IS 進化のその先へ   作:小坂井

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春だというのに突如、腰の骨が剥離症となり、ベットから全く動けない日々が続いています。健康に勝る富なしとはよく言ったものですね。
神よ・・・・私、何かしましたか・・・・?泣きたいです。


76話 誓いの日

「随分と暗くなっちゃったな・・・・・」

 

日が完全に沈み、闇に包まれた学園に続く道を歩いていた。あの後、楯無から『簪ちゃんがあなたに話があるから、行ってあげてね』と言われ、てっきり部屋で待ち合わせと思っていたのだが、なぜか指定された待ち合わせ場所が周囲が暗くなり、人通りがなくなった学園の広場だった。

 

すぐに行こうと思ったのだが、千冬率いる教師たちの取り調べや検査で指定の時間より1時間程遅れてしまった。遅れることは伝えたが、ここまで遅れてしまっていると、もう部屋に戻っている可能性がある。電灯に照らされている道を歩き、待ち合わせの広場に行くとそこには

 

「簪!!」

 

「あっ・・・ゆ・・・瑠奈・・・」

 

緊張した面持ちで広場のベンチに静かにベンチに座っている簪がいた。服装は制服で火傷をした右腕には包帯が巻かれている。

 

「ごめん、遅れちゃって」

 

「だ、大丈夫・・・・」

 

短く答えると、簪は顔を逸らす。どうにも簪の様子がおかしい。さっきから目を逸らし続けているし、妙にたどたどしい。

 

「簪?」

 

「きゃ、きゃぁ!!」

 

「あ・・・なんかごめん・・・」

 

異常がないか確かめようと近寄った瞬間、簪が大きな悲鳴を上げて瑠奈と距離を取る。瑠奈としては人に嫌われるのは慣れているつもりなのだが、親友ーーーしかも、ルームメイトである簪にここまではっきりと拒絶のような反応をされては少なからず傷つく。

 

「えっと・・・話があると聞いて来たんだけど・・・・嫌なら、離れて話を聞こうか?」

 

「ご、ごめん、大丈夫・・・・だからその・・・・来て・・・・」

 

片言のような言葉を聞いて、なぜか顔が真っ赤になっている簪の前に立つ。

 

「あ・・・そう言えば君には世話になったね」

 

「え・・・?」

 

「エストから聞いたよ。お姉さんと一緒に僕の面倒を見てくれたんでしょ?せっかくだし、こうして、ちゃんとお礼を言っておこうと思って」

 

「う・・・うん・・・・」

 

言われて嬉しいお礼なのに、今は意識が向かず、体に力が入り、スカートの裾をぎゅぅぅぅと握る。これから言うことを想像すると、心臓が痛いほどに音を鳴らしてくる。

 

「あ、あの、これ!!」

 

大声で叫ぶと、動かせる左手を瑠奈に突き出す。

 

「これは・・・・」

 

その突き出した左手には学園祭で使われた金色に輝く指輪があった。これを手にしたものは小倉瑠奈へ何でも言うことを利かせることができる絶対命令権が与えられる。今思うと、とんでもないゲームだと思ったが、これを機に指輪を手にした覇者である簪に何か恩返しが出来るというのならば、それはそれで良いと思える。

 

「わかった、僕に何でも命令してくれ。君の指示に従おう」

 

「・・・・本当にいいの?」

 

「僕に命令したいことがあるから、僕を呼んだんだろう?」

 

「う、うん・・・・」

 

話の切り出しは上々。あとは渾身の勇気を振り絞るだけだ。たとえ、叶わない願いだとしても、自分はもうこの思いを胸の内にとどめておくことなどできない。

数回荒々しく深呼吸をして呼吸を整える。そしてーーー

 

「わ、私を・・・・雄星の恋人にして!!私、雄星のことが好きっ!!」

 

顔を真っ赤にして、自分の全てを目の前の少年にぶつけた。人生初の告白に恥ずかしさのあまり、今すぐにでも立ち去りたい衝動に襲われるが、返事を聞きたい。その思いが簪の足を止めた。辺りは誰もいない場所であるため、無音の状況が続いたのだが、重苦しい雰囲気に耐えられず、瑠奈が口を開いた。

