西暦2021年前に転生したんだから科学者として頑張るしかないでしょ!! 作:namaZ
蓮太郎なのに間違える俺、恥ずかしい///////
「身の上話と洒落込みたいですが私たちがどうしてこうなったか……ききたいですか?」
「……遠慮するよ。他人の事情をズカズカ踏みにじる趣味はない。どうしても胸の内がもやもやとしてるなら、それで納得するなら話せばいい」
「……わかりました。では予定通りブリーフィングを現時刻をもって開始します。本作戦成功には二つの要素が絶対不可欠です。一つ、アルデバラン撃破。二つ、新しい壁の建築。アルデバランを斃さない限り同じことが繰り返される可能性があります。退けたはあってはなりません。モノリスは六日後の崩壊から三日後にすべての準備が完了し新しい壁が組み立てられます。ここまでで何か質問はありますか?」
「僕たちに与えられた役は何?壁をつくる技術もないし自衛隊と民警に交じってアルデバランを斃すわけだけど、具体的に何をするわけ?」
「黙って夏世の指示に従ってろカス」
この野郎は本当に伊熊将監か?あの天上天下唯我独尊俺様最強理論の伊熊将監なのか?イニシエーターを道具として扱っていたあの伊熊将監が"夏世の指示に従え"と従順にそれっぽいこと言ってる。要するに何が言いたいかというと。
「女の子に尻尾を振って、イヌみたいですよ。嗚呼もしかしてこれがギャップ萌えってやつ?」
「死にてェなら素直にそう言えやクソガキィ!!」
完全にブチ切れた将監が巨剣に手をかけたその瞬間、夏世が将監の目の前に現れ怒りを諫めた。だがおかしい、部屋の中心にいた夏世、僕と将監の狭間にいる夏世、二人の夏世が存在している!?――――――否、そうじゃない。二人目の夏世が出現する瞬間、体がノイズのように揺らめいた。
「これは……立体映像……?」
それこそ有り得ない。僕の眼をもってしても出現の際生じる僅かな空間の揺らぎ――――――ノイズがなければ本物と見分けることができないなんて。
「悠河さんは勘違いしてます。片方ではありません、両方とも実体がありません」
「なぁ!?」
二人が同時に消滅する。二人の夏世が偽物であることの証明でもあり、本物は影すら見えない。
「黙って聞け、小難しいわかんねェことは夏世が説明する」
暗に自分は馬鹿ですって認めてる大馬鹿。
「貴方が『木原』と呼ぶ人物……ドクターと呼ばせてもらいますがこの拠点を改造して私を設置しました」
「せっち?」
「今後の作戦上中心を担う私の存在を教えます。この部屋、この拠点そのものが私の脳。分け合って脳以外の機能が停止している私は生きるプログラム、AIとして機能してます。私は演算処理装置、壁の内側すべてが高度な演算処理を可能とする機器で埋め尽くされ、そのすべてに私は接続されてます。悠河さんの両目の事は知ってます。人間の脳に繋がれたチップサイズの装置だけでその眼は数秒先の未来予知さえ可能とする。なら……ドルフィンである私の脳と、サッカーグランドと同じ面積2160坪に設置された代理脳が何も問題なく機能したら……『呪われた子供たち』の定義に収まらない枠の外の化け物だと思いませか?」
戦慄した。
おそらくだが、『
「ドクターは私を樹形図と例えました。『千寿夏世』は大木、枝分かれの仕方は漏らさず・ダブらずの超高度並列演算処理器。六日後の終わり七日の始まり午前零時に地上に蕾を咲かせます。ドクターは
「遠慮しとく」
「…………そうですか」
感情の色がわからないのに何故か残念がってるのはわかった。
「……注意事項が一つあります。自衛隊が壊滅、民警の指揮系統が一度崩壊してから手を打ちます」
それはあまりにも遅い対応。いや、一度会ったならだれもが思うはずだ、『木原』はどんな手段を使ってでも実験をやってのけると。
そう考えるとおかしい、まるで自衛隊と民警が負けるのが分かっているかのような対応だ。
「邪推は簡単に見抜かれますよ」
「それこそ心配無用、僕は組織の人間だ。上の指示には従う」
「……本日のブリーフィングは終了です。明日からはももかと直接来てください。将監さんもお仕事頑張ってくださいね」
「嗚呼……」
将監は夏世に背を向けいち早く退室しようとするが、歩みを止める。
「……もう自分を卑下するな。お前は『千寿夏世』、それだけだ」
