西暦2021年前に転生したんだから科学者として頑張るしかないでしょ!! 作:namaZ
『サラブレッド』
18世紀初頭にイギリスでアラブ馬等を競走用に品種改良された軽種馬がある。現在も、競馬で勝つことのみを目的とし日々交配と淘汰とが繰り返されており、人が創り出した最高の芸術品とも呼ばれている。血統のよい馬や優秀な成績を残した馬を交配させ淘汰を繰り返す。より 完璧な、徹底的な、血統背景だけではなく、育つ環境も含めて完璧であることを指す。
『人間』が『人間』になるために、『人間』がより『人間』らしさを、『純血』を絶やさない為に。
一流の職人が手掛けた芸術品は観る者を魅了する。あらゆる状況で美しさが変わる芸術品は、無機質でありながら人間の心を放さない。馬が芸術品と称賛されるなら芸術品と称えられる『人間』とはなにか?
世界一可愛い美少女を決めるコンテストで優勝した少女?世界三大美女のクレオパトラ7世、楊貴妃、小野小町?容姿による外殻的芸術は時間と共に失われて行く。英雄やスポーツ選手などは?容姿がさほど良くなくとも成し遂げた功績でその人物が他者と違って見える。概念芸術は時間と共に伝説になる。
それじゃあおれ達は?
政財界では有名な方だが、おれ達は公式の試合にはでない。経歴が異様なだけの金持のボンボンと誤解する輩もいるかもな。日本の天童みたいに政治にそこまでの影響力は無い……のかな?政治や権力におれはまったく興味はない。おれの代から目立ってこうと未来設計図を立てる前にガストレア戦争だ。有名になってモテたいと思うのは男として当然だろ?話は戻るが、おれ達の芸術感性はあまりいいモノとは言えない。見た目より機能で服を選ぶし、見た目より頑丈な携帯にする。おれはカッコイイにこしたことはないけど。
芸術の感性は人それぞれというが、おれ達の感性は癖が強い。ナルシストと勘違いされる台詞だが、おれ達が芸術だ。おれ達にとって『サラブレッド』は至高の芸術品だ。
『サラブレッド』を『サラブレッド』にする年月と繊細さと——————芸術性がおれ達にはあった。『人間』はもじき『人間』に成る。"神に最も近い生物"が完成する。
おれ達の誰かが言った。
「進化こそ——————芸術」
……と。
科学者は嬉しそうに計測器を準備するに対し、武装した警備部隊はピリピリ殺気立って近づく生物が居ないか警戒していた。ここはエリア外。モノリスの外に人類の安息地は存在しない。なのにここに居る人たちの温度差は北極と南国。誰が好き好んでモノリスの外に出たがる?ガストレア出現から五年経ったが愛着など沸くはずもない。不安と恐怖が精神をすり減らしている。逆に科学者は元気いっぱいだ。何がそんなに楽しいのか、鼻歌交じりで作業に没頭している。
両者の違いは価値観。価値観が根本から異なるからここまでの温度差が出てしまうのだ。唯のガストレアなら両者の温度差は出なかった。ここに向かっているガストレアが特別であり、人類にとって天敵であり、全ての元凶でもある生物。
世界に突如出現した十一体のガストレア。『ゾディアック』。
兎に角謎が多い。ガストレアとは何か?そのウィルスは?そもそも何故対を成すように都合よくバラニウムがある?災害には理由がある。人類はその『理由』を調査し、確信を得なければならない。
だが、問題は今の状況。ローマ連邦に接近しつつある一体のガストレア——————否、『群れ』。
黄道十二星座の名を冠すゾディアックの一体、無敵のガストレア『
癖の激しいガストレアを統括し集団を率いて行動する
此処に来てるのは、死ぬのが分かって来ている馬鹿野郎しかいない。軍隊が負けた相手におれ達は立ち向かうしかないのだ。たった二百人……二百人"も"来てくれたんだ。今頃市民や一部の関係者はローマ連邦本拠地イギリスに逃げていることだろう。
危機にある時、人間には逃げ出す者と、逃がされる者の二種類が出てくる。おれは前者を軽蔑しない。しかる後に、後者には敬意を払ってしかるべきだと学んで欲しい。それが……後に生きる者の義務だ。
「まあ……死ぬ気はないけどね」
この先に『木原』がいる。この二百人のリーダーはあの『木原』だ。人としての人格は壊滅的だが、この時代においてこれほど優れた科学者は居ないとジジイが言ってたな。
遠目で確認できた。まずは『ニュートン』として振る舞う。『木原』がどうやって
「随分と楽しそうじゃないですかドクター。痴話喧嘩ですか?」
そこから他愛もない会話をしサインを貰った。紹介した子とはジジイに行けば分かるに関係ある子かな?
