食事中の会話は、美樹さやかを救う会話に関して。
当然、口を用いた会話で話すと、他の人間に聞かれてしまう恐れがあるので、念話での会話となる。
まぁ、念話だと念話でキュウべえに聞かれてしまい、変な方向に作戦を持って行かれてしまう恐れも有るのだが、致し方ない。
ほむらちゃんの過去の体験で、まどかちゃんと契約する為に、ワルプルギスの夜が来るまでにほむらちゃんを除く全ての魔法少女を、情報等を与えずに魔女にぶつけたり、魔法少女の秘密を突然暴露して魔女化させたりと、様々な悪意で死に至らしめたりした事も有るらしい。
その時に、キュウべえが敢えてほむらちゃんだけ生かしてた理由は、ワルプルギスの夜が攻めて来た時に、魔法少女が誰も居ないよりも、親友が魔法少女をやってて危険な状況下に置かれている方が契約を取り易いかららしい。
『僕も混ぜて貰えないかな?』
当然、事象とは心配する方へと進む物である。
案の定、危惧していた通り、キュウべえが念話へ乱入して来るものの、この闖入者を当然快く迎える人物は居らず。
『帰れ、何しに来た?』
以前以上に刺々しく言い放つ杏子ちゃんに、声が聞こえた途端に少し怯えるまどかちゃん。
『僕が少しでも助けてあげれないかと思ってね。僕なりに他の知り合いに聞いて廻って調べたけど、過去に1件だけ助かった記録が有るらしいよ』
『『本当!?』』/『本当か!?』
そのキュウべえの言葉に私を含めて、皆一様に喜びを見せるが、ほむらちゃんだけは全くその様子を見せない。
恐らく、理由としては、そのケースの条件の方であろう。
『まどかが魔法少女になるってのは駄目よ?』
現に、私の思ってた通りの突っ込みを入れる。
幾ら美樹さやかが助かったとしても、まどかちゃんが魔法少女になったのでは本末転倒である。
『勿論、僕としても、そっちの方が手っ取り早くて良いんだけどね』
『もったいぶらずに、さっさと教えなさい』
キュウべえの言い方から、契約以外で魔女から魔法少女に戻った者が居ると云うのが分かる。
なので、焦らさずさっさと言えと突っ込みを入れる。
『うん、実はね。救った魔法少女の能力が『言霊』と呼ばれる非常にレアな魔法だったんだ』
言霊とは、日本において言葉に宿ると信じられた霊的な力のことで、言葉自体が魔法で有り能力を持つと云う物。
例えば、『燃えろ』と発言すれば、対象物を燃やしたりする事を可能とする。
恐らく、この魔法が手に入りそうな契約と云えば、言葉に関する契約だねぇ……
『やっぱり、役に立たないわね……失せなさい……』/『だぁ~!!そんな能力有る訳無いだろ!!』
案の定、結局は役に立たない情報だったので、杏子ちゃんとほむらちゃんよりヤジが飛ぶ。
でも、言霊ねぇ~……杏子ちゃんの契約が『父親の話を皆に聞いて欲しい』って感じだったから、杏子ちゃんが扱えても良さそうな魔法だよねぇ~♪
もしかして、まだ杏子ちゃんは魔法少女として成長段階にあるのかなぁ?
だから、能力が……って、そんな訳無いよね。だって、初めから契約に沿った魔法や能力は使えるんだから。
でも、この間の委員長の魔女戦の時に、キュウべえが新しい使い魔の可能性を言ってたよね?
他にも、魔法少女が召喚できる武器は、成長と共に増える事も有るしね……
私が最初に使ってた武器は拳銃だけど、マミさんと出会った事でマスケット銃、ライフル銃と次々とヴァリエーションも増えたからね。
ただ、銃以外の刀とか槍とかは、幾ら召喚しようと頑張っても召喚が出来ないんだけどね……
あぁ、折角希望が見えて来たと思ったのにぃ……
絶望したっ!!この、役立たずのマスコットキャラに絶望したっ!!
『まぁまぁ、ちゃんと最後まで話を聞きたまえ。君達の悪い癖だよ?』
『じゃあ、最初から全部事を話しなさいよ。アンタの悪い癖だよ?』
『それは君達が聞いて来ないからだよ?僕だって、聞かれない事をペラペラ喋る趣味もないしね』
ああ言えばこう言う、こう言えばああ言う……今、ここが学食じゃなかったら殺してる所だよ……
他の人が食べてる料理の中に、キュウべえの生肉が混入して、それが見えずに間違えて食べてしまった生徒達が、食中毒とか起こしたら困るからね。
学校の食堂の方達に多大なご迷惑をかけちゃう恐れがある訳だしね♪
そう言えば、前も言ってたけど、キュウべえって食用なのかな?そして、生食は出来るのかなぁ?
