西暦2021年前に転生したんだから科学者として頑張るしかないでしょ!! 作:namaZ
タグに新しく『ジョセフ』を付けたしときました。
感想、アドバイス等よろしくお願いします。
ひょ、評価を 壁||⊇`)
壁||`)
壁||)彡サッ
今日も私は水の中を漂う。
呼吸用のチューブ以外何も身に着けづ波紋もない水中をぷかぷか遊ぶ。ここは私の部屋。実験や訓練以外はここにいる。生まれも育ちも試験管ベビーのせいかこの場所が落ち着く。母親のお腹の仲もこのようなものだろうか。ナゼ、かは分からないけど、密閉空間は不思議と心が和らぐ。ここは何もない。誰からの目もないし人もいない。私にとってここは――――――別世界だ。
外の世界はキライです。科学者は実験体として接し、他の人は怪物を視る眼つきになる。事情を知る人からすれば私は呪われた子供たちよりたちが悪い。私は初期に創られたモデルの中で唯一人の形を保った生き残り。最初の十一体はドクターから聞き及んでいる。その次に創られた私は七星村の男女から生まれたらしい。受精卵の時点で遺伝子操作にガストレア因子の投与、過剰な身体実験の繰り返しに私の髪は日本人に似つかわしくない銀色になり、眼の色も日本人に似つかしくない
pipipipipipipipipipipipipipi――――――アラーム音が水に反響する。
いつの間にか寝てしまったようだ。時間を知らせるタイマーが作戦実行一時間前を知らせてくれた。ちょうど外でドクターがハッチの開閉装置を起動させたのか水が排出されていく。
『起きてる~?あ、もしかして起こしちゃった~?それならごめんね~』
……先生は頭はいいし私に勉強を教えてくれましたがどうも精神的に幼いのが否めない。「問題ありません」といつも通り返答すると「ふふぅ~ん♪これがよその家に娘をやるお母さんの心情ですかね~」……訳が分からない。
ハッチが開き外気で肺を満たす。無菌室、俗にいう病院の匂いだ。そこに嗅ぎ慣れない男性が一人。
ドクターはパートナーを今日紹介するとおっしゃっていましたが彼が?これは想定外。
私のパートナーには私と
地に足を降ろすと見慣れた二人に少し年上の少年が――――――高速で頭を下げた。
「~~~~ッ!!?すんませんしたーーー!!」
なんなのでしょうこの人間は?
私は実験体として男女問わず科学者に身体を弄り触られました。最初は羞恥心もありましたが、私は人間ではありません。私の裸を見て興奮する男性はいませんし、そもそも女性としてではなく『
「紳士たる者淑女の許可なく裸を見るなど言語道断。ましてや、男が気軽く見ていい物じゃない。完璧に此方の落ち度だ。改めて謝罪させてほしい……すみませんでした!!」
余計に訳が分からない。ナゼ、裸を見たくらいでここまで動揺するのです?私たちには人権は無く、生みの親であるドクターに尽くすのみ。同性だろうと男性だろうと裸など恥ずかしくもない。なのにナゼ、そんな顔をするのですか?
先生はよく私の身体を接触してくる。普通の子供に接するように揉みくちゃにされ不愉快ですが、そこまでキライではありません。そして、先生は私をつくづく子ども扱いする。ナゼ、服を着せたがるのでしょうか?黙って従った方が時間短縮できるのは果たして正しいのでしょうか?……キライではありませんが。
戦闘用木原スーツを着用すると件の男性が微妙な褒め言葉を零す。私を含め私の周りはファッションセンスが壊滅的です。全員白衣か完全武装しか見た事が無い私は見た目より性能を重視する傾向があります。どうやら、一から説明する必要があるようですね。
「はいはいそこまで!二度目だけどさっさと自己紹介しろやこら」
……ドクターに怒られてしまいました。私はドクターの期待に応えなければいけないのに。ム……この男性、あのジョセフ=G=ニュートンなのですか。ナゼ、姓を名乗ってから姓名名乗り直すのでしょうか?不覚にもときめいてしまったのが悔しい。先生に無理矢理読ませられた恋愛小説(読まないとしつこい)に似た様なシチュエーションに女として想像を膨らませましたが、まさか本当にこんなキザっぽい自己紹介をする人間が居るとは……負けてはおれません。