 

「簪・・・・残念だけど、恋人は募集していないんだ・・・・・」

 

「え・・・・」

 

見事なまでの撃沈。見事なまでの失恋。常人ならば、ここで涙を流して走り去ってしまうかもしれないが、簪の脳内には『雄星は押しに弱い人です。強引に食いつけば何とかなります。あなたは雄星の恋人になる資格や勇気がある方ということは私が保証しますよ』というエストのアドバイスが響いていた。

 

そうだ、ここで退いては今までの自分と同じだ。この学園で自分は成長したというところを彼に見てもらいたい。

 

「ダメ・・・」

 

「はい?」

 

「雄星は・・・・もう私の恋人っ!!」

 

自分でも何言ってんだろうなとは思っている。こんなにも必死になって、諦めきれなくて、これではただのしつこい女だ。姉であったのならば、もっとうまくやっていたのかもしれないが、生憎今の簪にはこれが精一杯だった。左手に持っている指輪を雄星の眼前に突き付ける。

 

「・・・・雄星は・・・・私のこと・・・・・嫌い?」

 

「嫌いなわけないだろ、君は優しい人だ。君みたいな優しい人は僕の好みだよ」

 

「だったら、恋人にしてっ!!」

 

ここぞと言わんばかりに、強引に押してくる。簪としては、隙が無いように徹底的に攻めているつもりなのかもしれないが、緊張と羞恥で震えている体と真っ赤な顔を見ていると、強引というより必死になっているのは一目瞭然だ。その初々しい光景に不覚にも口元が緩んでしまう。

 

こんな自分を好きになってくれたのだ、何とかしてこの少女の想いには応えてあげたいが、雄星には既に自分の全てを捧げるべき(刀奈)がいる。彼女にも自分の全てを捧げたいが、主を2人も持つことはありえない。小倉雄星という者の剣を捧げるのは1人の人間だけでいい。

 

だが、簪も自分の正体を知っても面倒を見てくれた。自分を守り抜いてくれた。だから、あの時自分はゴーレムⅢに迷わず命を賭して立ち向かうことが出来たのだろう。だが、どんなに言われても簪が恋人になることは出来ない。

だが、方法はある。

 

「・・・・簪、なんども言うけど君は僕の恋人になることは出来ない。だけど、僕が君の物になることは出来る(・・・・・・・・・・・・・・)

 

意味深な言葉をいい、装着したばかりの右脚の義足の膝をつき、手を差し出す。まるで、姫君に忠誠を誓う騎士のようだ。

 

「簪、僕のーーー破壊者(ルットーレ)としての剣と盾を君が預かってはくれないだろうか?」

 

刀奈には小倉雄星の剣と盾を捧げた。だが、小倉雄星という者にはもう1人の自分ともいえる存在、破壊者(ルットーレ)がいる。戦うことを目的に生み出された破壊者(ルットーレ)には、家族も親友も恋人も不要だ。

 

だが、自分が戦う目的が必要だった。『ISと戦う』などといった他人が身勝手に決めた目的などではなく、自分が望み、歩み続けるための明確な目的が。

1人では背負うのが重すぎる小倉雄星(ルットーレ)の剣と盾。だが、刀奈と簪の2人だったら受け止めてくれると信じている。

 

「君のお姉さんは僕の弱さを背負い、受け止めてくれた。更識 簪、君には僕の強さと力である剣と盾を受け止めてほしい。盾となって君たちを守り、剣として君たちのために戦わせてくれないだろうか?」

 

「雄星の・・・・力・・・・」

 

彼の強さは簪も知っている。立ち塞がるものを薙ぎ払い、見る者を圧倒するあの強大すぎる力。家族も帰る場所もない雄星にとって、その力は自分の身を守れる唯一の存在だった。だが、その自分の生命線ともいえるその力を自分のために捧げてくれると言った。

 

これは恋人などと言った恋仲だけではない、正真正銘、彼の命を預かることになる。その大きすぎる責務に心が強張ってくる。

 

「・・・・わ、私なんかで・・・・いいの?」

 

