ISS 聖空の固有結界 ~IS学園編~   作:HYUGA

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 お久しぶりです。とりあえず短いのを一つ。

 数分後にもう一つ短いものを投稿します。
 ですが先に謝らせていただきます。どちらにも原作登場人物は登場しません。ごめんなさい。

 それではとりあえずどうぞ。


第五話 蠱毒(孤独)の少女

 

 □蠱毒(孤独)の少女

 

 森の中には鈍い血の匂いが充満していた。

 私は、自身の顔に飛び散った血潮を拭う。それは不快故ではなく、ただ、今後の作戦において支障をきたさないためであった。

 目の前には、つい今しがた殺した二体の死体が転がっている。

 そのどちらもが、殺した瞬間には、最初は何が起こったのか分からないといった顔をし、次いですぐに顔を絶望に彩らせ、そしてそのまま死んでいった。

 

 だけど、私にとって、その表情はひどく見慣れたものだった。

 

 私が育ったのは冷たく歪な施設の中だった。

 まるで鑢でもかけたかのような鏡のような床。上を見れば何本もの太いパイプが蛇のようにうねっている。そんな人間味のない施設の檻の中が、私の部屋だった。

 生まれてから太陽の光を見たのは数えるほどしかない。

 そもそも、なぜ自分がそこにいたのかすら、私には分からなかった。物心がついたときにはそこにいたのだから仕方がない。

 だから、その直径五キロにも満たない施設の中だけが、私の世界だった。

 

 そこには、私以外にも何人もの人がいた気がする。

 その誰もが自分変わらない。年端もいかない子供ばかりだったと記憶している。

 私と同じ表情をしていた。何も考えない。何も思わない。ただ、無の感情を。

 

 そして、その全員。ただの一人の例外もなく、今生きている人間はいない。

 

 当然だ。全員、私が殺したのだから。

 私は、施設で唯一生き残った人間だ。それは、自分と同じ人間を何人も殺したからだ。そうやって、強要され私はこの日まで生きてきた。

 施設には決まりがあった。一週間に一度。私たちは人を一人殺さなければいけなかったのだ。

 けれど、そのことに私たちが疑問を感じることはなかった。

 だってそれが、当然の事だったから。

 

 気がつけば、私の周りには誰もいなかった。でも、悲しいとは思わなかった。だってそれが、当然の事なんだから。

 だけどやはり、心の中で虚無感を感じていたのは確かだった。何か大切なものを無くしたような、そんな虚無感を。

 それが心と呼ばれるものなのか。それとも私自身なのか。はたまた人間性と呼ばれる何かなのか。

 その答えを知る術は、今の私にはなかった。

 

 

 

 『一番。応答せよ』

 「…。こちら一番。現在、敵IS二機を撃破。おそらく斥候だと思われます。操縦者は殺害。ISコアの回収も完了。指示を」

 『了解した。では、これより次の任務を言い渡す―――』

 

 

 

 だから、私は今でも人を殺し続けている。

 だってそれしか、私は生きる理由を知らないから。

 

 

 

 「…。命令受諾。これより作戦行動に移ります」

 『偉大なる閣下のため。健闘を祈る』

 「…。了解。偉大なる閣下のために…」

 

 

 

 私は、機械。正確に、そして何よりも早く。そうプログラムされた歩く殲滅兵器。

 だから知っている。私は、自分が消耗品だということを。

 今回下った命令で、私が生き残る確率は、ほぼゼロ。死ににいくようなものだった。

 だけど、疑問は何も感じない。

 

 だってそれが私という“兵器なのだから”。

 

 

 

 

 

 

          *

 

 

 

 

 

 

 そういえば、頭の中でいつも私を優しく呼ぶ人がいる。あれはいったい、誰なのだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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