ところで一番鬱陶しいのは、扇風機だけじゃカバーできない暑さで、エアコンをつけるには寒い。って感じの夜です。
では
エピローグとコンビニは野獣が住みて
第21話
エピローグというのか。後日談というのか。ざっと今回の件の幕引きをしに来てくれた者がいる。
謝罪や感謝にも似たニュアンスだった。
当然神裂とステイルだ。ステイルは終始噛みタバコをしていた。
正直、インデックスがどうとか、上条が活躍してくれたとか、どうでも良かったりする。
気になるところと言えば材木座がなんで先に家に居たのかということくらいだ。だがそれも解決したし。
押し入れには見知らぬ古風なルーンに関する本がたくさんあるし、インターネットの履歴にはルーンだとか、魔術だとか、いろいろ頑張っている痕跡があった。
……明らかに雪ノ下である。
健気で勤勉なのは分かるが、本やインターネットで分かる物なら身の回りで魔術はわんさか使われていることだと思う。と言う話もしたはずなのだが、雪ノ下は自分の目で見ないと信用しないタイプなのかもしれない。
そんな彼女に本のことについて聞くのは野暮だったので特に何も言わないが、気づかれていないとでも思っていたのだろうか。
ちなみに材木座がなぜ帰って来ていたか、と言う話だが、これについてはかなり簡単で、上条がインデックスの首輪を外す際、自分がいたらなんか違うなー、我いるかなー、このシーンに我いるかー? とか思ったらしく、席を外した。らしい。
まぁこれだけじゃちょっと外に出ているだけでいいのだが、材木座が言うには、俺が材木座を上条の方に差し向けたときに俺はもう既に家に帰った。と言う勝手な推測らしい。
つまり俺の信頼度が証明されたわけだ。後で殴ってやる……
「聞いてるのか、比企谷」
「あぁ……お前らはどうなんだよ」
神裂とステイルは拘泥する。
「彼女もそちらの方が嬉しいんじゃないかな?」
「1年間も追いかけられた相手においそれと身を任せられないしね」
「そうですね、私も同意見です」
正直、眩しい。と思った。言い訳もせず、事実だけを噛み締めた彼らは、俺が説得するまでもなく、強かった。だが、ある意味それが災いした結果なのだろう。インデックスのためにあろうとするその強さを持つ彼は、当初何度も記憶の継続のために努力しただろう。
だがそれでも無駄で、せめて命は助けようと、友人にどれだけ嫌われようと、友人のためであり続けた。
それを強いと言わず何と言うのか。
「そうか……まぁ、なんかあったらまたこっちに来ればいいんじゃねえの?」
はい、と神裂が答えて立つ。その後お辞儀も忘れず、完璧な大和撫子だった。日本人だというのが少しだけ俺の気を緩めさせていた。
「では、また、いえ、会わない方がいいですね」
「もう会いたくもないよ」
「あぁ、俺もだ」
じゃあな。そう告げることはない。だって、神裂のセリフ、絶対フラグじゃん! このセリフの後に本当に出会うことのなかったキャラっているか? いや、いないだろう。
……まぁ、一件落着というわけだ。
二人が退室してから部屋では特に会話もなく、ゆったりとしていた。まだ昼にもなっていないから暑い。部屋に雪ノ下がいるから脱ぐこともかなわないし、割と不便だ。
でも、エアコンがある! 自分の部屋にエアコンとか最高だと思ってたんだよー!!
一緒に扇風機もつけようかなと思いつつエアコンのリモコンを手にとろうとしたが、何やら柔らかく冷っこい。
「……事故だ」
「いいえ、故意よ、あなたの方が行動を起こすのは遅かったわ」
「いや、そんなことはない、俺の方がエアコンに対する思いは熱い。というか気づいたなら引けよ」
「あら、私の方が早かったことは否定していないわよ? っていうかいつまで手を握っているの、あとあなたのその思いが熱いせいでこの部屋が暑いのではないかしら?」
「いやいや、まて、俺は悪くない。夏が悪い、そこの材木座なんて熱膨張で体積増してんだろ? 熱膨張って知ってるか?」
手を離していなかった事実を埋めるように言葉を連ねる。
まて、なんで材木座がいる。
「……あいつが悪いんじゃねえのか?」
「そうね……あなたと意見が被るなんて嫌だけれど、少なくとも原因の一つにそれがあると思うわ」
そう言いながら雪ノ下は風向きを材木座に当て最低温度17度に設定する。
「なぁ雪ノ下、お前能力使えば部屋冷やせるんじゃね? エコロジーだと思うんだが」
「いやよ、しんどいじゃない」
「あ、そう……」
材木座が数日風邪をひくことは確定したが、材木座に集中して風邪を当てているせいでこちらが涼しくならない。
「病院でも行くか」
「ついに比企谷きんを治療しに行くのかしら」
あいにくだが比企谷きんは治療できない。比企谷菌はさいきょうなのだ。ぼくのかんがえたさいきょうのきゃらだ。
空気感染は当然、飛沫感染、接触感染、ほぼ全てにおいて感染する力を持つ。
感染した人間、非人間に問わず廃人となる。種類は様々であり近頃ではネトゲ廃人やらいろいろ種類が増え始めている。つまりニートだ。
何が楽しくて自虐してんるんだ……
「いや、普通に上条の見舞いだ」
「……そうね、私は一度しかあってないのだけれど」
「そういえば鉄橋の時以来あってないのか……」
「われも行くぞ! ってかさむっ!」
巨漢、いや自分に嘘をつくのはよくない。そう、デブが自分を抱いている姿はここまで醜いのか。
「私は遠慮しておくわ」
そういいつつエアコンの設定を変えていた。留まる気満々だ。
「何を迷っておる! いくぞはちまん!」
「お、おう、なんでそんなに張り切ってんだよ……」
俺の声は材木座に届いていないようで「初めてのお見舞いか……緊張してきたぞ……」とかなんとか言っている。実際は俺のお見舞いに一度来ている筈なのだが。
「んじゃ、行ってくるわ」
「ええ」
ドアを開放した途端熱気と湿気が肌を襲った。
さては雪ノ下、部屋でゆっくりしたいだけじゃないのな?