「僕は君と君のお姉さんのために戦いたい。僕の力、体、心、全てが君の所有物だ。君たちの輝かしい未来のために、尽くさせてくれ」

 

臨海学校で束は『お前と瑠奈(雄星)は釣り合わない』と言った。それ以来、簪は姉と雄星に小さくはない劣等感を抱いていた。だが、今の彼はIS搭乗者やそんな不釣り合いなど関係なく、自分を必要としてくれている。1人の少年として。

 

「雄星・・・・約束して、くれる・・・?」

 

「何かな?」

 

「ぜ、絶対に・・・・私の元から・・・・居なくならないで。わ、私、ずっと雄星と一緒に居たい・・・・」

 

「はい、あなたに付き従う者として、精一杯尽くさせてもらいます」

 

その嘘偽りのない言葉を聞き届けると、目の前に差し出されている手を握る。その手を雄星は手前に引き、簪の手の甲に接吻し、額に当てる。契約書も見届け人もないこの契約を表す唯一の証だ。

 

「さぁ、寮に帰りましょうお嬢様。皆が待っています」

 

「う、うん・・・・」

 

手を繋いだまま、2人は歩き出す。いきなり、恋人のような行為に顔が赤らめ、心臓の鼓動が早打つが気づかれないように、表情を必死に保つ。雄星も信頼できる人が出来て嬉しそうだ。

 

「・・・っ?」

 

不意に背後に違和感を感じて振り返ると、この暗闇の中で不自然に体が淡く光っている1人の白髪の少女が雄星と簪を見ていた。数秒の間、無言で向かい合っていたが、隣の簪の年相応の初々しく、可愛らしい表情を見ると、苦笑いを浮かべる。

 

『彼女達を大切にね・・・・。私は・・・・ずっと待っているから・・・・・』

 

それだけ言い残すと、少女は暗闇の中に消えていった。どうやら、ブラコンな小姑は簪との交際を認めてくれたらしい。

 

「雄星?どうしたの・・・・?」

 

「いや、何でもない。・・・・・いこう」

 

死者を思い続けていると、その死者に脚を引っ張られてあの世に引きずり込まれるという話があるが、どうやら、彼女はまだ雄星を引っ張る気にはなれないらしい。随分と気まぐれでいい加減な亡霊だが、それは彼女が自分に生きて欲しいと願っていることでもある。

 

ならば、それでいい。自分を生きて欲しいと願ってくれる人がいるのならば、小倉雄星は生きることができる。

 

 

 

 

ーーーー

 

 

 

 

「と、いうわけで、やっほ~、一夏~」

 

「・・・・・・」

 

次の日の朝、1組のホームルームでなぜか別クラスであるはずの鈴と簪の姿があった。

 

「山田先生、説明を」

 

「はい、先日の専用機持ちダッグトーナメントでの戦いを分析した結果、1年の専用機持ちを1組に集めることにしました。これは、生徒会長と織斑先生が判断した結果になります」

 

一夏と一緒のクラスになれた鈴は嬉しそうだが、反対に簪は暗い表情を浮かべている。この1組で簪が座る席が彼のーーー空席となった瑠奈(雄星)の席だからだ。ここで自分が座ってしまっては、彼がこのクラスで座る席がなくなってしまう。

 

「更識、早く座れ。ホームルームが始められないだろう」

 

「・・・・はい・・・・」

 

消えそうなほどの小さな声で返事をすると、ゆっくりと席につく。落ち込んでいる簪を幼馴染の本音が心配そうな様子で見てくるが、簪は話を聞かずに俯いたままだ。

 

彼は確かに約束してくれた。ずっと自分の元にいてくれると。だが、こうして彼のいるべき場所に自分がいては帰ってこれるはずがない。

 

「おい、更識!」

 

俯いて沈黙している簪の頭を千冬が叩く。

 

「今はホームルームの途中だ。ちゃんと話を聞け」

 

「・・・・はい・・・・」

 

「あと、後で保健室に来い。お前に用事がある」

 

「え・・・それはどういう意味ですか・・・・?」

 

「来ればわかる」

 

