西暦2021年前に転生したんだから科学者として頑張るしかないでしょ!!   作:namaZ

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これがほんとの今年最後の投稿です。
来年もよろしくお願いします!
今年のクリスマスはどの様に過ごしましたか?私は男どもと映画鑑賞で二夜を過ごしました。
二時間ほど早いですが、あけましておめでとうございます!








第七次観測

 西暦2021年。世界はガストレアの恐怖に包まれた。

 海は魔物、地は怪物、あらゆる生命体に人類は絶滅したかに見えた。しかし人類は死滅していなかった!

 ガストレアとの戦争により荒廃した世界で、人々は一部の無頼と化した暴力に脅えながら暮らしていた。その世界にのちの世に伝説の科学者『木原』と謳われた世界最高の頭脳を持つ天才が現れた。

 『木原』によってガストレアをなぎ倒し、再び人々に希望を芽生えさせた。

 

 

 

 

 

 閑和休題。

 

 

 

 

 

 世界に突如現れた巨大生物は脅威の再生力と人類に対する殺戮能力により昨日までの平和な世は終わった。

 そこに未知のウィルスも合わさり、人類は魑魅魍魎の化け物と戦う事となる。

 巨大になろうが生物は生物。近代兵器の前には大きくなった的でしかなかった。

 その考えはたった一日で覆された。

 恐ろしく死ににくいのだ。鳥は羽を捥げば地に落ちるしかなく、地上生物も足を吹き飛ばせば身動きが取れず斃すのは容易と考えられた。

 世界に出現したガストレアはあらゆる所で暴れた。警察や軍隊がカバーしきれない範囲に展開したガストレアはその巨体と再生力、生物特有の能力を駆使し防衛には国全てを護るのは無理だと判断された。

 護るべきエリアを決め、人々は一致団結する。口には出さないが、皆気付いている。このままじゃ勝てないと。

 一週間で人類は絶望した。この世界に希望なんてない。進行を遅らせようと戦うが奴らは何処からでも湧いてくる。対策を練らねば、絶望しかないこの世界に人類は希望を求めている。怪物と戦う決定的な対抗手段が。

 近代兵器の効果が芳しくない情勢に『木原』は革命を興した。

 闇と同化する漆黒の鉱物。あの怪物に対抗する為の金属。この発表の際の神無城沙希博士は「この金属が黒いのは、人類が懐くあの怪物たちに対する憎悪だ」と、生き残った人類はその言葉に深く共感した。

 バラニウムの兵器を、怪物のより詳しいデータを。

 一つの国に五人の天才が集結する。のちにその五人は『五賢人』と呼ばれる。

 

 

 

 

 

 

 各国はまず壁を作った。巨大な壁を。怪物の侵入を防ぐ強力な壁を。

 エリアを等間隔で囲う巨大なバラニウムの石板の建設は全てに置いて優先された。人権なんて最早ない。生きる意志を、どんな犠牲を払っても生き残る信念の強さを、人類は試されている。

 

 日本には現在、四人の天才がこの危機を乗り越える為の兵器を考察していた。より効率よくぶっ殺すための術を、四人は互いの技術を密かに盗み、高めていった。

 西暦2021年1月1日から5か月。

 様々な名称変更で『悪魔のウィルス』、『怪物のウィルス』と忙しなく色々な言い方が沢山あったが、ここ最近『ガストレアウィルス』で定着した。名称など如何でもいいが、研究の際名前がハッキリとしているのは良いことだ。

 『機械化兵士計画』が立案され、四人はそれぞれの技術を導入し人間兵器完成させるべく不眠不休で研究に没頭していた。そんな中、五人目の最後の一人がやっと此処に来るそうだ。

 彼女——————室戸菫は心底どうでも良さそうにその報告を聞いていた。いや、実際に如何でもいいのだろう。自分が唯一無二の天才と信じている四人は同等の頭脳を所持する互いを牽制し、技術を高める為のよりよい好敵手(ライバル)でもあった。

 そんな時期に、しかも遅れてやってきた最後の一人に『負け』の二文字は存在しない。同等の四人の天才が共に学ぶのと、同等の天才が一人で学ぶにはこの五か月の差は決定的。五か月前の自分と同じ位かもしれないが、来るならくるで邪魔をしないで欲しいのが本音だ。

 私は自覚できるほど狂気に染まっている。この憎悪と殺意と絶望は私から大切な人を奪った怪物……ガストレアが此の世からいなくなくなるその日まで、私の魂は報われないだろう。

