マイナス一誠とシトリーさん   作:超人類DX

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すいません。
更新しといてアレですが、色々考えた結果、やはりオリ兄の立ち位置を変更しました。




徐々に掛かる逆補正
弱腰な弟と、何でも出来る兄


 今更だけど、この学園は女子が圧倒的に多い。

 俺等二学年の代から共学となったという事が主な理由なのだが、そのせいで男子は肩身が狭い思いをするという事はそんなに無い。

 というのも、この学校の男子はアグレッシブさが半端無いのだ……主に思春期的な意味で。

 まあ、クールを気取るつもりは無いけど、俺にはその思春期的な行動に理解は出来ない。

 だって、何であんなコソコソしてまで覗きだの何だのとする必要があるのか……只の余計な労働にしか見えん。

 金にもならんしね。

 で、まあそんな訳でこの学校はとにかく女子が多く、周囲の男子曰くレベルが高いとのことだ。

 言われてみたら確かにそうなのかもしれないし、特に騒がれてるのは3年の女子二人と1年の女子だったか……名前は知らんけど。

 

 

「ん?」

 

 

 何時もの通り朝早くに家を出て登校し、時間ギリギリまで屋上で意味無く黄昏れる俺はフトここから見える正門が何やら人が集まって騒がしいということに気付き、見てみる。

 こう見えて目は割りと良いと自負してるので、此処からでも正門の様子はよく見える。

 正門前で何やら男子が集団で騒いでおり、相変わらず同い年には思えないテンションの高さだなぁとかぼんやり考えながら見ていると、その男子達が騒ぐ理由が何と無くわかってしまった。

 

 

「あぁ、なるほどね……あの赤髪の外人とその御伴っぽい人達か」

 

 

 前に教室で寝ようとした時小耳に挟んだ話。

 駒王学園二大お姉さまと癒しマスコットどうのこうのという話だ。

 どうやら男子が凄い勢いで騒ぎ立ててる理由は、その女子達が正門から堂々とした足取りで登校してきたかららしい。

 赤髪の人を真ん中に、半歩程後ろに黒髪の人と白髪の割りと小さい人が歩いてるのが俺からでも見える。

 これは最早毎朝の恒例行事みたいなもので、ああして男子が騒ぐ度に生徒会の人達が止めに入ってるらしく、現に今は匙くんがてんやわんやしてるのが見える。

 ……残念なことに効果がまるで無いようだけど。

 

 

「何で三人の女子の人が来るだけで騒げるのかなぁ……」

 

 

 うぉぉぉっグレモリー先輩ばんざーい! だとか、小猫ちゃんヒャッハー! 的な声が聞こえる訳だが、俺には何故あそこまで騒げるのかが良く分からない。

 いやまぁ、確かにあの姫島だっけ? の先輩以外は珍しい髪の色しとるし、分かんないけど美人なのかもしれない。

 でもそれなら何故他の女子にはあそこまでテンションを上げないのか。

 いやだって、その他の女子の人達だって美人じゃないのか? とか疑問に思うんだよね、あの三人が現れる度にギャーギャー騒ぐ男子……というか良く見たら混ざってる女子も。

 本当に疑問で仕方ない。

 何故ああまで騒げるのか…………って、こんなんだから俺は駄目なんだろうな。

 他人を信用出来ないからその気持ちが分からないから。

 

 

「またあそこで騒いでますね……まったく」

 

「うぉっ……!?」

 

 

 少し理解すれば、マシな性格になれるのかなとボンヤリ考えながら三人組と騒ぐ連中を眺めていたせいで、いきなり隣から声が聞こえた俺はビックリしてしまう。

 

 

「な、何だセンパイか。ビックリした……」

 

「随分とあの三人を熱心に見てましたからね。

私みたいな地味女に気付けないのも仕方無いですよ」

 

「え?」

 

 

 ビックリした影響でちょっと血圧が上がっているのを自覚しながら手摺に身体を預けて下を見ていた俺と同じ体制をしていた支取センパイは、何か少し変な様子な気がした。

 何だろう……何時もよりツンツンしてる? というのか。

 

 

「えっと……?」

 

「何ですか? あの三人に比べたら地味で口うるさいだけの女に何か?」

 

「え……ぁ……すいません……」

 

 

 やっぱりそうだ、ちょっと怒ってるよこの人。

 思わず謝ったけど、おかしいな……センパイから貰った個人授業の課題はちゃんとやったし、この通り遅刻もしてないのに……あれ?