返事は聞かず、そのまま出ていく。
僕は何も語らずその背中を追った。
「アルデェダラン?」
「アルデバランですよドクタ~お馬鹿じゃないんですかぁ~?ガストレア研究の第一人者がなに寝惚けてやがるんですか~」
「相変わらず僕の失言には手厳しいね沙希ちゃん。もっち覚えてるよ、
『木原』のおかげでローマ連邦は世界で一番平和の国家と呼ばれている。『木原』が開発した『呪われた子供たち』は序列一位を含め上位に複数いる。木原一族ももう彼しか居ないわけだが、秘密主義の先代『木原』達が残したデータが沢山ある時点で、他の五賢人より数歩も先に進んでいる。
「日本の五翔会って何処までしんようできるのですドクタ~?グリューネワルト翁の支配組織……投資者?何でもいいですけど、うちを蹴落とすき満々組織あそこくらいですよ?」
「エリアごとの支配者は利用する関係、信用なんて(笑)。グリューネワルト翁はそもそも『木原』を理解する数少ない理解者。こんな時代だから『木原』の価値をちゃんと分かってる。科学者である限り『木原』には絶対劣る。それは仕方ないんだ。あ、チケットとれた?」
「政府のお偉いさんが認証するわけないじゃないですかぁ~。どこも東京エリア見限ってますよ~」
「やっぱ無理か……規約で一位は国を出れない。僕もいろいろ縛りあるし……プロジェクトに立ち会えないって『木原』を侮ってね?」
「科学者を侮ってますね~安全地帯から結果だけ待つって政治家ならいいですけど科学者にとって侮辱でしかない。アイツら誰のおかげでここ等の平和が手に入ったと……」
「キャラ変わってる。一旦落ち着け沙希ちゃん」
「あ、ごめんなさいドクタ~。でも実際どうします?」
『木原』の思考パターンと演算回路を外付けした沙希ちゃんは日に日に『木原』に近づいている。一族が増えるのは歓迎だけど、前の自分を見失わないでね。
「研究所に監視はないし、僕が外に出なきゃむっこさんはなーんも言ってこない。なら、僕以外の職員が出ても何も干渉してこない」
「?要するに?」
「顔と指紋、声帯を変えて他の職員と入れ替わる。お偉いさんには"調査のために使い捨ての科学者一人派遣する"て連絡しといて」
「手術はどれも時間がかかりますし包帯をとるのだって……」
「生物、とくに人体で僕ほどの科学者はいない。三十分もあれば全部終わる」
「了解ですドクタ~!後のことはお任せくださいな!」
ふふふ、『木原』の行動力をなめるなよ。実験のためならその力は無限大だ。
悠河と別れた後、自分より弱い奴の下にはつかないと宣った片桐兄弟を降し、アジュバントの一員にした蓮太郎はティナとともに室戸菫の研究室に訪れていた。
影胤事件でステージⅤから東京エリアを救った英雄として十二万番台から千番台まで上げ、百番台98位ティナ・スプライトが引き起こした聖天子暗殺事件でティナに勝利したことでIP序列300位となった蓮太郎の機密情報アクセスキー・レベル5。序列十番以内に入ることで与えられる最高機密アクセスキー・レベル十二には程遠い。
「ティナは帰らせた。で、話して起きたいことって何だ先生?」
「なーに、いくつか聞きたいことと観て貰いたいものがあるんだ。その前に……君の質問に答えようじゃないか」
「……そんな分かりやすいか?」
「君の悩んだときの顔は"あの幼女貴重なハーレム計画に加えてやるぜぇ、あと幼女の腋うめぇペロペロ"の次に見分けがつく」
「その作り話言いふらすなよッ!!」
「くくく……善処する。私も暇じゃないんだ。私に質問する価値がある悩みかどうかは自分で決めることだ。無いならさっさとその顔はやめたまえ」
「……」
蓮太郎は悩んだ。聞くべきか、聞かざるべきか。
けど――――――
「『木原』って何なんだ?」
「何者、目的、立場、関係、様々な答えを用意していたが"何なんだ"と来たか。……そうだな、君の脳みそでも解釈できる言語となると文字通り『別次元』の科学者だよ」
生きる伝説人類最高の頭脳五賢人の一人、室戸菫が『別次元』と評価を下す『木原』。学校の授業を真面に受けていない連太郎にしたら、室戸菫は『別次元』の頭脳を兼ね備えた偉人だ。変人で変態だが尊敬する命を救ってくれた先生だ。
先生が引き出しからファイルを取り出し中身をテーブルに広げる。
