魔法少女あまた☆マギカ   作:星屑アマタ

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十三話眼 魔法少女

ワンワンと、犬はいいます

ニャーニャーと、ネコはいいます

ブーブーと、豚はいいます

チューチューと、ネズミはいいます

ホーホーと、フクロウはいいます

カァカァと、カラスはいいます

ガーガーと、ガチョウはいいます

では魔女は、なんというのでしょう?

 

~マザーグースのBow, wow, says the dogより一部改竄~

 

 自身の頭上に位置する魔女は、スカートより大量の椅子や机を召喚して、私目掛けて降り注いで来る。オマケの使い魔もセットで……

 確かにほむらちゃんの言う通り、広範囲の絨毯爆撃で有る。

 本来なら得意なタイプの相手だろうけど、思ったよりも足場が悪く動き辛いので、珍しく得意な相手で苦戦しそうである。

 

 魔女の攻撃に関しては、躱せる攻撃は躱し、避けれない攻撃は召喚した拳銃で撃ち抜く。

 使い魔に関しては、足のスケート靴でロープを切られたら非常に拙い事になるので、着実に迎撃する。

 どうしても、使い魔が迎撃が出来ないと判断したら、別のロープへと急いで飛び移る。着地が難しく、少しバランスを崩しそうになるが、少年コミックで有り勝ちな気合いと根性で何とかする。

 先程まで足場にしていたロープは、使い魔の攻撃で簡単に切れて結界から消滅する。矢張り、やっかいな敵である……

 

「こりゃあ、足場に慣れるまでは防戦一方かな……何が楽勝だよ、ほむらちゃん……」

 

 と、ちょっと毒づいて、委員長の魔女へと敵意の眼差しと銃口を向ける。

 

 銃口を向けた刹那、直ぐ様に魔女のスカートの中より無数の机、椅子が落下して来る。

 この魔女の攻撃の恐ろしい所が、私の居る大体の位置に攻撃を降り注いで来ると云う、好い加減な点が一つ。

 

 分かりやすく例えるならば、素人とプロの拳銃(チャカ)の扱いの違いである。

 プロならばちゃんと照準が定まってる故に、弾道も読めるので避ける事が容易い。

 だが、素人の場合は拳銃を持つ事に恐れが発生し、手と腕が震えて照準が定まり難くなる。故に、弾道を読む事が非常に難しい。

 オマケに、例えハズレたとしても、予測もしない軌跡を描く跳弾を起こす可能性もある。

 

 この魔女が落として来る大量の机や椅子は将にそれに値する。

 好い加減故に、隣のロープ等に当たって軌道を変えて、こちらに飛んでくる恐れも有る。

 まぁ、唯一の救いは、足場(ロープ)を切断する使い魔は、ちゃんと正確に私に向かって来ると云う事かしら?

 使い魔までランダムに落下してきたら、戦闘どころか足場を気にするだけで精一杯になっちゃうよ……

 

 休む暇も与えずに次々と私を狙って落下して来る、机や椅子や使い魔やら……

 

「あぁ!!もうっ!!何なのさぁ、アンタは!!」

 

「魔女に決まってるじゃないか?」

 

 返事がないのは分かってるが、叫ばないとやってられないので叫ぶ。

 本来なら返事は無い筈だが、何時の間にか結界内にやって来て、ロープの上に呑気に座っているキュウべえが返して来る。

 

「何っ?何しに来たの?」

 

「アマタを助けに来たんだよ」

 

「何ぃ?アンタが私の代わりに戦ってくれるの?アンタじゃ、攻撃一発分の盾にしかならないでしょ?」

 

「違う違う。アマタ以外の使い魔を召喚出来る魔法少女の事を調べていたら。面白い事が分かったんだ」

 

「手短に言って頂戴!!こっちも防ぐので手一杯で大変なのよ!!」

 

 叫び返す間も迫って来る攻撃に、銃弾を叩き込み、時には回し蹴りを入れたりして防ぐ。

 戦隊ヒーロー物と違って、実際の敵は話してる間でも容赦なく攻撃は叩き込んで来るので、悠長に会話する余裕なんぞ無い。

 

「うん、使い魔の容姿や能力に関しては、その魔法少女の想いが形になった物であり、1人に付き1体って決まりは無いんだよ。だから、イメージして、新しい使い魔を生み出してみたらどうかな?」

 

 成程……烏以外の使い魔を召喚する事が可能であるって事ね……

 ふむぅ、新しい使い魔って言っても、どんなのにしようかしらねぇ……

 

「ほら、魔女の結界や使い魔だって、その魔女の思い出が形になった物だろ?」

 

 でも、そう簡単に言うけど、私の想いって何だろう?

