もしもうちはイタチがナルトの兄だったら   作:パイマン

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 ――なんだかんだで原作通りに行く悪役補正の術!

オサキ「止めておけ大蛇丸。そんな術は俺に効かない」
大蛇丸「!」


うずまきオサキ。やはり天才か……。

 ――中忍選抜試験・第二の試験会場『死の森』にて。

 

 突如、ナルト達を襲った忍者。

 たった一人で三人を良い様にあしらう実力は圧倒的であった。

 得体の知れない術でナルトを倒し、写輪眼を発動させたサスケの決死の攻撃を受けても尚余裕を崩さない。

 顔面に火遁を受け、爛れた皮膚の下で邪悪な笑みは変わらず浮かんでいた。

 

「色々と君の力が見れて、楽しかったわ」

 

 その瞬間、サスケとサクラは身動き一つ出来なくなっていた。

 金縛りの術である。

 大仰な印や下準備も必要ない。ほんの僅かな手の動きと視線だけで、二人を一瞬にして術中に嵌めてしまったのだ。

 

 ――その気になれば、何時でも殺れた!

 

 あまりの実力差にサスケは戦慄した。

 死の恐怖に打ち勝ち、戦う覚悟を決めたはずだった。

 しかし、覚悟だけでは埋めがたい差が両者には存在していた。

 未だに諦めはない。

 最後まで抵抗してやるつもりだ。

 だが――きっと自分は勝てない!

 

「やっぱり兄弟だわね……あのイタチ以上の能力を秘めた目をしている」

 

 思わぬ名が出てきたことに、サスケは目を見開いた。

 

「お前は一体何者だ!?」

「私の名は大蛇丸。もし、君が私に再び出会いたいと思うなら、この試験を死に物狂いで駆け上がっておいで……」

「な……なにワケの分かんないこと言ってんのよ! アンタなんかの顔、こっちはもう二度と見たくないっていうのよ!」

 

 サクラの必死の強がりを一笑に伏して、大蛇丸は印を結んだ。

 

「そうはいかないのよ――!」

 

 次の瞬間、大蛇丸がサスケに向かって襲い掛かった。

 信じ難い光景だった。

 大蛇丸の首だけが伸び、爬虫類のような牙を持つ口をかっ開いて、首筋目掛けて飛んで来たのだ。

 

 ――本物の化け物か!?

 

 金縛りにかかったサスケに逃れる術はなかった。

 己の身に迫るおぞましい牙を前に、何も出来ずに佇むことしか出来ない。

 

「に……」

 

 こんな窮地だというのに。

 いや、こんな窮地だからなのか。

 先程、思わぬ時にあの男の――兄の名を聞いたからだろうか。

 その兄への感情が、ある一人の男によって単なる憎しみだけではない複雑なものへと変化した為だろうか。

 大蛇丸の牙が迫る刹那、サスケの脳裏を過ぎったものは――。

 

「兄さん……!」

 

 そして、大蛇丸の牙が肉を捉えた。

 サスケの首筋ではなく、間一髪横から割り込んだ第三者の腕を。

 

「何!?」

 

 大蛇丸が初めて動揺した。

 サスケ達に意識を向けていたとはいえ、気配すら察知させずに一瞬で駆けつけた忍者の姿を見て、目を見開く。

 サスケとサクラの二人も、当然のように驚愕していた。

 来るはずのない男が駆けつけたのだから。

 

「――うずまきオサキ!」

 

 

 

 

「ちぃっ!」

 

 舌打ち一つして、大蛇丸が大きく飛び退いた。

 そう、舌打ちだ。

 未だに金縛りを受けながらも、サスケは努めて冷静に敵の様子を観察していた。

 

 ――あの野郎、初めて焦りやがった。

 

 自分が決死の攻撃をしても余裕の笑みと態度を崩さなかった男が、突如現れたオサキに対して明らかな警戒心を抱いている。

 間合いを離したこともそうだ。

 仕切り直しが必要だと。備える必要があると、敵は判断したのだ。

 絶望的な状況に、突然希望が湧いてきた。

 

「サスケ、無事か?」

「あ……」

 

