西暦2021年前に転生したんだから科学者として頑張るしかないでしょ!! 作:namaZ
ちょっと後悔しつつこの話がやりたかった!
感想、アドバイス等よろしくお願いします。
『無敵のガストレア
この報道が世界中に発信されたのはゾディアックが斃された一時間後の出来事だ。
大量のガストレアの死体と――――――
そこに欺瞞情報か?と、疑うのも無理もない知らせと画像が世界中にばら撒かれたのだ。確認作業に血眼に勤しむのも仕方ない。そこにまた一通のCメールが送信される。そこには座標と
当然メディアにもこの情報は行き届いている訳で――――――興奮した記者が大々的に公表した。
人類はガストレア大戦のさなか、怖れ、畏れ、恐れ、憎しみ、憎悪し、復讐を決意する。人類が負け続け夢も希望も失われたこの時代についに――――――対に勝利が訪れた。
人類を追い詰め住む場所を、愛する者や家族を奪われた者たちはその報道に肩を振るわせ歓喜した。いや、人類すべてが咆哮をあげた。
根拠はない。胸の内に溜め込んだ黒い感情が雄たけびを挙げ放出される。「勝てる!!」「勝利を!!」「奴らを根絶やしにせよ!!」と。
残念ながら動画には戦う者の姿は映し出されていなかった。しかし、行為でそうしたかは定かではないが一フレームにだけぼやけた後姿が映っていた。確証はないが体格から子供、動画の名前が『少女』となっていることから少女とだけ分かった。興奮した報道陣からすればこれだけで記事に出来る。
そして、二年後――――――
これは一つの通過点。西暦2021年に起きた醜い人間の物語。
バラニウム産出国世界一位の日本の弱味を握り、
『天童家の内輪もめ』
家の問題は他所でやれが当たり前だが、東京エリアで『天童』の影響は計り知れない。ドクターこと『木原』は天童
天童
ドクターにしても『天童』と個人的なパイプが持てるのは嬉しい。バラニウム横流しに東京エリアにおける『
神無城沙希にとってこの仕事は正義の行いだ。
何を如何正義とするかは人それぞれだが沙希にとってコレは正義の行いだ。
彼女にとっての正義は貧しい人にお金や食料を分け与える事や被災地や戦地の募金活動やボランティアする事でも無い。虐められっこが虐めっこに精神的に虐められようが自殺に追い込まれようが沙希に関係ない。力を持たない女、子供が無残に殺され陵辱されようが心を痛めない。「可哀想だな~」と言ってキャンディーを舐めて終わり、他の人も大体こんな感じでしょ。ニュースや新聞やインターネットで調べても「へ~そうなんだ~可哀想だね~」とか言って話のタネに加えて他の作業に熱中する。見知らぬ他人が理不尽な暴力で恐喝されようが素知らぬ顔で通り過ぎる。
神無城沙希の正義の心はドクター曰く、「『木原』並みにヤバいモノ」。
人により正義の定義は異なる。しかし、人として犯してはならないモラルはある。神無城沙希は素知らぬ顔で怯える子供を麻酔無しで解体できる。じっくりじわじわと。
では、神無城沙希の正義とは何か?彼女の思想は今も昔も変わらず一つ、それ即ち『人類未来の平和』。
個人の幸福より人類の平和こそ正義と考える彼女はまさに『木原』に至る素質と理念を兼ね備えている。そんな彼女にとってこの願いを叶えてくれる存在は等しく正義。『木原』に仕え、ドクターのいう事を従順にこなす彼女もまた、狂気のマッドサイエンティストなのだが……本人にその自覚は無い。ドクターより人道的だと言い張るが、基準にする人物を間違っている。
さて、そんな彼女は東京エリアで『天童』と密会していた。
「どうも~おはようございます菊之丞さん。本日はお日柄もよく最高の密会日和ですね~」
「おはようございます神無城博士、今日はただのお茶の誘いです。密会などと」
「私にしても『天童』と関係が持てるのは心強い限りです。このお茶おいしいですね~茶葉は何処のを?」
「これは私的な趣味で栽培した茶葉ですので生産元は『天童』となるのですかな」
「ご自分で栽培を?菊之丞さんにそんな趣味があるとは驚きです~」
「よく言われます。……お茶で咽喉も潤ったところで『和菓子』などはいかがですかな?」
「本当ですか~!いつもいつもすみません~。お返しに『お土産』あるんですけどいかがです」
「態々すみませんな。『お土産』はありがたく頂戴します」