ちっ!!作者がガミガミ言い始めたから、ここでこの話は終わり♪
私の物語りなんだから、私の自由に進めて何が悪いのかしら?
苛立ちを抑えつつ、御茶を一啜り。
『最初にその子が、普通に魔法少女に戻れって言っても魔女は魔法少女に戻らなかったけど、別の方法で魔法少女に戻したらしいんだ』
キュウべえはピジョンブラッドの目を閉じ……
『それは、【感情を取り戻せ】って命令だったんだよ』
その言葉に、今から自分達が行う作戦の目的と似ていると、喜びを顔に出す杏子ちゃんとまどかちゃん。
ちなみに、ほむらちゃんは、作戦成功までは笑顔は見せれない様子。
そして肝心な私は、全く別の事を考えている。
以前も言ったが、美樹さやかを元に戻す事が出来るとすれば、魔女化した時に放出したエネルギーと同レベルのエネルギーを、何処からかかき集めて来る必要がある……
感情の起伏だけで、同エネルギーが集められる可能性は当然ないと思う。希望が絶望に満ちた時と同レベルのエネルギーが必要な筈だ。
キュウべえは口にしてないが、恐らく、その魔女を魔法少女に戻した魔法少女は、その命令を実行する際に相当なエネルギーを必要とした筈だ。
しかし、何処から同レベルのエネルギーを収集しようかねぇ?
あれ?同レベル?
それって、もしかして……
私はちょっと思い浮かぶ事が出来たので、キュウべえと私のみの念話のチャンネルを開く。
皆に聞かれてない方が、好き勝手に出来るからと云うのも有るが、折角皆が意気揚々としている雰囲気を壊したくないからってのが本音かな?
『ねぇ、キュウべえ。思春期の少女の感情の、希望と絶望の相転移がエネルギーを産み出すのでしょ?』
『そうだよ。常に目減りしている宇宙の枯渇を防ぐ為のエネルギーさ。宇宙のダークエネルギーにも限界があるからね』
ダークエネルギーとは、真空エネルギーやクインテッセンスや反重力性質(ファントム)物質等の事であり、まだ未知のエネルギーの一つである。
宇宙誕生後に一役買ったこれ等のエネルギーは、何も無かった宇宙空間に、有を生み出したエネルギーである。
これこそが、アインシュタインの質量保存の法則である『E=mc^2』を打ち破るエネルギーである。
だけど、有を生み続ければ、当然無と云う列車は消滅する運命の路線へ乗せられる。無の存在していた場所には何かしらの有が陣取ってしまう。
それによって、無の空間と一緒にダークエネルギーも消滅してしまい、宇宙に残されるのは何の役にも立たないどころか、有害にしかならないゴミの有だけが残る羽目になる。
キュウべえ達は、それを危惧して目減りしない新しいエネルギーを求めた結果、人間達と出会い、その人間達の感情と云う物を利用する事にしたのだ。
えっ?何でこんな専門的な事を私が知ってるのかって?
そんなん、作者に文句言ってよ!!
『じゃあさぁ、逆に絶望が希望に変わる時は、エネルギーを産み出すのかなぁ?』
『どうかなぁ?魔法少女達の絶望が希望に変わるなんて所を、僕は一度も見た事がないから、エネルギーを産み出すか、それとも世界のエネルギーを飲み込むかは僕には見当もつかないよ。でも、結局は魔女化と逆の原理だから、同レベルのエネルギーを放出するなり吸収するなりはしそうだね。それが出来ればの話だけどね。魔女に話が通用するなんて事自体が、有り得ないし』
ふ~ん、でも、もしかしたら……まどかちゃんに呼び続けて貰うより、私が新しく思い浮かんだこっちの方が、作戦成功率は高いかもしれないね……
『キュウべえ、ちょっと面白い事を思いついちゃったから♪実行するね♪それと、今の質問は皆に内緒にしなさいよ♪もし、話したら……』
再度御茶で、一息つき……
『眼球を刳り抜くからね?』
スカートのポケットより銀色のスプーンをチラつかせた……
食事を早々に終え、図書室で本読んで来ると皆に伝えて私はとある場所を目指す。
私の新しい作戦を満たすには3つの条件が必要となる。もし、この世に神様なんて物が居るなら、その全ての条件を叶えて欲しい物だよ。
奇跡も魔法も有るなら、私を中心に世界が廻りなさい!!
