IS 進化のその先へ   作:小坂井

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おけましておめでとうございます

今年は失踪しないことが目標ですかね....(遠い目)


7話 戦いの行方

「やっと、来ましたわね。てっきり、勝負を諦めて逃げたのかと思いましたわ」

 

瑠奈がアリーナに出ると、青いISを身にまとい、大きな青と白色の銃を持ったセシリアが話しかけてくる。

 

「生憎、そのつもりはない」

 

「そうですか・・・瑠奈さん、私と取引をしませんか?」

 

「取引?」

 

試合開始のブザーは、もう鳴っており、いつ相手が攻撃してきても不思議ではないのになぜこんなにセシリアは余裕そうな態度をしていられるのだろうか?

 

「ええ、そうですわ。あなたとわたくしはクラスメイトである以前に、同じ女性です。同じ女性としてあなたと戦いたくはありません」

 

セシリアは瑠奈が男とは知らない。

瑠奈が男と知ったときセシリアはどのような反応をするのだろうか。

 

「なので取引をしましょう。1週間前、あなたに怒鳴ったことをお詫びしましょう。そのかわり、男女平等というあなたの意見を撤回してください」

 

「そうだそうだ!!」

 

「謝れ!!」

 

周りの観客席から瑠奈に対するブーイングや悪口が聞こえてきた。

一見すると、セシリアが皆の意見を代弁しているように見えるが、ただ単純に自分の意見を曲げたくないだけだろう。

 

「観客席もそれを望んでいますわよ」

 

瑠奈は少し考えるようなポーズをとり

 

「断る」

 

と返答した。瑠奈は女尊男卑や不平等という言葉が大っ嫌いだ。

その意志は変えるつもりもなければ、これからも変わることはない。

 

「そうですか・・・・・それならこれでお別れですわね!!!」

 

セシリアは持っていた銃を瑠奈に向け、引き金を引いた。何の前触れもなければ、予備動作もない、完全なる不意打ちだ。

 

「落ちなさい!!」

 

セシリアから放たれたレーザーは、的確に瑠奈の頭を狙われていたが

 

「おそいな・・・・」

 

と言い、瑠奈は頭を数センチ右にずらしかわす。

 

かわしたと同時に瑠奈の左耳についていた平べったい装甲が右にスライドし、瑠奈の左目を眼帯のように多い隠す、その瞬間、瑠奈の露わになっている右目が赤くひかり

 

「イギリスの代表候補生の力、学ばせてもらう!!」

 

瑠奈とエクストリームは戦闘モードに移行した。久しぶりの戦いだ、存分に楽しませてもらおう。

 

 

 

ーーーー

 

 

戦闘モードに移行した、瑠奈とエクストリームは相手の攻撃をかわしながら、左目についている眼帯型分析装置で相手のISの解析をはじめる。

 

(IS名 ブルー・ティアーズ

 イギリスの第三世代IS

 独立稼働ユニットであるビットを装備

 武装 スターライトmk-Ⅲ

    インターセプター

    レーザービットx4

    ミサイルビットx2)

 

わずか5秒ほどで相手のISの名前と武装を解析した瑠奈は、相手に有利である武装を展開し始める。

瑠奈が装備した武器、それは手に収まるほどのサイズである片手銃だった。

 

「なにあれ~」

 

「あんなので勝てるの~」

 

「謝れー!!」

 

観客も瑠奈と瑠奈が装備した片手銃をバカにし始めた。

 

「そんな、装備で勝てると思っていますの?いきなさい!」

 

そう叫び、セシリアは腰についてあるビットを飛ばし、攻撃の手をさらに強める

瑠奈はセシリアの撃ってくるレーザーやビットの攻撃をかわしながら片手銃を静かに構え、撃った。

 

セシリアは射撃後の硬直があり、瑠奈の撃った攻撃をかわせずにくらってしまうが

 

「ぜんぜん、効きませんことよ!]