「ええぇ~今後ともよろしくお願いいたします。もう午前十一時のチャーター便で帰りますので~」
「車は此方で用意致します」
「そうですか~ありがとうございます~」
「ところで神無城博士。ドクターにもよろしくとお伝え下さい」
「……誰のことでしょうか?」
「いえ、単なる独り言です。余りお気になさらず」
「……そうですか、もしも……もしもですよ?もしもドクターなる人物が居るとしましょう。……他言無用でお願いします」
「……元よりそのつもりです」
彼女も『木原』も天童菊之丞を見くびっていた。
ドクターにとって生死がばれようがばれまいがどっちでもいいが、『木原』まで辿り着いた情報網と収集力は侮れない。沙希はドクターにいいお土産話が出来たと、空港に向かう。
天童菊之丞は神無城沙希の『お土産』を懐に隠し素知らぬ顔で『天童』家に帰宅する。
廊下で
和光の口角は人知れず歪んだ。
天童菊之丞、天童和光、天童日向、天童玄琢、天童てるとしは五人で密会する。
この五人はこの時間帯はそれぞれ別の場所にいる事になっている。この事件は野良ガストレア襲撃事件で片が付く。
「……エサの準備はどうなっておる」
「此方に」
咽喉と足の腱を破壊された十匹のネズミ。
それに菊之丞は神無城博士の『お土産』を装着させる。それはネズミ用に改良された首輪型注射器。
「タイマーは120分で設定してある。……へまをするでないぞ」
警告する。此処までやってドジする愚か者はこの場にはいないが。
五人は何も無かったかのようにそれぞれの場所に戻った。
この事件はそもそも『天童』の闇を告発しようとした愚かな男から始まった。
『天童』の闇は深い。『天童』は政財界に多数の重鎮を輩出している名家だ。当然のし上がる過程で汚いことの一つや二つはしている。だが彼は、その闇を告発すると天童菊之丞他、四名の目の前で誓ったのだ。自分も同じく汚れきっているのにその闇を告発する。五人からすれば突然わけのわからん正義に目覚めた裏切り者だ。このままでは『天童』は終わりだ。殺してでも死んでもらうしかなかった。当初よりガストレアで殺す計画だったが、彼も『天童』の免許皆伝者。妻と娘を護るため隙が生じるだろうが唯のレベルⅠガストレアでは不安が残る。そこで神無城博士の『お土産』が役に立つ。注射器の中身はガストレアウィルス、首輪のタイマーが零を刻むとネズミを強制的にガストレアにする。十匹の内九匹はレベルⅠのガストレアになり、残りの一匹は特殊改良された高濃度ガストレアウィルスで一気にレベルⅢに昇格させる。免許皆伝者でも容易に勝てる相手ではない。妻と娘を護るためならその身を犠牲にするだろう。
そして二時間後、ガストレア襲撃事件として幼い二人の子供だけが生き残った。その後の調べで、十体のガストレアを一人で討ち取り、レベルⅢと相討ちになったと判明したという。
ローマ連邦『木原』研究施設。
「ドクタ~何故あんな回りくどいやり方をしたのですか~?他人に任せずご自分でやった方が手間も無くていいですよね」
「それだとそっこー片付いてつまんないだろ?『天童』ともちゃーんとした関係持ちたかったし」
「彼は罪悪感から過去の自分が許せなかったのでしょうか?」
「お!良い勘してるよ沙希ちゃん。そうだねー……七星村の活動を承認してもらう際、賄賂渡して全部懐に入れた彼もこの事態の原因といえば原因の一つだ。彼も馬鹿じゃない、西暦2021年1月1日に発生したガストレアと七星村の関係性を僕が証拠を抹消仕切る前に調べちゃったんだよね。100パー正義ってか罪悪感で自分と『天童』の闇を告発し、自分の胸の内を軽くするためだけに全ての原因である僕の情報を流そうとした。ローマ連邦もソレやられると困るからね、東京エリアの警察より先に証拠品抹消しにいったわけ。菊之丞の影響は向こうのエリアじゃデカいからね」
「なるほど~いろいろ考えてるんですねドクタ~」
「沙希ちゃんは実験の観察眼を世間にも向けた方がイイよ」
「善処します~」
「やれやれこれだから」
ドクターはマグカップに注がれたココアを堪能すると去年まで同僚だった愚か者を薄ら思い出す。
「そう言えば、七星村の研究員に里見って日本人いたな」
天空侵犯四巻はよ、ハリーハリーハリーハリーハリーィィィイイイイイ!!!