西暦2021年前に転生したんだから科学者として頑張るしかないでしょ!!   作:namaZ

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三月は忙しいのでこれがラストですが、四月から頑張りますのでよろしく願いします。
話を書いててふと思ったのですが、日常会話もうちょっと長くした方がいいですかね?

もう忘れているかもしれませんが、二月ごろ『M.O.手術(仮)どうしよ?意見求めます!』の投票を行いました。詳しい事は活動報告に記載してますが、結果を簡潔に述べます。
M.O.手術(仮)はやりません!


感想、アドバイス等よろしくお願いします。








第二十次観測

 西暦2031年。

 『木原』として人類がガストレアに敗北して十年。

 記念すべき原作開始の火蓋が切って落とされた。

 此処から始まる。

 ガストレアウィルスの開発から呪われた子供たちを生み出したのは物語の『序章』に過ぎない。

 『本論』は此処から始まる。

 何時終わりが来るのか分からない『終章』に向かって原作が動き出す。

 

 

「戦力と根回しは粗方終わった。不測の事態は避けられないが……負けは許されない」

 

 

 金牛宮(タウルス)――――――素体(もと)となった子は寂しがり屋で臆病な性格だった。自分の意見を言わず流れに任して皆の輪に加わり安心感を覚える子。

 一人じゃ何もできない十一体の子供たちの中で落ちこぼれだった彼女がゾディアック最強とは……

 ゾディアックには個性がある。

 素体(もと)となった少女の根源を欲求として行動している。

 食事も睡眠も種の存続も必要としないゾディアックはただ『人間』だった頃の少女の想いと渇望に突き動かされている。

 人類の敵として生まれてしまった化け物は目的もなく、ガストレアウィルスを撒き散らしながらこの世に誕生した。

 要らないだけで食事も睡眠もできる。滅ぼさない限り死ぬことがないから種の存続の本能がない。

 これといって何もやることがないのだ。

 この世界に敵などいないのだから。

 だが彼女たちは気付いていない。

 もう二体斃され、人類は化け物を殺す刃を研いでいることに。

 

 

「レルネは人類の希望(エルピス)だが、在り方は災厄の壺(パンドラの箱)なんだ。ゾディアックを撲滅する可能性を秘めながら人類を滅ぼす可能性を秘めている。希望と災厄をその小さな肉体に宿してるんだ。他の子と違いレルネのフルネームには深い訳がある。レルネ=C=K=ヴァンスガズの名の『木原()』と『ヴァンズ』は僕の姓だって簡単にわかるでしょ?なら『レルネ』と『C』は捻ってるのかって言われるとそうでもない。レルネ……この場合『レルネ―』か、ギリシャ神話に登場する怪物で巨体に9つ頭を持つヒュドラって怪物がいるだろ……結構関係あるからちゃんとききんしゃい。ヒュドラは『レルネー』の沼地に生息している。その沼にはもう一匹住みついている怪物がいたんだ、それが巨大蟹(カルキノス)

 黄道十二星座最後の欠番『巨大蟹(キャンサー)』……『キャンサー()』は我ながら単純だと思ったんだが、あの子はゾディアックを屠る強さを兼ね備えた勇者だが同時に最後のゾディアックに成れる『人間』なんだ。人類を滅ぼす最強災厄の魔王の資格を生まれながら獲得してるんだ。『人間』をジョセフ君や身内でしか知らないレルネが、人類の敵になる時はジョセフ君と僕が何らかの手段で『人間』に殺害されたときだけだろうね。そうなる可能性は零に近いけどそうなったらレルネはその身を災厄に任せ存分に死をばら撒くだろうね」

 

 

 あの子は僕の『愛の棺桶』でレルネ専用の侵食抑制剤を一時間接種しないと『人間』として生きられない身体だ。そこだけが不憫かな。

 『愛の棺桶』は生産と維持費に莫大な予算が必要であり、量産不可能なワンオフ機となっている。

 そのせいで下手にローマ連邦を出れないんだ。

 飛行機の移動中壊れたり、海外で破損したら目も当てられない。

 レルネが他の地でゾディアックを退治しにいかないのはこれが理由である。

 色々試行錯誤して開発はしてるんだが……これがまた難しい。

 

 

「レルネの由来はもうちょい語りたいけど、次はエヴァにしよう。レルネは特別だから僕直々に名前を与えたけどエヴァは沙希ちゃんが命名した。名前の意味は特になく、「かわいいから」だそうだ。いい加減だなぁおい。