 だって、現時点で召喚してる使い魔が烏だよ?

 私の想いと、どう関係するんだろう……

 

「でも、キュウべえ。烏の使い魔と、私の想いがどう関係するの?」

 

「烏の口に何を咥えてるか良く考えて御覧?」

 

 烏の口?

 あぁ……そう云う事か……眼球ねぇ……私の想いは眼球に関係する事なんだ……

 世界を見たいと云う事に、生まれながら執着し続けた故に、与えられた使い魔かぁ……

 今迄、何気なくに使ってた使い魔だけど、実はそんな深い意味が有ったのかと認識させられる。

 でも、何故烏なの?他の鳥でもいい気がするけど……

 

「で、イメージを思い浮かべた後に、どうやったら召喚できるの!!」

 

 イメージとして真っ先に浮かんだのが、夢の中に居た犬の執事。

 夢の中に烏の使い魔と一緒に出て来たと云う事は、きっと私の想いに関係する使い魔なのだろう。

 

「さぁ?僕には分からないよ。じゃあ、僕はそろそろ失礼するよ」

 

 だけど、その肝心な召喚方法を知らなかったら意味ないでしょ!!

 

「役に立たないわね……つうか、伝える情報がそれだけなら二度と来るな!!」

 

 ロープに吊るされている制服を千切って丸め、一人逃走を開始したキュウべえへと投げつける。

 が、丸めてても、空中で開き、空気抵抗の影響を受けて、キュウべえと当たる前に落下して、下へ下へと落ちて行く。

 ちなみに追記だが、最初に落下させた眼球は未だに地面に着く様子がない……

 こんちきしょぉ、召喚の仕方が分かんないなら……

 

 普通にブチノメスダケヨ!!ヤッテヤルデス!!

 

 空から私目掛けて降って来た机を掴み、魔女へと投げ返すが……残念なことに、魔女が居る高度まで届かず落下……

 うぅ~ん……これが杏子ちゃんだったら、簡単に届いたのかもしれないけど、私には無理みたいね……

 おっと、そんなこんな考えてると、攻撃の餌食になっちゃう!!

 

 拳銃を引き抜いて、使い魔目掛けて狙撃を開始。

 使い魔の数を有る程度減らして、一気にティロフィナーレで決めると云う何時もと変わらない戦法。

 時間が掛かり、精神面にも肉体面にも厳しいが、結局はこれが一番有効な手立てなので、諦めて実行。

 

 何度も攻撃を避け、撃ち殺すの繰り返しをし、有る程度数を減らしたのと、両手に持っている拳銃の弾が切れた事を気に、手に持ってる拳銃を投げ捨て、今度は両手にマスケット銃を召喚する。

 マスケット銃と拳銃を使い分けてる理由だが、マスケット銃は拳銃と比べて威力が高いが単発式である。対する拳銃は威力が低い物の、カートリッジの中に弾が複数入っているので弱い敵を一掃するのには便利。

 

 つまり、この場で、私がマスケット銃を使うと云う理由即ちそれは……勝負を決めに行くと云う事である。

 足場がないこのステージでは、地面への大量召喚によって単発式の欠点を補う事が出来ないので、的確に攻撃をせねばならない。

 

「何か知らないけど、手古摺らせてくれるねぇ……だけど、これで終わりよ、委員長さんよぉ!!」

 

 一気にロープを駆け登り、魔女の方へと向かう。

 使い魔の数は既に殆ど居らず、上空より降り注ぐ机や椅子にさえ気を付けていれば、問題は無い。

 

「じゃあねぇ~♪委員長の魔女さん♪」

 

 マスケット銃の撃鉄を落とす。火打石が擦れ火花が発生。

 それが、火薬へと着火し、銃口より弾丸が発射される。 

 

