突然ですけど瑠奈のイメージCVってなにがいいですかね?
アリーナの中央で気絶しているセシリアが運ばれていくところを見届けると瑠奈は控え室に戻っていった。ISの絶対防御を発動して、操縦者が気絶など本来はあり得ない。
さすがに、すこしやりすぎたか・・・・
IS学園にエクストリームの力を知らせないために、瑠奈は短期決戦かつ最低限の力でセシリアに勝つつもりでいたが気絶という不自然な形で終わってしまった。
これではこの学園で瑠奈の素性や存在を怪しんだり、危険視してくる人間も出てきてもおかしくない。
「お疲れ様でした」
控え室に戻ってきた瑠奈に真耶は声をかけてくる。
ひとまず、2人とも大きな怪我や事故が起こらずに終了したことに安心している様子だ。
「すごいですね瑠奈さん、セシリアさんに勝ってしまうなんて!」
「そんなことないですよ。すいません、今日は疲れたんで部屋で休ませてもらいます」
「わ、わたしも戻る・・・」
そう言い、瑠奈と簪は控え室から出て行った。
生憎、この試合に勝ったことに対して喜びや安堵はない。
勝てたという真実に見惚れ、努力を疎かにしないためだ。今回は勝てたからといって次も勝てるだなんて保証はどこにもない。
部屋に戻る途中
「ごめん、簪。控え室に忘れ物しちゃったから先に戻って」
「わたしもついていこうか?」
「大丈夫、先に戻っていて」
「わかった・・・」
簪が廊下を進んでいき見えなくなると
「いるなら、話しかけてくださいよ」
「簪ちゃんがいると話し難いじゃない」
後ろの曲がり角から楯無が現れた。
この楯無の視線を試合の控え室に向かうときから感じていた。用件があるならこんなストーキングのような行為をしないで、きちんと面と向かって話してほしいものだ。
「俺の試合はどうでしたか?」
「あなたの持っている力はとても恐ろしいものね。だけど、これから味方になると思うと頼もしく思うわ。あと、あなた自分のこと俺っていうの正直言って似合わないわよ」
昔、女と間違われて以来自分のことを俺と呼んできたが、そこまではっきり言われるとさすがに傷つく。
「そうですか・・・」
「あたしからも、質問いいかしら?」
「どうぞ・・・」
そうすると、楯無の目が鋭くなる。
これは前にも感じた、瑠奈のことを疑っているような目だ。
「あなたは、この1週間なにをやっていたの?」
「階段で転んで骨折したので入院してました」
「嘘言わないで、昨日、フランスで女性優遇制度を推し進めている女性保護団体が消滅したわ。これはあなたが消滅させたんでしょ?」
「さあ、妖怪の仕業かもしれませんよ」
そもそも骨折が1週間やそこらで治るはずがなため、瑠奈のアリバイは成立しない。
適当にお茶を濁し、瑠奈はなにも言わずにその場を去って行った。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
瑠奈が部屋に戻るため道場の前を通ったとき
「ここまでにしよう、一夏」
「はあ・・・・はあ・・・わかった・・・箒・・・・」
道場の中から声が聞こえてきた。中を覗いてみると防具をつけた一夏と箒がいる。どうやら控え室から道場に移動し、明日のために最後の鍛錬をしていたようだ。
それにしてもISで勝つための訓練がなぜ剣道なのだろうか?。明日送られてくる専用ISのマニュアルを読んだり、ISの参考書を読んだりとできることはたくさんあるはずだ。
その中でなぜ剣道なのだろうか。正しい選択とは思えない、謎だ。
(まあ、関係ないことか)
正直、一夏がどんな訓練をしようが瑠奈には関係ないことだ。明日は頑張れとエールと送り、静かにその場を離れていった。
部屋に戻ると簪がお茶を入れて待っていてくれた。こういう風に他人に優しくすることができる人が近くにいるというのはとても嬉しい。
お茶を飲みながら、瑠奈はあしたの試合について考えていた。
正直言って一夏には勝ってほしい。
もし男である一夏が明日の試合に勝てば瑠奈の「男女平等」という意見がクラスメイトやIS学園に広まり、男という存在が見直されるかもしれない。そうなったらこの「つまらない世界」が少しはマシになるだろう。
しかしISをほとんど動かしたこともなく、相手が代表候補生では勝つことは難しいだろう。しかしあの千冬の弟だ、勝つ可能性も捨てきれない。勝つか負けるか、ひとまずは実力を見せて貰おう。
一夏は千冬をーーーー大切な人を守ってきたのか、守られてきたのか、どっちの人間なのかを。
次の日
瑠奈は起きると胸が締め付けられるような気分になっていた。
ああ、またこの感じか。エクストリームを使うといつも決まっているかのように大きな不安に襲われる。自分はエクストリームをあのとき使ってよかったのか?という大きな不安に。
この世にはたくさんの物事を動かす”源”がある。その”源”は正しく使えば”力”、間違って使えば”暴力”になってしまう。昨日セシリアに振るったのは”力”なのだろうか?そもそも力と暴力の違いはどのようにして決められるのだろうか?誰もわからない。
授業中もそのことを考えていた。
数日前に女性保護団体を潰したときもエクストリームを使ったが、あれでよかったのだろうか。
確かに保護団体がやっていたことはひどいことだが、彼女達にも己の正義や善意があり、その善意に従ってあのような行動を起こしたはずだ。
「男女平等」という思想しか持てない瑠奈が彼女たちを潰す権利があるのだろうか。
”力”か”暴力”かは神が決めていると思っていた時もあった。しかしそれは間違いだとすぐに気が付いた。束をこの世界に存在させISを開発させ、瑠奈の幸せを壊した。そんなことをした神を瑠奈は頼らない。
感謝や祈りも捧げたくない。
結局はこれが”源”を手にしたものの宿命だ。大きな不安や泣きそうになる虚しさとこれから一生戦っていかなくてはならない。それがエクストリームという”力”にも”暴力”にもなる”源”を手に入れた瑠奈の代償だ。
そんなことを考えていると
キーン コーン カーン コーン
授業が終了した。周りの生徒が立って友達や仲間のもとに向かっているなかで、一夏はISの参考書を見ていた。
どうやら最後にISの基礎知識だけでも頭のなかに詰め込むようだ。
周りの生徒たちが疲れたーやめんどくさいーなどの決まり文句や笑い声が聞こえ始めてきた。
それが人としての本来の姿だ。幸せを壊されることもなく、大きな不安や虚しさに襲われることもない。瑠奈はそんな姿をすることができる人間を心のどこかで羨ましく思っていた。しかしエクストリームに触った瞬間からそんな姿をすることは許されないし、できない。
瑠奈がそんなことを思っていると
「あれ~、ルナちょむどうしたの~。なにか悲しいことでもあった~?そんなに泣いちゃって」
気が付くと瑠奈は目から大粒の涙を流していた。
「だいじょうぶ~?」
本音は瑠奈を励ますように温かい笑顔を向けてくる。そういえば、私が最後に心から笑った日はいつだっただろうか。
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