IS 進化のその先へ   作:小坂井

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サブタイトルが話数ではなんだか寂しいので、ちゃんとした題名のサブタイトルをつけようかと考えています。


24話 存在理由

「あ、あんたねぇ・・・・・何面白いように先読まれてんのよ・・・・・・」

 

「鈴さんこそ!無駄にばかすかと衝撃砲を撃つからいけないのですわ!」

 

少し授業に遅刻して瑠奈がアリーナに着くと、ISを装備したセシリアと鈴が束になって地面に倒され、お互いの汚点を押し付けあっていた。

 

そして2人の上空にはリヴァイヴを装備した真耶がいる。

そのとき、遅れたことによって千冬からぎろりと睨まれたが、授業には出席するといっても時間通りに出るという約束をした覚えはない。

 

「なにがあったの?」

 

「ああ~、ルナちょむだ~」

 

とりあえず、近くにいた本音に状況説明を求める。

 

「ここでねぇ~負けられない女の戦いがあったんだよ~」

 

「余計わからない」

 

なにがあったら、専用機2体と訓練機が戦って専用機持ちがぼろ負けするのだろうか?仲間割れでもしたら訓練機が勝つとおもうが、いくら愚かなるグレーテル(セシリアと鈴)たちでもそこまでしないだろう。

 

「さて、これで諸君にもIS学園教員の実力は理解できただろう。以後は敬意をもって接するように」

 

千冬がパンパンを手を叩き、先に進もうとすると

 

「ちょっといいですか?」

 

瑠奈が手をあげた。

 

「なんだ、小倉?」

 

「彼女たちに再戦をお願いしたいんですけど」

 

「それは、構わないが・・・・・」

 

千冬やほかの生徒は瑠奈の発言に若干の戸惑いを表す。試合を直接見てないとしても、セシリアと鈴の2人が全力でかかっても勝てなかったのだ。

瑠奈も勝てないことは当然わかっているはずだ。

 

(瑠奈には勝算でもあるのか・・・・・?)

 

「山田先生はそのまま待機していてください」

 

そういうと、瑠奈は倒れているセシリアと鈴のもとに向かった。

 

「瑠奈!一つ言っておくけど、セシリアと一緒じゃなかったらあたしが勝っていたわよ!」

 

「なっ、わたくしも同じですわ!」

 

再びセシリアと鈴は醜い口論を始める。

 

「じゃあ、要望に応えよう。鈴、君は次の試合にでなくていい。セシリアだけ借りていく」

 

「「「えっ!?」」

 

2対1という大きなハンデを抱えても勝てなかった相手にわざわざハンデを破棄し、勝負するなんて自殺行為だ。

 

「あんた本気!?」

 

「鈴はセシリアのプライベートチャンネルを開いて待っていて」

 

そうゆうと、瑠奈はセシリアを起こし、耳元でごしょごしょを囁くと、セシリアを真耶の前に立たせた。これで勝負の準備は整った。

 

「織斑先生。開始の合図を!」

 

「試合開始!!」

 

そうゆうと、真耶はアサルトライフルを展開し、セシリアに向かって発砲する。

 

「くっ!」

 

セシリアはかわすが、真耶の絶妙な立ち回りで数発被弾してしまう。

セシリアも負けずと反撃したが、あっさりとかわされてしまう。

 

「どうゆうつもりだ?」

 

ハンデを破棄し、セシリアと真耶の再戦にこだわる瑠奈の心境が千冬は理解できない。

 

「彼女はビットの制御は未熟だが、射撃能力はかなり優秀だ。」

 

「だが、ISの試合は射撃大会ではないぞ。自分が撃てば当然相手は撃ちかえしてくる。立ち回りや相手の行動を先読みしなければ試合には勝てない」

 

「その時はこうすればいい」

 

そういうと、瑠奈はセシリアへプライベートチャンネルを開いている鈴へ近寄り

 

「Bのピットを相手の前5度の位置に設置。相手右5㎝に発射。Dのピットを頭上に設置。スターライトを6㎝下方に発射」

 

なんと、鈴のISのプライベートチャンネルを通じて、セシリアに指示を出し始めた。

当然、瑠奈が直接セシリアを操っているわけではないので、指示してから行動に移るまで若干のタイムロスが生じる。

瑠奈はそのタイムロスを理解して、確実にできる真耶の数少ない隙を確実に狙う。

そのため、すぐ攻撃できるように万全の準備を整える。

セシリアにはわかりやすいように細かい数字で指示をだしているところも瑠奈の優秀なところだ。

 

 

当然、公式の試合ではプライベートチャンネルで指示を出すなんてことをすれば即失格だが、これは練習試合だ。

失格になることもなければ退場させられることもない。瑠奈はなんの変哲もない『練習試合』というタグを最大限に活用し、セシリアを勝利させようとしている。

 

(なんて奴だ・・・・)

 

アリーナの生徒が全員が瑠奈の姿を見ていると、セシリアと真耶との試合の決着がついた。

 

「相手の右斜め1mにミサイルビットを発射!!」

 

