やはり俺の学園都市生活はまちがっている。   作:鴇。

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シリアス雰囲気から入って、サクッとシリアスから抜けていきますが。こういう手法は宜しくないんでしょうかねぇ。
ゲーセンの当たり台の説明も少しばかりありますので、ゲーセンでよく遊ぶ人は参考にしてみてください。、



若いからゲーセンに来るんだよ、若いからなー!

第25話

 

 

 ゲームセンターでモン〇ンのプッシャーゲームをプレイし始めて数分の頃、一色が御坂妹に届かない程度の声で話しかけてきた。

 

「先輩はその子のことどこまで知ってるんですか?」

 

 俺が御坂妹のことで知っていることと言えば、クローンであり、何度も殺されているらしいこと。ただそれだけであり、本質的には何も知らない。

 

 なぜ殺される運命にあるのか。何のために殺されているのか。

 

 結局、何も知らないのだ。その上、知るべきでさえないと思っている。

 

 雪ノ下雪乃が家族から逃げて俺の部屋に来た理由、雪ノ下雪乃の姉である陽乃がここにいる本当の理由、雪ノ下の家族はこのことを知っているのか。

 アレイスターのこともそうだ。連絡が来た番号にかけ直しても違う人間にかかる。何が目的か、小町をあんな遠まわしに呼び寄せた理由も分からない。

 

 そもそも、なぜ俺が原石となり、その発展型とも呼ばれるような能力を持っているのかも。

 

 

 俺は何も知らない。

 

 

 

 

「何も知らない。俺は、何も分かっていない」

 

 

「そうですか。では、最低限、先輩が知るべきことを教えます。二度は言いませんのでよく聞いていてくださいね」

 

 決心はついていなかった。そもそも、自分が何をしたいかすらも分かっていないのだ。

 

「彼女は、彼女達は学園都市に7人しかいないLEVEL5のトップ。一方通行のレベルアップの糧として、殺されるために生まれてきました」

 

「一方通行……」

 

 一方通行。

 

 この街で最強であり、巷で噂されるにこうある。

 

 攻撃したらその全ては自分に降りかかる。

 

 挑んだ不良達の数は星の数程。その全てにおいて無敗、どころか無傷。

 

「その様子だと、察してはいるようですね」

 

「まぁ、なんとなくだがな……」

 

「まあー、先輩の自由ですけど、下手に関わろうとすると、死にますからね」

 

「そんなつもりは……」

 

 無いのか? 無いならなぜ関わった。そんな自問に答える声は無い。ただ胸の中で反芻され、空虚な自分の心を自覚させるだけだった。

 

「俺に限らず人間は自分が一番大事な生き物だ。他人のために死ぬような事をするわけねえだろ」

 

「いや……確かにそうかもしれませんけど、言葉にすると先輩完全にクズですよ?」

 

「認めるならお前も一緒だろ」

 

「何言ってるんですか、私は可愛い乙女ですよー? そんなこと思うわけないじゃないですかー?」

 

「お前いつか誰かに背中刺されるぞ……」

 

「そうなったら、ちょろいおと……先輩に守ってもらいますよ」

 

「いやお前、ちょろい男って言おうとしなかったか!?」

 

 この子既にいろんな恨みを買ってそうで怖い。ある意味雪ノ下より怖いかもしれない。

 

「そんなこと言うわけないじゃないですかぁ〜」

 

 思っていないとは言ってませんね、はい。

 

「話を戻すが、なんでお前は知ってるんだ?」

 

「えへへ」

 

 えへへ!? お兄さんは、ちょっと使いどころが違うような気がするな!

 

「女の子に秘密は多いほどいいんですよ?」

 

「聞いたことねえよ……」

 

 とぼける一色にこれ以上聞いても無駄だろう。そもそも今は一色に関してはどうでもいい。

 

「話は終わりましたか。今いい流れのような気がしますよ」

 

 そう言う御坂妹の目の先にはメダルの山、ではなく、ボールがあった。このボールを3つ落とせばジャックポットのチャンスが来るというやつだ。現在、俺達の筐体では既に2つ落ちている

 

「あっ、先輩そろそろこれ落ちそうじゃないですか?」

 

「マジ? ひと狩りいっちゃう?」

 

「まだ決まった訳ではありません。ここからが大事なので喋らないでください」

 

 まさかの私語厳禁である。

 冷めたような御坂妹がメダルゲームに熱中しているのはそれはそれで面白いが。

 

