西暦2021年前に転生したんだから科学者として頑張るしかないでしょ!! 作:namaZ
俺がこの世界で木原として生まれた瞬間、当然何が何だかわからなかった。
前世の俺が如何死んだか知りもしないが、こればかりは神様のみぞ知る。
記憶は途切れ途切れの断片的にしか思い出せない。
そのおかげか前世は前世、この世界の俺の感性——————木原的思考にはあんまし影響されなかった。
あくまで、あんましだからね。
学園都市に生まれ、暗部で暗躍生活するのか~っと未来に希望が見えずにいた。
だけどそこは無駄にポジティブに、憧れの科学者に成れてラッキー俺様万歳で乗り切った。
英才教育——————殆ど木原の御蔭でそこらの大学教授より物知りで頭もいい。悲しい事に『木原』じゃ自慢できないけど。
引きこもりすぎて外の空気が恋しくなった頃、この世界に生を受け五年。今まで外にすら出てない俺に転機が訪れた。
親父の研究実験の見学として外に出て分かった。
住んでる国が日本ですらなかった。
学園都市どこだよ!?え?木原って『とある』の登場人物だよね?より詳しく言うなら木原一族だよね?これはもしかして学園都市がまだ無い?
アレイスターさん何やってんすか。正直楽しみにしてたのに、超能力とか魔術とか心惹かれる実験に。
『とある』は月日の表示はされているが、アレが西暦何年くらいなのか検討もつかない。
『とある』の学園都市外の科学力を推察するにそう遠くないうちに日本に建設されるだろうと安易な考えに至ったのはこの際仕方ない。
俺も六歳になり、親父の研究のサポートをしていたある日の事。木原を憎む、
奇跡的に助かった俺は、このままではまた命を狙われてしまう。
そこで、顔を隠し、個人情報を名前だけ残した俺は、自衛の為今まで疎かにしていた研究、実験以外の情勢を片っ端から調べつくした。
早くそうしなかった俺を憎むぜ。
まずは前世との違いを探した。
間違い探しだ。この手の作業は肉体が子供のせいか何だか楽しい。
『精神は肉体に引っ張られる』と言う言葉があり、俺の精神はいまだ、少年といっても違いないものだ。
其処で一番目を引いたのが、『天童』。
ん?天童?珍しい苗字だが『とある』なら有り得ーるで納得したかった。
親父の自室に厳重にロックされている金庫を発見。この時点で命に係わる三つの罠を解除している。実家に何仕掛けてんだよ親父。
金庫のセキュリティも指紋、網膜、音質、三十二桁のパスワードも難無く突破。
金庫を開けると更に金庫と遊び心満載のマトリョーシカ。
開けば開くほどめんどくさく複雑になっていくセキュリティ。
五枚目の扉をクリアし、やっと目的の物を手に入れた。
そこで見てしまった。見つけてしまった。
親父の研究資料——————此処には親父独自の研究資料(独占データ)が出るわ出るわ。
そこで目を引く一文。
『謎の黒い金属を発掘。調査した処、通常の金属では有り得ない——————(以下略)』
研究資料にバラニウムについての経緯が記されていた。
流石に察しがつきました。
証拠がこんなに有るともう否定できない。
「ブラック・ブレットの世界じゃねーか?!流石は俺の親父!木原としていち早くバラニウムに注目してやがったか!
独占だ独占~♪
こんな平和な世の中じゃ此奴の価値はまだ理解されない。
好きなだけ独占だ!
てか、俺が頑張らないと未来が灰色だ。
あ、ガストレアウィルスが無いと作るにしても憶測になってしまう。
ソレに近いモノを研究し創りだせれば、対ガストレア抗生物質を創りだせるかもしれない。
バラニウムの研究と一緒にウィルスの研究も同時進行しよう。
科学者としてテンション上がってきたぁぁああああああ!!!
狂喜のマッドサイエンティストに俺はなる(キリッ
とか考えている時期が俺にもありました、はい。
子供ながら『木原』というだけで誘拐、暗殺の毎日。
年齢に似合わず大人顔負けの指示をする俺に納得がいかない多数の人達。九割方こっち派だから困るわー。
研究しようにも出来ないのが現状です。
そんな時、親父に助手居たなとふと、思い出した俺はそいつを身代わりにする事にした。勿論勝手に。
ちゃっちゃと片付けたいから死んだことにした。一割以下の俺を支持してくれる者共のごく一部にだけ、俺の存命を教え、手足として扱き使っている。
俺の御蔭で沙希ちゃん大成功!やったね!