「……ジョセフ=G=ニュートン。記憶しました。私には様々なネームがありますが……生みの親であるドクターから頂いた名を名乗らせてもらいます。私は『レルネ』……レルネ=C=K=ヴァンスガズといいます」
さあどうですこの完璧な返しは。
「お返しされちゃったかな。子供っぽい所もあるんだね」
ム……果たして私の何処が子供っぽいのでしょうか。問いただす必要があります。そもそも子供とは何かを説明すると頭を撫でられました。……初めて異性に優しく撫でられました。科学者など私の都合を一切考慮せず思うがままにべたべた触って来るというのにこの人間はナゼ、普通に私に接する?……ナゼ、……ナゼ、でしょう。顔の温度が上昇します。これは、噂に聞く風邪……ではないにしても……心臓発作でしょうか?体調管理は盤石なはず……ますますこの人間が分からない。私はガストレアだ。私がじゃれれば壊れてしまう人間とは違う。
「違わない。レルネは『人間』だ」
ナゼ、こんなにも真剣に断言できるのでしょうか。彼は信じて疑わない。こんな私を一人の人間として接してくれる。ナゼ、だろうか……どう接しればいいのか分からない。こんな人間初めてでどうすればいいのか分からない。私の知っている世界は小さい。私の居場所は実験台とこの鳥かごにしか存在しない。今日成果を出せなければ更なる痛みと実験の日々が私に待っている。それが"日常"なのになんの疑問も懐かない。反論など時間の無駄……私は人類の敵であるガストレアを滅ぼす兵器としてドクターの期待に応える"モノ"でしかないのだから。それなのに、ナゼ、この人間は普通に……真剣に私の身の上を悩んでくれるの?
思考の泥沼に沈んでいると彼はドクターに私との組手を所望していた。そう言えば、彼は私のパートナーになるのでしたね。
「レルネはどうだい?」
答えは……決まっている。今まで感じた事のないこの感覚を確かめたい。この不思議な感覚の原因が彼ならば……。
「興味が出たね。お父さん悲しいねー、もう親離れだよ」
なにが親離れですかドクター。そんなこと絶対ありもしないと理解しているでしょうに。
組手のルールは制限時間五分、それだけ。私のやりたいようにやれですねドクター。
「五分もくれるんですか?一分あれば十分ですよ」
ム……口先では敗北ですが古典的な組手で私の敗北はありえません。身体慣らしで一撃で気絶しないようにしますが、ここはハッキリ言ってやる必要があるようですね。……ナゼ、優しく頭を撫でるのでしょうか。
彼は人間……手加減しているとはいえここまで持った人間は彼が初めてです。彼は人間の中でも相当上位の実力者なのは身を持って実感しました。けど、その程度。人間はガストレアに敵わない。それを彼は理解したでしょう。
「全然理解してないのはどっちかな?君は間違いなく人間だよ。俺が保証する」
この
「それで死ぬならそれまでのちっちぇ奴ってことだ。それに、女の子が一人悲しんでいるのに涙も拭えないんじゃ男として失格だ。それに、君もドクターから聞いてると思うけどおれをパートナーとして認めてもらおうかな」
パートナーですか……私が本気でヤれば彼は死ぬ。ドクターもそれは望まない筈……なんて楽しそうな顔なのでしょうか。それ程彼に自信があるのですか。私が本気でじゃれついても問題ない……と。
パートナーにする条件は死なないしてもこの後の戦闘に問題なく出撃できたら認めることにしましょう。それが彼の為だ。
「レルネちゃんには笑顔が似合うと思うんだよ」
……毎度毎度なんなのでしょう。彼の人間性が理解できない。私の周りにいなかったタイプ。
「いや、ね。困ってる女の子の涙を拭うのもそうだけど、女の子には笑顔でいてほしいかな。まだ会って間もないけどおれ、レルネちゃんの笑顔がど~しても見たくなったんだ」
彼は、ナゼ、優しく語りかけてくるの?私の笑顔が見たい、そんな安っぽい台詞に、ナゼ、こんなにも思考が乱れるのだろうか。
そんな私に追い打ちを掛けるように。
「そんな君とパートナーになって、いつか微笑んでくれたら……天使の微笑みを独り占めだ」
テ、ててて天使!?こ、こにょ人は一体何を!?今分かりました、この人は馬鹿なんです。大馬鹿だからあんな非常識な事が平然と言えるのです!なにが「おれは死にません」ですか!遺伝子レベルで生物の違いを思い知らせてやります。