『木原』専用軍用テントは直径五メートル以上はある。デカい、目立つ、警備は……無人機かあれ?テントを囲むように一定の間隔で配置されている。
「こっちこっち、ジョセフ君に是非見て貰いたくて」
「女の子なんでしょ?なら断る理由は皆無。男は女性の期待に応えるのが仕事だ……所でどんな女性です?」
「そだね……君がどれだけ『人間』として最強でも敵わない相手かな」
「……その子本当に『人間』ですか?」
「『人間』も混じってるとだけ言っておこう。さて……この中だ」
正方形の巨大なキューブ?縦横四メートルの真っ白の箱はさながら神秘的でもある。
「性別は女性だけど虎やパンダとか言いませんよね?」
「僕もそんなに意地悪じゃないよ……君も
「ええぇ?!違うんですか!てっきり隔離用の檻とばかり……」
「マジか……『檻』は比喩でもなく本当にそう見えるのかよ」
何かマズッたか?ドクターが端末を操作するとキューブが半分に割れ液体が流れ出る。
「紹介しよう彼女は今年八歳になる僕の娘で、君のパートナーでありガストレアに対する最強の生物になる……人類の希望だ」
キューブが解き放たれる。ジョセフでは理解できない性能を誇るこのキューブはとても静かだ。液体が排出される滴る音しか響かない。
少女はゆっくりとキューブから足を降ろす。適温の液体の中にいたせいか僅かに赤みを帯びる四肢。腰のラインまである銀髪が肌に張り付き妖艶さを引き立たせる。顎から滴る水滴が身体に流れ、寂しい胸囲を難無く通過しへその穴に吸い込まれる。
そう……彼女は全裸だ。
「~~~~ッ!!?すんませんしたーーー!!」
慌て過ぎて舌が回らなかった。頭を下げ、見ないようする。綺麗に九十度。この姿勢って謝ると同時に目を背ける効果がるんだなと、如何でもいいことを考えてしまった。
「……?ナゼ、謝罪をするのですか?」
可愛らしく小さな顔を傾ける彼女は、素直に疑問を尋ねる。
「紳士たる者淑女の許可なく裸を見るなど言語道断。ましてや、男が気軽く見ていい物じゃない。完璧に此方の落ち度だ。改めて謝罪させてほしい……すみませんでした!!」
「……?余計に分からない。ナゼ、謝るのですか?私はドクターより作られた実験体です。『人間』ではない私にその理屈は通じないのでは?」
「君は」
「はいはいそこまで!まず自己紹介しましょうよ、ね。それと沙希ちゃん、ふくのはいいけど用意した服をさっさと着せてくれない?」
「ドクタ~お肌もちもちですよ!かあいいな~かあいいな~お持ち帰りしたいな~……だめですか?」
「駄目です。着せろ」
「むぅ~~……はい」
服の擦れる音がする。聞き耳を立てるのもよろしくないが……聞こえるものは仕方ない。このくらい許してほしい。
「ばんざ~いして~」
「拒絶します。ナゼ、先生が服を着せるのですか?一人で着れます」
「聞く耳持ちませ~ん!ほら、時間の無駄ですよ?ここは従った方が得策ですよ~」
「ム……卑怯です」
そのままされるがままに着せ替えられた少女は不満そうに頭を撫でられている。
一目で唯の衣服ではないと分かる異様な服。首から下をすっぽりと隠す黒の全身タイツ……はダサいので何かメカメカしい黒のスーツを基準に見た事もない最先端技術を装着している。銀色のプロテクターがジャパンアニメーションのどこぞの従来の兵器のそれを遥かに凌駕する(笑)空飛ぶパワードスーツ並みに「それ防御力あんの?」の格好をしていたのだ!