 オサキは大蛇丸から視線を外さずに訊いた。

 彼もまた敵を警戒している。

 油断の出来ない敵を相手取っていることは、オサキもまた同じなのだ。

 未だに気の抜けない緊迫した状況である。

 しかし、サスケは場違いにも一瞬安堵してしまった。

 自分を庇うように立ちはだかる背中を見て。

 そして、自分を気遣うように投げ掛けられた言葉を聞いて。

 

「……サスケ、どうした? 負傷しているのか?」

「あっ!? い、いや……大丈夫だ」

「サクラ君はどうだい?」

「だ、大丈夫です。でも、金縛りの術を受けていて、全然動けません!」

「分かった。だが、術の解除は今しばらく待ってくれ」

 

 二人の安否を確認したオサキは、大蛇丸に噛まれた腕を持ち上げた。

 腕には噛み跡の他に、不気味な呪印が刻まれていた。

 

「おい、ヤバイぞ! 何かの術か……!?」

「問題ない」

 

 身を案じるサスケに対して、オサキは普段通りの口調で淡々と応えた。

 クナイを取り出し、呪印の浮き出た皮膚を薄く削ぎ落とす。

 傍で見ていたサスケが息を呑み、サクラが小さく悲鳴を上げた。

 

「――さすがね」

 

 再び笑みを取り戻した大蛇丸が、賛嘆するように呟いた。

 

「呪印が刻まれた瞬間、侵蝕が広がる前に封印を施していた。私の術を皮一枚で封じたのはあなたが初めてよ」

「元々攻撃用の術ではないですからね。俺にこの呪印は通用しない」

「当然でしょ、それはサスケ君に上げるつもりだったんだから」

「ならば、防げてよかった。これで後始末を考えずに集中出来る」

 

 オサキは静かに言った。

 

「あなたを殺すことに」

 

 その瞬間、覚えのある寒気がサスケとサクラを襲った。

 丁度、大蛇丸から殺気を叩きつけられた時のような感覚だ。

 あの時と違うのは、その殺気が自分達に向けられていないことと、二種類あることだった。

 殺気とは、目に見えない気配のはずである。

 しかし、二人にはその『形』を具体的に感じ取ることが出来た。

 オサキから放たれるものと大蛇丸から放たれるもの。二つの目に見えない帯電した空気のようなものが、二人の間で接触し、激しく火花を散らしている。

 その余波が、二人に寒気を感じさせるのだ。

 殺気のやりとりだけで、この影響力。

 まさに忍者としてのレベルが違う――!

 

「ふふふっ、困ったわね。下忍のひよっこと木ノ葉の雑魚忍者ばかりだと思っていたから、君ほどの相手は想定していなかったわ」

 

 大蛇丸は言った。

 

「どうやって私の正体を見破ったのか、聞かせてもらってもいいかしら?」

「時間稼ぎですか。付き合いますよ」

「ふふっ、可愛げがないわね」

 

 オサキは大蛇丸の思惑を見抜いた上で、それに乗った。

 大蛇丸は会話を交わしながら、機を伺っている。

 しかし、時間を掛けることはオサキにとっても有利に働く。

 ここは木ノ葉の里内なのだ。第三者が異変に気づいて駆けつけたとして、それが明らかに侵入者である大蛇丸にとって不利になりこそすれ、正規の忍であるオサキに不利となることはない。

 

「あなたの陰形を見抜けたわけではありません。俺はただナルトの危険を察知して、駆けつけただけです」

 

 大蛇丸は気絶したままのナルトを一瞥した。

 

「――私がナルト君にしたことと言えば『五行封印』ね。なるほど、あなた九尾の封印に手を加えたわね?」

「そうです。封印の中にカモフラージュしてマーキングを施しておきました。何者かが封印を弄れば、俺に分かるようになっています」

「というと、使ったのは『飛雷神の術』ね。どおりで接近に気付けないわけだわ」

「その通りです」

「ふふっ、さすがね。四代目火影の秘術を、その歳でもう会得しているなんて。やっぱり、あなた天才だわ……」

 

 二人の言葉を、サクラは天上の会話のように聞いていた。

 聞いたこともない術、無造作に上げられる偉人の名――どれも下忍にすぎない自分では手に余るものばかりだ。

 呆気にとられるサクラの傍らで、サスケもまた二人に畏怖を感じていた。

 しかし、それ以上に。

 

