西暦2021年前に転生したんだから科学者として頑張るしかないでしょ!!   作:namaZ

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もうじきクリスマスですね。ま、関係ないけどね!!
世の中クソだな、クソ!いい言葉だな~(現実から目を逸らしながら)








第四次観測

 何だこの感じ……胸に、ポッカリと穴が空いたみたいだ。

 これが喪失感か。

 これが、涙か。

 今日まで涙など流したこともない俺が泣くだと?

 これが……涙か。

 

 

「……映像を復旧させろ。大至急だ」

 

「り、了解しました!」

 

 

 周りの局員が騒がしい。復旧と他区画の影響を調べている。

 怖がっているのか?俺は今無力だ。親に買って貰った玩具を他人に踏み砕かれたのと一緒だ。

 悲しくて哀しくて悔しくて涙が止まらない。

 なのに——————

 

 

「……ふふふ」

 

 

 涙とは裏腹に三日月の立派なほど耳元まで歪む。

 これは怖がられても仕方ないかな。

 俺の意思に反し、『木原』が破壊を喜んでいる。

 落ち着け……気を静めろ。俺の指示が無くとも、防御服に身を包んだ局員が侵入しようと抉じ開けている。映像ももう暫らくで治まりそうだ。

 

 

「研究員には何も問題ないと伝えろ。これ以上の無駄な時間はこりごりだ」

 

 

 良い人だったよ貴方は、自分の正義を信じ俺に人の心を芽生えさせようと……この大馬鹿が。

 此処で働く者には『大馬鹿』に共感を抱く奴が多くいるかもな。俺は悪で自分の行いは正義。

 俺からしたらお前等が『悪』だ。

 原作知識は断片的でうろ覚え、むしろ『とある』の方が覚えてるくらいだ。

 ……絶対来る世界間違えただろ神様。

 

 

「俺無宗教なんだけど……ないわー。神様が俺に与えた試練ってやつ?わろえない」

 

 

 ウイルス製造工場は下手に障れない。

 あの区画は正しくフラスコだ。どうなるか予測できない。観測機器壊しちゃってくれちゃってーも~。

 

 

「下手に触らない様にって伝えといて、密封しろ。何も漏らすな。防火シャッターを解除次第最後の防壁も解除し絶対に開けるな。まずは映像で確認する。状況が解り次第観測、計測器でデータ収集しつつ消火活動に移れ」

 

 

 そろそろかな、さっすが沙希ちゃんの人選。超優秀です。

 

 

「映像回復します」

 

「中央のモニターに映せ、此処に居る皆で観賞しようじゃないか」

 

 

 映し出されたモニターに誰もが釘付けになる。

 異様、異常、奇妙。一言で表すなら……そう、『地獄』。

 

 

「なんだアレは?」

「人……なのか?」

「有り得ない……法則を無視している」

「現存するウィルスではまず無理だ」

 

 

 驚愕する者。恐怖を抱く者。知識で理性を保とうとする者。冷静に考察する者。

 俺も——————興奮が治まらない。少し濡れたね。

 

 

「落ち着けテメーらァ!!空調システムで区画の空気を入れ替える。現状の『ウイルス製造工場』は未知数だ。空調システムであの場の空気を別の区画のビーカーに保存する。終了次第『アレ』の回収に行け」

 

 

 こ・い・つ・らァ!!

 

 

「さっさと動け!!移し替えたらビーカーの中身を調べるぞ!『アレ』に変化が無いか監視しつつ連絡を取り合え、以上!」

 

 

 慌てた様に作業に取り掛かる研究員。

 たく時間は有限だってのにクソがァ!

 

 

「回収班に『最終実験施設』に『アレ』を運ぶように指示しろ。迅速にな」

 

「了解ですドクター」

 

「……いつまでも『アレ』では駄目だな、『アレ』を『アルディ』と名称する」

 

「了解。回収対象をコードネーム『アルディ』と名称。ドクター、何故アルディと?」

 

「アルディピクス・ラミダス……人類の最初の祖先。人類最初の女性だよ。ババアでも女性だからね。ユーモアがあっていいだろ?それに……これは始まりだ」

 

「始まり……ですか?」

 

「お前はあの現象を見た事があるか?」

 

「それは……ありません」

 

「そうだ、俺もない。此処で生まれたんだ。現在の科学じゃ解明できない世界初の理を捻じ曲げる未知のウィルスが」

 

「何故ウィルスと分かるのですか?」

 

「『木原』が作った空調設備だぞ?その中を流れる空気を瞬時に解析するシステムがあって当然だろ。現存するガス、ウイルス、菌、化学兵器を瞬時に見分ける。誰かが作った程度の新しいガス程度なら数秒で解析する。そのシステムで解析不能と表示された。そのデータを読んだが、配列からウィルスとだけ分かった。文字通り、未知のウィルスだ」

 

「未知の……ウィルス……ゴクッ」

 

 

 無いつばを飲み込む。未知に対する恐怖と、科学者としての好奇心が彼をかつてないほど高揚させる。

 

 

「研究員を先の『アルディ』と未知のウィルスの研究に回せ、情報管理を徹底させろ。『ウイルス製造工場』も隅々まで調査しろ、何らかのヒントがあるかもな。五つ区画を潰し、変わりにウィルスの研究に回す。全てに置いて優先させろ」

 

「よ、よろしいのですか?五つも区画をウィルスを調査する為だけに改造するのですか?」

 

「構わない!ただ調査の為に五つも区画を使うと思ってんのか?あのウィルスを、人を異形の生物に変えてしまうウィルスを調査だけに終わらせるとほんとに思ってんのか?色々試すしかねーだろーがァ!!お前もそうだろアドリアン!」

 

「なるほど……すいません。驚く事が多すぎてそこまで頭が回りませんでした。ドクターは冷静ですね」

 

「ふッ……まあな。俺は『アルディ』に専念する。そっちは任せた」

 

「了解ですドクター」

 

 

 お前にとって己が正義で俺が悪である。俺にとっては正義でありお前は悪だったが……お前は俺の希望だったよクソババア。

 沙希ちゃんには……帰って来てからでいいか。

 

 

「いっちょ頑張りますか!」

 

 

 見た目通りの年頃の笑みを見せて……歪んだ。

 

 

 

 

 

 数日後。当然、沙希ちゃんに怒られました。てへ☆

 

 

 

 

 

 

 









最近『幼女戦記』を購入したのですが、オーバーロードの後に読みには迫力が足りなかった。

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