ようこそルイズさんアタリハンテイ力学の世界へ!!
それと外伝ではゼルレウス召喚を書いてみようかと思います。アンケご協力ありがとうございました!!
~ルイズside~
「ふぎゃっ!!」
ベッドから落ちたのかしら突然の衝撃に襲われて、おもわずぐっすり眠っていた私も目を覚ます…
寝覚めは自分でも驚く位に最悪で寝過ぎたみたいに身体がだるい。
瞼の向こうからうっすら感じる周囲の明るさからもう日が昇ってるのを感じると言う事は完全に今日は寝坊で遅刻かしら…
「ルイズッ!!」
起き抜けでボンヤリしていた私に今度は耳元から声をかけられると同時に体当たりじみた衝撃が襲いかかる。その下手人が姫様である事に気が付いたころにはようやく私の意識も覚醒を始めたのだった…
「ルイズルイズ、ルイズ・フランソワーズ!」
目を開いて最初に見たのは私の身体を掻き抱いた姫様のお顔で、その表情は血で汚れて涙でくしゃくしゃになっている。
その背後からは私を見下ろすようにして見守ってくれている可愛い私の使い魔達…そして私達を囲うように見守っている戦装束を纏った沢山のトリステインの貴族達。
「姫…様?」
『ウォオオオオォォォッ!!!』
辛うじて私が口を開くとさっきの戦場の中で上がっていたような歓喜の轟きが私の鼓膜を揺さぶった…
そうだ、思い出した…あの瞬間、私は姫様を庇って矢に射貫かれて…
「ルイズ!!あぁ、奇跡です!始祖ブリミルが与えたもうた貴女の使い魔は私達に何度奇跡をもたらしてくれるのかしら!?あの使い魔達こそ始祖の遣わした者に違い有りません!!」
「姫様…一体何が…?」
周囲の状況をまるで理解出来ていなかった私に喜びのあまりの興奮で話すどころじゃあ無くなってる姫様。そんな状況で私の前に歩み出て来たのはマザリーニ枢機卿だった。
「失礼、ミス・ヴァリエール貴女は姫様を庇い矢を受けた事で致命傷を負い…まぁ、残念な事に死亡したのです。」
「えっ?!」
枢機卿のお言葉に私の顔が混乱で引き攣った…確かにあの瞬間、矢を受けた事は覚えているけど私は今生きている…生きてるわよね?
「コホン…その後直ぐに姫殿下自ら治癒の魔法を施し、他にも総出で蘇生を試みたのですが成果は出ず諦めかけた時に…奇跡が起きたのです!!」
クワッっといったえらく力の入った表情で語る枢機卿だった、まるで私だけじゃ無いその場に居る全ての人に語っているみたいな力の入り具合。
「我々の力が及ばず貴女の死が確定したと思われたのはついさっき、その瞬間信じられない事ですが貴女の使い魔が地面から飛び出して貴女を突き上げたのです!
そして余りの事態に私が思わず顔を覆っている間、空に打ち上げられた貴女が地面に叩き付けられた瞬間、なんと貴女は傷を負うどころか息を吹き返したのです!!奇跡ですよ奇跡!!」
枢機卿の説明を引き継いだ姫様の言葉に私は思わず咄嗟に自分の左胸をまさぐった。
(無いっ!?)