閑和休題。
あれから一年。七歳になりそれなりに研究も進んでいる。
十年は永いようで短い。
この糞みてーな地下でひたすら実験するしかねー。
区画ごとに実験は振り分けられている。
その中のお気に入りの一つ。
『ウイルス製造工場』。
文字通り、ガストレアウィルスを創るぞー工場。
ウィルス、細菌、病原菌、ありとあらゆる世界中の生物に何かしら作用するその全てが集められている。
生物だからね、人間以外に作用する全てが詰まっている。最近は植物にも作用するのも集めている。
ウィルスじゃないのも混ざってるって?世の中総じてそんなもんだ。
他の研究員には、純粋な観察と、環境や他生物にどれだけ影響を与え、変化するのか。後、混ぜてみたり、それその『モノ』の根幹部分を弄り、どう変異するのかを計測しデータを取り出している。
その結果、ガストレアウィルスが生まれれば簡単に正反対のものが生み出せる。
要はデータさえ揃えばこっちのモノ。
工学機器が自動的に不眠不休で頑張ってくれてるが、実験工程を消化するには時間がかかる。
そして、木原らしい区画。俺のお気に入りの一つ。
『最終実験施設』。
最終——————人体実験場だ。
ガストレアウィルスか如何か確認する場合、これほど手っ取り早い方法はないね。
マウスや、犬、猿なんかで試すなんてナンセンスだ。
この区画には俺が認めた狂人(変態)しかいない危険地帯だ。
最低でもガストレアウィルスに関しては、三年実験しないとデータが不足している。
三年後の工程が楽しみだ。
三年が経ちました。
外の世界に永らくお会いしておりません。
今年で十歳になりました。終末まで七年。
現存するウィルス類や菌類の計測は大体終わったが、此れと言って劇的な変異はなかった。
学園都市があれば、ガストレアウィルスなんて怖くも何ともないのに。樹形図の設計者があればどんだけ便利か!三年も掛かんねーよ!数分で済んじまうぞ! てか、対処法わかんじゃね?
人体実験には死刑囚や戸籍のない可哀想な人たちに絞って選抜してきた。
ガタガタ文句を言うバカも居たが、黙らせといた。
あぁー進展しないな。何でも揃ってはいるが、人員に時間にお金が足りなーい!
沙希ちゃんを売れば儲かるかな?
「何馬鹿な事考えているんですかドクタ~?ちゃ~んとお遊び(お仕事)に熱を入れて下さいね?」
「分かってるよビッチちゃん」
「誰がビッチですか!もうー!ドクターの研究でノーベル賞物が多すぎてあっちこちに駆り出される私の身になって下さいよ~。その御蔭で資金ががっぽがっぽ懐と研究費に入っているのにドクターの研究はお金を何だと思ってるんですか?ドブに捨ててます!アレどう見たって生物兵器を作ってるとしかみえませんよ!」
「生物兵器か……似たようなもんだな。結婚するなら早めがイイらしいぞ。何故かって?ふっ……野暮ってもんだろ?なぁ!」
「なんの話ですか!!?そもそも私そんな年じゃありませんよ!ピッチピッチの十八歳ですよ!」
「え?お前十八なの?…………………………え?」
「え?じゃないですよ!なにが『え?』ですか!……本当に知らなかったんですか?」
「……」
「……」
おかしいな、冷房設備は完璧だ。どちらかといえば寒い部屋に流れるこの
「時間もない事ですしもういいです。誰かさんが癌の治療法とか難病の治療法次々に発表するせいで、なれないスピーチで忙しいですし」
「それがそうでもない、真の難病には俺も手を焼いている」
「真の難病?」
「仮病、君が代病、中二病、ロリコン、ショタコン、釘宮病と世には科学ではどうしようもない病が溢れている。ニンフルエンザはもう手遅れだ……」
「よく分からないけどそんなにヤバい病なの?」
「ああ……時間はいいのか?飛行機に遅れるぞ」
「やっばいやばい!それではドクター。一週間ほど空けますので」
「いってら」
俺も大概だが、十代で主任研究員でお偉いさんの機嫌取り。
頭が上がりませんわ。
さて、今日も人類繁栄の為に一肌脱ぎますか。
ルンルン気分で『ウイルス製造工場』までスキップする。
その後姿を見つめる影に最後まで気付かずに。