IS 進化のその先へ   作:小坂井

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挑戦かどうかはわかりませんが、最近R18の小説が書きたくなってきました。果たして需要があるかどうかは謎ですが、いつか書いてみたいです。


90話 終わりへの序章

目を開けると、目の前に無垢で可愛らしい少年の寝顔があった。

彼の普段の姿しか見ていない者ならば、この寝顔を見てどう感じるだろうか。威厳や不愛想な日常の姿を思い浮かべて『可愛くないっ!』と目を逸らすだろうか、それとも『寝ているだけならかわいいんだけどねぇ・・・』と惜しい声を出してため息を吐くだろうか。

 

確かに普通ならばそう思うかもしれない。だが、自分は彼の全てを知っている。甘えん坊な所も寂しがり屋なところも、人一倍愛情に飢えていることも。

 

「雄星君・・・・」

 

大切な名前を呼び、彼を抱きしめる。今、彼とは一応許嫁という関係だ。修学旅行で妹の簪が抜け駆けして告白した時はどうしようかと思ったが、どうやら自分と妹そろってもらってくれるらしい。姉妹で彼を支えていく。何ともロマンチックな話だ。

 

ミャッ、ニャ~~

 

「きゃっ、くすぐったいわ」

 

朝を告げるように自分と彼の寝ているベットに白猫が乗ってきて、顔をぺろぺろと舐めてくる。その優しいモーニングコールに彼が目を覚ます。

 

「ん・・・」

 

「ふふっ、おはよう、雄星君」

 

「おはようございます、刀奈さーーーって、またそんな恰好で寝て・・・・」

 

同じベットで寝ている刀奈の姿に雄星は呆れた様子だ。シャツに半ズボンと言った標準的な自分の寝巻に対して、今の刀奈の姿はブラにパンツだけの下着姿だからだ。はち切れそうなほどに胸が押し込まれているブラにお尻の谷間に食い込んで、縦に筋が出来ているパンツ。そこからすらりと伸びている鍛えられていて健康的な肉付きの太もも。

 

グラビアアイドルのようなセクシーで刺激的な姿が目の前にあった。

 

「こーら、目を逸らさないの。雄星君に見られるのは恥ずかしいけど・・・・私たちはもう夫婦なんだから」

 

「ふ、夫婦って・・・・いろいろ先走りすぎですよ」

 

「そうかしら?でも、将来を考えるのに早いも遅いもないのよ?」

 

「何度も言っていますが、よく考えてください。無理に僕のことを考える必要はありません、あなたはあなたの道をーーー「雄星君」」

 

そこまで言ったところで雄星の肩を掴むと同時にベットに押し倒す。そのまま肩を抑えたまま、雄星の腹部に跨り、身動きが取れなくなる。まるで格闘技のように鮮やかで素早い動きだった。

 

「私からも何度も言うけど雄星くん、あなたを手放すつもりはないわ。それを自覚しなさい」

 

自分を肯定してくれる言葉。修学旅行で簪にも同じ言葉を言われたが、こうして改めて言われると嬉しい。自分を待ってくれている人がいる。これほどに嬉しいことはない。

 

「わ、わかりました。末永くお願いします、刀奈さん」

 

「よしよし、物分かりが良いわね」

 

まるで弟を褒める姉のように頭を撫でてくる。

 

「きゃっ!」

 

すると、雄星の腹部に跨っている刀奈の股にサイカが潜り込んできた。自分の腹部を跨ぐ白猫と下着姿の美少女と言う最高に刺激的な朝で1日が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人は生きていれば必ず1つや2つのコンプレックスを抱くことがあるだろう。それが癖だったり、仕草だったりと様々なものがあるが、最も単純明快かつ分かりやすいコンプレックスは『外見』だ。なぜか人は、その中で女性は自分の外見を必要以上に気にする傾向がある。

 

健康維持や仕事での被写体など、理由はさまざまであるかもしれないが、大抵は異性から良い目で見てほしいという願望が大半を占めている。だが、外見だけで選んだ相手などと友情や恋愛が長続きするだろうか。外見だけで始められる付き合いのなど微生物よりも短命な関係だ。

 

やはり友情だろうが恋だろうが大事なのは始まりではない、どうやって紡いでいくかだ。

 

「よし、こんなところでいいかな・・・・」

 