 ――俺はただナルトの危険を察知して、駆けつけただけです。

 

 当然のことだが、オサキが駆けつけたのは自分を助ける為ではなかった。

 サスケはその事実に、自分でも気付かない内に落胆していた。

 

「大蛇丸さん、あなたに理解してもらいたいことは一つだけです」

「何かしら?」

「ナルトに手を出せば、俺が一瞬で駆けつける」

「なるほど。例え、この場から逃げられたとしても妙な考えを起こすな、という警告ね」

 

 オサキはそれ以上会話に応じなかった。

 無言のまま、クナイを構え直した。

 言うべきことは言い終えた。後はただ目的を遂行するのみ。

 完全な戦闘態勢である。

 

「随分とやる気のようだけど、それでいいのかしら?」

 

 大蛇丸は笑みを崩さなかった。

 

「私とあなたが戦えば、どちらかが死ぬ」

 

 その言葉に、顔色を変えたのはオサキではなくサスケだった。

 

「最悪の場合、相討ちになる。どう? こんな行き当たりばったりの戦いで、命を捨てるなんて馬鹿らしいと思わない?」

「……あなたは勘違いをしている」

「へぇ?」

「俺は命惜しさに勝ちを狙うような賭けをするつもりはありません。相討ちで確実にあなたの命を狙う」

「――!」

「ここで俺と死んでもらいます、大蛇丸さん」

「……ふふっ、本当に可愛げがないわね。優れた才覚を持ちながら、そういう隙のない生き方が私の好みから外れてるのよね」

 

 大蛇丸は軽口を叩きながら笑い続けた。

 しかし、サスケやサクラのような下忍は騙せても、実力の伯仲した相手には――オサキには見抜かれてしまう焦りが、瞳の中でほんの僅かに揺らいでいた。

 大蛇丸はここで死ぬ気はない。

 しかし、オサキは既に覚悟を決めている。

 そして、勝負の結果がどうなるかはどちらにも予測出来ない。

 

「……やめろ」

 

 サスケには大蛇丸のブラフを見抜くことは出来なかった。

 だが、オサキの覚悟だけは分かった。

 

「駄目だ、あんたが死ぬなんて……っ!」

 

 全身を縛る術が煩わしかった。

 がむしゃらにチャクラを練り上げる。

 両手も動かない為印も結べないが、体中の力を総動員してサスケは大蛇丸の術に抗った。

 

「駄目だ……っ!」

 

 再び写輪眼が発動する。

 今度は意識して発動させたものではない。

 無我夢中だった。

 二人の戦いに割って入れるなどと考えてはいない。

 戦いすら頭の中にはない。

 ただ、あの時のように自分の前から去ってしまいそうな背中だけに手を伸ばし――。

 

「駄目だァ!!」

 

 感情と共にチャクラを爆発させ、サスケは強引に大蛇丸の金縛りの術を打ち破った。

 サスケの今の実力では到底破ることが出来ないはずの術だった。底力としか言いようがない。

 その行動はオサキと大蛇丸、二人にとって等しく予想外のものだった。

 しかし、その結果は一方にとって有利に、もう一方にとって不利に働いた。

 オサキの意識が一瞬背後に逸れ、更にその一瞬後に己の失敗を悟る。

 逆に大蛇丸は、訪れた好機に口元を吊り上げた。

 

「よくやったわ、サスケ君!」

 

 それはサスケへの称賛と皮肉を込めた言葉だった。

 大蛇丸がオサキに向かって突進する。

 サスケ達の目には映らないほどの素早い踏み込みだった。

 一瞬でオサキの眼前まで接近し、蛇のように両手を伸ばす。

 急所を狙った攻撃ではない。ただ体の何処かを掴むことだけを目的として動きだった。

 それ故に広くかわしにくい攻撃を、オサキはその場から大きく跳ぶことで回避した。

 跳んだ先は未だに金縛りで動けないサクラの傍。その途中でサスケも攫うように腕に抱えている。

 サクラもまたもう片方の腕に抱えると、オサキは二人と共にその場から掻き消えた。

 一瞬の後、残された大蛇丸の体が大爆発を起こした。

 

「――えっ!? な、何!? 何が起こったの!?」

 