 僕は娘たちを二つに分けている。『お気に入り』か『ただの娘』かの二通りだ。勿論一番はレルネで確定だが、二番はエヴァだ。態々手回ししてまで甲斐甲斐しく過保護に面倒を見ているのはこの二人だけだしね。レルネと違ってエヴァのベースは一つだ。だから敬意を払う。レルネの様な存在が天然で生まれない限り、一つのベース……天然のモデルに敵は無い。だから僕は空席となった金牛宮(タウルス)の『タウルス()』をエヴァに授けた。僕なりの愛情表現さ」

 

 

 語りかけている相手は声には出さないが笑っている。

 喜んでくれて何よりだ。

 

 

「一人で抱えるには重いからね……こんな話が出来るのは君くらいだ。沙希ちゃんには失望されたくないし」

 

 

 こんな娘自慢(?)『木原』らしくないからね。

 他の人には聞かせられない。

 

 

「僕の実験でまた沢山死ぬんだろうなぁ」

 

 

 気が滅入っちゃう。

 あれ、励ましてくれるの?癒やされるわー心がシェアされるぜ!

 

 

「仕事の時間か……また来るよ、それじゃ」

 

 

 スイッチを押し、それ以上負担にならないよう眠らせる。

 床下に収納されるのを見届けるとその場を立ち去る。

 相手が生命維持装置のビーカー内でしか生きられない脳と脊髄だけの存在でも、彼にとってありのままの自分を曝け出す唯一の相手。

 

 

「元気でね……ママ」

 

 

 電源を切らない限り死ぬことがない環境を強要させていることに彼は気付かない。

 『木原』同様『彼』自身も狂っていることに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 東京エリアに滞在し一年。

 慣れない環境のせいか、時間の流れが遅く長い一年となった。

 任務とはいえ、この生活を結構気に入っている自分がいる。

 何だかんだ、ももかとは問題なく一つ屋根の下で一年暮らした。

 ももかはよく藍原延珠と遊びに行く時、「えーちゃんと遊ぶね……一緒に来る?ロリコn」頭を蹴飛ばし何度窓から突き落としたか。

 天童木更には料理を何度もレクチャーして教えたこともある。最初は酷かった、まさか卵焼きを天井に叩きつける場面をリアルに見られるとは。

 普段は、ガストレア退治と自主トレと情報収集を日課に一日を平凡に任務に没頭している。

 一月一日はガストレアの侵入も目撃情報もなく、今年の年明けは平和な始まりを迎えた。

 

 

「ごめんねぇ巳継ちゃん。ウチが手料理食べたいって我儘言うたばっかりに」

 

「料理するの好きだし鬱憤なんてないよ。日頃の自主トレと同じでやって当然の部類だし寧ろ節約に料理を覚えるのは有効なんです。ね、()()()くん」

 

 

 去年の十月半ばに里見くんの呼び名を連太郎に変えて欲しいとお願いされてしまったのだ。僕は基本人を『くん』か『さん』付けで呼ぶようにしている。(ただしももか、テメーは駄目だ)半年以上交流して同じ時期に民警になり同い年の男子。周りが女子だけで、同期の女子に『里見くん』と呼ばれる。薄々察していたけど、タメで下の名前を呼んでほしかったんだ。『くん』付けは辞めないけどね。

 

 

「……善処する」

 

「その台詞何度目だろ?」

 

「ああ悪かったな!料理入門者レベルで悪かったな!上位所か神クラスのお前には一生かけても敵わねーよ」

 

「それどころか料理なんかした事ない初心者レベルの腕前だもんね?」

 

「悪かった木更さん」

 

「連太郎の作るモヤシ料理は絶品だ。童が保証する!」

 

「アレを料理と言い切る延珠ちゃん偉いわ、どこかのお馬鹿とちがって」

 

「調理スキルを求めんな」

 

「何か手伝うことはないのか?」

 

 

 藍原さんが顔をのぞかせ自己主張してくるが、もうあと五分ほどで完成する。

 

 

「もう五分でそっちに持っていくからその時手伝ってもらえる?」

 

「任せろ!」

 

 

 全てお手製の手打ちの年越しそばを六人分作るのは結構大変だ。大分待たせてしまった。

 人数分の器に均等に仕分けする。

 

  

「よし……それじゃ藍原さんこの二つを彼女たちにお願いします」 

 

