さてさて、朝起きてみると、本来なら横に居る筈の杏子ちゃんの姿は既に無かった。
何処かに食料を探しに出掛けたのだろうか?
だけど、テーブルの上には紙に包まれたハンバーガーが山盛りに積んであり、置き手紙が一緒に置いてある。
眠気眼を擦りつつ、重い体をゆっくりと起こして、置き手紙に目を通す。
置き手紙には、『朝飯、昼飯、夜飯だ』とだけ……てか、3食ハンバーガーって私をメタボリックシンドロームにする気ですかい?
最近はぽっちゃり系の女子が平安時代並みにモテルとか聞くけど、私をぽっちゃり系にする気ですかい!?
つうか、朝から晩までパートナーを放ったらかしにして何処に行く気ですかい!!
そんな事されると、寂しさのあまりに、部屋の隅に置いてある杏子ちゃんの下着の入ったバッグの中身の探索をしたくなっちゃうじゃない……
ゲフンゲフン、うん最近誤魔化しの空咳が多い気がするなぁ~……
まぁ、話を戻しまして、実は昨日は私が杏子ちゃんを放ったらかしにしたから、今日はその仕返しかな?
とか思って普通の人間なら我慢するかもしれないが、私は我儘だから違うのだ♪
「にゃははは、杏子ちゃんを捜すとしますかい!!」
てな訳で、杏子ちゃんのストーキングを決行する事にした♪
勿論、取る手段は先日の学校探索と全く同じ方法で、複数の魂之眼球により見滝原市上空より偵察である。
私の能力の前には1分もあれば簡単に発見され、自分が何をしてるかが私に把握される。
さて、杏子ちゃんは何をしてるかと言いますと……ビルの屋上の上より、見滝原中学校にて授業を受ける1人の少女の観察。
当然、その少女とは授業を真面目に受ける話題の渦中の鹿目まどか……じゃなくて、美樹さやか?
ほむらちゃんから手を出すなって言われてるけど、どういうつもりだろう?
もしかして、ほむらちゃんに見つからない様に殺っちゃうのかなぁ?
闇雲に美樹さやかに手を出すのは拙いと思うんだけどなぁ……
しょうがない、美樹さやかをストーキングする杏子ちゃんをストーキングする事にしようか♪
今回は杏子ちゃんには魂之眼球の認識をされないようにする為に、視認可能対象より外す事にする。
杏子ちゃんは一切動きを見せない、唯一の行動は、傍に置いた大量の林檎が入った紙袋から、林檎を取り出しては食べるの繰り返し。
30分経過しても1時間経過しても動きは一切見せない……動きの見せない杏子ちゃんの観察も、飽きて来たので……
「よっしゃぁ!!私も潜入するかいっ!!学校の中に♪」
意気込みの言葉を露わにし、私が行動する事にした♪
実は、昨日の見滝原中学校潜入の際に、うっかり借り物を返さずに帰ってしまいましたので……
まだ、制服が手元に有りますぜい♪
と、スクリーンの向こうの見えない誰かに見せびらかすかの様に、おもむろに取り出してみる♪
いやぁ~♪私も返そうとは思ったんだよ♪
ただ、昨日は色々問題起こしてるから、返すのが難しかっただけだよ♪
えっ?屋上でほむらちゃん手製のシフォンケーキ食べて午後ティー飲んでた人間が何言ってやがるって?
うっさいわよ!!初めての制服でテンションあがって、制服を返すのがちょっと惜しくなっただけだから……
さぁて、素早く着替えて私も出掛けるとするわよ♪
勢い良く服を脱ぎ捨て、素早く制服を身に纏う。当然、アニメや漫画で有り勝ちな視聴者サービス何て物は無いし、サービスをするきは毛も無いわよ♪
そして、見滝原中学校の制服に着替え終わった私は、教会を飛び出した。
~少女疾走中により、暫くBGMとして『妄想戦士 宮前かなこ』をy●utubeやニ●ニコ動画等で聞きながら御待ち下さい by作者より~
はいっ、到着ぅ~♪
別に『曲がり角で運命の出会いごっつんこ♪』なんて事も一切無く、見滝原中学校の裏口に廻り込む。
何故正面から堂々と乗り込まないのかと云うと、正面からだとビルの屋上より美樹さやかを観察している杏子ちゃんに気付かれてしまうからだ。
裏口より中にどうどうと侵入し、学校中に魂之眼球をばら撒いて、教室外の人間の位置情報を細かに把握する。
現時点では、特に人間は見当たらないので、どうどうと歩き回る事にしよう♪
あっ、そういえば時間的に、後5分くらいで4時間目も終わって昼休みじゃないかなぁ?