それだけ言い残すと、千冬は再び教壇に戻る。ここ数日医療室に通ってはいたが、保健室に何か用件があっただろうか。そんな疑問が頭に蠢くが、結局ホームルーム中にその疑問は解消しなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここだ、入れ」

 

ホームルーム終了後、簪は千冬に連れ出されて保健室前に連れていかれた。やはり、どんなに考えても自分が保健室に呼び出される原因が思いつかない。

 

「入ればわかる、さっさと入れ」

 

「は、はい・・・・」

 

千冬の声に怯えながら、保健室の扉を開けるとそこにはーーーー

 

「やあ」

 

黒のタイツスカートのスーツを身に着けた雄星が机に立っていた。突然の意外な人物の登場に簪の思考が停止する。

 

「ゆ、雄星・・・・?」

 

「ここでは先生(・・)をつけてほしいけれど・・・・まあいいか」

 

「よくない、ここではお前も教師(・・)だ。教師と生徒との立場は明確にしておかなくてはならない。少しは自分の立場を自覚しろ」

 

「へいへい」

 

大して反省している様子もなく、適当に返事を返すと、椅子を簪の前に置く。

 

「座りなよ、僕も色々話したいことがある」

 

「う、うん・・・・」

 

座った簪に淹れておいたコーヒーを差し出し、自身も机に座り、向かい合う。そのとき、机の上に座っていることに対して千冬が睨みつけるが、反省する様子もなく、『千冬も飲むかい?』と呑気な声を掛ける。

 

「はあ・・・・」

 

相変わらず能天気でマイペースな彼に呆れながらコーヒーを受け取り、千冬も近くの椅子に座る。

 

「簪、僕はこの学園に保健及び生徒のメンタルケア担当の教師として着任することになった。これからよろしく」

 

「きょ、教師?」

 

「ああ、君のお姉さんの紹介だよ。ちょうど保健の担当教師が空いていたから助かったよ」

 

建前上は『生徒の悩み相談及びメンタルケアの教師』という名目だが、実際は生徒会長である楯無が雄星のために作った居場所だ。1度退学した身である雄星はもう学園に復学することはできない。だが、ここはどの国の土地でもないIS学園。

 

教師資格がなくても、メンタルケアや軽い治療程度の担当であれば生徒からある程度の支持があれば、問題ない。

 

「明日全校集会で紹介してもらうつもりだったんだけど、君には一足早く知らせたくてね。よろしく、今日からこの学園に着任した小倉瑠奈だ」

 

「よ、よろしくお願いします・・・・」

 

差し出された手を握り、握手をする。どんな形であれ、こうして雄星と再び学園にいてくれるのは嬉しい。先ほどの暗い表情から打って変わり、明るい顔で笑う。

 

「話が終わったのならば、さっさと教室に戻れ。もうすぐ授業が始まる」

 

「あ、ちょっと待ってくれ。簪、悪いけど右脚の義足の微調整をしてほしい」

 

「ならば、私がやる。更識、お前は教室に戻れ」

 

「やめてくれ、あんたに触られたらエストがせっかく作った義足が穢れる。冗談は顔だけにしてくれよ」

 

「あ゛?よく聞こえなかったな、もう1回言ってみろ」

 

よく考えてみると、こうして千冬ともめているのも日常だった。目の前で怒る千冬と、涼しい顔でそれに対応する雄星。この光景は学園の日常であり、それと同時に簪の日常が戻った証拠であった。

 

 

 

 

 

 

ーーーー

 

 

 

 

 

 

「送り込んだゴーレムⅢは全滅、小倉雄星も学園に復帰しましたか・・・・・。やはり、更識楯無が問題点になりますね」

 

薄明りの灯った部屋でタブレット端末をもったレポティッツァがベットの上で小さく声を漏らす。

 

「うっ・・・あぁぁ・・・」

 

「はぁ、もう終わりですか。役に立たない男だ」

 

その声を打ち消すようにかすれた男の声が聞こえる。現在、レポティッツァの下には男が全裸でうつ伏せに倒れており、その男の股関部に同じように全裸となったがレポティッツァが跨っていた。当然ながら、互いの体が繋がっており、接合部からは男とレポティッツァの体液が混じり合った液体があふれ出る。