「うむ、任された」 

 

「ももかはこれね」 

 

「えーやるなんて一言も言ってないよ」 

 

「ヤレ」 

 

「この態度の違いだよ」 

 

 

 文句を垂れつつ蕎麦を運ぶももか。

 僕も残りの二つを持ち食卓に並べる。

 

 

「さ、温かいうちにどうぞ」

 

「「「「「いただきます」」」」」

 

 

 待ってましたとばかりに蕎麦に喰らいつく一同。

 汁を吸い、麺をすすった。

 

 

「う、うまい!?何だコレ……まるで麺が生きてるみたいだ」

 

「こんなに美味しい蕎麦が此の世に合るとわ!」

 

「家で食べた蕎麦に匹敵する……出汁が違うわ!天童の蕎麦は代々受け継がれた伝統の味。これには"和"と"洋"を感じる!」

 

「こりゃビックリやわぁ。ウチの板前と互角……"洋"を取り入れたアイデアから今までと違う味わいを引き出しとる」

 

「いつも通りだね」

 

「……いつも食してるから舌が肥えたか」

 

 

 一同絶賛の仲、ももかだけ通常運搬。

 

 

「巳継ちゃん司馬家の板前に鞍替えせえへん?勿論ももかちゃんと二人でや」

 

「民警なんか辞めて一人で転職したいけど遠慮しとくよ」

 

「なんや残念やわ。天下の八百台様が板前件護衛をしてくれればどんだけ心強いかぁ」

 

「弾薬類の無料提供感謝してる。それはそれ、これはこれだ。このぼろアパートで民警として生活してくよ……不本意だけど」

 

 

 最後は誰にも聞き取れない音量で口の中で反響した。

 

 

「あーん、ふられてもうた乙女心癒してぇなぁ里見ちゃん」

 

「なにどさくさに紛れて里見くんに抱き着こうとしてるのよ!嫌がってるでしょ離れなさい!」

 

「え~ウチとしては嫌がる里見ちゃんに無理強いしたくないけど、こんな美少女に迫られて困る男性はいいひんと思うよ」

 

「さ、里見くんは私のなの!社長の手足なのよ。他の女になびくなんてありえないんだから!……このお馬鹿、少しは抵抗しなさい!」

 

「……勘弁してくれ」

 

 

 同情します。いえ、マジで。

 何事もなかった。スルースキルを発揮する。これも組織で生きる上で欠かせないスキルだ。

 僕とももかは無言で蕎麦を啜り同時に食べ終わり食器を片付ける。

 避難するんだ。

 今にも殺し合いを始めそうな二人に藍原さんと連太郎くんがテーブルの端を掴み戦闘に巻き込まれないよう端に避難する。

 僕たちも慣れたもんさ。

 先輩に無言で頭を軽く下げ帰りの意を告げる。

 連太郎くんも慣れたもんで、諦めの表情で"助けてくれ"と目で訴えかける。

 僕はとてもいい笑顔で自室に避難した。

 これまでの経緯で、二人は壁までは破壊しないと分かっているからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同時刻に一人の少女と一人の幼子が東京エリアの空港に降り立った。

 飛行機の座席から眺める東京エリアは闇に包まれた結晶。

 どの都市にも言える事だが、かつての世界を知る者として世界(エリア)は儚い崩れゆく幻想郷にみえる。

 いつか風に吹かれ消えゆく風前の灯火。

 ガストレアに人類は負けるんだ。

 地球の支配者が『人間』からガストレアに移り変わるだけ。

 自然の理は『人間』の努力など踏み滲む。

 何より彼女に希望など無い。

 ガストレアに恨みなど無い。

 ガストレアに捕食された両親は不思議と悲しくなかった。

 彼女には希望の星がいたのだ。

 それももう過去の御話。

 『光』を失った世界は、生きるには暗過ぎる。

 他人に憎まれようが悪意の泥沼に沈もうが、この『闇』をぶつけなきゃ我慢ならない。

 ワタシは――――――『鬼』。

 

 

「三年……三年もかかった。――――――を殺す」 

 

 

 東京エリアの都市部に歩みを向ける。

 ライトの光に照らされた『鬼』は、場違いに闇に溶けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







ルーントルーパーズ自衛隊漂流戦記なる物を購入して読んで見たんですが……面白かったけど値段と中身が吊り合っていない。二、三時間で読み終わる本が1,200円相当……高い。

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