保健室で数枚の大きな仕切りパネルを置いてため息を吐く。今日行われる身体測定に瑠奈の保健室が使われることになった。

別にそれ自体はいい。さまざまな測定器具が置いてある保健室で行うのは当然といえば当然の流れだ。問題は、なぜかその測定係に男である瑠奈と一夏が任命された。まあ、誰の仕業かは大体予想できるが。

 

一応、瑠奈(雄星)も男なのだ。それなのに、年頃の少女の体を触らせるのはいかがなものだろうか。

 

「準備は終わったか」

 

確認のためか、保健室に千冬が入ってくる。

 

「もうすぐ測定が始まるぞ、さっさと準備をしろ」

 

「今やっているだろう。あと、そこに立たれると邪魔だ」

 

面倒事を押し付けられてイラついているのか、渡された書類やクラス名簿を乱暴に机の上に置き、一通りの準備を終わらせる。

 

「お前は何ともない様だな。さっき一夏の方に行った時は馬鹿みたいに騒いでいたぞ」

 

「それが普通の反応だ。よかったな、これで興奮していなかったら、あんたの弟はホモかゲイか同性愛者だ。いや、もしかすると両性愛者(バイ)かもな」

 

「お前も小娘共の下着姿に鼻の下を伸ばすなよ?」

 

「色気に惑わされるほど、呑気な生き方はしていない」

 

何の戸惑いもなければ照れている様子もなく、淡々と答える。そういえば、雄星はこういう性格だった。目先の利益や魅力に惑わされるような考え方はしていないのだ。

 

「今回の身体測定でのお前は体位を測定する係だ。ISスーツ強化を目的とした厳密な測定をする。注文の都合上、専用機持ちを初めに測定する。いいな?」

 

「ああ、それは既に聞かされている。大丈夫だ」

 

「そうか・・・しっかりやれよ」

 

それだけ言い残すと、保健室を退室していく。それと同時に入れ違いで誰かが入ってくる。それはーーーー

 

「そ、それでは・・・・お願いしますわ・・・・」

 

黒いレースの下着をつけたセシリアだった。一目見ただけでも高価そうな下着から、貴族の気高さを感じてくる。

 

「あれ、いきなりセシリアなの?」

 

「は、はい。箒さんと鈴さん、ラウラさんは一夏さんの担当になりまして、わたくしとシャルロットさん、簪さんは瑠奈さんに測定して・・・・もらうことになりました・・・・」

 

「へえ、まあいいや。それじゃあ、始めよう」

 

「は、はい、よろしくお願いします・・・・」

 

異性の前で下着姿でいるのが恥ずかしいのか、頬を赤らめながら瑠奈の前に立つ。まずは、バストから図るべく、メジャーを持って前に立つ。

 

「それじゃあ、まずは胸囲からーーー」

 

「きゃあっ!」

 

メジャーが胸に食い込んだ時、セシリアが甘い悲鳴を上げる。よく見ると、顔がさらに赤くなったような気がする。

 

「・・・・どうしたの?どこか変な所を触った?」

 

「い、いえ、何でもありませんわ。ご、ごめんなさい・・・・」

 

慣れていない異性との体の触れ合いにすっかり興奮している様子だ。このままではまともに測定もできない。せっかくこの無人の保健室で2人っきりの状況だ。少しシリアスな話をしよう。

 

「セシリア、ところであの話(・・・)は諦めてくれた?」

 

「っ・・・・いえ、わたくしは・・・・諦めきれませんわ」

 

「わかってくれ、私は君と同じ道を歩いて行くことはできない」

 

「瑠奈さんこそ分かってください。わたくしにはあなたが必要ということを!」

 

瑠奈はセシリアからある話を度々持ちかけられていた。その話とは『自分と一緒にオルコット家を継いでほしい』という話だ。

ざっくりいうと、瑠奈にオルコット家の婿として来てほしいという縁談話となる。

 

「わたくしが必要なかったり邪魔と言うのならば、メイドや使用人として働かせてもらって構いません。瑠奈さんが来てくれるのならば・・・・」

 

「馬鹿を言うな、君がいてこそのオルコット家だ。当主が居なくなってどうする」

 

「ですが・・・・」

 

意地でも退かないといった様子で食いついてくる。イギリスいや、ヨーロッパの女性というのはこんなにも恋愛や家柄の話に強情なのだろうか。

 

