西暦2021年前に転生したんだから科学者として頑張るしかないでしょ!!   作:namaZ

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作者のふとした疑問を『木原』が最後代弁してくれます。
実際どうするんや!?

感想、アドバイス等よろしくお願いします。







第十七次観測

 レミの『子』の指示に従い市街地を抜け闇を駆ける。

 1位が追跡してこないことからあいつ等の足止めは成功したようだ。 

 俺の役目は一刻も早く『木原』に追い付き殺す。

 これは逆恨みだ。

 『木原』は『アルフレッド・ノーベル』に似ている。

 『木原』は平和主義者――――――なのかもしれない。

 非人道的で外道だが、人々を救おうとその頭脳を活用している。

 遠い未来を見通し人類を想うなら『木原』は必要な人物だ。

 人類に必要。

 その為なら人を殺してもいいと?

 無勢を犠牲に多勢を助けると?

 

 IP序列10位の権威でこの世界の真実を知ったマイクは、怒りで怒鳴り散らしたり、恨み呪詛を懐いたわけでもなかった。ただ――――――泣いた。  

 大の大人が、七年前に忘却した涙を崩壊させ無様にイニシエーターの腕に抱かれ泣いたのだ。

 最高機密アクセスキー・レベル十二は『木原』が開示した情報を全て閲覧できる。そこには淡々と経緯が書かれた世界の真実。

 こうゆう実験をした。

 被験者が死んだ。

 事件があった。

 トラブルがあった。

 自爆し新種のウィルスが生まれた。

 創った。

 仮説、予想をまとめてみた。

 人間に投与した。

 実験は成功した。

 やらかした。

 

 真実を知ったらなんと馬鹿らしい。

 一部の科学者が暴走し、偶然生まれたウィルスを調べるも「兎に角凄い」としか分からず、そんな危険物を何の躊躇もなく人間に投与し実験を繰り返し、外道の行いに耐え切れなかった一部の研究員が子供たちを逃がしたら暴走しゾディアックが誕生した。

 

 なんと馬鹿馬鹿しいんだ!

 これ程の災厄が人の手でなされ、それが悉くトラブルと善意でなされている。

 これは泣くしかない。

 こんなアホらしい理由で知人や家族は死んだのだ。

 この情報は「こんなことが起きて、こんな結末を迎えた」と解りやすく表示してあるが、どうして『木原』はガストレアが出現する前から対ガストレアを想定して実験を行っていたのか――――――それが一つも書かれていない。

 トラブルや事件が発生すれば、どうしてそうなったか相手の心情も詳しく掲載されているのに対し『木原』の思惑と思想がまったく書かれていない。

 『木原』は実験をやった。(実験や行った非道の数々。実行した理由は不明)

 邪魔をする研究員が現れた。(多分こんな理由で妨害した、裏切った)

 

 『木原』は事件の中心にいる。

 『木原』を裏切った研究員や科学者の殆どが、『木原』を止めようとしていた。理由は様々だが止めようとしていたのは事実。

 俺は覚った。コイツは止めないとイケない奴だ。

 誰かがスイッチを切るまで稼働する殺戮機械(キリリングマシーン)

 事故だ偶然と書かれているが、『木原』は最初っからそうなるよう誘導し、あたかも自分は悪くないと印象操作しているのでは?

 

 真実は誰にもわからない。

 『木原』しか知らない。

 そんな俺でも分かるのはコイツはゲス野郎だ。

 人の命が軽くなったガストレア大戦移行はコイツは優秀だ。

 人々を救う可能性を秘めている。

 それでも、ガストレア大戦前の犠牲者はどうなる?

