はい、みなさん。短めですがまた投稿します。
さて実は私気づいたのですが、今回然り前々回然り。なんか私が名前付けたオリキャラって必ず死ぬんですよね…。
もしかして、私が名づけた=死亡フラグなのかもしれません(笑)
それでは第六話。どうぞ(^_^)/
□黒き影の強襲
「…できません」
それは、拒絶の言葉だった。
ビョンヘ少佐はいつもならありえないその言葉に、思わず絶句した。
ばっと振り返る。だが、そこには「やはり」怯えた彼女の姿がある。それは見慣れた。いや、いつも以上に怯えた部下の姿だった。
恐怖で瞬きを全くしない瞳は瞳孔が開き。自分の肩を抱きしめる手はガタガタと震えている。
だがそれも当然のことだ。
彼女は今、上司に殺人を強要されている。発狂しないだけマシというものだった。
「…。は?」
ビョンヘ少佐はそんな部下に目を向ける。ビョンヘ少佐のその血走った目が、彼女の瞳孔を捕らえる。それは得体のしれない恐怖だった。
「…。今、なんて言った?」
だが、そんな部下に対してビョンヘ少佐の態度は辛辣なものだった。
力的にはISを持っている彼女の方が明らかに有利。
だが、それでも彼女にビョンヘ少佐に逆らう勇気はなかった。
「ひっ…!」
ビョンヘ少佐の圧に、彼女は恐れ、慄き、後ずさる。
が、それを許してくれるビョンヘ少佐ではなかった。
「ねぇ…どうなの?言いなさい…少尉!」
「っ…」
ダンッと。激しい音が木霊する。
それは、ビョンヘ少佐が机を叩いた轟音だった。その姿勢には、さすがのリギョク大佐にも看過できなかった。
「ビョンヘ少佐!お前、まさか部下に殺人を強要するつもりか…!!」
ダンッと。再び激しい音が木霊する。
それはリギョク大佐がビョンヘ少佐が叩いた机と同じ机を強打した音だった。
リギョク大佐には許せなかったのだ。自身の部下をないがしろにする彼女の姿勢が。
だが、それがいけなかった。
その行為に、ビョンヘ少佐は白い目を向ける。その意味をリギョクはすぐに察し。そして、愕然とした。その意味はすぐに他の人間にも分かる。ビョンヘ少佐の言い分によって―――。
「…。これだから男はクズなのよ…」
それは、その場にいる全員を絶句させる一言だった。
「だって、あなたたちって自分に不利益なこと起きたらすぐ暴力に訴えるじゃない。
だからあなた達がこの世界で一番の下等生物なのよ…!」
この毒婦は…。言うに事欠き、自分のことを完全に棚に上げて…。
リギョク大佐は思わず歯ぎしりしてしまう。
当初の目的では、リギョク大佐は自身をビョンヘ少佐に殺させようと企んでいた。
それは、部隊指揮としてそんな者に指揮官を預けられないと上層部に分からせるためであった。だから大佐は敢えて彼女を挑発するようなマネをしたのだ。
が、それもすべて少佐の傲慢な性格が台無しにした。
ビョンヘ少佐は言う。彼女が部下に殺人をけしかける理由を―――。
「それに―――」
そう言ってビョンヘ少佐は自身の部下に目を向ける。その視線の種類は、彼女が男に向けるときの視線と、全く同じ物であった―――。
「上司の責任は部下のもの。部下の命(・・)は上司のもの。でしょ?」
『『っ…』』
殺人を強要している彼女だけでなく、他のIS部隊の操縦者達もビクッと震えたのが分かった。
それだけではない。リギョク大佐自身その言葉が信じられなかった。
それはつまり、部下のことなど都合のいい駒としか思っていないと言う事だ。それは、部下に慕われる人格者たるリギョク大佐には到底信じられない言葉だった。
「ビョンヘ少佐…。お前…まさか…そこまで…」
呆然としたリギョク大佐の声が虚しく部屋に響いた。が、その言葉に最早ビョンヘ少佐は興味すらいだいていなかった。