 弾丸は魔女の腕を撃ち抜き、風穴を開ける。

 撃ち抜かれた痛みに、魔女はこの世の物とは思えない程に不気味な悲鳴をあげる。

 

 そして、魔女が耐え難い痛みに叫んでる内に、私の右手が巨大なマスケット銃と一体化する。

 あっ、言っておくけど、猟犬の魔女の時みたいに馬鹿デカイ物は召喚はしていなよ♪

 

「それじゃあ、委員長さ~ん♪あの世への下校時刻ですよぉ~♪ティロフィナーレっ!!」

 

 そして、格好良い決め台詞と共に、巨大なマスケット銃より発射された砲撃によって、魔女を跡形も無く消し飛ばした♪

 魔女が死んだ事により結界も消滅し、黒字でグリーフシードも手に入り、ほくほくしてる矢先、見滝原高校の目の前に設置されている跨道橋に何処かで見た事がある2名の姿が……

 ごしごしと目を擦るものの、矢張り見間違えではないようだ……

 当然、嫌な予感しかしないので、疲れた体には酷だが、急いで跨道橋へと向かった。

 

 足はしっかりと動かしながらも、目は歩道橋の上の2人から動かさない。

 

 跨道橋の上、杏子ちゃんと美樹さやかが戦闘態勢にって!!おいっ!?

 ほむらちゃんの言ってた事を、覚えてますかい!!

 

「待って、さやかちゃん!!」

 

 美樹さやかが魔法少女へと変身しようとすると、狙ったかのようにキュウべえと一緒にやって来るまどかちゃん。

 もしかして、キュウべえが何かしらの方法でこの状況を作り出したのだろうか?

 取り敢えずは、跨道橋の下で状況を観察する事にする。これだけの面子が揃っているのだ、当然ほむらちゃんもやって来るだろうし……

 

「まどか!?邪魔しないで!!そもそも、まどかは関係ないんだから!!」

 

「駄目だよ、こんなの!!絶対におかしいよ!!」

 

「ウザい奴にはウザい仲間が居るもんなんだねぇ」

 

 必死に美樹さやかを止めようとするまどかちゃんを見て、それを利用して美樹さやかに先に自分へ手を出させようとするべく、煽る杏子ちゃん。

 

「じゃあ、貴方の仲間はどうなのかしら?」

 

 だが矢張り、勃発しそうになった所に、颯爽と杏子ちゃんの後ろに出現するほむらちゃん。

 

「ほむほむ!!そりゃあ、どういう事さぁ!!」

 

 そして、更にその彼女の後ろに神出鬼没に出現する私♪

 

「アマタちゃん!?」/「「アマタっ!?」」/「また、何か増えた!?」

 

 本当は様子見だけの予定だったけど、ほむらちゃんの言葉に反論しようと、ついつい飛び出しちゃった♪

 そして、美樹さやか……何かって何よ!?アマタ様を何扱いするなら、スプーンで眼球抉るよっ!!

 

「あははははは、こんばんは~、まどかちゃん♪ほむらちゃん♪あと、蒼い髪の何か♪」

 

「蒼い髪の何かって何よ!!」

 

「貴方こそ、私のことを何か扱いしたでしょ?そんな貴方を表現するのに『何か』と云う呼び方だけで十分事足りるわ」

 

「何、こいつ!!すっごい、ムカつく!!」

 

「あら奇遇ね♪私も、そう感じているのよ♪何なら、杏子ちゃんやほむらちゃんの代わりに私が相手になるわよ♪」

 

 そう言い、チラッと首にぶら下げたソウルジェムを見せて、私が魔法少女である事をアピールする。

 

「ソウルジェム!?アマタちゃんも、魔法少女なの!?」

 

「そうなの♪御免ねぇ、まどかちゃん♪」

 

「アマタやキュウべえが参加すると話がややこしくなるから、アマタは黙ってて」

 

 鹿目まどかの驚きは他所に、ほむらちゃんは話を進める。

 正確には、会話より私を排斥しようと話を進める。

 

「そりゃぁ~無いぜ!!ほむらちゃん!!私とキュウべえが同レベルってのは!!」

 

「いや、四六時中居てみろ……確実にキュウべえよりウザいから……」

 

 まさかの横槍が隣で槍を持つ杏子ちゃんより入れられる。

 おぉ、槍使いだけに横槍を入れるのも上手いとな♪

 

