西暦2021年前に転生したんだから科学者として頑張るしかないでしょ!!   作:namaZ

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いやーこれだけは言わせてください。
連太郎くん書くの疲れてメンドクサクナッタ(白目
八時から十時に終わり、朝六時半に集合の毎日……時間がないw












第二十六次観測

 演算しろ予測しろ、一発でも命中すれば『人間』の機動力は極端に低下する。

 

 

「サポートは必要?」

 

「ちょーほしい。いくら私の眼がイイからってそれ(イコール)躱せるわけじゃない。どれだけ眼がよくても避け続ける思考力も集中力もない」

 

「……接続した。離れすぎるなよ」

 

「ふふふ、ピッタリ張り付けばいいんだね」

 

「はぁ~、もうそれでいい」

 

 

 こうゆう手合いは小細工せず、面倒になる前に斃す。

 

 

「『鬼』は奪う者、奪わせてよ」 

 

 

 『鬼』は両手に握った照準器付きハンドガンを前方に乱射する。

 僕たちは回避行動もせずに突っ込んだ。

 ももかを盾に、全弾弾いて魅せた。

 指で引金を連続して引くより、自動拳銃でフルオートの方が連射性は高い。

 所詮人が知覚できるレベルでの連射は『呪われた子供たち』には遅く見える。

 何より眼がイイももかは、照準器のレーザーサイトがハッキリと視えており、引くタイミングさえ判れば防げない攻撃ではない。

 それでも、"眼がイイからってそれ(イコール)躱せるわけじゃない。どれだけ眼がよくても避け続ける思考力も集中力もない"のがももか。

 なら、全弾ももかの手が届く範囲で弾けるタイミングとパターンを事前に知らせてやればいい。

 

 

「同調は問題ないみたいだ。貴女は自分の事を『鬼』と言いましたね。銃弾を防がれたくらいで動揺するなよ」 

 

「クソガキがッ」 

 

 

 装填には数秒がかかる。

 それさえあれば、射程距離内だ。

 

 

「ミリー!」

  

「……モデル:ベア、み、ミリー」

 

 

 『鬼』のイニシエーターは、内気そうな見た目の割にモデルに似合った熊を連想させる右フックをももかにぶちかます。

 嗚呼――――――こいつ等駄目だ。

 影胤の化け物染みた実力も状況判断もない。

 何か特殊な兵装があるのかと警戒すれば、戦い方は素人丸出し。

 僕と影胤の戦いを観戦して、アイツのバトンタッチしてこの体たらく。

 

 

「カウンター」

 

「ヘぶッ!?」

 

「ミリー!」

 

「至近距離で眼を放すなよ。はい王手」

 

 

 心臓破壊『超振動デバイス(ヴァイロ・オーケストレーション)』。

 無防備に掌底を胸にうけ、体重の軽い彼女はその場に踏みとどまれず吹き飛ばされた。

 

 

「感触が違う。胸当て?なんだ、ちゃんと僕の技に対策してきたのか。その膨らみ、胸ではなく胸を脅威から守るクッション材でも詰まってるの?胸がないってレベルではなく絶壁だ。計算したらAAAカップとか、何歳だよ自称『鬼』さん」

 

「こ……のクソガッ」

 

「『鬼』が性別を馬鹿にされただけでキレんなよ」

 

 

 狂気は影胤と同等、実力は素人に銃の使い方を訓練させた程度。

 イニシエーターも自身のモデルに振り回されている。

 僕の勘違いだったか。

 

 

「弁えろ、貴女如きが戦うレベルは等に超えている。実力もないくせに首を突っ込むな」

 

「アナタニ、何が分かるってのよ!!」

 

「弱者は淘汰される。それだけだ」

 

 

 まずは邪魔な腕から圧し折る。

 次は機動力の足を奪う。

 最後に首を破壊する。

 それで終わり。

 おしまい。

 僕を引き剥がそうとグリップで殴り掛かって来るが、そんなもの予想通り、まずは右腕を圧し折った。

 

 

「~~~~ッ!!!??」 

 

