覇種の使い魔~輝輝臨臨~   作:豚煮込みうどん

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今回で終わらせようかと思ったけどやっぱり分けました。どうせ次回がやりたい放題だから今回はシリアヌスオンリー
ワルドじゃシルゴル相手に相性悪すぎてどうにもならないよー。
もう完全にオーディーさんは眼帯付けたooのサーシェスですね。

よろしければ外伝アンケの方もお願いします。

英語間違えてたので修正



緊急アルビオン迎撃戦 主杖使い魔有り 弁当無しココ!@2

「ハァッ…ハァッ…」

 

呼吸を荒げながら馬の手綱を駆り、丘を越え森を抜けて、ルイズはようやくタルブの平原を一望できる小高い丘に辿り着いた。

 

「…これが…戦争…」

 

目の前で繰り広げられるトリステイン軍とアルビオン軍の戦い、遠く見えるタルブの村の方角からは火の手が上がっているのか黒煙が空へと登っている…

村からだけじゃ無い、戦場のあちらこちらから火の手が上がり土の巨人達がまるで死神の列を成すように進み、其処に突撃していく無力な兵士達…

 

それら全てをまるで嘲笑うかのように上空から見下ろすアルビオンの戦列艦。

 

(行かないと…姫様の元に!!)

 

しかしルイズの胸の中にはその一念で一杯だった。己に何が出来るのか?等は一切考えない愚直なまでの前進。

 

逃げない事こそが貴族なのであり、ルイズ・フランソワーズは貴族なのだ、どうしようも無い程に誇り高い貴族…

 

その強い信念が初めて見る戦場という恐怖に止まり掛けた足を突き動かす。

 

 

 

 

~アンリエッタside~

 

アルビオン軍の奇襲の報を受け、会議場で踊るばかりの諸侯に見切りを付けて戦装束に袖を通して戦場へと駆けだした私でしたがやはり…話として聞く物と自分の肌で感じる物は大きく異なるのだと今さらながら痛感しています。

 

「戦況はどの様になっていますか?」

 

「…厳しゅう御座います。地上では我が方が優勢、しかし制空権を押さえられているのが…ガリアから購入しました戦艦かゲルマニアの援軍が間に合えっていればまた状況も違ったでしょうが…」

 

共に本陣に立ちながら傍に控えたマザリーニの苦々しそうな言葉に戦況が芳しくないと言う事が伝わってくる…私には手にした杖を強く握りしめる事しか出来ない。

 

「せめて後5日…いや、斯様な卑怯な奸計でさえなければ十分に押し返せそうなものを…我が国の軍備増強を警戒してこの様な蛮行に及んだというのであれば何という皮肉だ…」

 

マザリーニが言っているのはルイズが送ってくれた義勇金の事ね…確かにトリステインが急速に力を付けた事で彼等アルビオンが焦りを覚え形振り構わぬ卑怯な手に出たという事もあるかも知れないけれど…

アレは私の友人が示してくれた友情と忠義の形…私は国を率いる王族としては未熟ではあるけれどそれを理由に逃げる事はもう許されない。

 

「成る程…つまり。」

 

だからこそ私は振るえる手に力を込めて、引き攣る頬で微笑んで。

 

「この戦端さえ凌げれば、トリステインは彼の賊国に勝てると言う事ですわね?」

 

精一杯に明るく言って笑うのよ。

 

「昔、貴方に授業で教わりましたわね…王族の将としての戦場での仕事は堂々と座って笑顔で自軍の勝利を信じる事だと…」

 

一瞬キョトンとしたマザリーニ枢機卿の顔が私の言った言葉を理解して笑った…

 

「皆の物!!此度の戦にはアンリエッタ王女殿下自ら御出陣されておるのだ、始祖の加護、王家の加護は我等にある、より一層奮起せよ!!」

 

年甲斐も無く大声を張り上げたせいで喉を痛めたのかしら喉をさすりながら再び私を見上げて意地悪そうに笑う枢機卿…

 

「伝令!敵左翼で行使された土の魔法で戦場一帯が砂漠化、騎馬隊歩兵隊が飲み込まれ相当の被害が出ました。」

 