既に目当ての人物が居る位置は魂之眼球で確認済みである。それはとある教室のとある男子生徒。
その男子生徒が居る教室の扉の前に着くと、一気に扉をスライドし、教室の中に入る。
クラスの生徒全員は、闖入者である私へと一斉に視線を向けられ、一部の生徒からは「誰、あの子?もしかして、先輩?」と囁かれる。
恐らく、先輩による生意気な後輩への制裁ではないかと勘違いされているのであろうか、私の進行進路に居る生徒は一斉に脇へと素早く避ける。
『雀の子 そこのけそこのけ アマタ様が通る♪』 ~アマタ様~
と、その光景を元に心の中で一句詠みつつ、御目当ての人物こと上条恭介の元へと一直線に向かう。
その肝心な上条恭介は、「目玉焼きとは、固焼きですか?半熟ですか?ハイ上条君!!」 と他の男子生徒(モブキャラ)より謎の質問攻めを喰らっている。
「どっちでも良いだろ?中沢……」
うん、物凄くどうでも良いと思った。
「そう、どっちでも良いんだよぉおおおおおおおお!!何で、毎回毎回授業中に当てられないといけないんだよ!?しかも、上条が退院する前日は何だったと思う!?」
頭を両手で抱え粗ぶるモブキャラこと中沢。実に愉快な男子生徒ねぇ……
ていうか、授業中に何でそんな質問ばかりされてるの……
「さぁ?」
当然、上条恭介は入院しているので何を質問されたかは分かる筈もなく、首を傾げる。
「紅茶とは、ティーカップですか?マグカップですか?ハイ上条君!!」
そして、そんな回答を待っていたかのように、上条恭介が首を傾げた直後に叫ぶ中沢。
しかし、これは聞き捨てならない質問だねぇ?
「本当に紅茶が好きな人なら、常識的に考えてティーカップでしょ?」
紅茶好きの私としては、許せない見過ごせない質問なので、会話に乱入し答える。
「そう、どっちでも……って、え~っと、どちら様でしょうか?」
上条恭介が先と同様に「さぁ?」と返して来ると頭の中に有ったらしく、即座に返すが、途中で明らかに上条恭介の声ではなかった事と目の前の私に気付いて、遠慮がちに尋ねて来る。
「気にしちゃ駄目よ。上条恭介、ちょっと話が有るわ。ツラを貸しなさい」
私の上条恭介の呼び出しに、騒然とするクラス。
特に上条の事が好きなブルジョワが、一番慌てた様子を見せる。
「ここじゃあ、駄目なのかな?」
「美樹さやかに関する話よ……今日彼女が学校に来てないでしょ?もし、彼女に迷惑が掛かっても良いなら、ここで大きな声で話してあげるわ」
明らかに私に対する警戒心全開なので、説得に時間をかけるのも面倒臭いし、ここは美樹さやかを使う事にしよう。
私は、上条恭介の耳元に顔を近づけて、小さな声で囁く♪
ふっふっふ、何か悪役っぽくて良いよね♪
「分かった……中沢、続きはまた後でな」
「お、おう……」
にこやかな私の笑みとは反対に、真剣な顔、少々敵意を含んだ眼差しで私を見て来る上条恭介。
まぁ、別に私に敵意を向けるのは構わないんだけどね?
さってっと、取り敢えずは誰にも話を聞かれそうにない屋上に連れ出すとしようか♪
「じゃあ、ついて来てくれる♪」
教室から上条恭介を連れ出す私に何か言いたそうなブルジョワだが、その勇気がないのか悔しそうに俯くだけである。
これが、美樹さやかだったら絶対に噛みついて来そうなんだけどねぇ?
ちなみに、上条恭介はそんなブルジョワの様子に気付く事もなく、私の背中に視線を向け続け、まるで子鴨の様に親鴨(わたし)の後を歩いて来る。
ブルジョワに気付かないなんて、美樹さやかの事が相当心配なのかな?
まぁ、それは私にとっちゃ好都合♪更に、異性として好意を向けてくれば尚更好都合♪
あっ、そういえば皆にはまだ私の新しい作戦を話して無かったっけ?