「悪いけど、何度言っても答えはNOだ。私は君と一緒には生きていけない」

 

「・・・・そう・・・ですか・・・」

 

瑠奈の明確な拒絶がセシリアの心に深く突き刺さる。だが、ここまで彼女の家事情を聞いておいて、ただ突き飛ばすだけでは申し訳が立たない。

 

「だけど・・・・どうしても困ったことがあるのならば、エストを頼ってみてはどうかな?」

 

「え、エストさんを・・・?」

 

「ああ、彼女ならば君の力になってくれるはずだ」

 

高知能自立思考型AIのエストならば、心強い味方になってくれるかもしれない。少なくとも、そこら辺の惰弱なシステムに負けるほど貧弱な設計はしていないつもりだ。

 

「それでもダメなときは私を頼ってくれればいい。こんな私でもなにか力にはなれるはずだからね」

 

「瑠奈さん・・・・ありがとうございます・・・・」

 

頼りになる存在が出来て嬉しいのか、満面の笑みを浮かべる。その曇りのない純粋な少女の笑顔にどこか眩しさを感じる。

 

「はい、測定は終わり。次の人を呼んできて」

 

「は、はい、ありがとうございました」

 

入室するときとは違い、嬉しさや上機嫌さを感じさせる足取りでセシリアは退室していく。どうやら、彼女の心に希望を与えることが出来たようだ。常人であれば気が付かないような小さな光でも、それを忘れないでいれば幸福な人生を歩んでいけるものだ。

 

だが、次に入ってきた少女も自分の人生に悩んでいる者であった。

 

「お、お願いします・・・・・」

 

先程のセシリアとは違って青白い下着に身を包んだシャルロットが入ってくる。これまたどう反応をしたら良いのか困る人物だ。

 

「・・・・それじゃあ、さっそく始めよう」

 

だが、まあ、せっかくの機会だ。身体測定を兼ねた軽いお悩み相談といこう。メジャーを持ち、やる気のない表情を浮かべながら正面に立つ。そのまま胸にメジャーを巻き、測定していく。

 

「ひゃっ!」

 

「あまり動かないでくれ、測定しにくい」

 

「あ、ご、ごめん・・・・」

 

愛人の子という望まれぬ生を受け、昔から自由がなかったからか、異性との付き合い方や接触に不慣れな様子だ。まあ、この年頃の少年少女は誰もが異性との関わりに苦悩しているとは思うが。

 

「・・・・ところでお家騒動はどうなっているんだい?」

 

突如、目を逸らしたくなる質問をされたからか、『うっ』と低い声がシャルロットの声が漏れる。人様の家庭事情に深入りするべきではないとは思うが、生憎、瑠奈はデュノア家のはた迷惑なお家事情に巻き込まれてデータを盗まれそうになったことがある。

 

シャルロットにも事情があることは重々承知しているが、ここまで巻き込まれては見てみぬふりをするわけにはいかない。

 

「えっと・・・・あまり・・・良くはなっていないかな・・・・」

 

人の良いシャルロットのマイルドな表現で良くなっていないということは、本当に状況が改善されていないのだろう。下手をすると、悪化している可能性すらある。

 

「家族と話すのはそんなに難しいことなのかな?」

 

「父はともかく、本妻の人が僕を認めてくれなくて・・・・本当に参るね」

 

「随分と狭量な人だな。自分の愛する夫の子種から生まれた子だっていうのに」

 

「やっぱり・・・・泥棒猫(愛人)であるお母さんの血が混じっていることが許せないんじゃないかな・・・・」

 

だが、いくら否定されてもシャルロットは家族との和解を望んでいる。これはすごいことだ。瑠奈だったら、自分を必要としてくれないのであれば、それは家族でもなければ親でもない、自分を閉じ込める檻だ。そんなものは早急に逃げ出すのに限る。

 

たとえ、檻の外が死の世界であっても。

 

「まあ、君は親がいるだけ幸せだよ。私は親に捨てられて、親の愛なんてものは知らないからね」

 

「そう・・・・なんだ・・・・」

 

自分より悲しく、冷たい過去を知ってなのか、シャルロットの口が閉じる。まあ、同じ不幸者同士で意気投合するわけではないが、自分よりも不幸な者がいれば、シャルロットの気分も少しは明るくなるだろう。そんな他愛のない話をしているうちに測定が終わる。