「?……これは?」
「九十九ももか。レントゲン写真、DNA情報、破損した捥げた腕の解析。どれもこれも見たことがない、コレに対する扱いは私でも手が余る。ブラックボックスの塊だが分かることも多々ある。コレをつくったやつは頭がオカシイッてことだッ!!発想も方向性も狂人の領域を超えまず思いもつかないロジック、頭のネジ一本二本どころか歯車なしで回ってるんじゃないか『木原』は!?…………ここまではいいね?」
「……先生より更にヤバイ変人って認識でいいか?」
「面白い例えだ。強ち間違いでもないしその認識で構わないよ。問題は君の隣人の眼にある。ももか君とあの少年はつくりが噛み合っていない」
「なんだそりゃ?腕も眼も同じサイボーグだろ」
「すー……はぁ」
何故にわざわざ深呼吸してから溜息ついた。
「君の眼は素材からして機械、壊れたら私直々に直すしかない貴重な手足だ。ももか君のはそもそも大きな損傷がなければ直す必要もない。義手自体が生きて修復してくれるんだよ」
「そりゃ……どうゆうことだ?」
「体は七割、九割ほどが人工物だが替えの利かない重要器官、脳や心臓の成長に合わせて成長している。裏を返せばその器官は脆弱で並みの人間とあまり大差のない数値、恐ろしいまでのバランスでこの肉体は形を保っている。この異常性が少しは理解できたかな?ようは私ごときでは作れないあーちょうヤベーマジ分からんッだァ!!」
「……そんなにか」
「そんなにだ。だがそんなことどうでもいい、人工物以外は普通の子供と全く同じ値……子供をわざわざ『呪われた子供たち』と同じ領域まで押し上げるとは……吐き気がする」
『呪われた子供たち』は今も増え続けている。なのに態々莫大な金をかけて『呪われた子供たち』を人工的に造り出す。需要がない。それどころか、未来ある子供に選択さえ与えず戦いと血の道に踏み込ませた。『木原』はなにがしたいんだ?
「話がずれた。『木原』とは何かだったな、あれは都市伝説……よくある陰謀説の類で"科学業界に科学の発展の最先端に居ると言われている一族。新しい発明には『木原』の影がある"我々の業界では伝承のレベルで根付いている。噂には噂される根本が必ず存在する。その元凶がアレのわけだ。事実奴は天才、完敗だよ。五賢人神無城沙希は奴の傀儡、隠れて好き勝手やるって寸法さ」
「……裁かれないのか」
「いるわけないだろ。ティナをつくった
「ももかとティナが悪事の証拠だッ!!」
「世界は『呪われた子供たち』に優しくない。社会的地位も低い『呪われた子供たち』と人類最高の頭脳、どちらを選ぶかはその辺を歩いている化粧臭いおばさんでも答えられるさ」
「そんなの!」
「蓮太郎くん、君だって東京エリア以外の国の『子供たち』が天国みたいな生活を起きっているなんて思っているわけじゃないんだろ?君がすべての問題を解決しようとするのは傲慢だ。いま東京エリアで起こっている『子供たち』への強力な差別運動もね、起こるべくして起こっている。すべての物事には原因と結果があるんだ」
ようやく先生が話をどこに持っていこうとしているのか理解する。
「国外のイニシエーターより扱いがましだから、延寿やティナが汚い言葉を吐きかけられ踏みにじられても仕方がないと?それが聞きたいことか?」
「極論するとそのとおりだ。どうせ君の事だから、どうしようもないことで心を痛めて馬鹿な考えを巡らせているんじゃないかと思ってね」
「言わせてくれ、俺は先生のそういう冷めたところ、大っ嫌いだ」
「……ここからが聞きたいことだ。君は無力だ。君がこんな世界を本当に変えたいと思うなら、君は政治を裏で牛耳る天童一族の家を出るべきじゃなかった」
俺は――――――間違っているのか?この問答には答えなどない。
俺は――――――何をしたいんだ?俺は頭は平均より良ければそれでいいレベル。これまでの話、素直に里見蓮太郎が何をしたいのか。
「政治家の代わりに民警として、世界からガストレアを駆逐する。世界の変え方は一通りしかないわけじゃないんだろ?東京エリアは狭い、民警の護衛機をつけないと航空機は飛べないし、海棲ガストレアの危険があるから海では基本泳げない。俺は延寿に、広い世界を見て回ることができる自由を与えたい。先生、俺は延寿のために世界を変革するよ。そのために倒す。邪魔するなら『木原』だろうがステージⅤのガストレアだろうが全部全部ッ!!」
