魔法少女あまた☆マギカ   作:星屑アマタ

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十四話眼 信じて

 杏子ちゃんが今朝に「美樹さやかと話して来る」と言って、御出掛け……

 夕方まで待つ物の、帰って来る様子がないので、少しずつ心配になり始める。

 恐らく昨日アレ程の事が有ったから、流石に戦闘は無いと思うが、心配になって探しに行こうかと考えた矢先……ほむらちゃんより念話でラブコールが入る。

 そんな訳で、現在私はハンバーガーショップに上機嫌で居る訳だ♪

 

「ハンバーガーショーップ♪ハンバーガーショーップ♪熱い戦ぃ~♪でぇ、ほむらちゃん、私を呼んで何だい?」

 

 珍しくほむらちゃんに、電波な客と店員の熱い戦いが広げられると、もっぱら評判のハンバーガーショップに来いと呼びだされたのだ……

 

「えぇ、昨日のキュウべえの予想外の行動も有ったし、貴方には私の秘密と本当の目的を話しておこうかと思ったの」

 

「あぁ、未来から来たって奴?」

 

 万が一他の人間や生物に聞かれると拙いので、ほむらちゃんの耳元に顔を近付け、そっと尋ねる。

 

「気付いてたの?」

 

「うん♪っていうか、ほむらちゃんの行動を見てたら、鋭い人間なら簡単に気付けるよ。キュウべえとの契約内容とかもね♪」

 

「流石ね……どうして、そこまで分かったのか詳しく教えてくれる?」

 

 おぉ、私の想像がまさかの大的中だよぉ~♪

 やったね、アマタちゃん♪

 

「先ずはほむらちゃんの『時間』に関する能力だね。魔法少女の使う魔法は本人の願いによる傾向が大きい。つまり、ほむらちゃんは時間に関係する御願いをした事が、能力が分かった時点で判明する」

 

「えぇ、そこまでは簡単に思いつくでしょうね。私の契約内容はどうしてかしら?」

 

 ほむらちゃんが、本当に知りたいのはここからだろう。

 だから、懇切丁寧に説明する事にしよう。

 

「時間を止める程の魔法を発動して、何故ソウルジェムの負担が少ないのかが今回の鍵よ」

 

「ソウルジェムの負担?」

 

 今一、何の事か理解出来ていないほむらちゃん。

 どうやら、ほむらちゃんの能力を当てたのは、この時間軸の私が初めてみたいね……

 私は、ほむらちゃんが奢ってくれたウーロン茶(Mサイズ)のストローを口に加え、喉の渇きを潤す。

 そして、再び開口する。

 

「そう。私の使い魔召喚ですら、かなりの負担が掛かり穢れが発生する。なのに、時間を止めると云う大規模な魔法をあれだけ発生させておいて、ソウルジェムが大丈夫な筈がないでしょ?だから、私は考えたの……」

 

 再びストローを咥えてウーロン茶を飲む。

 

「ほむらちゃんの能力は、私では想像できない強大な何かへ立ち向かう為に、与えられた物ではないかと……次に、まどかちゃんにほむらちゃんは御執心でしょ♪これより、ほむらちゃんはまどかちゃんを、何かしらの脅威から守る為に能力を手にしたと推測できる」

 

「でも、それだと、私の能力は時間と関係しないわよ?」

 

「うん、私も確かにそこで少し引っ掛かったけど……もし、ほむらちゃんが契約する時に、その強大な何かの力の前に、まどかちゃんが死んでたとしたらどうする?」

 

 推理がかなり的中していたのであろう、ほむらちゃんが愕然とする。

 

「まどかちゃんが死んだ上で『まどかちゃんを守る力が欲しい』と願ったらどうなると思う?」

 

「素晴らしい推測力ね……でも、そんな馬鹿げた考えに、どうして確信持てるの?普通の人間なら、思いついてもあり得ないと切って捨てると思うけど?」

 

「にゃはぁ~、何言ってるの?魔法少女って存在になった時点で、普通って概念は捨ててるよ♪魔法少女って存在自体、普通じゃないでしょ?」

 

「それもそうね」

 

 私の言葉に可笑しそうに笑う。

 

「それで、未来の事をちょっち教えてくれない?私はほむらちゃんが居た時間軸ではどうなってたの?」

 

「話すけど、今から言う事を約束できる?1つ目、決して他人には話さない。例え、それが佐倉杏子であっても。2つ目、決して話を聞いても取り乱したりしない」

 

「えぇ、約束するわ」

 