本陣に飛び込んで来た物見の兵からのその報告に将兵の間が騒然となった…

 

 

 

~オーディーside~

 

(こりゃあ楽勝だなぁ。)

 

「それにしても見当たりませんねぇ団長。」

 

最前線で歩兵隊や騎馬隊同士がご苦労な事にぶつかり合いを始めたのを後方から眺めながらさっきからヴァリエール家とやらの旗印を部下共に命令して探してるんだが忌々しい事にさっぱり見当らねぇ…

 

「うるせぇ、口動かす前に仕事こなせぇ…」

 

椅子に座ったまま最前線に送ったゴーレムを操ってる部下のサルモスの後頭部をブーツで蹴る。

 

光栄にも我等がバトラス傭兵団が偉大なるクロムウェル皇帝陛下から下された命令はアルビオンの非メイジの部隊を指揮してトリステインの左翼を攻め落とす事…なんだがはっきり言って楽勝だ。

そもそも戦闘が始まる前の段階で部隊の展開が終わってる上に制空権とってるこっちに勝てると思ってるのかね?トリステインは。

 

ちょっと気になるのはお空の上でワルドの部隊相手に大暴れしてる…アレは『冥雷』か?生きてたのか?まぁあの調子で魔法使ってれば直ぐに精神切れで墜ちるわな。

 

そんな訳で俺の目的はこの間耳にした噂、ヴァリエールの黄金魚とやらだ。ヴァリエール軍の人間が居ればそいつをとっ捕まえて拷問していろいろ吐かせてこの仕事が終わったらちょろっと頂戴しに行きたいんだが…見当らねぇ!!

 

「やっぱり来てないんですよ。ゲルマニアとの国境側らしいですからね、真逆ですよ真逆。」

 

「うるせぇよ。」

 

と、そうこうしてたら前線で赤色の狼煙が上がった。どうやら準備が整った様だ…ヴァリエールの無限財の情報は手に入らなかったがしょうがねぇ。

赤い狼煙はつまり前線のトリステインの歩兵の主力連中が大体一カ所に集まったという合図だ。

 

「それにしても本当にいいんですか?絶対味方巻き込みますよ?」

 

「あ?そうかお前知らないんだったな…最前線の囮の連中な、殆どが皇帝様の虚無魔法で蘇ったゾンビなんだとよ。」

 

「…マジですか?ていうか殆どって事はそうじゃないのもいるんですよね?」

 

ひよっこの癖にいちいち細かい事を気にして五月蠅い奴だ…どうせ前線の歩兵なんざ殆ど死ぬんだ。俺の魔法に巻き込まれて死のうが敵に殺されようが大して変わらん。

むしろしっかり囮になってくれりゃあよっぽど犬死によりは上等だろう?

 

この前ワルドの奴から皇帝が死者を蘇らせていたなんて話を聞いた時は本当に笑った。何が虚無だ、何が皇帝だ、ペテンの匂いがプンプンしやがるぜ。

 

腰掛けていた椅子から立ち上がると俺は杖を地面に突き立てる。

 

「『アントリオン』」

 

地面を半径1リーグの級の巨大流砂に変える要はまぁ派手な錬金だ…俺の砂食いって二つ名はこれから来てる。

見てみれば範囲内に居た人間は全員砂に身体を取られて徐々に沈んで行ってやがる。

で、それで終わるのは魔法が使えない平民の皆様で魔法が使える貴族様はどうするか?そりゃあ慌ててフライで脱出するわな。

 

「やれ。」

 

俺の命令で射撃体勢に入っていた鉄砲隊と弓隊、メイジ隊が一斉に攻撃を放つ。フライを使ってるせいで魔法が使えない空中で面白いように撃たれて落ちて砂に飲まれていく貴族共…

 

ん?足下が砂になったせいでこっちも進めないって?