 ようやく意識が事態に追いついたサクラが、自分の居る場所を見て混乱した。

 大木に縫い付けられてぶら下がっていたナルトのすぐ傍に、オサキはいつの間にか立っていたのである。

 巻き込まれていればタダでは済まなかっただろう大爆発の煙を眺めながら、サスケは状況を理解した。

 

「あれは……分身だったのか?」

「起爆札付きの影分身だ。意識を逸らした一瞬で入れ替わられた。本物は、もう近くにはいないだろう」

 

 ただ戦うだけならば、オサキにとってあの程度の戦術は子供だましにすらならなかっただろう。

 しかし、サスケとサクラを狙われた。

 二人を守る為に、オサキは飛雷神の術を使って、ナルトの傍に移動したのだった。

 それは安全圏まで一瞬で離脱出来たことと同時に、大蛇丸と大きく距離を離す結果にもなってしまった。

 例え今から本物を追ったとしても、追いつくことは出来ないだろう。

 大蛇丸の狙い通りに。そして、見事な退き方だった。

 起爆札も影分身も大蛇丸だけしか使えない物ではない。オサキが知らない手の内を一つも見せることなく離脱してのけたのだ。

 この場合、ほとんど情報を得られなかったオサキの敗北と言ってよかった。

 少なくともオサキ自身はそう判断した。

 

「足を引っ張っちまったのか……クソッ!」

 

 二人の高度な駆け引きを全て見抜けたわけではないが、それでもサスケは自分の行動がオサキにとって不利に働いたことを理解した。

 ナルトと共に地面に降ろされながら、己の無力さを実感して悔しげに拳を握り締める。

 

「情けねぇ……オレは何処まで弱いんだ!」

「おい、サスケ」

「何だよ!? 兄さんにはオレの気持ちなんて――!」

 

 睨むように顔を向けたサスケの額を、二本に揃えた指が軽く小突いた。

 目の前にいたのは、もちろん兄ではなくオサキだった。

 

「忍者たるもの常に冷静でいろ」

 

 呆気にとられるサスケに短く告げて、背を向ける。

 

「奴の金縛りを自力で破ったのは見事だった」

 

 振り返りもせずに、オサキは言った。

 普段通りの素っ気無い言い方だった。

 サスケは額を押さえたまま、その言葉を咀嚼し、やがて我に返ると慌てて顔を背けた。

 オサキはもう自分を見ていなかったが、今更になって恥ずかしさが込み上げてきたのだ。

 癇癪を戒められ、それから褒められた。いや、褒められたというよりも慰められたのかもしれない。

 結局、子供扱いには違いない。

 目の前の男には、会った時から普段の自分らしくない情けない姿を晒してばかりだ。

 サクラの金縛りの術を解いているオサキの背中を、サスケは恨めしげに睨みつけた。

 

「――よし、術は解いた。サクラ君、体の調子はどうかな?」

「はい、大丈夫です。問題なく動きます」

「それはよかった」

「あの、ありがとうございます! オサキさんが来てくれなかったら、わたし達あのまま殺されてたと思います」

「いや、それはないだろう。奴の目的はサスケのようだった」

「……それって、どういうことですか? オサキさんは、あいつのことを『オロチマル』って名前で呼んでたみたいですけど」

「残念だが、それは下忍である君達には答えられない。機密事項だ」

 

 まだ問いたげなサクラの視線を振り切り、オサキは未だに気絶したままのナルトに歩み寄った。

 

「そういえば、ナルトはあいつに変な術を掛けられて……」

「分かっている」

 

 サクラに指摘されるまでもなく、オサキは原因となっている腹部に手を当てた。

 本来ならば、服を捲って刻まれた封印式を直接見ておきたかったが、部外者にナルトの秘密を知られたくなかった。

 何より、触れるだけで問題なく状態は把握出来る。

 強引な施術だった。偶数封印の上に奇数封印が施されてしまっている。

 これでは、ナルトがチャクラを上手く練れなくなってしまうだろう。

 オサキは五本の指先にチャクラを集中させた。

 

「五行解印!」

 

 その手を、ナルトの腹に押し付ける。

 力の抜けていた体が一瞬ビクンと跳ね、すぐに再び横たわった。

 その時には、もう大蛇丸の施した封印は完全に解除されていた。

 