この学校は中学校の癖に学食を持つ珍しい学校みたいだし、いっその事学食に混ざってみようかな?
どうせ、学校中の生徒が一斉に押しかける学食なら、制服さえ着ていれば部外者が紛れ込んでもバレないしね♪
よしぃ♪授業が終わるまではメニューの閲覧と行きますかい♪
学食付近に配置された魂之眼球を移動させ、学食のメニューが見れる位置へ。
脳裏に映る何十ものヴィジョンの内の一つに、次々と美味しそうな料理の写真が映り始める。
うどん、ラーメン、蕎麦等の麺類を始め、麦御飯、炊き込み御飯類、カレー、丼物各種と御飯物も充実しており、惣菜も定番もののハンバーグや名古屋県民なら誰もが愛するエビフリャァやミソカツ、チキンステーキ、若鳥の唐揚げ、挙句の果てにはフグの唐揚げやクジラカツ、焼き鳥と意味も無いくらいに幅広く手を出している。無論、デザートも同レベル……ていうか、この学校何なの……
大学の学食でも、こんなにメニューが揃って無いわよ……
いやぁ~、しかし、写真で助かったわ……眼が見えるようになったのが14歳の誕生日故に、まだ1年も経ってないし、学校も行ってない所為で、点字とひらがなとカタカナは読めるけど、漢字とローマ字が未だに読めないのよねぇ……
まぁ、良いわ♪今日は指を咥える訳ではなく、料理を食べれるのだから素直に喜びましょう♪
先ずは、デザートは欠かせないわよねぇ~♪ヨーグルトババロアにブルーベリーソースが掛かった奴にしよっと♪後は、麺類より月見うどん大盛りで決まりね♪
でも、月見うどんの卵が、御汁と混ざるのが実は苦手なのよねぇ。
じゃあ、何故月見うどんにするのかって?
うん、そりゃあ、うどんを食べ終わった後に、あの卵をチュルンッて丸呑みして、喉越しを楽しむのが好きなのよぉ~♪
むむむ、まどかちゃんのクラスが少し早めに授業終わったわね。
まどかちゃんは弁当持参かぁ……ほむらちゃんはどうなのかなぁ?
『へい、ほむほむ。今、見滝原中学校なう♪学食行こうよ♪』
ツイッターに書き込む様な感じで、念話を送ってみる。
『頭が痛いから保健室に行っても良い?』
『二日目かい?』
「グーで殴るわよ……」
何時の間にか眼前にほむらちゃんが出現。時を止める魔法を使って即刻来てくれたみたいだ♪
ていうか、大勢が居る所で魔法使っちゃまずいでしょ……ほむらちゃんの魔法を普通の人が見たら、その場から行き成り消えてる様にしか見えないんだから。
「にゃはぁ~♪学食行こうよ♪何なら、弁当持参のまどかちゃんも誘うかい?もれなく、美樹さやかとブルジョワっぽい人も付いてくると思うけど」
「結構よ……それで、本題は何?態々制服にまで着替えて、学食を食べに来ただけな訳ないでしょ?」
「いや、学食を食べに来ただけだよ?それにしても、ここの学食凄いね♪メニューの数が壮大だよねっ♪」
「本当に貴方の考える事が、良く分からないわ……」
ますます頭痛の種が増えたのであろう、ここは私の出来る限りの優しさとバァフ●リンを合わせて、成分の99.99%は優しさで出来てる何かをそっと差し出してあげるのが、ベストチョイスだろうか?
「分かった方が凄いから安心しなさいな♪じゃあ、学食行くよぉ~♪利用者増えて混雑する前にね♪」
ほむらちゃんの手をギュッと握り、学食の存在する方へと引っ張って連れて行く。
嘆息しながらも、とてとてとついて来る辺りが可愛い♪えっ?手を引っ張ってるからついて来るんじゃないかって?