胸がじゃあ無い、私にだって胸は有る!…そう、私を貫いた矢傷が綺麗さっぱり無くなっていたのだ。服には穴が空いてるしかなり血が出たのか着ていた白いシャツは左胸を中心に血まみれで肌に張り付いているからあれが幻だった何て事も無いはずだし…
そうして改めて勝利の喧噪に湧く周囲から視線をシルとゴルに向ける…相変わらず感情の読み取りにくい愛らしい瞳が私を覗き込んでいて、その時私は誰に聴かされたという訳で無くて魂で理解した。いえ、本能的にと言った方がきっと正しいんだと思う…
魚が泳ぐのも、鳥が飛ぶのも、人が誰かを愛するのも、私達が命を共有しているのだと言う事も…教わらなくてもそれは本能的に自然と自分の中に宿る理だ。それがシルとゴル自身の力なのか『リーヴスラシル』の力なのかは判らないけれど…
それでもジワジワと湧いてくる確かな実感がある…
以前、水の精霊がシルゴルをこの世界の理の外の存在だと言っていた…そして私自身もどういう因果か一度死を迎えて彼等と命を共有した事でそのハルケギニアの理から外れてしまったのだという実感が。
そうじゃ無いなら私の身体は地面に叩き付けられた瞬間潰れたトマトみたいになっている筈だ…
「ルイズッ、貴女と貴女の使い魔のお陰でトリステインは救われました、本当に…本当にありがとうございます!!」
もう一度姫様がお召し物が血に汚れる事等構わずに私を強く抱きしめ、枢機卿を始め将官の人達が戦闘の後処理を始める為に慌ただしく動きながらも私達に惜しみない称賛の声をかけてくれる…
私はかつては普通に魔法が使える、自分に胸を張れる立派な貴族になるのが夢だった…
それが何の因果か望外の使い魔に恵まれ、無能、ゼロ、そう蔑まれ続けていたのに走っていて気が付いたら英雄…
手放しで喜びたい反面で思う所は沢山ある…直接手を汚した訳では無いけれど私達、延いては私自身きっと沢山の敵を殺した筈だし、決してそれをしっかり覚悟して戦場に立った訳じゃあ無い。
今更ながらその事実が重く胸にのし掛かる…それでもこれが、これこそが私が手に入れた物が伴う重みという物なのだろう。
最早見る影も無く荒れ果てたタルブ平原を前に、私はそんな複雑な思いと共に私達が勝ち取ったトリステインの未来に今は喜びながら…姫様と互いの身体を抱き合いながら涙が涸れるまで…泣いた。
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奇跡の戦勝を成し遂げたトリステインの凱旋パレードは凄まじく王都だけで無く国中が湧いて盛り上がったそうだ。それに合わせて姫様も正式に女王へと即位をする事となった。
また、トリステインの危機に援軍を寄越す事が出来なかったゲルマニアと独力で国難を乗り切ったトリステインだ、当然の如く今回の姫様の婚姻による同盟は条件の見直しとなった。
それにしても厄介なのは元々ゲルマニアにもトリステインの国境近くには私とシルゴルの噂は届いていたらしい…けど今回の件でより詳細な情報が皇帝の耳にまで入ったらしくその辺りで興味を持たれたらしく外交ルートを通じてかなり食いつかれているらしい。近い内に直接会う事になりそうだ…
それとガリアからも今回の件で造船に風石等の輸出にかなり大きな動きが出たようでトリステインは相当の戦力の増強になるそうだ。
何でそんな重要な話が私の耳にまで入ってきたかと言えばそれらの件に関しての支払いが殆ど私が受け持つ事になっているからだ…
私はパレードには参加しなかった…いつの間にやらトリステイン王国の守護聖獣として認定を受けていたシルゴルが王都の中に大きさ的に入れなかったし私としても正直遠慮したかった。
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「シル、ゴル。お待たせ。」
私の呼びかけに応じて青々とした芝生に横たえていたその巨体を二匹はゆっくりと持ち上げた…
雲一つ無い晴れ渡った空の下、吹き抜ける爽やかな風…
あの闘いの後で沢山のメイジの手で労いの意味を込められて丹念に磨き上げられた二匹の身体には一切の傷も汚れも存在しない。
劇的なタルブ戦役の勝利、その立役者として祭り上げられながらもあれからようやく戻って来れた学院敷地の外に作られた二匹の縄張りにシエスタを伴って改めて私がやって来たのは王宮からのシルゴルへの報償、その一部が届いたからだった。
山のような肉、穀物、肉、肉、魚、肉、肉、魚、肉、肉。
その総量はシエスタ曰くタルブ村だったら数年は何も心配なく暮らしていける量だとかで。
タルブと言えば領主のタルブ伯が戦死したらしくその一帯は王家直轄領となりその復興も直に進むらしい、私に今回の報奨として譲渡の話も上がったけれどそれは流石に私の方から辞退させて貰った。
姫…今は女王陛下が言うには残念な事だけど近い内にまたアルビオンと決着を付ける為にも戦争自体は続くらしい…様々な動きがある以上はっきりした事は分からないけれど…
それでも私達が勝ち取った一時の平和はまさに貴重な黄金の時間なんだろう…
「さぁ、ご飯の時間よ!!」
だから今だけは私は私の可愛い使い魔達を精々可愛がる事にしましょうか。
まるで最終回みたいだなー(棒)
これで第一部が完結と言う事で、きりの良い所まで書けましたしお気に入りも1000件突破で当初自分の中にあった目標をばっちり達成出来て嬉しく思います!!拙い作品ですが読んで下さった方々には格別な感謝を。