 

だったらこうしよう…

 

 

「それじゃあ、お休みトリステインの皆さん。『錬金』」

 

砂を錬金して土に戻してはい、お終い。皆殺しならこいつに限る…

 

「大分精神力を使った、俺は後方に下がって休むぞ。お前らは戦果あげてこい!!」

 

『オオオォォォッ!!』

 

盛り上がってるねぇ…

 

 

 

 

~ルイズside~

 

 

そこかしこに負傷した兵が呻き声を上げながら治療を待って倒れているし私よりも小さな丁稚らしき男の子が必至な形相で書簡を持って駆けて行く。

砲弾を積んだ荷車が行ったと思えば矢で射られたのか血を流す兵士が荷車で戻ってきた…

 

「姫様は何処へ居られるか!?」

 

本陣にようやく到着した私は姫様を探して人が混み合う天幕の間を姫様を探して走る道中、宮廷貴族を見つけた私は怒鳴りつける様に問いただしていた。

 

制空権を取られてる上に前線が崩れたお陰でトリステイン軍全体が混乱を始めている。その貴族も切羽詰まっていたのだろうか一際高い天幕の方向を指し示すと直ぐに馬に跨がると兵を率いて走って行ってしまった。

 

 

「姫様っ!!」

 

「ルイズッ!?何故貴女が此処に!?」

 

私が姫様の天幕の前に駆けつけると姫様は丁度ユニコーンに騎乗している所だった。そのお姿はいつもの美しいドレスでは無くて白百合の意匠が刻まれた戦装束…

 

「前線に赴かれるのですか?」

 

声が震えた…

 

「…前線が崩れ始めたそうです…士気の高揚の為には私も本陣に引きこもって居られません。ルイズ…貴女は何故来たのですか?」

 

「不祥の身なれどこのルイズ・フランソワーズ、王家の従僕にして姫様の親友…姫殿下が戦場に赴くならば戦場に、それが例え竜のアギトの中とて躊躇いはありませぬ、許されるならば御身の御側に仕えたく思います。」

 

不安げな、それでも強く自分を律する様な姫様を前に私はいつの間にか無意識に片膝をついて臣下の礼をとっていた…

 

 

 

 

 

 

 

「誰か馬を持てっ!!」

 

頭を垂れたままの私の耳に姫様の声が響く…

 

「顔を上げて下さいルイズ・フランソワーズ、私は今まるで万の援軍を得た気分です。始祖に感謝しなくてはなりません、私に貴女という友人を与えて下さった事に。」

 

姫様が微笑みながら私の手を取ると兵士に引かれて一匹の馬が私の隣にやって来た。

 

「この戦に敗れればトリステインの国土があの無法者共に荒らされます、各員此処が正念場です奮闘せよ!!」

 

『オォォォッ!!トリステイン万歳!!アンリエッタ姫殿下万歳っ!!』

 

姫様の関の声に続いて無数の兵が轟きの声を上げると改めて進軍を開始する。

その先の大地には左翼から食い破られ、後退を余儀なくされたトリステインの歩兵部隊とそれに迫るアルビオンの部隊

その上空には一進一退の竜騎士隊と決死の闘いに挑むトリステイン空軍と圧倒的な巨体でそれを迎え撃つ敵旗艦レキシントン号

 

 

それは決して負けられない絶望との闘いで…

 

砲撃が…

 

行軍が…

 

戦場の空気が…

 

その全てが大地を揺らす…

 

 

その揺れが私達の足下で最高潮の達した時…

 

 

足下から現れたのはあの春の使い魔召喚の儀式の日と同じように地面から天に昇る金と銀の輝きだった…

 

 

 




『オディバトラス』アカムトルム、ウカムルバスと同骨格を持つ砂漠の飛竜。最初は撃退、ランク上がって討伐、更にその上に覇種と一粒で三度おいしいモンスター。
砂漠の砂を爆発させたり砂のバズーカ撃ったりジャガイモ掘ったりで砂遊びの鬼、尚全モンスターの中で武器の生産に最もお金を要求する事からかなりお金に汚いと思われる。
『アントリオン』=蟻地獄

みなさんお待ちかね!
亡者を率いて国民を襲うアルビオン帝国
それを操るクロムウェルに闘いを挑む為、ルイズの参戦が始まります。
しかし、その途中で出会ったメイジによってルイズはとんでも無いピンチに巻き込まれてしまうのです。

魔法召喚伝V・ルイズ『墜とせ!戦艦レキシントン』にレディ・ゴー!

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