衝撃に備えた体勢で此方を見据える彼に、不思議と彼ならもしかしたら……と幻想を懐く。それはありえない、全力で蹴るだけでも危ないのに能力を使用すれば確実に死亡する。それなのに……彼ならもしかしたらと……。ベースの能力を使用する。
"息を吐く"、ただそれだけで彼は私の思惑に嵌まった。
『性フェロモン』読んで字の如く、効果は――――――想像にお任せする。
私は彼を殺す気で攻撃する。唯の人間である彼が死亡、再起不能になる確率はとてつもなく高い。それでも私は確かめなければならない、妙にざわつくこの胸を。
レルネの本気の助走の本気の踏み込みの本気の蹴りが、顔面に突き刺さる。森林を薙ぎ倒し二十メートル吹き飛ばされる。
無防備に、力む暇さえなく蹴り飛ばされた。岩を砕き、車をスクラップにする蹴りを人がくらう。予想するまでもなく濃密な死の結果がそこにはあった。
「……接触と同時に飛びましたか。侮れない反射神経です。飛び散ることなくくっ付いたままですか……人間にしては頑丈ですが死にましたね」
泥と木に埋もれ姿の確認は出来ないが、死は決定だ。
やっぱり彼も『人間』だった。そんな人間を一撃で殺せる私は……怪物だ。
「……ドクター、
「ふふふふふふふふふふふふふふふふ」
「……ドクター?」
「レルネ……君は人間を舐めきってる。甘すぎて甘すぎてペロペロ溶けるまで舐めきってる!いいかい、私は彼が、ジョセフ君しかレルネのパートナーになれない!勤まらない!その考えは今も変わらない。レルネよ……人間相手に能力を使いたがらない君が何故あそこまで使用した?」
「……そ、それは」
「別に怒ってるわけじゃないんだ。予想してあげようか?君はジョセフ君に期待してしまったんだ。"彼なら、もしかしたら"っと、それ自体は間違いじゃない。けどね、レルネをそう思わせる何かが彼にはあったのは確かだろ?君にとっても初めてのはずだ……『唯の人間が私の本気の一撃を防ぐかもしれない』と期待したのは」
そうだ、私は一時の"ゆらぎ"で能力まで使用し『人間』一人を殺したんだ。わたしが、私が……彼に期待しなければ……ッ!
「そんな落ち込んでいるレルネに凄く言いたいことがある」
「……なんなのですか」
「生みの親として、一人の人間として、これは胸に刻め――――――人間はそんなに弱くないってね」
ドクターが彼の埋もれた一角を指さす。けどそれはありえない、人間が私の一撃を耐えるなんて……。
胸が"ゆらぐ"、ゆっくりとドクターが指し示す方向に視線を向ける。
「……そんな……ありえない」
私は無意識に、けど一生懸命に彼の手を掴み掘り起こす。
大きな胸板、上半身に抱き着き身体を支える。ほんの少し力がこもる。
「……ばかです」
この男はどれほど愚かで馬鹿なのでしょう。ばかです。おおばかです。ちょうおおばかです。ばかすぎてわたしにうつっちゃいました。……わたしもばかです。
「……ほ、ら、……いきて、る」
この男はどこまで私の予想を裏切ってくれるのでしょう。予想を超え、私の世界に亀裂を入れる。
「……ぜいじゃく、な、人も……ころせない、レルネは……人間、だ」
……ッ!!世界が砕ける。
あぁ……、私は認めて欲しかったんだ。実験体でも怪物でも無い、『人間』だと認めて欲しかったんだ。
もう我慢しなくてもいいのだろうか?
人間として、人間の子供みたいに過ごしていいのだろうか?
けど……私はドクターの所有物だ。
生みの親であり、お父様でもあるドクターを裏切ることはできない。
それでも、
それでも……ジョセフの前では『人間』とし生きてもいいですか?
「……ありがとう」
これ以上泣いちゃいけない。私は泣いてはいけない。実験が日常となり涙を流さなくなったのは何時からだろう?私は姉妹たちの存在を背負っている。人間を辞め、怪物として進んできた。
けど、今だけは、――――――泣いてもいいよね?
「にやにやにやり、てことでパートナーってことでいいよねお二人さん?」
台無しだと思いませんか?
GATE(ゲート)自衛隊彼の地にて、斯く戦えり三巻の上巻まで読み終わりましたが……おもろいぞこれ!アニメ化決定ですので皆様、応援のほどよろしくお願いします。(あれ、別作品応援しちゃっていいのか?