「がぁ~ん!!杏子ちゃんまで!?美樹さやかとの戦闘する前に、既に私のガラスのハートがブロークン(broken:壊れてしまった)だよ……」

 

「まどか……なんなの、アイツ……」

 

 機関銃の如く喋り続ける私が理解出来ないと、まどかちゃんに私の事を尋ねる。

 

「えっと、星屑アマタちゃん。私達と同じ学校に通ってる子だよ。昨日の御菓子作りの時に、御世話になったの」

 

「あっ、私はぁ実は~♪不法侵入してたんだよぉ♪理由は、学食食べたり、ほむらちゃんのシフォンケーぐふぉぁ!?」

 

 鳩尾に入れられる強烈な一撃によって、続きの言葉を発する事をキャンセルされる。

 というか……ほむらちゃん、何でそんなにパワーが有るんですかい……あれだけの能力にその身体能力は反則でしょ……

 

「だから、黙ってて……」

 

「いや、だからって、鳩尾に拳を入れなくても……確かに、ほむらちゃんの気持ちは分かる!!愛する人間の前で―――」

 

「黙れ……」

 

 おぉ、怖い怖い♪ほむらちゃんが単語のみの命令口調で喋るのは初めて聞きやしたぜ♪

 

 取り敢えず、私の頬を掠る様に銃弾が飛んで来たので……命の危険性を感じ、続きを言うのを止めて……

 

「ごめんなサイ♪」

 

 物騒な仲間が、ぽぽぽぽ~ん♪

 ってな、訳で180度ベクトル変換した、私なりの素直さで謝る。

 

「じゃあ、手持無沙汰な私は盆踊りを踊っておくから、その内に片づけてね……」

 

「佐倉杏子……アマタを取り押さえていて……」

 

「ほいきたっ!!」

 

 背中に素早く回り込んで、私を取り押さえる杏子ちゃん。

 ねぇ、二人とも真面目な顔してるけど、実は色々と悪乗りして楽しんでない?

 

「待たせたわね……美樹さやか……」

 

 ほむらちゃんが長い後ろ髪を掻き揚げ、優雅にアピールする物の……

 

「いや……真面目顔で待たせたわねって言われてもねぇ……」

 

 当然突っ込みが入る。

 

「私が代わりに相手するわ」

 

「舐めるんじゃないわよ!!」

 

 明らかにこれから戦闘を繰り広げるとは思えないほど、ふざけ切っている私達に怒りを露わにする。って、ふざけてるのは私だけだね。

 そして、美樹さやかは手の平の上にソウルジェムを乗せ、いざ変身せんとするや否や……

 

「さやかちゃん、御免っ!!」

 

 美樹さやかの後ろに居た鹿目まどかが、美樹さやかのソウルジェムを奪い取り、跨道橋の上より道路に向かってピッチャー投げましたぁ!!

 って、ええぇぇぇぇ!!

 

「はぁっ!?」

 

 不幸中の幸いにも、跨道橋より落下したソウルジェムは地面に落下して壊れる事も無く、トラックの荷台に乗り、何処かへと出荷(ドナドナ)される。

 それと、ほむらちゃん、凄く驚いた顔して、時間を止めてトラックを追いかけて行ったねぇ♪

 ていうか、何か、拙いのですかい?

 

「まどか、アンタ何て事を!?」

 

「だって、こうしないと!!」

 

 まどかちゃんが何か反論しようとするや否や、美樹さやかの顔より生気が一瞬にして消え失せ、瞳孔が完全に開きまどかちゃんの方に倒れる。

 えっ?瞳孔が開いてる?もしかして、これって……死んでる?

 

「さやかちゃん?ねぇ、さやかちゃん?起きてぇ!!ねぇ、起きてぇ!!こんなの嫌だよぉ!!」

 

 友人が突如として生命活動を止めた事に、驚き泣き叫ぶまどかちゃん。

 

「何がどうなってやがんだ?おいっ!?」

 

 そして、何故美樹さやかが動かなくなったのかが理解出来ず、キュウべえに威圧的に尋ねる杏子ちゃん。

 

「君達魔法少女が体をコントロールできるのは精々100メートル圏内が限度だからね」

 

「100メートル!?何の事だ!?どういう事だ!!」

 

「普段は当然肌身離さず持ち歩いているんだから、こういう事故は滅多にある事じゃないんだけど」

 

 普段持ち歩いている?ソウルジェムの事かしら?