 ガストレアが出現する前の犠牲者をどう説明する。

 俺にはコイツがこの状況を意図してつくりだしたとしか考えられない。

 

 ――――――俺は唯恨みの捌け口が欲しいだけなのかもしれない。それでも、それを踏まえても、コイツを止めない限り犠牲者が納得しない。

 ガストレア大戦の最前線で知り合った俺の仲間。

 俺に賛同してくれる復讐者を三人集めた。

 俺が知る限りの百番台の民警。

 百番台が四人――――――それ以外の民警の知り合いはいたが、『木原』には力不足だ。命を散らす必要はない。

 

 

『100メートルを右折した路地に『木原』がいます。待ち伏せの可能性が……』 

 

<問題ない>

 

 

 1位がいない居ないなら俺に勝てる奴はいない。

 十番台――――――俺達に勝てるのは九人しかいない。

 1位は足止めされ、八人に減ったわけだ。

 待ち伏せされ罠だろうが俺達は噛み砕く。

 以外にも狭い路地にはトラップの類はなく、標的に追い付いた。

 

 

<……三人?護衛の三人はどうした?>

 

「邪魔にならないよう下がらしてある。思う存分ヴァンティアンと戦いたまえ、『運転手』のペアに勝てたら僕を思う存分八つ裂きにして構わない。やる気が出るだろ?」

 

<……乗ってやる。どのみちカニ娘は食い散らす予定だ。カニはうまいからな>

 

「うちの娘に向かって食い散らすたぁいい度胸だ。時と場合によっては勘違い間違いなしのマジ切れ切腹者だ。ぶち殺すぞ小僧おおおおおおおおお!!」

 

「めっさ勘違いしてるよ!?」

 

 

 空気読んでんのか?こっちは真剣に殺しに来てんだ。

 

 

<……俺の標的は『木原』だけだ。無駄な殺生は避けたい、『木原』を置いて消えな>

 

「お生憎様仕事なもんでね。このご時世食べごろの娘四人も養うには持って来いの役職だ。ま、運がなかったと諦めてくれ」

 

 

 命を懸けてまで『娘』を想う心は評価できる。

 仕事を投げ出さないプライドも好感が持てる。

 なら余計に、

 

 

<娘を失う羽目になるぞ?10位を舐めるな。『大食い(インフィニティ―ガウジ)』の二つ名は飾りじゃない>

 

「がはははははははははは!!」

 

 

 ウケる要素があったか?

 

 

「なにキョトンとしてんだよあんちゃん!!殺す気でこい!!運転ばっかで運動不足なんだぁ!!それともその程度なのか、その程度なのかああああああああああああ!!?」

 

<死にたいなら殺してやる!>

 

 

 十番台に挑む時点で浅はかだ。

 レベルが違う。

 経験も、実績も、相性も、全部上回っている。

 モデル:ウルフフィッシュの特徴(能力)は強靭な(アギト)だけじゃない。能力の真髄は挟む事にある。顎は挟むもの、挟む行為に意味がある。

 自然界で貝類をかみ砕いたり、甲殻類をかみ切って食べる咢を握力でも発揮する。

 それがシャリーの特性。

 掌を重ね地面と水平に構える。

 掌底を重ねたまま指を尖らせ咢を催す。

 立派な咢だ。

 口より巨大な咢は急所を丸ごと捕食する。

 シャリーはカニ娘を、俺はおっさんを一撃で殺す。

 痛みのない刹那で殺す――――――慈悲だ。

 俺は我流の格闘だが、確かな実戦で身に着けた経験が技の領域まで昇格してくれた。

 豪気な蹴りで首を刈り取る。

 唯のおっさんが俺の蹴りを捌けるとも思えない。

 シャリーの防御不可の咢は防ぎようがない。

 

 

(始末したらそのまま第二撃を『木原』にくらわせ終わらせる。それで完結)

 

 

 首を狙った蹴りは――――――受け止められた。

 

 

<ッ!!>

 

「おっさん舐めんなよ小僧。ジョセフに拳法教えたの誰だと思ってやがる」

 

 

 洗練された滑らかな水の流れは、殺人を一つの舞にする。

 足を圧し折り、首の脊髄の一つを外した。

 

 

「イニシエーターのお嬢ちゃんも連れてってやるから安心しろ。肺を片方潰れたしそう永くないだろ」

 

<ガハッ……な、なにもの……だ?>

 

「唯のおっさん……で納得しねーわな。劉明武(リュウ ミンウ)、IP序列9位『旅人の運転手(カプリース)』。ベース:タスマニアン・キング・クラブ、ヴァンティアンとペアを組んでいる」