 

瑠奈の攻撃はセシリアのシールドエネルギーを1削っただけだった。観客の中には1しか削れていないことに笑うものが出始める。

 

「このまま、決めて差し上げますわ」

 

セシリアは笑いながら自分の勝利を確信する。しかし瑠奈はそれでも銃を撃ち続ける

観客はその試合の違和感に誰も気が付かなかった。

 

 

ーーーー

 

千冬は控え室にあるモニターを見ながら試合の違和感に気が付いた。

 

その違和感とは瑠奈は”射撃をはずしていない”

 

セシリアは試合が始まって早々、第一撃を外しているのに対して瑠奈は30発ほど撃っているがすべてセシリアに命中していた。

 

本来なら必ず気が付いているのだが、瑠奈の攻撃力が低すぎて観客が気が付かないのだ。

現に瑠奈と戦っているセシリアさえそのことに気が付いていない。

 

モンド・グロッソの優勝者である千冬ですらも、1試合に剣を空振りすることはある。それと比べると、動き回るこの試合で命中率100%がどれだけ難しいことか・・・・

千冬の知らない間、彼がここまで強くなっているとは想像以上だ。

 

「なんて男だ・・・・」

 

驚きと恐怖が混ざった声で千冬は静かに呟いた。

選手の腕と相手の心理を掴んだ戦いが、ここまで残酷で一方的なものとは誰も知らない。

それに、違和感を感じさせないことが尚更不気味だ。

 

彼は戦い続ける。

自分は戦い、勝利することしか自分の存在が許されないと信じて。

 

 

 

ーーーー

 

 

(そろそろいくか・・・)

 

瑠奈はセシリアの周りを回るようにかわしていたが、突然セシリアに向かって接近し始める。

 

「くっ・・・・この!!」

 

セシリアは接近してくる瑠奈に撃ち落そうと火力を集中させるが当たらない。そのままの状況で瑠奈がセシリアとの距離が2~3mほどまで接近したところで、セシリアの口が歪んだ。

 

「かかりましたわね!!」

 

隠し武器である2つのミサイルビットからミサイルを瑠奈に向かって撃ちこんだ。しかし、瑠奈は冷静に撃ってきたミサイルを持っている片手銃で撃ち落しミサイルを爆発させる。

 

ミサイルが爆発したことによって大きな煙がセシリアと瑠奈を包んだ。

 

「め、目隠し!?下手な小細工を!!」

 

セシリアは腰にあるスラスターから強風を発生させ煙を吹き飛ばす。煙がなくなっていき、セシリアの視覚がはっきりしてきたとき、セシリアの思考が凍りついた。

 

なぜならセシリアの目の前に瑠奈の顔があったからだ。眼帯が包まれていない右目はセシリアに対して殺意のみを送り続けている。

 

「きゃ、きゃあああ!!」

 

敵が目と鼻の先まで接近していたという想像だにしていなかった状況に、セシリアの脳がパニックになり、叫びながら持っていたスターライトの銃身で瑠奈を殴って距離を取ろうとするがその前に

 

「甘い!!」

 

と瑠奈が叫びセシリアの腹部に蹴りを打ち込む。

 

セシリアは吹き飛ばされアリーナの防御壁である遮断シールドに叩きつけられてしまう。

蹴られる瞬間、セシリアは瑠奈の姿を見たが装備が違っていることに気が付く。

 

両脚の外側に赤い装甲が追加されており膝全体を覆っていた。さらに両手の手の甲の部分にも赤い装甲が追加され一段と攻撃性が増したように見える。

 

瑠奈の後ろにはパワーアップしたようなバックパックがついており、ところどころが赤くひかっていた。

 

 

 

 

ゼノン・フェース

セシリアのISが射撃特化であることをエクストリームが分析し、セシリアの苦手な相性である接近特化の機体に自ら変化させ進化した機体だ。

 

 

 

 

 

ゼノンは遮断シールドに叩きつけられたセシリアの頭をバスケットボールのようにわし掴みにし、アリーナの中央へ投げ飛ばした。

 

投げ飛ばされている途中でセシリアは、なんとか態勢を整え、瑠奈のいる方向へ銃口を向けるが

 

「い・・・いない!!」

 

「ここだ!!」

 

上から声がし、セシリアが見上げるよりも早く、上に上昇していた瑠奈にセシリアは頭にかかと落としをくらってしまう。

 

そのまま、地面に叩きつけられる。

観客は代表候補生であるセシリアが先制を取られたことに驚いていたが、『まだまだこれからだ』というポジティブな気持ちで試合に目を向ける。

しかし、肝心のセシリアがアリーナの中央で倒れたっきりなかなか起き上がらない。

 

これが意味していることはただ1つ。ISの絶対防御を発動させても、操縦者を気絶させるほどの衝撃がセシリアを襲ったのだ。

 

審判がこれ以上の試合続行は不可能と判断し、瑠奈の勝利という形で試合は終了した。観客や審判は、その時気が付かなかったが、瑠奈は被弾率0%に加え命中率100%という完全試合(パーフェクト・ゲーム)を完遂したのであった。

 

 




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