俯いていたビョンヘ少佐の目線が再び、部下である彼女に向けられる。
そのあまりの恐怖故にか、彼女は過呼吸気味になりながら腰を抜かしてしまっていた。もうそれは、リギョク大佐には、可哀想という段階を通り越し、哀れささえ感じてしまう姿だった。
彼女の心象の奥に染み込んだビョンヘ少佐への恐怖。それがリギョク大佐には痛いほどわかった。
「で、アミ少尉。まだ、あなたの答えを聞いてなかったわね…」
「ぁ…ぁ…」
「少尉。あなた…まさか、わたしの命令が…聞けないって…いうの?」
「っ…!」
「そう、言いたいのね?」
「ぁっ…」
最早、彼女に声を出す力などなかった。
そこにあるのはただ理不尽なだけの恐怖。これ以上、彼女が逆らうことなどできるはずもなかった。
「わかり…ました…」
そして、彼女はついに折れたのだった。それは同時に、リギョク大佐の最期が決まった瞬間でもあった。
だが、そのことにリギョク大佐が悲観することはなかった。
むしろ、こんな役目を押し付けてしまった彼女に対しての申し訳なさの方が、彼の心には痛かった。
殺すことを命令された彼女の瞳が訴えかけてくる。「今、謝ればきっと許してくれますよ」と。
けれども、リギョク大佐はその瞳の問いかけに首を振った。
「…。ビョンヘ少佐。私はあなたを心の底から軽蔑する」
「た…たい…さ…」
リギョク大佐は、最後とばかりに自身の心情をはっきりと口にした。
刹那、少尉の瞳が再び絶望に彩られる。
その姿に、さらにリギョク大佐の中の罪悪感が大きく膨らんだ。
けれど、その姿を見てもリギョク大佐に土下座をするという選択肢は一切なかった。そんなことをするのはもう二度とごめんだ。それが、リギョク大佐の決意だった。
「はっ…。豚ごときが私の事を軽蔑しようだなんて…おこがましいにもほどがあるのよ」
「何とで言え。所詮お前は地獄に落ちるんだ。私もこれまでたくさん人を殺してきた。だから地獄行きは確定だ。だから堕ちた後、そのときにもう一度聞いてやる。
お前のこれからの人生が、どれだけ滑稽なものになったのかをな…!」
「っ…殺しなさいっ!アミ少尉!!」
ビョンヘ少佐が叫ぶ。その恐怖に、アミ少尉は震えながら手を上げた。
「…。【深い海(キプン・パダ)】。一極限定モードで、起動」
悲しげな。そして怯えた彼女の瞳がリギョク大佐を見つめる。
その瞳に、リギョク大佐は少しだけ微笑みを見せる。自分の勝手な理由で殺人者にしてしまう彼女の罪悪感が、少しでも和らぐように―――。
「どうして…」
刃を振り上げた瞬間に彼女の喉から洩れたのは、そんな慟哭にも似た悲痛な問いかけだった。
*
そして、“それは”その瞬間を待ちわびていたとばかりに起こった。
*
最初に気が付いたのはリギョク大佐だった。
長年戦場を支えてきたからだからこそか、彼は他の人間より先にそのことに気づけた。
刹那、何か黒い物体がテントの天井を破りヒラリと舞い降りた。
そのときには、テントにいた誰もがその存在に気が付く。だが、それが何かを認識することはその短時間では不可能だった。
何もかもがスロー映像であるかの様に、リギョク大佐は錯覚した。
天井から降りてきたそれは、まるでそこまでが一つの動作(・・・)であるかのように剣を抜く。
直後。目の前で、まるで爆発したよう(・・・・)に鮮血(・・)が飛び散った。
リギョク大佐は目の前に倒れこんできたその身体を無意識に抱きしめた。
それは、たった今まで目の前で剣を掲げていたアミ少尉のもの、だった(・・・)。
そう。だった。
それはもう、アミ少尉であってアミ少尉のものではなかった。
彼女の首から上は、何もない。それは物言わぬ一体の死体だった。
「…。っ…」