 

 

「……ころす、殺しつくす……一匹でも多く……」

 

 

 未練など無い。無くなってしまった。此処に居る室戸菫は唯ガストレアを殺す壊れた科学者だ。死ぬまで私は救われない。救われる気もない。ガストレアを殺せればそれでいいのだから。

 トントンとノック音。普段は研究に集中し気付かず無視するが今は舌打ちをしてしまう。相手も私が気付いてないと決めつけているので、私の許可を執らず形だけの返事をし入室する。

 

 

「室戸様。最後の一人がご到着になりましたので至急執務室までとのことです」

 

 

 やはりそれか。メリットが無い。時間の無駄。移動するのがめんどくさい。

 

 

「行く必要が無い。君はそんな事に私の時間を奪うのかね?移動時間。顔合わせの時間。自己紹介の時間。帰る移動時間でロストする時間にどれだけ出来ると思う?君が本を一冊読んでいる間私は図書館を読み終わるよ」

 

 

 睨み付けるが、何時もの事なので相手は怯む様子もない。

 

 

「グリューネワルト翁の命令です」

 

「そうか……」

 

 

 アルブレヒト・グリューネワルトは私が唯一尊敬する人物。我々四人を統括する立場でもある。そんな彼の願いだ。無下にできない。

 

 

「……ならさっさと行くとしよう」

 

 

 五人目は神無城沙希だったな。いち早くバラニウムを発見した歴史に名を残す偉人確定の人物。その前は数々の難病の治療法を発表している。その時点で歴史に残るノーベル賞受賞者として名誉を得ていた。

 そう考えると彼女と話し合う事で新しい閃きがあるかもしれない。

 

 執務室に入ると私が最後のようだ。三人の視線が突き刺さる。それぞれ好き勝手に寛いでいる。

 

 

「おはようございます?ところで今何時だ?」

 

「室戸菫。時間位常に把握して然るべきものだ。お前には時間という概念が無いのかね?我々科学者は時間とは切っても剥がれない関係なのだよ。時刻は午前8:00だ」

 

「感謝するよエイン。お前の堅物ぶりが滲み出る時刻報告だ」

 

「ふん……時間厳守は当たり前だ。三十分前とはお前には言わないが珍しく時間丁度に来た事は褒めてやろう。問題は神無城沙希だ。完璧に遅刻だ」

 

「遅刻か……時間の無駄だな、帰る」

 

「まあまあ待ちたまえ。これから協力する同志ではないか。それに割く時間は無駄ではない……そうだろ?」

 

「グリューネワルト翁のおっしゃる通りだ。少しは我慢したらどうだ?」

 

「……アーサー。貧乏揺すりは説得力に欠けるぞ?」

 

「……これは癖だ」

 

「グリューネワルト翁を見習ったらどうだ?とても余裕に満ちている。なぁエイン」

 

「なぜ私に振るのだ室戸菫?私は常に余裕に日々を過ごしている」

 

「その日その日のスケジュールを手帳びっしりと書いている君に"余裕"の二文字が出るとはな」

 

 

 皮肉をぶつけり合ういつもの光景。五分遅れて目的の人物が慌てて駆け込んでくる。

 

 

「お、遅れて申し訳ありません!!部屋を間違えまして……」

 

 

 私も人の事を言えないがこれは残念美人という奴か?年齢より見た目が若い。寝癖はそのままで天然臭漂う天然記念物の予感がする。

 

 

「構わないとも。我々は此処で戦う同志ではないかね?」

 

「そんな同志だなんて……私は唯の付添人ですから。ドクタ~この部屋ですよ!」

 

 

 四人同時に"ん?"っと首を傾げる。付添人とは如何いう事だ?

 遅れて部屋に入ってきた人物は青年。誰だ?神無城沙希がドクターと呼ぶ謎の人物。実は五人ではなく六人居ましたと言うオチか?