 

 

「いえ……ごめんなさい。

今のは私が悪いです……一誠くんは何も悪くないです……」

 

「いや、でも……何か気に触る真似をしたなら謝ります……すいません」

 

「違うんです。一誠くんが熱心にあの三人を見てたので、少しヤキモチを……」

 

「は?」

 

 

 つっけんどんかと思えば今度はちょっとシュンとして謝る支取センパイは、どうにも俺がキャーキャー言われっぱなしの三人を見てた事が気に入らなかったらしい……。

 見ちゃ駄目だったのか……。

 

 

「はぁ……いやほら、何であの三人だけはアイドルグループ宜しくに騒がれとるのか考えてたもので……」

 

「それが解らないと?」

 

「えぇ、確かにあの人達って目立つ髪とか姿をしてるとは思いますけど、他の人達だって騒がれるだけの姿してるんだから、ああも大袈裟に騒ぐ理由は無いんじゃないかと個人的に……」

 

 

 まだ下ではキャーキャーキャーキャーと近くで聞いたら確実に耳を塞ぐレベルの音量で騒いでいるのが聞こえる中、俺は入学してからずっと疑問に感じていた事をセンパイに話した。

 するとセンパイは何故か知らないけどちょっと呆れ顔になる。

 

 

「あれ、俺今変な事言いました?」

 

「いえ……何というか本当に変わってますよね、一誠くんって」

 

「ええっと……それは何ですか、褒めてるんすか?」

 

「まあ一応……」

 

 

 肯定する割りには言葉を濁して居るセンパイの態度に俺は微妙な気分だ。

 別に普通に褒められても何も思わないけど、どうしてか最近はセンパイが俺に対する評価はどうなのかとかが気になってる。

 なので、この微妙な態度で褒めてると言われても変にモヤモヤするというか……。

 

 

「一誠くんってどんな子供でしたのか気になる所です」

 

「どんなって……兄に対してコンプレックス抱き過ぎて中途半端に半グレ気取る様になった――ただのアホ?」

 

 

 5歳のあの時から、俺はひたすら周囲に対して無駄に怯えていた。

 それまで見ていたTVも、読んでいた絵本の何もかもも信じられずに見たり読まなくなって12年近く経つ。

 自分の家の部屋には寝る為の布団と勉強机と少しのボードゲームとかしか無いお陰で、現在の総理大臣が誰なのかぶっちゃけ曖昧だったりする。

 だから多分、センパイが疑問に思ってる『モノへの判断基準のズレ』はこういう生き方をしてしまったからだと思う。

 だから周りが『あの人は美人だ』と騒いでも俺はピンと来ないし、最近あの兄と名乗る男とよくツルんでる男子二人がよく持ってくる青年雑誌を読んでも多分何にも思えない。読んだこと無いけど。

 それは、一般的に考えるとやはり異常な事らしく……もしかしたら俺は精神に病気でも抱えているのかもしれない。

 

 

「まあ、あの兄があんな感じで俺がこんななのは確かに変ですよね……あはは」

 

 

 その事に関しては自覚はある。

 けど、こればかりは生きなり沸いて出た様に現れた兄と名乗るあの男が原因だとしか言えないし、それを誰かに言っても信じて貰える訳が無いので言えずに溜め込むしかない。

 だからこうやって笑って誤魔化すしか俺には……出来ないんだ。

 

 

「変では無いですよ。

仮に変だとしても、私は多分そこら辺に惹かれたんだと思いますし」

 

「あぁ、そっすか……」

 

 

 そんなのに真顔でこんな事を宣うこの人も中々変だと俺は思うけどな。

 何だよな、惹かれたって……何もしてないよ俺は。

 

 

「アンタって、ホント変な人だ」

 

「失礼ですね。これでも真面目な生徒会長のつもりですよ?」

 

「は、それが本当なら、ある程度俺のキャラを知った上で近付く真似なんてしないでしょうに」

 

 

 何でこの人って俺に此処まで優しくするんだろ。

 この前言われた事をずっと考えても、まだ分からないや。

 しかも、優しくされてる自覚があるくせに俺はまだこの人を信じられないとか……ホント嫌になるよ自分が。

 ハァ……。

 

 

「ん……?」

 

「どうしまし――あれは……兵藤君ですか?」

 

「……。みたいですね」

 

 

 解らないだらけで頭がパンクしそうになるのを感じながら、気分転換のつもりでまだ煩い下界に視線を落とすと、例の三人組があの男と何かを話しているのが見える。

 