まぁ病院は病院で涼しいわけだし。
「お見舞いの林檎とか買って行かなくていいのか?」
「あー……そこのコンビニで買うか」
ちょうどタイミングよくコンビニがあったのでそこで適当に果物でも買うことにした。
コンビニの中は思いの外涼しかった。
「バナナとかでいいか……?」
「え、バナナぁ? お見舞いには林檎と相場が決まっておろうが」
「だからだよ、みんな林檎を選ぶからこそ、バナナが救いの女神のように見えるはずだ!」
「いや、日持ちしなくね?」
うるさい材木座はほっといてさっさとバナナを手に取る。そもそもコンビニに林檎は無いんだよ。最近のコンビニであるのはバナナ。しかも房ではない。何だ、本といえばいいのか? マリオカートで言えば1位の時によく出るほうだ。丁寧にアイテムボックス通過直後に置いてやるつだ。
あと日持ちを考えて黒い点々が極力少ないやつを選ぶ。君に決めた!
……ふぅ、少し熱くなりすぎた。運良くこのフ○ミマにはイートインコーナーがある。少しだけすずませてもらおう。コーヒーコーヒーはっ……と。
チリンチリン
「いらっしゃいませー!」
チラと自動ドアの方を見て、息が止まるかと思った。
白髪、赤い目、服装まで一緒……いやそれはまずいだろ。ルーティーンバレるのは男子でも恥ずかしい。
つまり、いつか見た2人の、御坂の妹じゃない方だ。
あの後結局どうなったのか。この男は御坂の妹を殺したのか。俺は知らない。
もしかしたら。もしかしたら。ただの推測に怯えて立ちすくんでしまう。
しかも白髪の男はこちらを見て近づいてくる。
どかない俺を疑問に思ったのか顔をあげ睨みつける。
「アァ? なンだよ、どけよ」
その目から感じ取れる全てに俺は恐怖した。
「あ、あ……ああ、すまん」
声が出たのも少し遅れてのことだった。足が動くまではまたさらに時間がかかった。
「夏バテかよ、情けねェなァ」
その目から殺意などは感じ取れない。俺がいうのだから微塵もないのだろう。無いはずだ。それなのに、底知れぬ恐怖が襲いかかってくる。
一瞬で汗が引く。一つ一つの行動言動に緊張してしまう。
そのままなにもできず、立ちすくんでいると白髪の男は大量の缶コーヒーをカゴに入れレジへと向かう。
白髪の男の興味が無くなる。
そして今更ながらに呼吸を止めていたことに気づく。
「……はっ」
漏らした息は情けなく、ただ虚空に消えた。
情けなく白髪の男が店を出て、ようやく足が動くようになった。
そのままコーヒーを手に取りレジへ向かう。
「え、もう行くのはちまーん」
「あぁ、もう十分涼んだろ」
「むう……仕方あるまい、そうと決まればさっさといくぞ」
結局、あの後どうなったか。それを知ることはできなかった。推測するだけでも怖い。どう考えても、どう反証しようと、悪い結果しか思い浮かばない。
それでもあの恐怖から逃れるためか思考は止まらず、やはり同じ答えがで続ける。
そこでふと思った。御坂美琴はこのことを知っているのか?
知っているとしても知らないとしても、どう聞けばいいのか……
突然風がが体を吹き抜けた。
いつの間にか目的地である病院についていたのだ。
「中と外との気圧差か!」
「お前に松山ケンイチの要素がどこにある」
あのビルはわざと中と外との気圧差を中の方が高くしていたのだろうが、ほとんどは中の方が気圧は低くなっている。つまり今は吸い込まれるハズなのだ。
「ってか中の人かこっち見てんだろ、恥ずかしいからやめろ」
「お前がそんなものを気にするようになっていたとは……我は失望したぞ」
「お前と一緒にされたくないだけだ」
いや、能力の弊害で視線が集まるだけで病みそうになるんだよ。好意的に向けられる目はほとんど無い。というか皆無だということに今更ながら気付かされた。中学の時から能力に自覚していたら間違えることもなかったのだろう。
他人なのだから当然ではあるだろう。つまり材木座が悪い。
「はちまんひどくね……」
「さっさと行くぞ」
エアコンの自動で運転停止するやつ、まぁタイマーですが、あれが切れると暑くて起きるってのも鬱陶しいですよね。