西暦2021年前に転生したんだから科学者として頑張るしかないでしょ!!   作:namaZ

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視点切り替えが多い――――――いける!(白目)
最後の人物視点は書いた作者もすっかり忘れていた人物を投入しました。
ここで入れないと登場するタイミングがない!?












第二十三次観測

 巳継悠河の双眸に幾何学的な模様が現れ、黒目内部が回転する。

 悠河のコレは『二一式改』。

 もととなった『二一式黒膂石義眼』を踏襲し、改良を加えた二世代型。

 演算装置による思考の加速――――――それが義眼。

 身体の重心、傾き、構え、指先から眼の動き、呼吸に至るまで計算し、未来予知に迫る精度で相手の次の、また次の、また次の次の行動を演算、予測する。

 それだけでも厄介だが、真骨頂は別にある。

 脳は処理能力が最速にまで達するとかなり加速可能になる。義眼の演算加速が常識では有り得ない体感を可能にする。

 昔からスポーツや極限状態において、脳内にアドレナリンが分泌される事で興奮状態となり、処理能力が加速し心拍数が上昇、体感時間が延びる報告は数多くある。野球のバッターは、ボールがスローや、止まって見え、縫い目が数えられたというのは有名な話。

 しかし、それも刹那な瞬き。

 あらゆる状況下でも加速するのは不可能。

 それを可能にするのが『二一式改』なのだ。

 だが――――――千日手とは実際に体験しないと厄介さが分からないものだ。

 

 

「このままだと朝日を拝むことになりそうだ」

 

「今まで気にもしなかったが相性の善し悪しを思い知ったよ。互いにこうも攻撃が当たらないのは……厭きてくる。その義眼は脅威だ。思考を読まれているようだ。もし、もしもフィールドを破壊出来る手段、君のパートナーでもいいが、ピースが揃っていたら敗北していたよ。小比奈も私と同じで攻めあぐねているし時間切れかな」

 

「本気で逃げに徹したももかを倒すことはできない」

 

「変わった信頼だ。おっと、もう無理か。撤退させてもらうよ。彼らがやってきた。遊びは終わり、戯れはまた今度だ」 

 

 

 小比奈が悔しそうにももかを睨みながら影胤の側に着地する。

 

 

「いや~死ぬね。もう無理、やだ、めんどくさい。帰って寝たい」 

 

「アイツムカつく、弱いくせに斬られてくれない」

 

「撤退だももか。彼らの標的は蛭子親子、巻き添えは御免こうむりたい」

 

 

 月明かりの暗闇に光が光速で通り過ぎる。

 彼等が到着したのだ。

 今の光は彼らを運ぶ輸送機、東京エリアを守護する新設部隊。

 

 

「陸上自衛隊特殊兵科所属駆動鎧戦術部隊……ローマ連邦から輸入した新兵器を真っ先に取り入れた部隊。かの五賢人の一人である神無城沙希が開発した駆動鎧をバラニウム産出国である東京エリアに売り込むとは聞いてはいたが、こんなにも早く導入するとは」

 

 

 全力で後退する。

 ここにくる兵器は一人の人間を殺すには殺傷力があまりにも高すぎる。

 そう――――――『人間』なら。

 

 

「彼と僕との戦力差は大方分析完了。あとは兵装だけ……」

 

 

 最後に視線だけを後方に向けると蛭子親子は屈強の駆動鎧に囲まれていた。

 全長は2.5メートルほどの大きさで、青と灰色の特殊な迷彩を施されて、頭に当たる部分が巨大で、胸部が膨らんでいるため、ドラム缶を被っているように見える駆動鎧。

 『HsPS-15』が、アタッシュケースを回収する任務を邪魔する蛭子親子に、巨大な銃口を向けた。

 勝敗は判らないが、あの二人は逃げ延びる。

 お互い痛み分けか、駆動鎧戦術部隊の壊滅か、結果は予想よりも早く知ることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 東京エリアで一際厳重に護られた建物。

 重鎮が住まうある一室で聖天使は菊ノ丞の報告に耳を傾けていた。

 駆動鎧(Powered Exoskeleton)戦術(tactics)部隊(unit)のGPSマーカー消失。

 この報告を受けて聖天子は静かに瞳を閉じ、唇を震わせる。

 報告は其処で終わらない、菊ノ丞は感情を覚られず淡々と報告書を読み上げる。

 降下予測ポイントで駆動鎧の残骸を回収中とのこと。

 犠牲となった人達に祈りをささげ、最後まで菊ノ丞の言葉に耳を傾ける。

 現状、駆動鎧戦術部隊は壊滅した見方が濃厚。

 十体の『HsPS-15』壊滅は少なからず二人の間に動揺を生んだ。

 陸上自衛隊の主戦力として期待していた分、その反動も大きい。

 私たちの予想以上に元百番台機械化兵士は強敵。

 

 

「次こそ……いえ、次が最後の総力戦。民警の皆さんに託すしかありません」

 

 

 最悪のパターンも想定して事に当たる必要がある。

 ゾディアックは人類の天敵なのだから。

 

 

「……それともう一つお伝えすることがあります」

 

「それは?」

 

「明日、『木原』が入国いたします」

 

「『木原』ですか……五賢人神無城博士の助手でしたか?」

 

「その認識で相違ありません。どこから知り得たのかは定かではありませんが、今回の出来事が原因でいらっしゃるようです」

 

「そうですか、何やら裏を禁じえません」

 

「入国を禁じますか?」

 

 

 『木原』に関する資料を流し読みし。

 

 

「……許可します」

 

「わかりました」

 

 