瑠奈の指示通り、ミサイルピットからミサイルを発射すると、真耶のリヴァイヴが引き寄せられるように移動し、攻撃が直撃し地面に墜落した。

真耶のシールドエネルギーを全て削り取って勝ったわけではないが、ひとまず一勝一敗という形になった。

これでセシリアと真耶とは貸し借りが無いことになるのだろう。

 

「おぉぉ!!!」

 

「すごい!!」

 

アリーナが歓喜や驚きの声で溢れる。

目の前で高レベルの試合が行われたのだ、見ていた生徒にもなにか学べたものがあっただろう。

 

「ふぅ・・・・」

 

瑠奈が試合の結果に安心したのかため息をつくと、瑠奈は

 

「大丈夫ですか?」

 

墜落した真耶のもとに寄り、手を差し出した。

セシリアと真耶は殺し合いをしたわけではない。そのため、相手のことを思うのは当然のことだ。

 

「あ、ありがとうございます。小倉さん」

 

ここで、セシリアや鈴のように負け惜しみを言わないところを見ると、流石大人といったところだろう。

 

「すごいですね小倉さん。あんな方法でオルコットさんに指示をだすなんて」

 

「そんなことはない。あなたも十分に立派で優秀なIS操縦者だ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

瑠奈にほめてもらってうれしいのか顔が真っ赤になり俯いてしまう。

瑠奈がセシリアの方を見ると、多くの生徒に囲まれて賞賛の声をかけられていた。

これは、セシリアにとって完全勝利ではなく仮染の勝利だが、これは彼女にとって大きな一歩になるだろう。

 

ーーーーー

 

「専用機持ちをグループリーダーにして、実習を行う。1人の専用機持ちに8人集まって始めろ」

 

その台詞を合図に生徒が一斉に男子生徒である一夏とシャルルに集まり、瑠奈の元にも数人集まってきた。

 

「よろしくね!一夏君!」

 

「わからないことがあったら私に何でも聞いてね!シャルル君」

 

「小倉さん!私にも山田先生に勝てる秘策おしえてよ!」

 

突然、集まった女子たちに一夏とシャルルは戸惑いの表情を浮かべ、瑠奈は無表情になった。

 

「出席番号順にならんでやっていく!番号順に並べ!あと小倉は私のもとに来い」

 

千冬の声によってクラスメイトが一斉に番号順に並んでいく。瑠奈の元に来た生徒は『男子生徒』という称号がある一夏やシャルルのもとにいかず、純粋に強くなりたい生徒たちで断るのは少し心苦しかったが

 

「ごめんね」

 

それだけいい、千冬のもとに向かっていった。

 

 

「なにかご用ですか?」

 

「今は先生扱いしなくていい」

 

そういうと千冬は瑠奈を会話の聞こえないように、生徒が実習している場所から少し離れている場所に連れていった。

 

「とりあえず座れ」

 

千冬の指示通り瑠奈はアリーナの床に体育座りになった。

これから千冬が瑠奈にする話は瑠奈の傷口を抉ることだ。

 

「瑠奈、お前はまだ私のことを許していないか?」

 

「・・・・・・・」

 

「私はいつまでもお前とこんな関係でいたくはない」

 

「仲直りしようとでも?」

 

「仲直りとは喧嘩したときにするものだ。私とお前は喧嘩なんてしていない。ただ、私のことを許してほしい」

 

「許したところでなんになる・・・・・」

 

(織斑家)に来い。一夏は私が説得する」

 

その言葉に瑠奈はピクリと反応する。

 

「私のことを昔みたいに『千冬姉ちゃん』と呼んでくれてもいい。お前には家族が必要だ」

 

「ふざけたことを口にするな」

 

瑠奈のその声にはわずかばかり怒りが混じっていた。

 

「私はあなたのところなど行くつもりはない」

 

「だが・・・・・」

 

千冬がそこまで言いかけた時

 

「織斑先生!」

 

前からリヴァイヴを装備した真耶がきた。

 

「どうかしましたか?」

 

「実習が予定より少し遅れてまして・・・・・・。なにを話していたんですか?」

 

「なんでもないです。遅れているのでしたら小倉をサポートに回します」

 

そういうと、瑠奈は立ち上がり

 

「それでは失礼します。織斑先生(・・・・)

 

そういい、瑠奈は千冬に冷たい眼差しを向け、去っていった。

 

 

瑠奈がちらりと実習している方向をみると、当然だが生徒がISを実習している。

やはりISを見ていると心が締め付けられるような痛みを感じる。

瑠奈の忌まわしい過去に関係していることもあるのだが、ここはIS学園だ。

当然、ここにいる生徒全員がISを扱うことができ、あの本音ですらISに乗り、歩かせることぐらいはできる。

 

それに対して男である瑠奈はISを扱うことはできない。

個性でもなければ気質でもない『ISを扱えない』というのは瑠奈の中で大きな劣等感になっている。

 

 

 

 

 

 

ISが扱えないのなら、IS学園で『小倉瑠奈』という人間はいないも同然なのだろうか?

 

 

 

 

 

 




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