「へぇ、叫ばないか。ならもう一本」 

 

 

 彼女は僕を睨み付けると――――――確かに歪に笑った。

 次の瞬間、僕は『鬼』の狂気を見誤った。

 "カチ"奥歯から鳴る機関音。

 眼の前で、腕が炸裂した。

 

 

「――――――ッ!!ば、正気か!?」

 

 

 狂気は影胤と同等、頭の可笑しさはこの女が数段上だ。

 この女は自分が弱いことを承知している。

 『鬼』と名のった彼女ははじめっから、"腕が折られたら爆発しよう"と決めていた。

 そうでなくては判断が速すぎる。

 至近距離の爆発は鼓膜と視界を狂わせ、思考を鈍らせる。

 折るため抱え込んだのが仇となった。

 肘から上を犠牲にした自爆は、どれだけ思考を加速しようが認識できぬ攻撃には対処できない。

 衝撃はアバラを圧し折り、内臓にダメージが広がっている。

 右腕の骨に何を仕込んだのか、金属の破片に体を刻まれた。

 装填が間に合っていた左のハンドガンの銃口が――――――光った。

 弾丸が見える。

 一発、二発、三発――――――六発。

 その内二発が腹部に命中する。

 精度など無い無茶苦茶な連射。

 麻酔も無しに生身の腕を吹き飛ばしたんだ、分かっていたとは言え、撃てる精神がどうかしている。

 

 

「悠河!!」

  

「キャハハハハハッハハハッハハ!!ミリーソイツマカセタ。弱者?強者?嗚呼あれでしょ?小細工に引っ掛かるおバカさんでしょ?」 

 

「……腕丸ごとの手榴弾。普通じゃない」 

 

「普通じゃない?普通でいられるはずないじゃん。単身で国家を相手にするんだよ?尖兵の人間兵器に一矢報いるのに腕一本って、むしろお釣りが出るわ」 

 

 

 腕と胴体は破片で切り刻まれ、アバラは折れ、衝撃と弾丸で内臓のダメージは甚大。

 こんなに傷つくのは初めてだ。

 彼女も初めてだ。

 腕を吹っ飛ばす経験などある方がおかしい。

 そんな彼女が、戦えて――――――僕が戦えない道理はない。

 

 

「なめんな……後悔させる」 

 

「後悔などとうにしてるわよ」 

 

「ももか、タイミング合わせろ!!」 

 

 

 真に警戒すべきは左手の銃。

 片手リロードはお手のものと。

 僕は、何の迷いもなくP8拳銃を抜いた。

 僕の撃つ弾は演算された軌道上に撃つ百発百中の精度。

 相手が次に何をするのかが分かってしまう。 

 装弾数15+1発。

 頭に二発、胴体に三発、のち二発は頭を庇った左手に命中すると予測。

 発砲。

 

 

「イ、たい!!」

 

「防弾繊維かな、貫通しないなんて良い服だ。けど痛いモノは痛い」

 

 

 痛みに僅かに怯んだ『鬼』の右腕の肘を『超振動デバイス(ヴァイロ・オーケストレーション)』を発動しながら掴んだ。

 この手合いは何をするか分からない。

 なら、痛みで何も出来なくすればいい。

 ただでさえぐちゃぐちゃの右腕の肘部分をぐつぐつにし――――――一本背負い。

 痛みに声にならない喉を潰した悲鳴が聞こえるが、このまま地面に叩きつけるのではなく、投げ飛ばす。

 

 

「諸共飛ばせ……軽くなって一石二鳥だ」  

 

「りょーかいっと!」

 

 

 今のももかは僕と同調している。

 『鬼』とミリー、互いが衝突するタイミングで殴り飛ばす。

 

 

「きゃッ」

 

「ぐッ」

 

 

 その二人に――――――ももかの鉄球グローブが火を噴いた。

 二つの鉄球グローブが火を噴出して砲弾の如し飛来する。

 ももかの兵装鉄球グローブは上司が作り命名した。

 通称『ロケット砲弾鉄球』――――――名づけセンスは皆無だ。

 

 

「貴方たちにピッタリな爆弾です。弾け飛んでください」

 

 

 『ロケット砲弾鉄球』が着弾――――――弾けた。

 爆風の煙が揺らめき、こっちに突っ込んできた。

 

 

「二つとも抱え込んで身を挺してワタシヲ守ったつもり?いい迷惑なのよ!!」

 

 

 演算予測を超える自己犠牲。

 それを瞬時に受け入れ攻撃に転じるプロモーター。

 失った右肘を僕に向ける。五メートルもない。

 接近格闘で無力化すべきか?