 

「じゃ、じゃあ、更識さんを呼んでくるね」

 

「ああ、ちょっと待って」

 

「え?いったいどうしーーーきゃあっ!」

 

突如、瑠奈がシャルロットの胸の谷間に勢いよく手首を突っ込む。予想だにしない強引な行動に羞恥と驚きの混じっている悲鳴が上がる。

 

「な、な、な、な、何をするのっ!?」

 

「せっかくだ、持っていきなよ。何かの役に立つかもしれない」

 

シャルロットの胸の谷間に手首を突っ込んだことに罪悪感や興奮も感じていない様子で小さくはない胸に指をさす。すると、自分の胸の谷間に何やら違和感を感じる。瑠奈に背を向け、ゴソゴソと自分の胸をまさぐってみると、1つの小型メモリーカードが挟まれていた。

 

どうやら、さっき手首を突っ込まれたときに渡されたもののようだ。

 

「こ、これは?」

 

「一応、私が集めたデュノア社が行った過去の不正行為だ。後ろ盾や脅しなどに使えると思ってね」

 

確かにこのまま丸腰の状態で正面から突っ込んでいてもシャルロットの家族は耳を傾けてはくれないだろう。重要なのはきっかけだ。ならば、脅しや脅迫などでどんな形であれ、強引に家族の会談機会を作ってしまえばいい。会社の重要機密を持っているとなれば、流石に無視はできないだろう。

 

「も、もしかして、僕のために・・・・集めてくれたの?」

 

「さあね。ただ、人間や企業の機密や弱みはいくら持っていても困らない。そのうちのコレクションを少し君に譲っただけさ」

 

肯定もしなければ否定もせず、はぐらかすような口調で語る。このチャンスを生かすも殺すも彼女次第だ。まあ、いい方向に進展することを祈るとしよう。

 

「あ、ありがとう・・・・」

 

「どういたしまして」

 

瑠奈から物を受けとったことをばれないためか、再び自分の胸の谷間にメモリーカードを押し込んで隠すと恥ずかしそうに部屋を出ていく。少し強引なやり方だったが、少しは彼女の力になれただろうか。

そしてこの測定を兼ねた相談室に一番の注目の少女が入室してくる。

 

「そ、それじゃあ・・・お願い・・・・します・・・・」

 

羞恥で顔を真っ赤にした下着姿の簪が入ってくる。豊満とは言えないが、健康的な肉付きをした太ももや胸の膨らみが堂々と晒されていることに口がにやけそうだ。

 

「ふふ、今日も君は可愛いね」

 

「え、えへへ・・・・そう・・・かな・・・?」

 

「ああ、もっと君は自分に自信を持つべきだ」

 

お世辞でもなければ、機嫌取りでもなく、自分の思った本心を伝える。刀奈や簪の前ではこうして自分を素直にさらけ出すことが出来る。そんな自覚がある。

 

「よし、それじゃあ、さっそく測定を始めよう。こっちにおいで」

 

「うん・・・」

 

恋人に自分の体を測定されるという行為に恥ずかしさと期待の混じった表情を浮かべながら、瑠奈の前に立つ。

 

「そのまま動かないでね」

 

握られたメジャーが簪の胸に巻き付かれる。こうして彼に測定されるということは、彼に自分のスリーサイズや体を知られてしまうということだ。とても恥ずかしいが、彼に自分の体を知ってもらう機会だと思うと、不思議と嬉しく思っている自分がいる。

 

「ひゃあ・・・・」

 

「あ、ごめん・・・くすぐったかった?」

 

「う、ううん、大丈夫・・・・」

 

そんなラブラブで甘酸っぱい空間で測定は進んでいく。自分たち以外いない空間だからか、笑い声が静かな保健室に響く。

 

「よし、測定完了ーーーって言いたいところだけど、ごめん簪、測定不良があったからもう1回来てくれる?」

 

「え?うん、いいけど・・・」

 

別に簪としては間違いがあったようには思えないが、瑠奈がそういうのならばそうなのだろう。もう1度瑠奈に背中を見せる形で立つ。

 

「そのままだよ・・・・」

 

感情を押し殺しながら簪の背後に立つ。その刹那ーーー

 