 そして……ほむらちゃんは次々と衝撃の事実を話し始める。

 先ず、ほむらちゃんの能力は砂時計の中の砂の流れを止めることで、時間を止めると云う物。この能力が発動できるのは砂時計の中に砂が落ちている間だけらしい。砂時計の砂は1カ月で落ち切り、落ち切った後は時を止める事が出来なくなる。

 だけど、砂が落ち切った時に限り、砂時計を逆さにして時間をきっちり1カ月戻す事が出来るらしい。また、逆さにする事で能力が再び使えるようになると……

 恐らく、杏子ちゃんにワルプルギスの夜の後は任せると言ったのは、ここに有るのだろう……魔法が使えない魔法少女に魔女を倒す術はないからね……

 

 そして、ほむらちゃんの目的は最大の強敵であるワルプルギスの夜を討伐するまでの間にまどかちゃんをキュウべえと契約させないと云う事。

 

 現時点でのほむらちゃんは18回の終焉を見た存在であり、その内の7回程私が出現したらしい。

 そして、毎度の如く、マミさんが死ぬや否や、ほむらちゃんの妨害を仕出かすと云う非常に迷惑極まりない存在だったと云う落ち……

 まぁ、要するに、ワルプルギスの夜並みに迷惑な存在だったって事だね♪

 

「うん、色々と御免ちゃい♪」

 

「気にしなくても良いわ。彼女達はアマタであって、アマタじゃない存在だから……」

 

「つまり、言い方を悪くすると、キュウべえで云う別個体って意味かい?」

 

「最悪な例え方ね……しかも、合ってるようで合ってないわ……」

 

「うん、そいつは残念だわ。それで、私に全てを話す理由は何?」

 

「アマタの能力はまどかと美樹さやかを監視する上で非常に役に立つ。そろそろ、美樹さやかは大きな山場を迎える」

 

 恐らく、ほむらちゃんの言いたい事は……美樹さやかの生か死か……

 つまり、その山場を乗り越える為に、私に手伝って欲しいと……

 口には出さないけど、きっとほむらちゃんは、心から美樹さやかを助けたいとは思っていないだろう……美樹さやかが死ぬと、まどかちゃんの心が壊れちゃうから……

 だから、私にそれを防ぐ為に動いて欲しいと云う事なのだろう。きっと、ほむらちゃんとしても一種の賭けなのであろう。

 私に全てを話した時に、それが吉と出るか凶と出るか……下手をすれば、別の次元で体験した事象……つまり、魔法少女の精神の崩壊による心中を図られる可能性もある。

 

「成程ね。分かったわ。私の力でまどかちゃんと美樹さやかを監視すれば良いのね?」

 

「悪いわね……」

 

 そう謝る様に言って、私のトレーの上にグリーフシードを3つ置く。

 

「これは、どういう事かな?」

 

「報酬よ。まどかと美樹さやかを見張る代わりの」

 

 あっ、ちょっと脳の血管切れそうになった……

 

「ほむらちゃんさぁ……ちょっと、怒って良い?」

 

「どういう事?」

 

 私の言葉が今一理解出来ないのかキョトンと驚き顔。

 

「私達は友達でしょ?だから、こんなの要らない。何度も言うけど、私はほむらちゃんの味方であり友達だよ。だから、好きなだけ甘えて、頼ってよ。その代わり、約束して……絶対に夢を諦めないで……」

 

 そう言って、私はトレーの上に置かれたグリーフシードをほむらちゃんのトレーに押し返す。

 

「ほむらちゃんは、何でも自分一人で解決しようとしてるでしょ?確かに、最初の頃は皆で解決しようと動いてたみたいだけど、やっぱり、何処か皆に心を開き切れてなかったんじゃないかなぁ?だからさ、私だけでも良いから、心を開いて頼ってよ♪」

 

 一瞬、顔が怒りに溢れる。きっと、何も分からない癖にと思っているのであろう。

 だけど、私は続ける……

 

「だってさぁ……ほむらちゃんとまどかちゃんが約束した時って、まどかちゃんに全てを話して、一番心を開いた時でしょ?」

 

 その言葉にほむらちゃんの顔が変わる。どうやら、表情変化より当たりの様である。

 

「今、私がこうやってほむらちゃんを信用して、手伝おうとするのは、何でか知ってる?」

 

「分からないわ……」

 

「ほむらちゃんが、私の事をちゃんと名前で呼んでくれるからだよ。ほむらちゃんが私の名前を呼んでくれる限り、私はほむらちゃんを信じるし助ける。だから……」

 

 言葉を区切る。そして、笑顔で……

 

「私を信じて♪友達でしょ♪」


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