 銃で牽制?

 この時点で、やることが決まっている『鬼』の行動は速かった。

 肘に仕掛けられた『バラニウム散弾』が暴発。

 この距離では悠河は避けることなく蜂の巣。

 それを護ったのは、イニシエーターとしてプロモーターの盾となり飛びかかったももかに全弾命中する。

 

 

「キャハハハハハッハハハッハハッ!!貫通力のない散弾で助かったわね!!散弾が脅威を発揮する"面"になる前に全弾体で受け止めるなんてミリーみたいね!!」

 

「こ、の!?」

 

 

 ほぼ零距離で受け止めた筈のももかが、パンチで『鬼』の脇腹を貫通させていた。 

 

 

「な……で……」

 

「威力高すぎて貫通しちゃった」

 

「……もう一本腕はあるんだよォォォォォォ!!」

 

 

 左腕から矢じりが飛び出し、ももかの右腕を固定する。

 

 

「弾けろ」

 

「え?やだよ」

 

 

 パネルのピースのようにももかは右腕を肩から外した。

 起動した爆弾は止められない。

 自爆。

 

 

「~~~~~~!!!???ぐぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃああああああああああああ!!!!????」

 

 

 両腕を失いながら双眸から殺意はきえない。

 

 

「しねぇえ!!」

 

 

 口の中から銃口が除く、ここまでして武器を体に仕込む『鬼』の執念。

 凄い人だ。

 その意思の力だけは尊重しよう。

 

 

超振動デバイス(ヴァイロ・オーケストレーション)ッ!!」

 

 

 心臓を完璧に破壊。

 終わりだ。

 

 

「カハ……ごめんね、マイクおにい、ちゃん……」

 

 

 悠河は敵が死のうが何も感じない。

 敵の死を悼むよりももかの状態が気になった。

 

 

「なんだその体は?」

 

「ん~いいよ、説明してあげる」

 

 

 もう使い物にならない腕を回収してももかは自分の身体を解説する。

 

 

「義体、サイボーグ技術だよ。脳などの重要器官……八割以上サイボーグの元『人間』、らしいよ」

 

「らしい?」

 

 

 サイボーグでさえ驚きなのにらしいとは?

 

 

「そもそもモデルとベースの違いが何なのか分かる?」

 

「考えた事もなかったな、言い方の違いだとばかり思ってたし。……モデルは『呪われた子供たち』の生まれた時から宿している……天然……いや、だけど……ベースは()()()()()()調節して生まれたのか?」

 

 

 確信はない、けどこれが本当なら――――――。

 

 

「そうだよ。モデルはそうなった。ベースはそうなるよう作られたんだ。ある一人の科学者によって」

 

「ま、まて、それが本当なら……」

 

「一旦落ち着いて、この体についての説明でしょ?私はね、『呪われた子供たち』になる一歩手前になるよう調整されて生まれたんだ。それで如何したと思う?私のベース:蝦蛄、モンハナシャコは、私がその能力を引き出してるんじゃなくて、サイボーグの人工筋肉のあれやこれ等が拒絶反応なく扱っているんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「天童式戦闘術一の型三番ッ」

 

 

 蓮太郎の椀部・疑似尺骨神経に沿うようにエキストラクターが黄金色の空薬莢を掴みだし、回転しながら蹴りだされる。

 

 

「轆轤鹿伏鬼!!」

 

 