菫は口を開けたまま固まってしまった。だが次の瞬間、天井を仰いで額を叩きながら爆笑し始めた。
「ハハハハ、そうか『木原』とステージⅤを全部ね。いや参った。出来るか出来ないかはさておき、よくぞ言ったよ蓮太郎くん。……君がまぶしいよ」
「そんなことねぇよ。先生だって……」
「……私ではダメだ。少し物事に詳しくなると人間のどうしようもない面ばかり見えてくる。やはり私はこの薄暗い地下室がお似合いだ。光の下はもう歩けない」
「……」
「蓮太郎くん、この世界でもっとも美しいものが何なのかわかるかい?」
「いや……なんなんだ?」
「仏教の世界観ではね、蓮の花だそうだよ。つまり君だ。『蓮』太郎くん。君の魂は美しい」
蓮太郎は胸が詰まった。迂遠な性格からいって、いまのは最大級の賛辞といえる。
「いまの君ならば、あれを見せても大丈夫だろう」
影胤事件、聖天子暗殺事件、IP序列300位へとなった蓮太郎の機密情報アクセスキー・レベル5。序列十番以内に入ることで与えられる最高機密アクセスキー・レベル十二には程遠い。
先生の机の上のスクリーンに映像が表示される。
「国際イニシエーター監督機構が推奨するIP序列は姑息だと思わないかね。序列が上がるごとに"擬似階級の向上"や"機密情報へのアクセス権"などの特権が与えられるこのシステム……まずはこれだ」
スクリーンの画面に細かい文字がびっしり刻まれていて、2031年から過去二十年は遡った年表らしい。一読して眉をひそめた。
2021年に勃発したガストレア戦争初期から末期にかけての項目がほとんど真っ黒に塗りつぶされている。試しに黒く塗りつぶされた項目をクリックしてみると『アクセスキーのレベルが不足しています』というエラー音と共に寒々しい文字が吐き出される。
「気づいたか、蓮太郎くん」
「ああ……」
学校で習う近代史の歴史年表にはこんな黒線は存在しない。なぜなら項目そのものが綺麗さっぱり消えているからだ。ガストレア戦争の混乱期において多くの資料が焼失し、サーバーを保存しているデータセンターも数多くやられたので正確な資料が残っていない、というのが理由らしい。八十億だった人類が十分の一以下になるまでガストレア戦争で殺戮されたのだ。残っていないのも仕方ないと納得した。
したが――――――
「嘘なのか……」
『アクセスキーのレベルが不足しています』とは、裏を返せばアクセスキーさえあればこの黒塗りもオープンとなり、真実がつまびやかになるおいうことだろう。『ガストレア戦争により資料が焼失した』という政府側の公表は、真っ赤な嘘だったことになる。
なぜ政府がガストレア戦争の詳細を隠す必要があったのか?あるいは隠さなければならないほどのものがこの下に隠されているのか?
「蓮太郎くん、これをみろ」
レベル五で閲覧できる情報を下にスクロールしていくと『関東会戦』、『第二次関東会戦』だったり、忘れがたい『蛭子影胤事件』の名前もある。
細かい文字で先生の指示がなければ読み流しそうになっていた一文、脊髄に雷撃が奔り、瞳が裂けんばかりに見開かれる。
<『――――――二〇二一年某月某日、七星村消失』>
『七星』――――――『七星の遺産』。何故かゾディアックガストレア『
そして、ジュラルミンケースの中の入っていた『七星の遺産』の正体は、壊れた三輪車だった…………。
確信に近い予感が駆け抜ける。これの真相は『絶望』しかない。
「七星村の記述は他を探そうがこれ限り、そして……これを探すには苦労したよ」
いまはほぼ現存しないガストレア戦争が起こる前の日本地図だ。
先生によると、七星村とは元富山県の県境にやや近く、三〇〇〇メートル級の山々からなる飛騨山脈のふもとという位置。当然、長野県そのものがガストレアが闊歩する未踏査領域化しており、おいそれと近づくこともできない。ともかく、蓮太郎は七星村の位置を深く心に刻む。
「年表に戻るが、何処か疑問に感じないかね」
黒塗りの年表には西暦だけが表示されている。西暦2021年ガストレア戦争混乱期から末期までの記録は存在しないことになっていた。ガストレアは突如現れ殺戮の限りを尽くしたからだ。
資料が焼失したのは二〇二一年――――――なぜ二〇一四年から黒塗りで隠されている。