それはまるで、スクリーンの中の映像のようだった。
全員の時が、止まったように錯覚した。
おそらく、その間は一秒にも満たないだろう。けれども、リギョク大佐にはその間が何分。いや、何時間にも及んだように感じた。
次第にはっきりしていく頭の中。リギョク大佐は知識を渇望した。
目の前で起こった出来事。それを一気に理解するには、あまりにも多すぎたのだ。
そしてやがて、リギョク大佐は理解する。いや、再認識した。
あぁそうか。これは―――。
「…。目標3。殲滅完了…」
“戦争”なんだ、と―――。
その直後、止まっていた時は動き出した。
悲鳴を上げたのは誰だったのか。おそらくIS部隊の誰かだろう。
けれど、そのことを認識する間もなく、リギョク大佐は叫んだ。誰より長く軍にいるからこその判断。
そう、分かってしまったのだ。目の前にいる少女の目が。
スポーツISなんかで鍛えた素人同然の軍人ではなく、本物の戦場を―――人を殺すことを―――知る、本物の暗殺者の目であることを―――。
そんな人間に、この国のIS部隊ごとき(・・・)が叶うはずない。
「韓国IS部隊員、全員に告ぐ…」
だから叫んだ。彼女達を生かすため。そして、この国を守るために―――。
「逃げろっ!!!後ろを振り向かず、全速力で逃げろっ!!!!」
リギョク大佐の叫びに、残った5人の女たちは走り出す。
それは国を賭けた鬼ごっこだった。彼女達が持つ5つのISコア。そのすべてを失うと、この国は終わる。
最早、この国は追い詰める獅子ではない。むしろ―――。
追い詰められた“獲物”のほうであった。
*
「…いよいよね…」
深紅の機体の中で、少女が呟く。
聞きなれたその声に、白い機体の少年もコクと頷いた。
状況は読めない。だが、それぞれのISS(インフィニット・ストラトス・セカンド)に搭載されたISコアのみを視認するセンサーには9つのISコアが確認できた。
そのうちの5つは、散り散りにどこかへと逃走していく。
逆に、残りの4つは同じところで留まり続けている。けれども、その内1つは完全に動きを停止し、残りの3つはまったく同じ動きをしている。
これらの事象から、少年―――織斑一夏は、一つの結論を導いた。
「…。どうやら、死せる飢狼(がろう)がいるみたいだな」
一夏のその言葉に、鈴と蘭の顔に緊張が走った。その言葉の意味を瞬時に理解したからだ。
「…でも、確か北にはISコアの所持は認められてないはずですよね?それなのに…どうして…」
「甘いわ蘭。世界は広いのよ。アラスカ条約が及ばない範囲だってあるはずだわ…。たぶん中東のどこかの国から買ったんでしょうね…。所謂裏ルートってやつよ」
「それでも、国の財政を破綻させる買い物には違いない。本当の意味で、北は捨て身ってわけだ」
あのISコア一個を買うためだけに、どれほどの民を虐げたのか分からない。
けれど、それと同時にあの国は多くの軍事費を失うことになっただろう。そう、通常兵器に回すほどのお金が、今あの国にあるとは到底思えないのだ。
だからこそ、すべてが篠ノ之束(・・・)の手の平(・・・)の上で回っているのだ。
「…。だけど、予想できていなかったわけじゃない…」
一夏は、腰に帯刀した二振りの巨剣に手を添えた。
その瞬間、一夏の雰囲気が変わったことに蘭は驚きを隠せなかった。
それは、見たことのない一夏に驚いたのではない。その雰囲気がかつての、中学時代のまだであって間もない頃の一夏の雰囲気にそっくりであったからである。
「そうね。まだ許容範囲内の出来事よ」
そして、その一夏の雰囲気を何事もなかったかのように受け流す鈴。
いや、それどころか鈴が放つ雰囲気もまた、中学時代の織斑一夏にそっくりだった。あの頃の鈴なら考えられないその姿に戦慄してしまう。