 

だが、男はほとんどの精を吸い取られて限界なのか、げっそりとした顔をしているのに対し、レポティッツァは汗1つ流すことなく冷静な表情のままだ。だが、この男はもう無理だと判断すると、膣内の筋肉を絞めて最後の一滴まで搾り取ると両脚を開脚させて立ち上がる。

 

すると大人の証であるアンダーヘアに覆われている性器と、尻肉の割れ目のヒクヒクと窄まっている排泄口から、男の吐き出した欲望である白い白濁液がドロリとあふれ出る。性器から溢れてくる精液はティッシュで拭き取れたが、お尻の排泄口からはいくら拭き取っても溢れてくる。

 

「はぁ・・・」

 

苛立つようなため息を吐くと、お尻の穴に人差し指と中指を挿し込み、指の関節を動かして肛門付近に溜まっている精液をまとめて噴出させる。当然ながら、弄っているのは排泄口だ。指に注ぎ込まれた精液と一緒に腸液や排泄物がこびりつくが、構う事なく排泄口をほぐしていく。

 

「んっ・・・やはり、こっちはいい・・・・」

 

自分のお尻に指を入れるという明らかに異常な行為に対し、レポティッツァの口元は緩み、恍惚とした声を出す。これが彼女の正体だ。下劣で変態で卑怯で下賤、だが、それを知っている者はいない。それを知ったものは残すことなく口封じされているからだ。

 

「ひっ!う、うわぁぁ・・・・」

 

その魔女のようなレポティッツァから逃げようと、押し倒されていた男が逃げようとするが散々搾り取られて体力がないこの状態では逃れられるはずがなく、すぐに捕まり、ベットに押し倒される。

 

「どっちにしろ価値のない命です。ならば、せめて最後ぐらい私の役に立ちなさい」

 

吐き捨てるような言葉と同時に首筋に薬を打ちこむと、男の体が震え始め、萎えていた股関の性器が再びそそり立ち始める。完全な硬さを取り戻したことを確認すると、指を添えて今度は自分の性器ではなくお尻の割れ目である排泄口に挿入する。

 

「あっ、んっ、んんっ・・・・」

 

みちりと肛門括約筋が開く感覚を感じながら腰をスクワットするように上下に動かして挿入を繰り返していることによって、両胸がブルンと揺れ、腸内で異物が動き、排泄感に似た刺激で口から甘い声が漏れる。だが、視線は手元のタブレット端末のみで肉体関係を結んでいる男は一瞥もしていない。それは当然だ、レポティッツァにとってこの男は自分の欲求を満たすだけの道具に過ぎない。

 

「どうするべきか・・・・」

 

先程の計画の失敗に軽く頭を悩ませる。何でもかんでも自分の思い通りにいくのは簡単すぎて面白くないが、ここまで計画が妨げられるとそれはそれで面白くない。まあ、小倉雄星が簡単に手に入るとは思っていなかったが。

 

「はぁ・・・・」

 

ため息を吐き、近くにあった飲み物が入っているグラスを取った時、そのグラスに飲み物が入っていないことに気が付く。そういえば、さっき飲み干してしまったのだった。

 

「お嬢様・・・・・」

 

すると、ドアがノックされ、部屋の中で動くレポティッツァにスーツを着た白髪の1人の15、6ほどの年齢の少女が近づき、空になったグラスに飲み物を注ぐ。

 

「調子はよさそうですね瑠奈(・・)。さっきまで部屋で自傷行為をしていたとは思えない」

 

「・・・・・」

 

「無視ですか?冷たい対応ね。あなたを生き返らせる(・・・・・・)のにどれほどの手間と費用が掛かったのだと思っているのですか?」

 

何度も実験が失敗し、莫大な資金がかかった。おそらく資産家であるレポティッツァでなければ不可能な課題だっただろう。

 

「あなたの『戦闘能力と子を出産する母体に最も最適な状態にしろ』というオーダーも私はちゃんと聞きました。それに彼の腕(・・・)もあなたに繋げた。何かいうことがあるのでは?」