「きゃあっ!」

 

素早く簪の背中に体を密着させる。それだけでも十分驚きだが、そこから瑠奈の手が簪のパンツの中に突っ込まれ、肉付きのいい柔らかなお尻をわしづかみにする。

 

「る、瑠奈っ!?」

 

「こら、動いたら測定ができないだろ。じっとしていて」

 

「で、でも・・・・あんっ!」

 

測定と言っているが、言葉と実際の行動が一致していない。眉1つ動かすことなく、そのまま簪のお尻を揉みほぐすように動かしていく。くすぐったさやとてつもないほどの羞恥で口から熱のこもった息と声が漏れるが、部屋の外には他の生徒や教師たちがいるのだ。

 

ここで下手に物音をあてて怪しまれるわけにはいかない。

 

「何を食べたらこんな無垢で可愛らしく、美味しそうな体に育つんだい?」

 

「お、美味しそう・・・・えへへ・・・・んっ・・・」

 

「君の体の魅力の秘訣をたっぷりと研究したいな・・・・・ベットの上でね」

 

「っ!」

 

告白に似たその刺激的な言葉は簪の思考を乱し、心臓の鼓動を激しく高鳴らせる。恥ずかしいが幸せいっぱいのこの空間が永遠と続いてほしいと思ったが、現実は非情にも簪に終わりを告げる。

 

『おいっ!いつまで測定に時間をかけているつもりだ!!』

 

「っ!!」

 

ドンドンと保健室のドアを叩き、ドア越しに千冬の怒声が聞こえてくる。瑠奈に後ろから抱きつかれ、お尻を揉まれているという今の状況が千冬にバレたら怒られるというレベルの話ではない、天変地異が起こるほどの裁きが下される。

 

「あ・・・いや・・・・あ、あの・・・」

 

必死に返事をしようとするが、ドアを開けられたら終わりの命がけの極限状態だからか声が掠れ、言葉が出ない。だが、瑠奈が簪のお尻を揉みながらニッと笑う。

 

「もうすぐ終わるから大人しく待っていろ。それと、次に測定する生徒を並ばせておいてくれ」

 

『時間に余裕があるわけではないんだ!早くしろ!』

 

注意だけ言うと、瑠奈の『次の生徒を並ばせる』という指示に従うためか、ドアから離れる足音が聞こえてくる。ただ返事をするだけでなく、次の行動の指示をすれば警戒していない人間は大抵その指示に従う心理がある。これも立派な会話誘導だ。

 

「はぁ、はぁ・・・・」

 

「危ない危ない」

 

危機を脱したことに安堵し、床に座り込んでしまった簪に対して瑠奈は余裕で愉快そうな笑みを浮かべている。まるでゲームをクリアした子供のような笑みだ。

 

「もう少し揉んでいたいけど、これ以上はばれるかな」

 

「も、もう・・・」

 

あれほど危機的状況だったというのに反省の色なしといった様子の瑠奈に困ったような声をだすが、お尻を揉まれ、刺激的な言葉を囁かれたからか、どこか嬉しそうだ。そんな複雑な表情を受けべながら簪は保健室を出ていく。

 

「はぁ・・・・」

 

唯一の楽しみが終わったからか、残念そうなため息を吐いて椅子に腰かける。遊びの時間は終わりだ、これから大事な仕事が待っている。

 

「・・・・エスト、いるか?」

 

『はい、何か御用でしょうか?』

 

「typeⅡの開発はどうなっている?」

 

『基礎設計完了、武装試験問題なし、現在衛星軌道上で最終試験を行っています』

 

お前の機体(・・・・・)の方はどうなっている?」

 

『そちらは一足早く完成しています。地上に下ろすこともできますが、どうしますか?』

 

「いや、そのまま待機していろ。必要になったのならば2機同時に地上に下ろす」

 

『了解』

 

この身体測定が終わったら、瑠奈はとある用事で学園を出なくてはならなくなる。その時に備えてエストの機体を下ろしておきたいが、今あの機体を晒すわけにはいかない。やるとしたらtypeⅡと同時にだ。それほどまでに動かすのにリスクがある。

 

とりあえず今は測定を終わらせるのが先だ。机上のプリントの簪の名前のバストの欄に大きくはない数字を書き入れ、再び椅子に腰かけた。

 




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