あと少しで、屋上に着くから、新しい作戦についてはちょっと待ってね♪
今は、屋上へ上がる階段を登ってる最中だから♪
さぁて、階段を上り終えたから、目の前には屋上へと通じる扉が見えたよ♪
私はその扉に手をかけて、屋上へと出た……
「さぁ、話してくれ!?さやかに何をしたんだ!?」
屋上に出るや否や、先程まで静かだった上条恭介は口を開く。
てかさぁ、私が美樹さやかに何か仕出かした様に取られてるんだけど……
「美樹さやかの事を凄く心配してるんだね?やっぱり、幼馴染だから?」
まぁ、良っか♪取り敢えず、私の作戦が実行出来るかをチェックしないとね♪
以前聞いたほむらちゃんの過去の情報では、上条恭介と美樹さやかが付き会ってた世界も有るらしいね♪
えっ?何が言いたいのかって?
簡単な話だけどね、希望が絶望に変わる時のエネルギーと絶望が希望に変わる時に移動したり、生まれるエネルギー量は、相反するだけに、同じじゃないかなって、私は思ってるの。
キュウべえの話で魔法少女から魔女へは一方通行ではなく、魔法少女へ戻って来る事が可能である事が分かった。
なら、絶望して魔女になった美樹さやかを幸せにすることで、魔法少女に戻せるのではないのかと私は睨んだ。
つまり、上条恭介が美樹さやかの事が本当に好きであり、人ではなくなっていても美樹さやかを愛せるのであれば、彼を魔女の前に連れて行って告白させようと考えているのだ。
まぁ、あんまり好きじゃなくても、無理やり告白させれば良いや♪
でも、無理やりの場合は、元に戻ったとしても、それが表面上の同様と美樹さやかが知ると、また魔女化しそうな気もするなぁ……
あっ♪ソウルジェムを私か杏子ちゃんが預かって、濁りを見せたら即浄化すれば良っか♪
あぁ、そうそう安心して♪もし、成功しなくても、上条恭介の方の記憶は操作して、何も無かった事にするから♪
「何で僕とさやかが幼馴染の事を知ってるんだ?」
「何でだろうねぇ♪」
「人をからかうのは好い加減にしろ!!」
おぉ、こわ~いこわ~い♪上条君激怒だよぉ♪
「からかってはいないよ?でさぁ、美樹さやかの事はどう思ってんのさ?」
手を軽く振りながら、軽く尋ねてみる。
「さやかは、大事な幼馴染だ」
出たぁ……恋愛アニメとかで定番な優柔不断な男主人公の迷台詞……
女の子が、一番聞きたくない回答だよねぇ~♪
そして、男友人キャラ達が切れやすい台詞♪
「ふ~ん?恋人とかじゃないんだ?」
「違う……確かにさやかの事は好きだけど……って、今はそんな話じゃないだろ!!」
おっ、今本音ポロッと漏らしたぞ♪
警戒心で緊張してた所為か、今本音をポロッと♪
「にゃははは~♪美樹さやかの事が異性として好きなの?さっきの、志筑仁美って子が貴方に好意を向けてたと思うけど?あっちの子は良いの?先日仲良く下校してけど?」
「どうして、君はそんな事まで知ってるんだ?僕に何を求めてるんだ!?そして、何が言いたいんだ!?」
アンタが、「僕は美樹さやかの事が世界で一番好きだ!!愛してる!!」って言う事だよ!!
「くすくす、貴方の思いをちょっと知りたいだけ。じゃあ、直球に聞くね?美樹さやかと志筑仁美どっちが好き?あっ、勿論異性としてだよ?友達としてとか答えたら、眼球抉るから♪」
ここで、さっきの教室の中沢が言ってた台詞をテンプレにして、「彼女にするなら、美樹さやかですか?志筑仁美ですか?ハイ上条君!!」って言おうかと思ったが、絶対に雰囲気が悪化しそうな気がしたので止めた……
というか、そんな聞き方をした日には、もう何を聞いても、答えてくれなくなりそうな気がしたので……
「僕は……さやかが好きだ……」
彼は私の望んだ通りに答えた……神はまだ、私達を見捨てた訳じゃなかった……
見滝原のさやかちゃんが
あるとき魔女になりました
そこへ親切な魔法少女が
彼氏と恋を運んできました
~マザーグースのLittle Jenny Wren fell sickより一部改竄~