 

「何言ってるのよ、キュウべえ!!助けてよぉ!!さやかちゃんを死なさないで!!」

 

「まどかぁ、そっちはさやかじゃなくてただの抜け殻なんだって。さやかはさっき君が投げて捨てちゃったじゃないか?」

 

 まどかちゃんの叫び声に、どうして自分の言ってる事を理解出来ないのかと、出来の悪い生徒に溜息をする先生の様に優しく諭し始める。

 体が抜け殻?ソウルジェムが本体……それって、もしかして……

 

「な、何だと……」

 

 愕然としている杏子ちゃんも、大体を把握したのであろう。怒りか悲しみか、何かしらの感情が高まり、体が震えている。

 

「ただの人間と同じ壊れやすい体のままで、魔女と戦ってくれなんて、とても御願い出来ないよ。君達魔法少女にとって、元の体なんていうのは外付けのハードウェアでしか無いんだ。君達の本体としての魂には、魔力をより効率良く運用できる。コンパクトで安全な姿が与えられているんだ」

 

 だが、そんな私達を見ても、キュウべえは話を止めることなく、淡々と話し続ける。

 

「魔法少女との契約を取り結ぶ、僕の役目はね?君達の魂を抜きとってソウルジェムに変える事なのさ」

 

 この言葉が止めとなり、まどかちゃんの精神が崩壊しかける……

 地面へと座り込み、虚ろな眼を開く。今迄自分が憧れた物、そして被害に友達が有った事……

 色々な事が津波となって、思春期の少女のか弱い精神を襲う。

 このままでは、本当に精神が壊れてしまう可能性が有るので、私が急いで近寄り優しく抱きしめる。

 

「てめぇは……何て事を……ふっざけんじゃねぇ!!」

 

 跨道橋の手摺りの上に座って淡々と解説するキュウべえに怒りを露にし、詰め寄り掴み上げる杏子ちゃん。

 

「それじゃあ、アタシ達ゾンビにされた様なもんじゃないか!!」

 

「寧ろ便利だろ?」

 

 だが、私達の気持を踏み躙る様に、悪魔は笑う。

 キュウべえは、アクマデ、私達の事をモノとしか見てないのだ……

 

「心臓が破れても、有りっ丈の血を抜かれても、その体は魔力で修理すれば、直ぐまた動くようになる。ソウルジェムさえ砕かれない限り、君達は無敵だよ♪弱点だらけの人体よりも、余程戦いでは有利じゃないか?」

 

「酷いよ!!こんなのあんまりだよ!!」

 

 その言葉に私の胸に顔を埋めているまどかちゃんが、嗚咽を漏らしながら反論する。

 私の服が涙で濡れ、少女の悲しみの冷たさを直に肌で感じる。

 

「君達は何時もそうだね。事実をありのまま伝えると、決まって同じ反応をする。訳が分からないよ」

 

 手前の後出しじゃんけんの方が訳分からねぇよ!!

 ちゃんと、最初に話しやがれっつうの!!

 

「どうして人間は、そんなに魂の在り処に拘るんだい?」

 

 冷たい言葉を次々と浴びせるキュウべえ。その度に、まどかちゃんの涙が……そして、私の心に芽吹く怒りの感情……

 しょうがない、口封じの為に、奴を殺そう……

 私が考えを実行しようとすると、車を追いかけた所為で、かなりの体力を消費した所為か、肩で息をするほむらちゃんが、手に美樹さやかのソウルジェムを持って戻って来る。

 

 そして、復活のアイテムを美樹さやかの手の平に置いた。

 

「はっう!?」

 

 美樹さやかは生き返った。

 と、RPGっぽく現状解説してみる。

 

「何?何なの?」

 

 そして、抜け殻状態だった時の記憶が一切無かったのか、私の胸で未だに泣いてるまどかちゃんや、全速力で駆け抜けた所為で息を切らせているほむらちゃん、安心した表情を見せる杏子ちゃんを見て、呆気に取られる美樹さやかの姿が有った……

 


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