本当に嫌なら、そこから嫌でも動かない素振りは見せると思うので、その突っ込みを却下します♪
「所で、ほむらちゃんの学食の御勧めは何?」
矢張り、在学者の貴重な意見は欲しいわよね♪
「月見うどんよ……」
「意外ねぇ♪今日の私の予定が月見うどんだったのよ♪」
「ちなみに、卵は丸呑み派よ……」
「にゃんとぉ!?まさかほむらちゃんもちゅるんと丸呑み派だったのかい!?」
「嘘よ……普通に掻き混ぜて食べるのが好きだわ」
ほむらちゃんの対応が、最初の頃と比べてどんどんと手慣れてきてるわねぇ……
いや、コミュニケーションを取ってくれるから良い意味だけど、何か物凄くからかわれてる気が……
「私の情報を知ってるからって、そんな嫌がらせするのは酷いんじゃないかなぁ?かなぁ?」
「嫌がらせじゃないわ。ただ、コミュニケーションを取ってるだけよ」
「嘘だぁ!!」
「それは、ネタ的に危ないわ……」
物静かに冷静な突っ込みを次々と私に浴びせるほむらちゃん。
やっぱり、ネタ的に危ない発言に関しては、ほむらちゃんでもメタ発言するのね。
「じゃあ、今後も私の危ない発言を防ぎたいなら、黙って学食に付いて来るぅ~♪行っくよぉ♪」
てな訳で、ほむらちゃんをズルズルと引っ張りながら、人生初の学食に向かうのであった♪
学食は校舎1階の端にあり、歩いて数分もかからない位置にあった。
学食は既に腹ペコの生徒たちによって活気あふれており、それに割烹着を来たおばちゃん達が答えるかのように学生たちの持つ緑色の御盆に料理を載せている。
私は生まれて始めて見る学食に胸を高鳴らせ、急いでお盆を手に持ち注文カウンターに並ぶ。
「月見うどん大盛りとババロアとエスプレッソ下さい!!」
「あいよっ!!」
そして、勢い良く気になった料理を注文する。勿論、デザート込みである♪
私の注文を受けると、学食にはそぐわないエスプレッソマシーンにカップをセットし、スイッチを押す。
そして、エスプレッソが出来るまでに、事前に茹でておいたうどんを器に盛り付けて、カツオ出汁の聞いた醤油スープを入れ、生卵を落とす。
その時間僅か20秒とかなりの早業である……そして、後ろに供えられた大きな冷蔵庫より、可愛いガラス皿に載せられたブルーベリーソースの掛けられたババロアを取り出し、更に掛けられていたラップを剥ぐ。
月見うどんと一緒に、プラスチック製の緑色の長方形の御盆に載せた所で、エスプレッソもタイミング良く完成し、最後に御盆に載せられて、私の昼御飯が完成する。
メインとデザートとドリンクが見事にマッチしてないわね……まぁ、それも学食の醍醐味醍醐味♪気にしてたら、やってらんないわよね♪
「ほむらちゃん、先に席取っておくね♪」
「分かったわ」
私は、御盆を受け取り、箸とスプーンを御盆に載せた後、レジの方へと向かって会計を済ませる。
月見うどん(大盛り)が280円、ババロアが80円、エスプレッソが80円と累計440円也。
学食って安くて沢山食べれて良いね♪ 次は杏子ちゃんも連れてこよう。
会計と決意を済ませた後は、日当たり良好な4人くらいが座れる席を選択し、椅子に座る。
「御待たせ」
「あれ、ほむらちゃんも月見うどんにしたの?」
約1分後にやって来たほむらちゃんの御盆には、月見うどん(サイズ的に並盛かなぁ?)と御冷の入ったガラスコップが乗せられていた。
「えぇ……アマタの真似をしてみようと思って……」
「にゃる~♪そんじゃまぁ、いっただきま~す♪」
「頂きます」
割り箸を二つに割って、あっつあつのうどんを掴み、音を立てて啜る♪
学食デビューも相まって凄く美味しく感じるよぉ♪やっぱり、普通の学校って良いなぁ~♪
私も普通の女の子として生まれてたら、こんな風に御友達と喋って、御飯食べて過ごせたのかなぁ……
「ほむらちゃんは、私の契約内容については知ってる?」
「知ってるわよ。『眼球』でしょ?」
ふむぅ~、これを知ってると云う事は、別の時間軸でほむらちゃんと接触した私は、ほむらちゃんとそれなりに仲良くなってたって事よね?
私の願いの内容は、使い魔と違って、余程信頼が置けて仲の良い人間以外には話さない内容だしね……
「そうそう。だから、嬉しいんだ……例え今こうして、ここに居られるのが仮初だとしても、普通の女の子として過ごせる事が凄く嬉しいんだ……こうやって、制服を着て、ほむらちゃんと話して、御飯食べて……ほむらちゃんは、学食を食べに来ただけと聞いても、私の考えてる事が良く分からないって思うかもしれないけど、私にとっては凄く幸せな事なんだ♪」
「そう……ごめんな―――」
「にゃははは、謝らないでよ♪寧ろ、ほむらちゃんの御蔭で、こうして友達と楽しく学校で食事が叶ってる訳だし♪寧ろ、付き会わせて御免ね♪」
「いいえ、私もアマタと居るのは楽しいから、気にしないで」
「ありがとう♪そう言ってくれると、嬉しいな♪あっ、そうそう、昨日にまどかちゃんと接触したんだけど、私が言った言葉が、ほむらちゃんの発言と全く一緒だったらしいのよぉ」
「らしいわね。昨日、まどかが家庭科の授業が終わった後に、教えてくれたわ。アマタの事に関しては、一切話して無いわよ」
うむぅ、うどんが美味い美味い。麺もしっかりコシが有るし♪
ていうか、別にまどかちゃんに、私の事を話しても構わないんだけどねぇ~♪
あっ、でも、まどかちゃんなら確実に美樹さやかに話すと思うから、色々とややこしくなりそうだねぁ……深く考えてみると、寧ろその行為が正しいのかぁ……
「そうなんだ。ところでさぁ、ワルプルギスの夜が襲撃するまでに、あと何体魔女が来るか分かる?」
「残念だけど正確な数は分からないわ。だけど、影の魔女と委員長の魔女が出るのは確かよ。委員長の魔女は下手をすれば、もう見滝原市に来ている可能性が有るわ」
正確な数が分からないと云う事は、毎回変動しているってことかな?