 

「・・・・それは感謝しているわ。けれど・・・約束は覚えているわよね?」

 

「ええ、学園最強である更識楯無を捕え、私に差し出せばあなたと小倉雄星の身柄は保証しましょう。なんなら、後に彼と暮らしていく家もあなたに渡してもいいわ。それを遂行するための機体も製造中ですしね」

 

「わかっているのならばいいわ」

 

それだけ言い残し、少女は去っていった。彼女が雄星に対する執着心は本物だ。目の前に雄星という餌を垂らしておけば、彼女は何でもするだろう。その異常ともいえる思考は利用できる。

 

「ふふっ・・・・」

 

愚かな少女だ。そんな肉体になり、魂や希望も地に堕ちたというのに、まだ人らしく生きれると思い込んでいる。残念だが、彼と同じ破壊者(ルットーレ)となった以上、彼女も小倉雄星と同じように自分に捧げられた生贄だ。食い尽くして、利用して、ボロボロになったところで、2人まとめて自分の奴隷として全てを奪う。

 

ちょうど雄雌番いだ。生物としての繁殖能力も、生まれてくる子孫の能力値も思う存分テストできる。おまけに2人は老いることのない不老の肉体。うまく扱えば種馬とその母体として何十年も利用できる。これほどに都合の良い実験体があるだろうか。

母体や種馬が体に異常が起き、雄や雌としての機能が果たせなくなったとしても、自分の玩具としての存分に遊ばせてもらおう。

 

結局はどう足掻いてもこの姉弟は自分から逃れることはできない。戦いも恋愛も、全ては自分の手の上で踊らされている遊戯(ゲーム)に過ぎないのだ。

 

「がっ、がっ、あああああっ・・・・」

 

すると、男が断末魔のような声を出し、挿入されたレポティッツァの腸内に精液を発射する。それで完全に力尽きたらしく、白目をむき、口の口角からは舌が垂れ下がる。その様子からもう利用価値はないと判断すると、立ち上がり、お尻から流れ出る精液を拭くことなく、新たな獲物を探し求めて部屋を出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁっ!、はあっ!、はあっ!」

 

暗い部屋で荒い息づかいが響く。部屋の床には衣服が脱ぎ捨てられ、大きな鏡の前で全裸の少女が左手を自身の股にこすり付けていた。

 

「雄星っ・・・・雄星ぃぃ・・・・」

 

口からは涎と荒らしい息が吐かれ、左手は自身の性器から分泌された体液によってふやけて皺ができている。さらにフローリングの床には股から垂れた体液で水たまりを作っている。だが、これだけやっても満たされない。満足しない。収まらないこの思いは。そしてこの欲求は、彼を手に入れたいという欲求は。

 

「はぁ、はぁ、っ!・・・・はぁぁぁ・・・・」

 

呆けた顔をして左腕の動きを止め、自身の裸体が映し出されている鏡を見る。雪のように白い肌と髪が鏡に映し出されているが、それとは別に目立つのが自身の左腕のつなぎ目だ。

まるでくっつけたような傷跡があり、手首には自身の粘液が付着して濡れて光っている。

 

この腕は自分と雄星を繋ぐ証だ。今は左腕しかつながっていないが、もうじき自分と雄星は心身共に1つになる。体も心も自分の物になるのだ。

 

「ごめんね・・・・これしかできなくて。だけど、もうすぐだから・・・・もうすぐ迎えに行くから・・・・」

 

左腕に話しかけるかのように小声で語りかけると、自身の下腹部ーーーーちょうど子宮の部分を撫でる。あの時は無理だったが、今は卵巣からは卵子が排出され、月経も起こり、母体として十分な機能が備え付けられている。今の自分ならば彼の子供を産むことが出来る。彼の愛を受け止めることができる。

 

「ふふっ、さあ、もっとしましょう。あなたが満足するまでお姉ちゃん(・・・・・)頑張るからね・・・・・」

 

恍惚とした表情で手の甲にキスをする。そして少女は再び自身の左手を股にこすり付けた。誰もいない真っ暗な部屋で少女の荒い声が再び響いた。

 

 




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