「えっと……お似合いですよ?」
「ナゼ、疑問形なのか問い詰めたい所ですが、この装備の性能は」
「はいはいそこまで!二度目だけどさっさと自己紹介しろやこら」
彼女を不機嫌にさせてしまったか?ミスったな。一時期ジャパンアニメーションに無駄に嵌まった時期があったからな……つい反応してしまった。そう云えばドクターの『木原』は元々ジャパンで生まれなんだよな。ドクターもアニメとか観た事あるのか?
「んん!失礼お嬢ちゃん。自分はニュートン……ジョセフ=G=ニュートン。ミスの名を伺っても?」
姓を名乗ってから姓名名乗り直す。キザっぽいが年頃のお嬢ちゃんには効果覿面かな?
「……ジョセフ=G=ニュートン。記憶しました。私には様々なネームがありますが……生みの親であるドクターから頂いた名を名乗らせてもらいます。私は『レルネ』……レルネ=C=K=ヴァンスガズといいます」
「お返しされちゃったかな。子供っぽい所もあるんだね」
「ム……私の何処が子供っぽいのですか?子供の様に我儘の駄々も捏ねません。自分の世界しか知らない子供と違い世間をよく理解しています。子供の様に好き嫌いなども私にはありません。そもそも子供の様に私は騒いだり暴れたりしません。更に」
「そこが子供っぽいんだってお嬢ちゃん」
「……頭を撫でる必要性があるのですか?」
「おっとこれは失礼マドモアゼル」
ん?俯いちゃったよ、からかい過ぎたかな?
頭部に触れている指が熱の上昇を感知。これは……ひょっとして照れてるのか?言われ慣れてない無いのかこの子は、可愛いぞこの生き物。やっべ、ニヤニヤしちまう。
「ふ……ふざけないで真面目にお願いします。わ、わたしはガストレアです。貴方の様な『人間』とは違うのです」
「違わない。レルネは『人間』だ」
彼女、レルネはまだ時代に認められていない進化した人間だ。レルネの赤い瞳は呪われた子供たちの証。だがレレルネの身体的特徴から推察するに八歳児だ。ガストレアウィルスが出現して五年。ジジイとドクターは大事な事を隠している。それが何なのかまでは推測の域を出ないがレルネちゃんはその中心にいる。まだ小さな少女なのに……この子には年相応の自由が無い。自分が人間じゃないって、子供が言う世界は終わりだ。女、子供が戦場に行く国は敗戦する。子供は、周りに気を遣わずに甘える生き物だ。だが、これは言ってはいけない。言えば彼女を侮辱してしまう。会ったばかりのおれが指摘していい所じゃない。
けど現状からレルネちゃんは
……レルネはおれより本当に強いのか?
「ドクター」
「どうしたんだい?」
「レルネちゃんと組手をしたいです。ああ理解してますよ、レルネちゃんがすごく強いって。だけど、本当におれより強いかは戦ってみないと分からない。男としてここはプライドで挑みます」
「……いいけどジョセフ君。全力で、本気で戦ってくれよ?そうしないと君でも勝負にならない。彼女はそれほど特別なんだ」
「わかりました。おれとどう違うのかこの一戦で見極めます」
「レルネはどうだい?」
「……私も彼に……興味が出ました。彼なら本番前の肩慣らしにちょうどいいと思われますドクター」
「興味が出たね。お父さん悲しいねー、もう親離れだよ」
「……気色悪い事言わないでくださいドクター」
「グサッ!!刺さっちゃったよ言葉の暴力!!……さて外に出ようか、ここじゃ危ないし。時間が限られてるからルールを付けるけどこの組手に制限時間を設ける。時間は五分。以上」
「五分もくれるんですか?一分あれば十分ですよ」
「初手で終わりますので五分は永すぎかと」
だからそこが子供っぽいんだってレルネちゃん。
ジョセフってこんなキャラでよかったんだっけ?
最近はFate/strange Fakeにぞっこんです。Fateシリーズは至高。これ絶対。