「これは妄想、憶測でしかないが、ガストレアが表舞台に上がる七年前……二〇一四年に何かがあると私は睨んでいる。寧ろ、元凶はココから始まったのかもしれない」
情報が一気に流し込まれ心拍数が上がり、軽い興奮状態の蓮太郎の背筋に冷や汗が流れる。
つまり、政府はガストレアウィルスの存在を七年前からすでに認知していたことになるのではないか?いや、それにしては対応があまりにも雑だ。
「蓮太郎くん、バラニウムを発見しモノリスを発明したのが誰だか覚えているかね」
「そんなの神無城……さき……」
「そうだ。『木原』の傀儡神無城沙希が発表したんだ。ますますきな臭い」
「じゃあなにか、『木原』はガストレアウィルスが何なのか知ってるってのか?」
「そこまではわからない。だがね、科学の発展に必ず"い"るのが『木原』だとゆうことを忘れないでくれ」
室戸菫を超える科学者。五賢人の一人神無城沙希を裏で操っている。科学の発展には必ず『木原』がいる。ガストレアウィルスの何らかの秘密を握っているかもしれない。
もしまた向こうから接触があれば――――――聞きたいことができたぜ。
「心してくれたまえ。さらにヤバイ……これが、『アルディ・ファイル』だよ」
最後に観せられたそのファイル、スクリーンには高画質で記録された人型の人ではないナニか。手術台は配線が束になり歪なナニかに繋がっている。この世の恐怖と醜さと歪さを詰め込んだソレは確かに生きている。胸の膨らみ、腰のくびれ、男性器の膨らみが見えないことから女性であるということが分かる。ガクガク膝の力が抜け、机を咄嗟に掴み転倒を免れる。
いつの間にか、画面下に『Devil Virus』という文字が表示されている。
時間にしては一分も満たない。だが蓮太郎にとっては永劫に等しい時間だった。
「先生、あれは……?」
「私にも分からん。しかし、『アルディ・ファイル』というからには、アレが『アルディ』なのだろう。『アルディ』は、おそらくコードネームだ。アルディピクス・ラミダス……現在発掘された人類の化石で最も古いのは四百四十万年前のラミダス猿人、つまり『アルディ』でね。しばしば『人類の最初の女性』の比喩として用いられることがある。まあ科学的には最古というわけではないのだがね」
「『人類最初の女性』……?じゃあ、先生アレは!?」
「あの人間の目は赤かった。多分あれが"最も初期に感染した、人類最初のガストレア"なのだろうね」
衝撃に脳を揺さぶられる。気づけばスツールに座っていた。
「右下に出ていた『Devil Virus』って文字見ただろ?あれってガストレアウィルスのことだよな」
「常識に考えてそうだろうね」
「なんで『悪魔の』ウィルスなんだ?」
「悪魔のような振る舞いをするからだろ?残虐非道、人間を悪魔に変えてしまう」
「じゃあ、サテンでもデーモンでもいいしゃねぇかよ……いや違う、そうじゃない。なんで『Devil Virus』のまま世間に伝わらなかったんだ?なんでガストレアウィルスをガストレアウィルスと呼ぶようになったんだ?」
「理由がひつようなのかね?人口に膾炙する過程で名称が変わることなどザラだと思うが?」
「"噂には噂される根本が必ず存在する"。ガストレアも何かしらの意味があると思うんだ」
考えれば考えるほどわけが分からなくなる。何が何なんだ。何がどうなってんだ。どうしてこんなものが――――――そのとき、携帯電話が震えてはっとする。着信名は木更だ。
《里見くん、ニュース観た?モノリスの白化現象が発覚したわ。もう隠しきれなくなったみたい》
地獄へ引き落とす。『木原』?ガストレア?そんな疑問は突き付けられた地獄には霞んでしまう。
なぜ俺たちを狙う?そんなにも人類が、人間が憎いのか?
モノリスの崩壊まであと、四日。一刻も早く、仲間を集めなければ。
最近、学園モノの主人公ハーレム物が多い世の中。今期のアニメでもテンプレ過ぎて鼻で笑ってしまうレベル。ずっと主人公カッケェェェェ味方サイド誰も死なないを見ていて今のラノベのパターン化が少し悲しい。面白いものもありますが、テンプレが多すぎるのが……
何を言いたいかというと、やっぱりひと昔のラノベは最高で、その中で『ムシウタ』が最強ってことですよ!!(謎理論