 カートリッジ推進力により加速された蓮太郎の爆速の右拳が、影胤のフィールドを貫通。

 確かな手応えに影胤は成す総べもなく吹き飛ばされた。

 靴底を削りながら、倒れることなく踏みとどまった。

 追撃をかます延珠に小比奈が邪魔に入った。

 

 

「エンジュエンジュエンジュエンジュえんじゅぅぅううううう!!!」

 

「邪魔だッ!!」

 

 

 神速の斬撃と神速の蹴りが鍔迫り合い、刹那の拮抗に拳を叩き込んだ。

 その刹那の更に刹那に小比奈は小太刀を引き拮抗状態を解き、一回転。

 斬撃のコマは必勝を持って俺に切り刻まれる。

 延珠が居なければ。

 

 

「邪魔だと、言っているッ!!」 

 

「くッ」 

 

 

 両刀を靴底で弾きかれ、たまらず後退する小比奈に延珠は更に蹴りを放とうとするが、俺は延珠に腕をつかみ下がらせる。

 延珠のいた場所が爆発のような土煙が立ち上がる。

 影胤のベレッタ拳銃の援護射撃である。

 危機を察した延珠は俺を抱えジャンプし飛び跳ねていく。

 それを猛追する銃弾は、延珠が飛び移った直後の足場を一瞬に弾痕だらけにして破壊する。

 延珠は大きく飛んで、廃墟の倉庫街を見定め、俺の肩を二回叩く。

 放すぞ、その合図。

 コンテナの影を利用し死角に移動、司令塔であるプロモーターを叩くのがタッグ戦での定石である。

 見失っている今がチャンス、コンテナの影から飛び出しざま生身の影胤にDXで応射。

 確実に命中する銃弾は、小太刀で斬り払われた。

 足が震える。

 冗談じゃない。

 恐怖を晴らすため撃ちまくる。

 それを嘲笑うかのように快音とともに片っ端から弾丸が撃墜される。

 

 

「そんな、馬鹿な」

 

 

 延珠も顔を青ざめながら蓮太郎に寄り添う。

 不安にさせてどうする。

 

 

「……延珠、一対一で影胤を倒すのに……いや、俺がやる。同郷として決着をつけなきゃいけないんだ」

 

「嗚呼戦いたい、血肉を削る闘争に没頭したい。だが、だがだがだがァッ、今こそ尋ねたい。なぜじゃまをする。私と君は同郷だ、同族だ、同じ存在だ。存在理由は只々ガストレアを殺す兵器、それだけなんだ」

 

「……どういうことだ」

 

「分からんかね?我々新人類創造計画は殺すために作られた。モノリスが崩壊し、ガストレア戦争が再開すれば、我々はその存在意義が証明される。憎しみは消えない。戦争は終わらない。私達は必要とされているッ!!分からないかい里見くん?ガストレア戦争が継続している世界こそ我々新人類創造計画の兵士としての勝利なのだよ」

 

 

 蓮太郎はハンマーで殴られたような衝撃を受けた。

 それまでに此奴は狂っている。

 

 

「まさか貴様ッ!……そのためだけに……?」

 

「だとしたらなんだというのだ?人類が絶滅するなど些細な問題にすぎない。我々は戦っていなければ誰も必要としてくれない。さあ戦争!!もっと闘争を!!これは私の私による私のための戦争だ。誰にも邪魔はさせない」

 

「夥しい量の血を啜っておいて、まだ殺戮を求めんのか?」

 

「これは壮大な実験なのだよ!!私に易々と殺されるような人間はどのみち私の理想郷の中で生き残れなどしない。君のイニシエーターが『呪われた子供たち』だと露見した時の周りの反応はどうだった?祝福されたか?鳴りやまぬ歓声に心洗われたか?歓喜のうちに胸に抱き留められたか?そんなことあり得ない。私は選ばれた。小比奈も選ばれた。君たちも選ばれた。さあ里見蓮太郎、君の欲するすべてを与えてやる。私と共にくるのだ」

 

「ザケンじゃねぇよクソ野郎!!貴様の語る未来ッ、断じて許容できねぇッ!!」

 

「ならば死ね」

 

