お久しぶりです。とりあえず短いのを一つ。
数分後にもう一つ短いものを投稿します。
ですが先に謝らせていただきます。どちらにも原作登場人物は登場しません。ごめんなさい。
それではとりあえずどうぞ。
□蠱毒(孤独)の少女
森の中には鈍い血の匂いが充満していた。
私は、自身の顔に飛び散った血潮を拭う。それは不快故ではなく、ただ、今後の作戦において支障をきたさないためであった。
目の前には、つい今しがた殺した二体の死体が転がっている。
そのどちらもが、殺した瞬間には、最初は何が起こったのか分からないといった顔をし、次いですぐに顔を絶望に彩らせ、そしてそのまま死んでいった。
だけど、私にとって、その表情はひどく見慣れたものだった。
私が育ったのは冷たく歪な施設の中だった。
まるで鑢でもかけたかのような鏡のような床。上を見れば何本もの太いパイプが蛇のようにうねっている。そんな人間味のない施設の檻の中が、私の部屋だった。
生まれてから太陽の光を見たのは数えるほどしかない。
そもそも、なぜ自分がそこにいたのかすら、私には分からなかった。物心がついたときにはそこにいたのだから仕方がない。
だから、その直径五キロにも満たない施設の中だけが、私の世界だった。
そこには、私以外にも何人もの人がいた気がする。
その誰もが自分変わらない。年端もいかない子供ばかりだったと記憶している。
私と同じ表情をしていた。何も考えない。何も思わない。ただ、無の感情を。
そして、その全員。ただの一人の例外もなく、今生きている人間はいない。
当然だ。全員、私が殺したのだから。
私は、施設で唯一生き残った人間だ。それは、自分と同じ人間を何人も殺したからだ。そうやって、強要され私はこの日まで生きてきた。
施設には決まりがあった。一週間に一度。私たちは人を一人殺さなければいけなかったのだ。
けれど、そのことに私たちが疑問を感じることはなかった。
だってそれが、当然の事だったから。
気がつけば、私の周りには誰もいなかった。でも、悲しいとは思わなかった。だってそれが、当然の事なんだから。
だけどやはり、心の中で虚無感を感じていたのは確かだった。何か大切なものを無くしたような、そんな虚無感を。
それが心と呼ばれるものなのか。それとも私自身なのか。はたまた人間性と呼ばれる何かなのか。
その答えを知る術は、今の私にはなかった。
『一番。応答せよ』
「…。こちら一番。現在、敵IS二機を撃破。おそらく斥候だと思われます。操縦者は殺害。ISコアの回収も完了。指示を」
『了解した。では、これより次の任務を言い渡す―――』
だから、私は今でも人を殺し続けている。
だってそれしか、私は生きる理由を知らないから。
「…。命令受諾。これより作戦行動に移ります」
『偉大なる閣下のため。健闘を祈る』
「…。了解。偉大なる閣下のために…」
私は、機械。正確に、そして何よりも早く。そうプログラムされた歩く殲滅兵器。
だから知っている。私は、自分が消耗品だということを。
今回下った命令で、私が生き残る確率は、ほぼゼロ。死ににいくようなものだった。
だけど、疑問は何も感じない。
だってそれが私という“兵器なのだから”。
*
そういえば、頭の中でいつも私を優しく呼ぶ人がいる。あれはいったい、誰なのだろう?