 

 

「これはこれはグリューネワルト翁御久しぶりです。初めての出会いは僕の父親が生きていた随分と前ですが覚えていますか?」

 

 

 青年を観察し、グリューネワルト翁とエインが分かりやすい動揺をする。この二人がここまで露骨な反応をするこの青年は何者だ。

 

 

「生きておったのか……」

 

「ええ、生きてますよ。怪我一つない健康体です。元気が有り余って大変なほどです」

 

「如何やらその様だ。死んだと聞いた時、貴様がそう簡単にくたばると考えてもなかったわ」

 

「……なるほど、彼女は隠れ蓑か。君が生きて裏で糸を引いていたのなら納得だ」

 

「お二人は誰か分かってる様子ですが、そろそろ紹介してもらっても宜しいですか?室戸も困惑の様だ」 

 

 

 この青年は一体何者なのだろうか?興味がわいてきた。

 

 

「では改めまして自己紹介を。そうですね~……『木原』と、お呼び下さい。フルネームは教える気はないのでその辺よろしくね。あ、グリューネワルト翁とエイン殿は知ってそうなので誰にも教えないでください。記録上は『木原』とだけ登録してあるので調べるだけ無駄だと思いますけどね」

 

「『木原』……だと?!」

 

 

 私にとって名前などソレを特定するだけの記号だ。フルネームなど興味ない。そんな事よりあの青年は『木原』と名乗った。

 

 

「科学業界の都市伝説的ノリかと思ったよ。常に科学の発展の最先端に居ると言われている一族。新しい発明には『木原』の影があると噂……伝承のレベルで根付いている。噂には噂される根本が必ず存在する。その元凶が君のわけだな『木原』君」

 

「へーそんな噂流れてんのか。照れちゃうな~お姉さんは室戸菫でおk?」

 

「おーけーだよ『木原』君。噂話の真意は如何なのだい?」

 

「大体合ってんじゃないんですかね。だってほら……『木原』ですし。沙希ちゃんの発表したバラニウムは元々『木原』が見つけた物ですし。そうそう皆さんは『生命を尊重する』と約束を交わしたそうじゃないですか?」

 

「当然だ。我々は科学者である前に医者でもある。どんな状況でも生命を尊重するのは人として、人間として至極当たり前だ。それ以前に医者が命を粗末にしては我々の存在意義が問われる」

 

「お堅いねグリューネワルト翁。その信条が何時まで持つか楽しみだよ、この地獄と化した世界でね」

 

「そうか……肝に銘じておこう。では君の信条は何かね?」

 

「オブラートに包んで言えば……科学の進歩に不必要なものはモラル……は、嘘ではないですが貴方方には敬意を払い『木原』ではない僕の本音で話しましょう」

 

「その心は?」

 

「どんな犠牲を払おうが人類を新たなステージへと導くのが僕の信念だ」

 

 

 開いた口が塞がらないとはこの事か。この青年は超人的な攻撃力や防御力を持つ兵士を造り出す極秘計画を知っているのか?

 

 

「機械化兵士計画のことかね?」

 

 

 これはグリューネワルト翁らしくない。自分から極秘計画を喋るのは愚か者のする事だ。だが、グリューネワルト翁からは隠し事は無用と切り出した。何よりこの程度の事『木原』ならもう知られている前提で話している。

 

 

「貴方方が新人類創造計画と呼んでいる計画かい?アレは発想は良いけどコストがかかりすぎると思うけどね。あ、別に否定はしてないよ。それも科学の発展だ。けど僕は、ガストレアウィルスに人類の可能性を見出すけどね」

 

「お前はあのおぞましいウィルスを可能性と呼ぶか!!」

 

「落ち着いて下さいアーサーさん。そうですね……もう耳に挟んでいると思いますがガストレアと同じ赤い瞳の赤ん坊が生まれていますよね。丁度ガストレアが出現してから」

 

「それは聞き及んでいるが……唯の子供だぞ?」

 

「ハハハハハハハハッ!!"唯の"子供ですか!!僕は確信してるんですよ、あの子たちは人類の進化の形の一つだと、ガストレアに対する切り札になるとね!!」

 

 

 高らかに笑う『木原』は咳き込むまで笑った。

 

 

「ゴホゴホゴホッ!!あ~、んん!!沙希ちゃんありがとね、背中摩ってくれて。……え~僕は貴女方四人を高く評価しています。この世界最高の頭脳を持つ『木原』と同等の天才である貴方方を。今の研究に息詰まりましたら私の所まで来てください。最高の待遇でおもてなしをすることを約束します。それでは」

 

 

 最後に神無城沙希が連絡先の名刺を私たちに手渡しその場を立ち去った。

 医師として、あの青年には同意しかねる。私の本能が、魂が警告する。奴の根本は人を使い捨てる外道だと。

 私の人生においてあれ程のクズの外道に合う事はないだろう。

 自分は絶対に生命を尊重し、外道には落ちないと誓う。

 

 

 

 

 





今期アニメの神撃のバハムート GENESISは名前で損したアニメだったな・・・・・・
ぬるぬる動く名作だったぜ



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