 

 影胤が銃口をこっちに向けるのを見て、延珠が突っ込んだ。

 銃口に気がいっていた延珠は小比奈の横やりに崩され、足を掴まれ俺めがけて投げ飛ばされる。

 照準が向けられる。

 バラニウム弾はマズイ、延珠には致命傷だ。

 延珠を受け止めそのまま半回転した。

 

 

「哭けソミドーッ、唄えゴスペルッ」

 

 

 直後、九ミリバラニウム弾の嵐が背中に殺到する。

 身体が躍る――――――歯を食いしばり、耐えた。

 生きている、即死は免れた。

 蓮太郎はプラスチック製の注射器を取り出し、薬液を注入する。

 これは諸刃の剣だ。

 『AGV試験薬』――――――ガストレア研究中に室戸菫が作り上げた、人間の再生能力を瞬間的に飛躍させる薬である。

 この作用は、バラニウムの再生阻害を上回る。

 ニ十%という超高確率で被験者がガストレア化する副作用がなければ、医療界で及ぼす影響は計り知れない。

 弾丸が体外に排出される。

 これさえあれば――――――。

 

 

「――――――終わりだ。我が奥義を見せよう……」

 

 

 トンっと、脇腹に手が添えられる。

 "来る"、手遅れで、もう間に合わない。

 この男が、"終わり"と言ったのだ。

 正真正銘――――――切り札。

 義眼の演算装置がスパークし、瞼の裏がチリチリ焼けるような痛み。

 コレは奇跡に近い、『AGV試験薬』による一時的な肉体の活性化と、義眼による思考加速。

 普通なら間に合わない追撃を、この二つが合わさる事により実現した。

 地を蹴り、足から炸裂音が鳴り響き、空薬莢をインジェクト。

 後方に向け推進力を足の裏から噴射。

 ほぼ同時に腕から空薬莢が飛び出し、驚異的な速度で下からすくい上げるようなアッパーを放つ。

 

 "天童式戦闘術一の型十五番"

 

 

「――――――『エンドレス・スクリームッ』!!」

 

「――――――『雲嶺毘湖鯉鮒(うねびこりゆう)ッ』!!」

 

 

 斥力フィールドが圧縮され巨大な槍上になり、拳打がぶつかりあい落雷を轟かせ夜よにまき散らす。

 実力は影胤の方が上、圧倒的に勝てる相手ではない。

 しかし、反撃を想定していなかった影胤の青白い槍は、蓮太郎のすべてが宿った"今までの自分(アッパー)"に軌道を大きくはずし――――――破裂音と共に超音速で振るわれたアッパーが影胤を体ごと上空十メートル打ち上げる。

 何がおきたか訳が分からないって顔をしてるな蛭子影胤。

 それでいいんだ。

 貴様に何がおきたか分からず殺されていった人たちと同じ想いを背負え。

 スラスターの角度を後方に撃発。

 影胤と同じ高度まで跳躍し、体を半回転、頭を下にしながら脚部の薬莢をまとめて撃発させる。

 

 

「天童式戦闘術二の型十一番」 

 

 

 彼と目が合う。

 人類を超える上位存在となり、初めて味わう人の頃の感性。

 彼は諦めたかのように小さくしゃがれた声をだした。

 

 

「そうか……私は君に、負けた、のか……」 

 

 

 この敗北で彼もまた強くなる。

 だが蓮太郎は、影胤を生かす気など毛頭なかった。

 

 

「『隠然(いんぜん)哭汀(こくてい)全弾撃発(アンミリテッド・バースト)』ッ!!」

 

 

 オーバーヘッドキック――――――超バラニウムの爪先は、フィールドを突き破り、仮面ごしに顔面に振り下ろされる。

 水きり石のように凄まじい速度でコンクリートをバウンドし、海面まで叩き落され、百メートル以上先まで吹き飛び、あたりに津波のような水柱を生みながら沈んだ。

 戦っていた小比奈と延珠も静観プロモーターの決着を察し――――――延珠の方を振り返り笑って見せた。

 

 