 メダルゲーム、特にプッシャーゲームにおいて、プレイヤーの勝率は限りなく低い。引き際を謝れば絶対的に、『呑まれる』ようになっている。

 

 おそらく、この筐体は『ハズレ』だ。

 台選びの時点で怪しくはあった。御坂妹が選んだ台をわざわざ避けて違う台を選ぶのは気が進まなかったからそのまま座ったが。やはり怪しい。

 

 俺が台に座った時、スーパーシャックポットの進行率は3分の2、イベントのためのボール蓄積は既に2だった。そして、台に出現しているボールは2つ。

 御坂妹はスーパーシャックポットの進行率でこの台を選んだのだろうが、経験から言わせてもらうと、未だ落ちていないボールの数が少ないのだ。

 

 これが意味するところは1つ。この台の前プレイヤーが、勝ち逃げしていった。

 

 イベント成功後メダルが山ほど落ちてくるが、ボールに関しては落ちてこない。延々とメダルだけが落ちてくる。

 その間、大量のメダルに押されて、ボールが数個落ちる。

 そしてイベント終了後、無けなしのボールがひとつ落ちてくる場合が多い。

 

 今現在俺達の台にあるボールは2つ、1つは前プレイヤーのイベン終了後のボールで、もうひとつはこちらのルーレットの当たり。

 

 経験上、圧倒的に少ないのは言うまでもないことだった。

 

 更にこの事実を決定づける事があった。それはアイテムの数だ。

 このモンハ〇のプッシャーゲームではアイテムがモンスター討伐、ジャックポット成功の鍵となるのだが。この台には無い。

 それは前プレイヤーが使い果たした後に俺達がプレイしているということだ。

 つまり、ジャックポットは確実に行われた。ということだ。

 ジャックポット後、筐体のメダル回収率が上がるのは、なんとなくわかるだろう。その上、アイテムがないならジャックポットが来ても成功し得ないということだ。

 

 完全に負け戦である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう思っていた時期が俺にもありました。

 

 

「発電系能力者の強みは、電子という原始的理屈の操作による汎用性の高さにあります」

 

「……もしかしてお前、クラッキングするつもりか!?」

 

 発電系能力者ならば機材に触れずにコンピュータが操作出来るとでもいうのか。できるとすればあらゆる電子機器が簡単に悪用出来てしまうが。

 

「流石にやめた方がいいんじゃないですかねぇ……」

 

 さすがに悪女一色もこの通りだ。

 根は真面目だが悪友がいる人間の典型的とも言える正義論。

 『犯罪だけはまずい』だ。

 

 

「いえ、クラッキングではありません。そもそも直接触れたりしないと操作できないので」

 

「じゃぁ何しようとしてんだよ」

 

「緩やかに動くパチンコのパネルを操作します」

 

「……いやあれ、プラスチック系の素材のような気がするんだが……」

 

「そのようですね」

 

「おう……まぁ、それにしたって犯罪だし、出来なくて良かったと思うぞ」

 

 一色が安堵の息を吐いている。

 

「しかし、プラスチック製のパチンコのパネルを動かす機材はどうでしょうか」

 

「いや、まてまてまて、諦めような。普通に犯罪だから!」

 

「ですが……」

 

「いや、ほら、店員さんも巡回してるし、ここには能力者はやまほどいるんだから、そういう時の対策もあるかもしれないしな?」

 

「先輩に御坂さん、もう入ってますけど」

 

 言い争っているうちにボールは穴に入ってしまっていたようだ。

 ハズレ、だ。

 

「あーあ、先輩全残ダメじゃないですか〜」

 

「むぅ……純粋に運で当たりに入れるのは至難の業だと思うのですが。これはいわゆるクソゲーではありませんか?」

 

「メダルゲームはそんなもんだ、基本飲まれることを前提として遊ぶんだ。勝ってもパチンコとは違ってお金にはならないしな」

 

「そうなんだよ比企谷!!」

 

 突然背後から首を締め上げられた。

 一瞬全力で抵抗しかけたが、声の主には聞き覚えがあり、緊張を解いた。

 

「何してんすか平塚先生……」

 

 

「見回りというのは大変だなー、こういうのはいつも若い人間の仕事だからなー、若いからなー!」

 

 完全に職務放棄だった。




平塚先生ゲーセンとか好きそうだもん。最初はむしろ平塚先生メインで行くつもりだったんだもん。

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