「……………。リアス、随分と彼と親しいみたいね……」

 

「え?」

 

 

 何を話しているのかは俺には聞こえないし、奴が誰と関わりを持とうが関係無かったので視線を移そうとしたその時、隣で一緒になって見ていたセンパイが何やら腑に落ちない顔であの三人の内の誰かの名前……多分赤髪の人の名前を口にしていた。

 何処か親しそうな感じで。

 

 

「あの赤髪の人と親しいんですか?」

 

「え……? あ……まあ……」

 

 

 何と無くのつもりで聞いてみると、センパイは何処か言葉を濁す感じで頷くのが少し気になったが……その心の引っ掛かりは直ぐに別の出来事によって保留となる。

 

 

「あ? なんだ……此方を見てる、のか?」

 

「みたいですね。

兵藤君が私か一誠くん――もしくは二人ともを指差して何かリアス達に言ってるみたいですが……ふむ」

 

 

 あの兄を名乗る男と三人組が下から屋上に並んで立って見下ろしている俺とセンパイを見ているのだ。

 眼鏡掛けてるくせにやけに目の良いセンパイ曰く、俺とセンパイのどっちかを指差して。

 あんまり気分が良くないな。

 

 

「……………。『お・と・う・と・と・せ・い・と・か・い・ち・ょ・う・が・み・て・ま・す・よ』……と言ってるみたいですね」

 

「は?」

 

 

 突然一言一言を切る様に言葉を並べてるセンパイに俺はビックリする。

 

 

「いえ、ちょっとした読唇術を……」

 

「あ、アンタすげぇな」

 

 

 そんなことまで出来るなんて知らんかった。どこまでハイスペックなんだよこの人は。

 ただただ歓心するしかないよ本当――――あ。

 

 

「やばい」

 

「え、何がって……ちょ、ちょっと何で私の後ろに?」

 

「だ、だって下の連中が全員コッチみてる……さ、匙くんも」

 

 

 気付いたら下の奴等が全員俺とセンパイを変な目で見ていたので咄嗟に身を隠すつもりでセンパイを盾にするように後ろに隠れる。

 確かに俺と生徒会長が並んで屋上から見てたなんて変過ぎる組み合わせは彼等にとってアンバランスとしか思えないだろう。

 俺自身がそう感じてるしな。

 特に匙くんとかはエライ目して俺を睨んでるようにしか見えないし……あの男もリークしといて何でか知らんけど面白く無さそうな顔だし。

 今の此処は家より居心地が悪い。

 

 

「見られてるからってなんですか? 別に私は好きで一誠くんの傍に居るだけですし、彼等に文句言われる筋合いなんて……」

 

「セ、センパイはそうかもしれないけど、匙くんとかその他からすれば『何で落ちこぼれのバカが会長と居るんだよ』的な気分でしょうよ。多分」

 

 

 多分というか実際そうだろう。

 この人って知れば知るほど何で俺とツルもうとするか解らんくらいにいい人だし。

 そんな人が俺と屋上で黄昏てたとか、面白く無いに決まってる。

 で、それまで空気みたいな扱いだった俺が此処で目立つと、恐らく此処からめんどくさいことになる気がする……というか確実にそうなる。

 だって匙くん一人ですら辟易してたのにそれが一気に百人単位だぞ?

 上履き隠されたり、机を撤去されたり、体育館裏に呼び出されてボコボコに殴られるのには慣れてるが、出来ればそんなもんは避けて通りたい道なのだ。

 

 

「もう遅いですよ。

皆一誠くんだと思ってますよ?」

 

「お……遅かったか。くっそ、今日からまた面倒になるな……上履き代を毎週確保しないと……」

 

 

 センパイの言う通り、匙くんとあの男以外の全てが怪訝そうな顔で俺を見ているのが分かるし、今更隠れても遅い事は明白だ。

 つまり俺は詰んだのだ……。

 

 

「何を言ってるんですか、一誠くんはちゃんと私が守りますから、そんなにオドオドしないでください」

 

「いやぁ、それは有り難いお話ですけど、それはそれでスゲー間抜けというか……」

 

 

 センパイはそう言うが、して貰えば貰えばで奴等更に助長させちまうだけなんだよな。

 ……あぁ、これで上履きに画鋲は確定だな……あははのは。

 

 

「しっかりしなさい!」

 

「は、はい……」

 

 

