えたってませんよ!
では
話が進めば進むほどに自信がなくなってきている第8話!(おい)
第8話
二手のもう一方、雪ノ下。
「おかしいわね……こっちであってる筈なのだけれど……」
雪ノ下は洋服店を見つけるために案内図を見て次の一歩から既に間違えていた。なまじ決断力がある分、間違いがどんどん大きくなるばかりで、一向にたどり着けない。
「結構時間がたってしまったわね……比企谷君はもう用事も終わってしまったんじゃないかしら……? いえ、私より早いなんてことはないはずよ」
彼よりも早く買い物を終わらせると決心を固めている頃にはもう既に比企谷八幡は迷い無く目的地へ歩き始めていた。
そもそも案内図にたどり着くまでに差が開いているのはどうもおかしい。目的の洋服店は違えどそこは同じになるはずなのだから。しかしそれが彼女、雪ノ下雪乃の力なのだ。八幡と同じようなチープそうな寝巻きしか売っていないであろう店には行きたくなかったのだ。いや、八幡と同じ選択を取るのが嫌だったのだ。その無理がカジュアルな店を選ぼうと言う考えにいたり、カジュアルも分からない、道もわからない雪ノ下はこうして迷子になった。
いや、言い訳はよそう。
彼女はそう、方向音痴なのだ。
もう一度案内図に戻ろうにもその道が分からない。どうやって生きてきたのかもわからないような、コテコテの方向音痴なのだ。
オロオロしているとナンパが寄ってくると経験で知っていた彼女はそれでも威厳を保った凛とした顔立ちでいるのだが。そのせいで本当に優しい道を教えてくれる人が寄ってきてくれない、というのもあるのかもしれない。
疲れたし休憩しようと、手頃なベンチに腰掛けると、金髪の少女とその取り巻きのような人が2人、計3人で群れをなす女子高校生が雪ノ下の近くを陣取った。その制服には見覚えがあった。とある高校で見かけたスカート。
「それで、隼人は、まだ来ないわけ?」
「軽いミーティングって言ってたからもうすぐ来ると思うよー」
「軽いミートィング……ぐ腐腐腐」
「あっ、擬態しろし」
「ミートで反応するとか……」
隼人……それが葉山隼人だと気づくよりも早く、本人が女子高生3人のところへ来た。正確には葉山隼人ともう3人いるが。
「ごめんね、遅れ……」
気づいても無視すればいいものを、葉山は反応してしまう、過去の経験からそれが失敗だと知っているはずだったのに。その性格が関与したいという意思から逃れられない。さながら未練のように。
「雪ノ下さん……」
「迷惑よ」
雪ノ下の尊大な態度が気に入らなかったのか
「アンタ隼人が話しかけてんのに!!」
「はぁ……ではあなたは葉山君の何なのかしら? 彼女? 執事? 取り巻き? なんでもいいわ。私が迷惑と言っているのにあなたがさらに迷惑をかけるというの?」
「あんたねぇ!!」
「まぁまぁ由美子……」
「あんただってなんで庇ってんの?! 友達があんな風に言われてんだよ!」
「友達? なら尚更質が悪いわね、友達と同調して私に迷惑をかけて、それこそ迷惑だわ」
「ちょっと雪ノ下さん、さすがに……」
分かっていない、と言うふうに睨みつけるが、気づいてか、気づいてないのか、他の6人に聞かれないように小声で囁くようにいう。
「うちの高校に入るなら、学校で出会った彼の迷惑にもなると思うけど……」
「はぁ……」
自分の悪評など毛ほども気にしない、気にしたとしても無視を貫く雪ノ下だが、八幡については負い目がある。葉山も『八幡でさえ知らない』ハズなのだが、雪ノ下を引かせるには十分すぎる言葉だった。
雪ノ下がこれ以上攻勢に出ないと思ったのか、雪ノ下の紹介をする。葉山の優しさなのだろうが、雪ノ下からすると迷惑でしかない。そういう展開を予見したからこそ最初に迷惑だと言ったのだが、それもわかっていない、そして葉山は差別的になるのが何より嫌いなのだ。
「彼女、雪ノ下雪乃っていうんだけど、新学期からはうちの高校に来る予定らしいから仲良くしてやって」
「あ、そうなんだー! わたしは由比ヶ浜結衣! よろしくね雪ノ下さん!」
「わたしは海老名姫菜、男子のカップリングを見るのが好きなだけな普通の女子高生だよ。ふつつかものですかどうぞ宜しく、ぐ腐腐腐腐」
「戸部 翔、とべっちって皆は呼ぶぜ!」
「誰も呼んでないだろ……」
後2人いたような気がするが、原作じゃ最近ほとんど出てこないから割愛しよう。あぁ、そうだ、大岡と大和だ。
「……えぇ、よろしく」
第一印象は、無いも同然だった。あぁ、またか。そんな風にだけ思った。中学時代、はじめの方は仲良くしようとしてくるけど、徐々に敵意を抱き、嫌悪してくる。またそういうタイプだろうと思った。
むしろ金髪の最初に突っかかってきた彼女の方が奇異で面白いと思った。
でも冷静になればそんなことをしている場合ではないのだ。洋服店を探してもうかなり経つ。
茶髪の由比ヶ浜結衣と名乗った少女が聞いてくる。
「雪ノ下さんは待ち合わせとか?」
「……いえ、洋服店に、用事がね」
しかしそれが墓穴だった。入口から入って洋服店を目指すなら絶対に通らないであろう道だったからだ。