だが、その瞬間、不覚にも蘭は覚ってしまった。いや、改めて認識したと言う方が正しい。
この二人は、あの頃とはまるで変わってしまったというその事実を―――。
「一応確認しておくわ。一夏、あんた今日はどれくらい力を使える?」
鈴の問いかけに、一夏は「はぁ」と大きく息を吐く。頭の中で自身の力を数え、そして結論を導き出した。
「…。【戦乙女(おまえ)】【踊り子(シャル)】それと【弾丸(弾)】の三つだけ…だな」
それは奇しくも、篠ノ之束の剣とされる三人の力だった。
だが、それが普通だ。基本的に、彼ら以外の力はあまりにも使い勝手が悪い。束の力である【鍛冶屋(blacksmith)】は未だに使いこなせない。だがそれよりも恐ろしいのが―――。
使うたびに、一夏が失うこと(・・・・)になる。そんな力が存在するということだった。
「…そうね。できれば【一番目】と【四番目】の力を使わない事を祈るわ」
それが分かっているからこそ、鈴もその答えに頷く。
その二つの力だけは、変わってしまった今の鈴でも使ってほしくないのだ。ぶっきらぼうで素っ気ないその言葉に、少しだけ一夏の心は和らいだ。
「…。鈴。お前も、なるべく気をつけろよ。お前の力はまだ、安定していないんだから―――」
「誰に言ってんのよ。あたしは自分の力くらいちゃんと把握してるわよ」
「…。そうか」
一夏はその答えに、少しだけ安堵する。
それは、彼女が―――凰鈴音が、あの二年間で無理やり押し付けられた力も、一夏に負けず劣らず危険なものであるからだ。
だが、彼女がそう言うのなら問題はない。
一夏は、全身の力を少しだけフッと抜いた。
「…。ん?」
そんなとき、一夏は赤い球体から覗く生暖かいその視線に気づく。
それは鈴も同様であったらしく、その視線の主に気味の悪そうな顔を向けていた。が、その視線の主はそれを意にも解さないようで、ニコニコと笑い続けていた。
「…何よ、蘭。気持ち悪いわね…」
「…。ずいぶん機嫌がいいな蘭。何かいい事でもあったのか?」
一夏と鈴音。二人の問いに、蘭はさらに笑みを浮かべた。
「ふふふ。いえ、鈴さん、一夏さん。あまり気にしないでください。ただ―――」
そう言って、蘭の笑みは、なんとなく楽しそうな笑みから、どこか慈しむような笑みにその本質を変化させた。
それはどこか、昔を懐かしむような、もしくは変えられない過去を後悔するような。
そんな、叶わない願いを胸に抱いた、普通の女の子の笑みのようだった―――。
「ただ―――。変わらないこともあるんだなぁ…って、思っただけですから」
けれど、結局一夏達は、その笑みが意味することを理解することは、できなかった―――。
*
午前二時五十一分。
韓国軍は、これまで舐めてきた相手が眠れる獅子であったことを知る。
ISS(インフィニット・ストラトス・セカンド)の到着まであと、一分。
今回のパロディネタ集
♯001
上司の責任は部下のもの。部下の命は上司のもの
/ドラマ「半沢直樹」の 香川照之演じる大和田暁の言葉。
本来は「部下の手柄は上司のもの、上司の失敗は部下の責任」それをさらに極悪にした台詞。
次は「倍返しだ!」も使うかもしれません(#^.^#)
♯002
死せる飢狼
/進撃の巨人のOP「紅蓮の弓矢」の歌詞の一部。
これはそれほど説明はいらないだろう。とらわれ~た~く~つじょくは~♪
♯003
「…。ずいぶん機嫌がいいな蘭。何かいい事でもあったのか?」
/<物語>シリーズの忍野メメのセリフ。
本来は「阿良々木くんは元気いいなあ。何かいいことでもあったのかい?」
これぞ忍野メメの決めゼリフである(ドヤッ