 菊ノ丞は報告を終えると腰を曲げ一礼し退出する。

 これは一種の賭けだ。

 このタイミングで五賢人の助手が東京エリアに来日する。

 怪しい、タイミングが良すぎる、裏がある。

 それらを一蹴しこの状況を切り抜ける可能性に賭けた。

 情報をどこで仕入れたかは知り得ないが、ゾディアックが接近中であることを承知の上で来ている可能性が高い。

 ――――――保険。

 最悪の事態を想定し保険を掛ける。

 東京エリアの3代目統治者として何としても住民を護らなければならない。

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 ももかの人生は逃げの人生だ。

 目を背け(逃げて)耳を塞ぎ(逃げて)何も言わない(逃げて)――――――

 助けを求める手を振り払い逃げて。

 中途半端に死からも逃げて。

 生きたいから逃げて。

 辛いのもいやだ。

 苦しいのもいやだ。

 面倒もいやだ。

 熱く頑張るのもらしくない。

 『木原』からも、家族からも逃げて。

 逃げても根本的解決にはならないと分かっていても。

 立ち向かうのもいやだから。

 才能もない。

 才気もない。

 努力をすれば――――――なんて気概もない。

 逃げて(目を背け)逃げて(耳を塞ぎ)逃げて(何も言わない)――――――

 全てが終わり、なお取り返しがつかなくなっても逃げて――――――後悔。

 どうしようもないのは分かっている。

 私は無力なただな子供。

 巳継悠河との生活は楽しかった。

 乱暴で口も悪くて性格も最悪。

 そんな人間最底辺な彼だけど、実験体としてではなく一人の存在として扱ってくれた。

 途方もなく嬉しかった。

 任務でも仕事でもいい、今まで誰も引っ張ってくれなかった手綱を巳継悠河は掴んでくれた。

 現実逃避なのは理解している。

 けど、一年前までの全てを忘れてこれからも悠河と暮らせれば――――――

 

 

 

 

 マイホームに帰還し切り傷に包帯を巻いてる間、悠河は急ぎ連絡していた。

 上司……とだけ知ってはいるが、どの組織と連絡しているかは知らないももか。

 蓮太郎や延珠が無事か気になるがもう動きたくない。

 ぐっすり眠れそうだ。

 いつもは聞き流す悠河の電話の内容の一部分が強烈に脳を揺さぶった。

 

 "『木原』さんが明日東京エリアに到着する。"

 

 その連絡に――――――ももかは震えていた。

 

 

「かはッッッッッ、おえぇぇぇええぇ」

 

 

 一年前なら耐えれた記憶が、逃げの先で手に入れた幸福が邪魔をし、彼女を追い詰める。

 『木原』が東京エリア(ここ)に来る。

 それだけで胃が締め付けられ、胃液までも絞り出す。

 逃げて、にげて、ニゲテ――――――

 見捨てた今までの全てが重くのしかかる。

 震えが止まらない。

 胃には何もないのに吐き気が治まらない。

 悲しい(辛い)、瞼が重たい、彼女自身の防波堤が一時的な逃げに奔った。

 このまま眠れば少しは楽になる。

 いつものように心の奥に逃げ込み――――――

 

 

「ももかッ」

 

 

 あの悠河が心配そうな目で私を見ている。

 倒れた私を抱きしめてくれている。

 もうそれだけで、幸せで(辛くて)幸せで(悲しくて)幸せで(惨め)――――――

 今まで避けてきた人の温もりが――――――温かくて。

 こんな身体でも温もりを感じるのが嬉しくて。

 嘘でもいい、勘違いでもいい、この鼓動を私は生涯忘れない。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼女は確信していた。

 『光』を奪った悪魔は此処に来ると。

 理屈?ないよ、あるわけないじゃん。

 理屈なんて一つも無い、此処に来るのは絶対なんだ。

 絶対来る。

 理由もないしなんの根拠もない。

 やつは東京エリアに固執している。

 ワタシそれを利用する。

 ワタシに悪魔を殺せる力はない。

 悪魔を困らせて困らせて困らせて――――――いつかの刹那を待つ。

 ただそれだけに生きる。

 ワタシは『鬼』。

 他人など省みない。

 ワタシは『鬼』だから。

 何でもワタシの為に利用する。

 『闇』をも照らす月をただただ見つめていると、携帯が震える。

 もうこの携帯の連絡先には誰も通じない。

 なら誰からか?

 『同士』からだ。

 東京エリアに着いたはいいが、ワタシに工作の類の心得は無い。

 そんなある日、"君と私は何処となく似ている……良い目だ。狂った『闇』の綺麗な瞳だよ"

 口説き文句にしては殴られても文句が言えない台詞。

 そいつはシルクハットを深くかぶり派手な燕尾服に白い仮面で素顔を隠した――――――そう、変態仮面と呼ばれてもこれまた文句が言えない恰好なのだが、妙にしっくりくる……似合っているとさえ言える。

 『狂人』がワタシの瞳から判断したように。

 『鬼』も仮面の奥から僅かに覗き見る双眸から理解した。 

 

 ――――――嗚呼なんだ……同じか。

 

 『狂人』は高らかに笑った。

 

 "同じ、それなら納得。こんなにも笑ったのは久しぶりだ。どうだろうか我が『同志』よ、共に混乱をツクラナイカ?"

 

 

 それが『狂人』との出会い。

 通話ボタンを押すと狂った『狂人』がいつも以上にテンション高く今日の出来事を語りかる。

 ただただうるさいそれを聞き終える。

 

 

「その無駄に高いテンションどうにかならないの?道草食ってないで早く合流してよね――――――影胤」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 








相州戦神館學園万仙陣(まだ途中)をプレイして、甘粕正彦が好きで好きで仕方がない!!人間大好きラスボスキャラの癖にやっちゃったドジっ子キャラとか俺得すぎた。

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