ここによく来る彼らはそれにすぐ気付いた。
メガネをかけた黒髪の海老名姫菜が言う。
「洋服店なら由美子も行きたいって言ってたから今からみんなで行けばいいんじゃない?」
姫菜は雪ノ下を気遣っての事だったが、先ほど喧嘩した三浦の方にまで考えが及んでなかった。それをフォローするため葉山が三浦に確認するように視線を向ける。
三浦は雪ノ下に対して無視を決め込んだようで、承諾の色を見せる。
「え、あぁ、いいんじゃないかな?」
戸部もそれに乗る。
「じゃぁ、早速行こうぜー!」
その脇を警備員が走っていった。
店内が何やらざわざわして、駆け出していく人達に警備員が案内していた。
「なんの騒ぎかしら?」
「さぁ……?」
その時アナウンスが流れる。
「本ショッピングセンターにいるお客様、店内で爆弾を発見しました。落ち着いて速やかに警備員の指示に従って避難してください。繰り返します……」
「マジ早く逃げた方がいいんじゃね?? これ」
「そうだな、落ち着いて出口に向かおう、雪ノ下さんも」
なぜ三浦が執拗に雪ノ下を睨みつけているか分かっていないようだ。
「えぇ……」
一瞬脳裏に八幡の事を思い浮かべるが出口にかなり近くにいるから待っていれば出会えるだろう。
「さぁ、逃げるぞ」
「うん」
葉山を起点まとまりをもって無事に出口にこれたが、雪ノ下は落ち着いていられなかった。
比企谷八幡を見ていないのだ。
出入り口はここひとつだけだから見つかるハズなのだが…
店内に残っている人間がもうほとんどおらず、店外で群れているだけなのだ。しかしその中に八幡の姿が見つけられない。
「雪ノ下さん? 早くもっとはなれた方がいいよ?」
どれだけ首を回してもやはり、戻ってきていない。そしてついに我慢ならなくなり店内に戻ろうと走り出す。
「ちょっと雪ノ下さんっ!! もどったら危ない!キャ!」
人の壁にぶつかったわけではなく、逆走する由比ヶ浜を止める人がいたのだ。
第一印象は目が腐っている、同い年くらいの男子高校生。
「おい! 店内に今戻ったらあぶねえだろ! 落し物なら爆弾が取り除かれてからでも遅くねえ、早く避難しろ! 後、ガラスの近くからも離れとけよ!」
そう言い放ってすぐにその人も店内へ走り出した。
「あっ、ちょっと……」
少なくとも、雪ノ下のことを伝えようとしたのだが間に合わなかった。
「結衣、どうしたん?」
「さっき雪ノ下さんが走って中に入ってっちゃった……」
「は? なんで…」
どれだけ第一印象が悪かった相手だろうと、それで危ないところに向かうのを快く思うほど人間ができてない訳ではないのだ。
「わかんないけど……すごい青ざめた感じで」
しかし由比ヶ浜を行かせたり、自分の身を呈してまで探しに行く理由もない。由比ヶ浜が追いかけようとしたら止めに入ったに決まっている。
「……警備員に任せるしか無いっしょ。危ないから結衣も早く離れるよ」
「うん……」
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「あれ? 隼人は?」
「え? あれ? さっきまでいたんだけど…」
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勢い余って店内に戻ってきてしまったが方向音痴だというのに、八幡のいる場所などつかめる訳が無い。しかし、店内に人がいないことが幸いした。異様な静けさの中にあるこの店内だからこそ、音は反響し伝わってくる。
「………!」
音が聞こえた気がした。その方向を見てみると、少女がぬいぐるみを持って元気に走り回っていた。
反射的に追いかけようと体が動く。
「ちょっと、まちなさい! 危ないわよ!」
自分で言っておいて疑問に思った。店内アナウンスも、警備員の誘導もあってこの店が危険な状況にあることくらいは、文字通り小学生でもわかる。それなのに迷っているような素振りも見せず。明確な意思を持って走っていくように見えた。それが意味するところは、彼女の行く先に、何かが、誰かがいる。
そう思うと自然と追いかける速度が早くなる。
もしかして…
もしかして…
少女の先に数人人がいるのがわかる。
「おねーちゃーん」
その先に見たものは比企谷八幡。そして見たことがある男女と先程の少女とジャッジメントの腕章をつけた中学生。
ジャッジメントの中学生がなにか叫んだと同時かそれより早いくらいに八幡は走り出していた。それに続くようにツンツン頭の男も走り出す。
爆弾は、あのぬいぐるみなのだ。
ガキィィィン!
と甲高い音が鳴り響いた。八幡が何か細工をしようとしていたが、失敗したのだろう、振り向いているその顔は驚きと後悔の色に染まっていた。しかし雪ノ下に気づかない。
「私にも気づかず、何をそんなにのんきな顔をして……」
雪ノ下は何故か苛立ちを覚えていた。
ぬいぐるみの軋みが一定の許容量を超えた気がした。
全然うまいことかけへん…
もっとこう、読んでて調子が乗ってくるような、惰性で読まないような文章を書きたい。