西暦2021年前に転生したんだから科学者として頑張るしかないでしょ!!   作:namaZ

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遅くなり申し訳ありません!!
夏は忙しいとあらかじめ書いときましたが、ここまで遅れた言い訳があります。
メタルギアⅤとマリオメーカーが面白すぎるのがいけないんです!!!(え

















第二十九次観測

 絶対悪、純粋悪とは?

 

 

 ――――――悪しかなく、生きるとは人の罪である。

 

 

 ――――――悪が生まれるには過程があり、そこから悪が生まれる。

 

 

 ――――――悪とは対立する第二者が決める。

 

 

 ――――――悪は己と第二者が決めるのではなく、第三者が認識する。

 

 

 ――――――悪と正義の定義を決めるのは一個人でも少数派でもなく多数派。

 

 

 ――――――悪を決めるということは正義を決めるということ。

 

 

 ――――――悪も正義も存在しない。

 

 

 

 

 自分を完全な悪と定めて生きている……生きられる人間は存在しない。

 悪をするために生まれ、悪に生涯を捧げ、悪そのものが生きがいであり人生。

 それは人ではない別の何かだ。

 大義名分。

 主義主張。

 宗教的思想。

 多数派。

 ……エトセトラ。

 これらは、個人・集団にとって正義の行いであり、"正当防衛"である。

 正義は自分たちにあり――――――神のお導きである。

 そこに悪はない。

 あるのは互いの正義をぶつけ合う正義の使者。

 最前線で戦う者は命令だから仕方ないと大体が割り切る。

 そうしないと人の心が持たないからだ。

 拷問が大好きとか、人殺しが好きな人間も環境のせいだったり、家族や部下に優しかったりする。

 生まれながら拷問が大好きで悲鳴や不幸を愛していて総果てに人間を玩具(劣等種)など考える悪の化身など存在しえないのだ。

 そんな存在が生まれたなら、生まれたのが間違いで、生物が兼ね備える"子を残す"とは真逆の人間を殺し私だけの"個を残す"を淡々と太陽の上った時間に起き朝食を作り食べる生活習慣と同じ感覚で狂人以上に人間を殺す存在。

 必要悪でもない。

 絶対悪で、純粋悪で、悲しい過去も過程もなく、カッコいい悪とかそんな括りじゃなくて、殺されても悲しいとか生き様が男らしいとか交感がもてる悪でもない。

 人間性もないドス黒い真っ黒の更生の余地もない悪。

 相手の嫌がることを積極的に弱みに付け込み裏の裏の裏をかいて安全地帯から確実にやるのが悪の基本だ。

 正々堂々も男らしさも悪の定義すらない。

 要するに、もしも人間として純粋悪が生まれたのなら――――――裏で暗躍する大物感のある小物だ。

 

 

 『木原』は悪か?

 悪とは人に害を齎す存在。

 その存在は絶対悪でも純粋悪でもない。

 悪の定義で考えるなら『木原』とは必要悪である。

 科学の発展のため文字通り『ナニ』を仕出かすかわからない一族。 

 どれだけ非人道的で外道な悪な実験を実行しても、最終的には科学の発展と人がより良き世界を手に入れるためのより良き犠牲となるのだ。

 これは悪か?

 普通に考えて悪だ。

 こんな人物と一緒にいるだけで狂って恐怖しオカシクナル。

 良心のある感性で『木原』を理解しろってのが無理な話だ。

 ただ"そうゆうもの"だと認識しろ。

 『木原』は悪とか正義とか……常識人では理解されない『木原』の定義が存在する。

 人の命を何だと思っている?

 心は痛まないのか?

 常識人の心の在り方を説いたところで『木原』の芯は曲がらない。 

 『木原』は今も昔も言うことは一つ――――――"科学の発展には犠牲はつきものだろ?"。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 巳継悠河は五翔会のエージェント――――――正確には教授の壁となる存在として生涯を捧げた信仰者。

 教授の手足としてあの御方に仕えたい――――――ただそれだけが自分の存在意義。

 それがあの御方の傍を離れ何故か民警をしている。

 蛭子影胤テロ事件以降は平穏なものだ。

 

 

「……平和だ」

 

 

 十年前、ガストレアウィルスが世界を侵食し同時期に発生したガストレアにより人類はモノリスの壁に覆われた壁の中に閉じ込められた。

 島国である日本も世界の崩壊には抗えない、人類生存可能領域は五つのエリアに分かたれ、一億二千万人の人口を誇っていた栄光の日本は見る影もない。

 ここは五つのエリアの一つ、東京エリア。

 太陽の眩しい熱攻撃を全身に浴びながら、これといった任務も民警の仕事もない日々が続く。

 これといった用事がなければ、勘が鈍らないようももかと組手をし、移ろい行く雲と東京エリアを散歩をしながら暇をつぶしている。

 目的もなくぶらぶらと町を歩いていると不幸そうな人物にばったり出会ってしまた。 

 

 

