける事が出来るわ」
「わ、私……早く杏子ちゃんを探さないと。ごめんね、ほむらちゃん」
「待って!! まどかぁ……」
明後日の方向を向いて、何処かへと走り出すまどかを、地面に膝を着けて必死に泣き落としモードで呼びとめようとするほむら。
<~オマケの没ネタ~>
ってのを、一時期思いついてましたが、当然の如く没にしました。
さやかの魔女がポテチ食べるよりは有り得そうなのに、何故没にしたんだろう……