 

 

 ――――――9位。

 百番台からは序列一つで実力に差が出る。

 十番台は激戦区だ。

 魔境の領域。

 怪物。

 

 

「強いよあんちゃん。今まで戦ってきた誰より……ジョセフの次くらい強い。ま、相手が悪かったと諦めてくれ。シャリーちゃんも『大食い(インフィニティ―ガウジ)』の二つ名に相応しい強さだ。ヴァンティアンの両腕捥がれたの初めてだ。ま、おれ等の方が強かっただけだ」

 

 

 力ある者が生き残り、何をしても許される時代。

 俺はそれが許せなかった。

 力があれば弱者を蹂躙していいのか?

 力持たぬ弱者は強者の家畜でしかないのか?

 違うだろ。

 違うだろ!!

 みんながみんな強いわけじゃないんだ。

 

 "人間は弱いんだよ"

 

 俺もお前も『木原』も呪われた子供たちも――――――弱いんだ。

 

 

(人は強いと言ったな……違うな、人は弱いから強いんだ) 

 

 

 初めから強い人間なんていないんだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……死んだか」

 

 

 煙草を一本銜えオイルライターで着火。ニコチンを肺で満たし息をつく。

 

 

「お父さん、煙草の煙は主流煙より副流煙の方が有害物質が多く含まれています。発癌性の高いジメチルニトロサミンは主流煙が5.3から43ナノグラムであるのに対して副流煙では680から823ナノグラム。キノリンの副流煙にいたっては主流煙の11倍、およそ1万8千ナノグラム含まれている。つまり、実際は吸う人間よりも周りの人間の方が害は大きいのです。その点私はガストレア因子の恩恵で心筋梗塞や狭心症、脳卒中や喘息の心配はありません。ですが、臭くてたまりません。臭いを落としてから帰宅してください」

 

「以後気を付けます、ほんとに、はい」

 

 

 辞める気は当分なさそうです。

 

 

「キシリトールとリセッシュ配給するから匂い消してから報告書提出してね、うちの研究所煙草禁煙だから。……分かっていたとはいえ事後処理めんどくせー!回収班急がせろ!レミの『子』は生きて回収しろ!マスコミの対応は事前通りに!はぁ疲れた。娘たちよ、さっさと帰るよ」

 

「了解ですドクター。ですが訂正が一つ」

 

「訂正?」

 

「お父さんは『運転手』です」

 

「そう思うならせめて名前で呼んでやりなよ」

 

 

 生みの親とはいえ娘たちが何を考えているのか分からない時がある。

 呪われた子供たちは人間の進化だ。

 環境か、時代がそうさせるのか、呪われた子供たちは精神的に成熟している。

 普通の人間の子供が死ぬ気で勉強して戦闘訓練を学んでも大人のプロには敵わない。

 進化した『人間』の子供は学習能力と成熟した精神は逸脱している。

 親に甘える年頃の子供がプロ顔負けの技術と知識を身に着ける。

 その努力は想像を絶する。

 頑張ったね。

 よくやった。

 そんな安っぽい言葉じゃ表現できない生き地獄。

 身に着けた能力は人間を凌駕し、新たな『人間』にランクアップさせる。

 呪われた子供たちは先導者だ。

 もっと専門的な知識を学ばせれば科学者として偉大な存在になる。

 でも人間の子供と同じで『人間』の子供たちにも得手不得手がある。

 更に呪われた子供たちも人間と同じで精神が不安定だ。

 まあそれが『人』間らしさだよね。

 

 

「僕の娘たちは優秀で助かるよ」

 

「世辞ですか?」

 

「本音だ」

 

 

 でも、ガストレア因子の子供は女性しか生まれない。

 男性もつくれないかなぁ~。

 ガストレアウィルスが存在する限り例えガストレアが消えても遠い未来人類滅ぶぞ。

 

 

 

 










お前はまだグンマを知らない・・・・・・ギャグマンガだった。あ、面白かったです。

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