「おや、お二人でデートですか?この状況でよくやりますよ。先輩は僕と違って経験豊富ですし当然といえば当然ですか。女性(レディー)の扱いはお手の物と」

 

「お、お兄さんとは……その、そんなんじゃ……」

 

「変な誤解を招く言い方をするな。ティナを用事のついでにエリア内を案内していただけだ」 

 

「この世界に名だたる五変人の一人である先輩が真面な弁解をしても説得力に欠けますよ。己が内に秘めし衝動を正直に認めたらどうですか?せ・ん・ぱ・い」

 

「世界の五変人……そのようなお方と知らず、……御見それしました。わたしもそのぉ……たべられちゃうんですか?」

 

「なんだその称号初めて知ったわ!!本気にするな、こいつは俺を社会から抹殺しようとしているだけだ!!」

 

「東京エリア一……五変人『ロリコン』の名を与えられた先輩は謙遜が過ぎます。延寿やももかの次は金髪ロリですか、僕の知らないところでどれだけ幼女引っ掻ければ気が済むんですか?今までどれだけ女の子を泣かしてきたのやら……一応パートナーなんでももかを泣かしたらケジメつけますよ」 

 

「その嘘八百な二つ名どこソースだ!!?まて、言うな!言わなくてもわかる!…………室戸さんだな?あの人以外在り得ない」 

 

 

 別の意味で信頼されてるねあの女。本当に教授と同じ五賢人の一人なのか?

 先輩には両目の事を知られている。目よりももかの機械仕掛けの体の説明の方が少々難儀したが、『木原』に両目を引き換えに死にかけの親友の妹をサイボーグにしてもらったと――――――我ながらあっぱれな演技力で深く聞かないで空気を醸し出し、今のところ追究はない。

 室戸菫に両目を調べられたが、「これが『木原』……あの狂人めェ」と文句を言いながら何とも言い難い表情で解析されたのは苦い思い出だ。ももかのは更に酷い

 

 

「五賢人の一人である博士のお言葉を否定しろと?否だ……東京エリアを救った英雄であったとしても三百番の民警と五賢人の発言の重みは天とドブだ」

 

「正論ぽく聞こえるがあの人に会ったんだよな?」

 

「そりゃもう目を調べるんですよ。世間話から変人と名高い所以を垣間見ました。……マジヤバイ」

 

「……一度会えば本能が理解してしまう。嗚呼常人とは違うんだなと、そこまで分かれば俺の冤罪も」

 

「それとこれとは話は別です。だって見る目がヤバイですもん」

 

「俺の目が原因なのか……!?」

 

 

 驚愕に顔を歪め余程ショックだったのかバランスを崩しよろける。そんな蓮太郎さんにティナは本気心配している。結構ペアを組んだらバランスがいいこの二人、狙撃手と特攻格闘家。

 シャコを前衛に近距離と狙撃手もこなせる僕だが、ペアを組んだティナ・スプライト相手では勝算は低いだろう。百番台の実力は伊達ではない。

 

 

「現状が現状です。チームリーダーとしてスカウト活動中……ですよね蓮太郎さん」

 

「……嗚呼。最初に声をかけようとしたがももかが散歩中って言うもんだから最後にしとこうって決めたんだが、マジにただの散歩かよ」

 

「慌てても状況は改善しない。いつも通りに体調も精神も万全にすればいい。……僕を探していた理由は見当つくんで答えますけど、僕もう先客がいるんで先輩のアジュバントには入れません」

 

「ちっ……当てにしてたんだけどな」

 

「メンバー集め頑張って下さい。スプライトはしっかり者だから先輩の面倒お願いね」

 

「はい、お兄さんは私が責任をもって面倒見ます。それとティナで結構です」

 

「そお?それじゃティナって呼ばせてもらうよ。僕のことも悠河で」

 

「はい悠河さん」

 

「お前らは俺の保護者か……」

 

 

 別れを告げ二人とは逆の方向に歩を進める。あの二人の反応は正しい。のんびりとしている時間はないのだ。

 ここからでもその全貌が見渡せる黒い塊。縦一.六一八キロメートル、横一キロメートル、長方形の巨大なバラニウムの構造物。東京エリア外周区・第四十区にそびえ立つ三十二号モノリスは六日後崩壊する。

 バラニウム構造物であるモノリスはガストレアにとって有害な磁場を発している。それが巨大であればあるほど効果を発揮する。その条件に当てはまらないのがガストレアレベルⅤ。その前提があるから人類はまだモノリスの壁の中で生きていける。

 

 

「ステージⅣ・アルデバラン……バラニウム侵食能力を持つガストレア」

 

 

 残された六日間で状況を打開する策、統率、戦力が必要となる。

 策に関しては、天童菊ノ丞、聖天子が対応し最善を選ぶ。

 統率に関しては、十年前東京を守り切った自衛隊は独断専行が目立つ民警と違い、誇りと意思で繋がっている。

 戦力に関しては、情報通りレベルⅣがアルデバランのみなら現状の戦力で事足りる。

 状況は生き物だ。一刻一刻に状況は変化する。『木原』にはアルデバランが現れた時点で報告してある。詳しい情報元は知らないが、上に潜り込んでいるのは確か。五翔会の闇は深い。