 だと言うのに、俺は何でか知らないけどセンパイと縁を切ろうという気にはなれなかった。

 …………勿体無いと思ってしまってるせいで。

 

 

「文句なんて絶対に言わせないわ。一誠くんを好きになろうと私の勝手なんだから……!」

 

「あのー……そこまで評価して頂けるのは誠に光栄なんですけど、俺はその……どうしても臆病癖でセンパイに対しては――」

 

「構いません。絶対に一誠くんに認めて貰えるまで諦める気はありませんので!」

 

 

 ピシャリと言ったセンパイに俺は閉口してしまう。

 

 

「ぬぐ……何で俺なんだ……」

 

 

 やっぱり、他人の気持ちは良く解らないよ。

 

 

 

 

 

 

 

 一誠には友達が居ないと思ってたのに、この前ふとした拍子であの二人が居る所を見てしまった訳だが……。

 

 

「ソーナがセーヤの弟君と知り合いだったなんて……。

通りで此処1年位のソーナは妙に楽しそうにしてた訳だわ」

 

「何度か弟さんを見たことがありますけど、別にセーヤ先輩みたいに神器を持ってるようには見えませんでしけど……」

 

「あの御方にも考えがあるんでしょうかねぇ?」

 

 

 表向きは人気者の三人。

 だけど裏の顔は三人とも悪魔であるリアス・グレモリー先輩と姫島朱乃先輩、後輩の搭城小猫ちゃんは何でソーナ・シトリーとアイツが一緒に居るのかを考えているのだが、問題はそこじゃないんだよな。

 問題はソーナ・シトリーじゃなくて一誠であるのだから。

 

 

「アイツは恐らく彼女が悪魔だって事を知らないと思いますね。

で、恐らく知ったら……」

 

「どうなるんですか?」

 

 

 勿体振る様な口調の俺に、隣に居た学園1の癒し系マスコットこと搭城小猫ちゃん……いや、白音ちゃんが首を傾げているので、つい自然と彼女の頭を撫でながら俺は口を開く。

 

 

「……。怯えるだろうね。

アイツは他人ですら怖がってるし」

 

 

 何時の日から、アイツは俺は愚か父や母まで信用しない性格になっていた。

 その原因を聞こうにも、アイツは俺を避けるから聞けやしない。

 そんな奴がもしソーナ・シトリーさんが悪魔で人じゃ無かっただなんて知ったら、間違いなく彼女を傷付ける事を言うに決まってる。

 

 

「それなら、ソーナに言って彼に悪魔の事を教える様に言った方が良いと思うけど?」

 

「どうですかね……教えた途端、アイツの事だ『触るな化け物!』とでも言って彼女を傷付ける可能性が高いですよ」

 

「セーヤくんはすんなり受け入れたのにですか?」

 

「アイツと俺は性格が真逆ですから……」

 

 

 リアス先輩と朱乃先輩にも、これまで敢えて言わないで置いたオトウトの事を口にすると、何やら難しそうな顔をしている……。

 俺はとある事情で彼女達が悪魔な事を知っている……いや、俺も実際はリアス先輩との邂逅を経て転生した悪魔だ。

 

 

「ま、そんな難しく考えないでください。

一応上手い案を考えますから」

 

 

 だから此処から見える限りじゃ、屋上で何やらアイツに言ってるのが見えるソーナ・シトリーさんが悪魔なのも知ってるし、もしその悪魔だという事実をアイツが知った時、何て言うかなども予想が出きる。

 仲は良くないかもしれないが、それでもアイツとは兄弟なのだ。

 簡単なのは、アイツとシトリーさんが何かの拍子で絶交すれば簡単なのだが……。

 

 

「今更アイツの性格は変わらないだろうしな。

ひねくれものの臆病者だから……」

 

「弟くんなのに随分と辛辣ね?」

 

「弟だからですよ。昔から俺を憎んでる様な目でみてくるんですよ……あんまり良い気分はしませんでしたよ」

 

 

 アイツは独りが好きな筈なのに、ああも楽しそうにしているのを見ると、何かイライラするんだよな。

 理由は解らないけど……。

 

 




補足

訂正箇所
確かに神様転生ですが、彼にその自覚が無い。
普段の一誠の態度のせいで余り彼とは仲良く無い。
そして良い印象も抱いてない。
だから、理由も言わずに中学と共に家を出ようとした一誠にイラッとしてリークした。


今の所こんな所ですかね。
何かすいません。

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