「これでいいだろう」

「……今のは、何の術なんだ?」

 

 訊ねるサスケに対して、オサキは何も答えなかった。

 もちろん、忍術の中には下位の忍に教えることが禁じられた、危険なものや高度なものが存在することは知っている。

 しかし、サスケは不満気な表情を隠しきれなかった。

 その様子に気付いているのかいないのか、オサキは無言で立ち上がり、

 

「――オサキ!!」

 

 複数の人影が、オサキの前に降り立った。

 敵襲かと思い、サスケとサクラが一瞬身構える。

 しかし、降り立った集団の先頭に立っている人間は二人にも見覚えのある顔だった。

 試験官の一人、みたらしアンコである。

 他の数名も、全員木ノ葉の暗部であることを示す格好をしている。

 つまりは味方だった。

 

「アンコさん、援軍にしては遅いですね」

「あんたが報告だけして、一人でとっとと行っちゃうからでしょうが! 瞬身の術なんか使ったら追いたくても追えないっての!」

 

 アンコは受験者二人のことなど視界に入っていないかのように、オサキに詰め寄った。

 

「それで、あんたが言ってた『侵入者』は、やっぱり大蛇丸だった!?」

「はい。格好は、例の死体で見つかった草隠れの忍と同じでした。彼らを殺して入れ替わったのは、間違いなく大蛇丸です」

「奴は何処に!?」

「すみません。逃がしました」

 

 その答えに、アンコは大きくため息を吐いた。

 落胆を含んではいるが、同じくらいの安堵も感じていた。

 

「……馬鹿。そういうのは『逃がした』じゃなくて『退けた』って言うのよ。あの大蛇丸と対峙して、生き残れる奴はそういないわ」

「しかし、これで奴は再び里の中に紛れ込んだことになります」

「まあね。厄介なことになったわ」

 

 アンコは神妙に頷いた。

 

「私は事の詳細を火影様に報告するわ。オサキ、あんたもついてきて」

「了解」

「それと、そこの二人!」

 

 上忍同士の会話から置き去りにされていたサスケとサクラは、突然の指摘に我に返った。

 

「あんた達は試験を続行しなさい! ここで起こったことは他言無用よ! 洩らしたら、その時点で失格だと思っておくのね!」

「そ、そんな……せめて説明を」

「オサキ、先に行ってるわよ!」

 

 サクラの言葉を無視して、アンコ達はその場から姿を消してしまった。

 残されたオサキが、二人を振り返る。

 

「アンコさんの言った通り、君達は中忍選抜試験に集中しろ」

「こんなことがあったんだし、中止には……」

「おそらく、そうはならない。それに、君達にとっても中止は都合の悪いことだろう」

「それは、そうですけど……」

「サスケ」

「……何だよ?」

「改めて教えるが、お前達を襲った男は大蛇丸という。天才的な実力を持った忍者だ。奴はお前が狙いなようだ」

「だから、試験の中でも油断するなって?」

「いや、奴には俺達上忍クラスで対処する。だが、心の片隅にでも留めておけ。何が起こるか分からないからな」

「へっ……いざとなったら、あんたがオレを守ってくれるとでもいうのかよ?」

 

 サスケの皮肉るような問い掛けに、オサキは真面目に頷いた。

 

「そうだ」

 

 そして、オサキもその場から姿を消した。

 残されたのは、気絶したままのナルトと事態の急変にオロオロとするサクラ――そして、見えなくなったオサキの姿を尚も追おうと虚空を見据えるサスケだけだった。

 

「……どうせ、ナルトのついでなんだろ?」

 

 サスケの小さな呟きは、誰の耳にも入ることはなかった。

 




 この後、原作通りに音の三忍が襲ってきたけど、呪印がない代わりに写輪眼使えるサスケとチャクラ全開のナルトが普通に戦って、二人に庇われていると悟ったサクラが覚醒して、もう苦戦する要素もないので巻物もあっさり奪ってアンラッキー!
 ちなみに一番アンラッキーなのは大蛇丸的にも特にサスケと戦っても旨みがないから期待されてない赤胴スズノスケだっけヨロイだったっけ? とにかくソイツは写輪眼で動き読まれてボコボコにされました。

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