思い浮かぶ原因としては、この見滝原市に居る魔法少女が魔女になると云う事象かしら?いやいや、深読みのし過ぎね……
「ふぅ~ん、委員長の魔女ねぇ?潜伏先が分かるなら、私が始末して来るよ?美樹さやかに戦闘はさせたくないでしょ?」
「残念ながら、そこまでは分からないわ。魔女も移動をするから……」
「ですよねぇ~……位置が分かれば苦労はしないわよねぇ……しょうがない、昼御飯食べた後に、地道に探して始末するとしますかい……」
「平日の日中は学校が有って動けないから、助かるわ。委員長の魔女は、威力の低い広範囲への攻撃が多いから、アマタの能力との相性は非常に良いから楽勝だと思うわ」
確かに、魂之眼球の前に、広範囲絨毯爆撃系の攻撃は意味無いからねぇ~♪
「そんじゃあ、ちっと片付けてきますかい♪」
一気に残りの麺を啜り、スープの上にぷかりとたゆたう御月様をちゅるりと飲み込む。
喉を通る、プニプニとした触感がたまらないわねぇ~♪
次いで、ババロアを二口で食べて、エスプレッソを一気飲みする。
うげぇ……エスプレッソ苦ぁ……
「それじゃ、ほむらちゃんまたねぇ~♪ちょいっと、委員長の魔女を駆除して来るよ♪」
「もうちょっと、落ち着いてから行けばいいのに?」
「善は急げってね♪それに、もう委員長の魔女の居場所を見つけたから♪」
委員長の魔女が見滝原市に来てるかもと云う情報が入り次第に、校舎内及び、見滝原市上空に設置した魂之眼球を既に探索を開始させていた。その結果、余程学校が好きなのだろうか見滝原高校敷地内のゴミ焼却炉付近に結界を作っているのを発見。
場所が場所だけに急いで駆除に行かないと、犠牲者が出る可能性が有る。もしかしたら、何日か前から居た可能性もあるので、下手すれば既に出ている可能性もある。
だけど、杏子ちゃん探す時にはこんな結界は無かったから、あの短時間の間に沸いたのかなぁ?
どちらにしろ、急いで駆除をしないといけないことには変わりは無いのだが……
「そう、アマタの索敵能力は流石ね……」
「まぁ、その代わりに、私には皆程の戦闘能力がないからね♪」
「何を言ってるの?貴方程の力が有れば十分だと思うわよ?元々、見滝原市に集まった魔法少女のレベルが、美樹さやかを除いて異常なだけよ……だから、そんなに自分を卑下しないで……」
「そうかなぁ、ちょっと元気が出て来たよ♪じゃあねぇ、ほむらちゃん♪」
私は御盆を持って返却口に返却し、そのまま学校の裏口より外へと急いで出る。
そして、委員長の魔女が居る結界が存在する見滝原高校へと向かう。向かいつつ、その間に結界内の探索をしっかり行わせる。
結界内には、地面と云う物が存在せず、様々な種類のセーラー服が吊るされたロープが無数に張られており、それが地面の代わりの足場として存在する。
そのロープを伝って移動する、巨大な制服より6本の手を生やした魔女の姿。そして、スカートより脚が生えている下半身だけの使い魔。足には普通の靴ではなく、切れ味抜群のスケート靴を履いている。
使い魔の数は魚の魔女や猟犬の魔女と比べると少ないが、足場が悪いのがボトルネックとなる。
幾ら認識が出来ても、この足場の悪さでは、避けれるかどうかは分からない。オマケに、魂之眼球の一つを自由落下させてみるが、一向に地面に着く気配を見せない。
恐らく、落ちたら一貫の終わりであろう……
さぁ~て、敵情視察も完了しましたし、結界の目の前まで移動したし……
いざ、戦闘と行きますかい♪
私は委員長の魔女の結界の中に飛び込んだ……