「よっしゃあ勝ったぞ延珠」

 

 

 そんなポカーンと驚くなよ、俺も驚いてるよ。

 

 

「そんな、……パパァ、パパァァァアァア!!」

 

 

 彼女はもう敵じゃない。

 終わったんだ。

 これで――――――その時胸ポケットが震え、電子音が響く。

 

 

《生きてるみたいね、里見くん》

 

「終わったよ。約束通り勝ったぜ木更さん」

 

《見てた。でも君に悪いニュースを一つ伝えなきゃいけないわ》

 

「……悪いニュース?」

 

 

 ヤな予感がする。

 

 

《落ち着いて聞いてね……ステージ――――――ザァ―ぁザ……》

 

「え?」

 

 

 蓮太郎は知らない。

 木更たち以外にこの戦いを観戦していた者がいた事を。

 直後偵察機が撃ち落され、ジャミングがされた事を。

 

 

「見て……否、見させて頂いたよ里見蓮太郎くん」

 

 

 その男は兎に角場違いなかっこだった。

 白衣――――――医者、学者、何でもいいが何故ここにいる?

 

 

「あれ?微妙な反応だな、もしかして愛しの彼女とのひと時をぶっちされて怒ってる?そりゃ知りもしない赤の他人が、全部終わった後で"見させて頂いたよ"とか登場したらそりゃ困惑するわ。行き成りしゃしゃり出て何様だよってね」

 

「……何者なんだ、あんたは?」

 

「何者か……『木原』と名のっても君には理解できまい。詳しくは菫くんに訊いてくれたまえ」

 

 

 菫さんの知り合いか?でもなんだ、この男とは生き方が相容れないと直感する。

 

 

「正直君が負けたら即彼女を投入する予定だったけど……どうでもいいか。嗚呼さっきの電話の内容だけど僕が変わりに説明するよ」

 

 

 ――――――ステージⅤのガストレアが姿を現した。

 

 

 これから何が起こるのか説明され、もしかしたら撃退できるかもしれない可能性を説明された。

 ガストレア大戦期末期の遺物――――――完成はしたが、ついに一度も試運転もないまま陣地放棄を余儀なくされた超巨大兵器。

 通称『天の梯子』――――――またの名を『線形超電磁投射装置』直系八百ミリ以下の金属飛翔体を亜光速まで加速して撃ち出すことの出来るレールガンモジュール。

 

"君が撃つんだ"

 

 訳が分からない。

 そこまでの事情に精通して何故自ら動かない。

 

"場所は……一目で分かるな。軽く準備しといたから、後は弾を込めて狙いを定め引き金を引くだけ"

 

 守りたいものがあるなら守ってみせろと言われ――――――やるしかないだろ。

 白衣の男はいつの間にか姿を消し、声だけがこだました。

 

"東京エリアを救えよ、ヒーロー"

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゾディアックの終焉の泣き声が聞こえる。

 本当に救っちゃったよ。

 憧れるなぁー。

 元凶である影胤を撃破し、ステージⅤゾディアック天蠍宮(スコーピオン)を『天の梯子』で斃した。

 IP序列は12万3452位。

 元陸上自衛隊東部方面隊第七八七機械化特殊部隊「新人類創造計画」の人間兵器。

 高校生で。

 女難の相。

 正義感が強くて、人を引き付ける何かがある。

 見つけたよ。

 この物語の主人公(ヒーロー)を。

 

 

「君の親御さんも正義感の強い、いい迷惑な人たちでしたよ」

 

 

 彼が僕の所まで辿り着くのはそう遠くないのかもしれない。

 

 

 

 

 








問題児シリーズ『ラストエンブリオ1』を読み終わり、感じた事。
自分は黒ウサギ派だったのですが……久藤彩鳥かわいい惚れた(ポッ
カッコいい惚れる敵キャラがお好きなそこのアナタ!!問題児たちが異世界から来るそうですよ?に登場する大魔王アジ=ダカーハ(誤字に非ず)はマジで男前です。ぜひお手に取ってその雄姿を共有しましょう!!

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