 今回あの人は間に合わないかもしれない。壊滅する都市に貴重な飛行機を飛ばす馬鹿はいない。ルートも限られてくる。それを踏まえ、『木原』からの命令は至極単純。

 

 "指定された場所に決められたルートに従い移動しろ"

 

 僕だってただ散歩していたわけじゃない。命令通り必要だから散歩をしている。

 行ったり来たりと3時間弱、人里離れた舗装工事が行き届いていない廃墟の街並み。崩れた瓦礫が散乱した下町の道路、ここが的地。そこにポツンと新品の高級車が一台。ナンバープレートには『986(きはら)』。

 

 

「乗れってことか……ふざけてるのか?」 

 

 

 運転手はいない。自動か、はたまた人が来るのか――――――後部座席以外はロックがかかっている。後ろに乗れってことか。

 更に待たされ三十分、一人の巨漢が運転席に乗り込んだ。

 

 

「やっとですか。さっさと……」

 

 

 俺はこの男を知っている。ただの人間が千番台で生きがい調子に乗っていた愚か者。

 

 

「伊熊、将監なのか?」

 

「久しぶりじゃねーか悠河。協力者がまさかテメェだったとはな」

 

「……生きていたのか」

 

「思い出話としゃれこみたいが時間が惜しい。唯でさえ無駄な時間を使ったんだ」

 

「それには同意だけど、このルートを指定したの誰?」

 

「俺の()()だ」

 

 

 この男はこんなにも素直でだったか?

 車のエンジンが掛かり、前進する。キーは刺さってもいないし、ハンドルさえ操作しいない。結局自動操縦か。

 

 

「……変わったね、君は」

 

「こんな時代だ……変わらねー野郎なんていねぇよ。俺もそうだった……切っ掛けさえあれば、これまでが嘘だったみてぇに変わっちまう」

 

「……」

 

 

 切っ掛けさえあれば、人は変われる。どんな形であれ、人は切っ掛けさえあれば変わってしまう。教授に目を頂いた瞬間、僕は変われた。人は時間をかけて変われる時もある。だが、劇的に変われる瞬間がある。それが、良いことなのか悪いことなのかは分からない。けど、その『選択』を掴み自分の意思で選んだのなら――――――後悔はない。

 貴方もそうなのでしょう?

 

 

「降りろ」

 

 

 外周区に位置する廃墟の工場に到着した。

 

 

「それで、ここからどこに?」

 

「地下だ」

 

「へー……僕にも知らされていない拠点が在ったのか」

 

 

 パッと見廃墟に似合うエレベーター、動く筈のないソレを将監がカードキーを差し込むとスムーズに動き出す。

 揺れも無く三十秒で目的地に止まる。このエレベーターだけでここの設備の重要性を理解する。

 

 

「最深部にいる。歩くぞ」

 

 

 一方通行。ライトに照らされた最深部の扉だけが見える。距離はおよそ百メートル弱。エレベーターから直線に位置する最深部の扉が不気味に映る。

 

 

(何を目的に設計されたんだここは……)

 

 

 悠河に知る由もないが、通路左右の壁の奥には最深部に接続された最新の機器が敷き詰められている。ここがもとはただの地下倉庫だったと誰が思うか。

 大事な協力者兼実験体に『木原』が手を抜く筈がない。娘であるレルネの最終目標は完全なる『人間』を生み出すこと、これはその過程で生まれた産物。目標に向かって進みその過程で生まれた好奇心に『木原』は素直に実行した。

 スローガンは"『人間』の進化とは異なる別のプロダクション"。

 器の中身を見つけた『木原』は、倉庫そのものを千寿夏世のために丸っと魔改造した。施設丸ごと千寿夏世の機能として。

 

 

「おらぁ挨拶しろ……東京エリアの頭脳(ブレイン)に」

 

 

 扉を潜ると壁一面が機械音と数値の羅列に囲まれた異様な空間。その中央で規則正しい機械音に合わせてステップを踏むおぼろげな少女。

 落ち着いた色の長袖のワンピースにスパッツ。ぱっちりとした眼元をしているが、どこか冷めた雰囲気をしている。

 

 

「ドルフィンの……」

 

「お久しぶりですね悠河さん。お茶の一つでも出すのが礼儀なのですが、濡らすのはよろしくないのでご容赦を」

 

 

 笑顔で迎え入れてくれた夏世の瞳には、感情の色はなかった。

 

 






実は自分、岩井恭平さんの作品が大好きでして、「ムシウタ」からはまったのですが、最近(まぁ最近)「東京侵域(下)」が発売してまして……喜びの歓喜が!!
後、マシンドールは傷つかない15巻が遂に発売されたのですが、読んでいくうちにスゴク自分で書きたくなってしまいました。これに関しては、そのうち書きます。

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