IS 進化のその先へ   作:小坂井

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22話 嘔吐の瑠奈

突然だが人が純潔を失った瞬間はどんな時だろうか?

 

一度でも穢れてしまった時だろうか?

 

穢れてしまった瞬間を他人に見られてしまった時だろうか?

 

 

瑠奈はこう考えている。

人間は穢れることに抵抗がなくなってしまった(・・・・・・・・・・・・)時が初めて純潔を失った瞬間だと

だから瑠奈はまだ穢れていないのだろう。

たとえ

 

 

 

 

男でブルマを着用していたとしても

 

 

 

「それでは、体育の授業を始める。整列しろ!」

 

晴れた日の午後、担任である千冬のこえがグラウンドに響く。

今日の午後の授業の一時間目はまさかの体育だった。

 

普通なら、さぼっているのだが今日は体力測定の日だったらしく休むわけにはいかない。

当然体育となるなら、体操着を着なくてはならないのだが今、瑠奈は女子生徒としてIS学園に通っている。

当然のごとく瑠奈は女子の体操着を着なくてはならない。

 

「いやー、小倉さんいい太ももしてるよね」

 

「白くてむちむちしてして、おいしそうだなー」

 

「誰か、肉焼きセットもってこい!」

 

クラスや学年で有名人である瑠奈にクラスメイトの視線が集中する。

せめて、一夏と同じ短パンがよかったのだが、女子の中で一人だけ短パンだというのもまた、怪しまれる。

 

「はぁ・・・」

 

スカートをはくだけでもまだ、抵抗があるというのにブルマも着るとなるとなにか自分が情けなくなる。

というか、最近女子の制服を着ることに違和感がなくなってきている自分が怖い。

 

「お前たち静かにしろ!!」

 

千冬の号令で一斉に静かになる。

 

「では、これより持久走を始める。各自スタート位置につけ」

 

その言葉を合図に皆動き始める。

皆、めんどくさいや疲れるといった弱音を吐いているが、このIS学園に入学できた生徒だ。

それなりの体力や気力があるから大丈夫だろう。

 

「そ、それでは、位置についてよーい、スタート!」

 

真耶の声で一斉にスタートする。

ちなみに、持久走の距離は一般的な1000mであるが男である一夏は1500mとなっている。

 

やはり、IS学園に入っているだけあって皆体力がある。

ほとんど、差を作ることなく1周目を終える。

 

「ところで、一夏よ」

 

「なんだ、箒」

 

「お前は本当に瑠奈のことをどうにも思っていないのだな?」

 

「何度も言っているだろ。なんにも思ってねぇよ。大体なんでそんなことを聞くんだよ?」

 

「それは・・・お前が・・・」

 

箒がしゃべろうとしたとき

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

 

大きな息切れのする声が聞こえた。

走っているとはいえ、まだ1周目だ。

多少は疲れることはあっても、息切れになるほどではないはずだ。

一夏が息切れをしている人物を見ると、そこには

 

「瑠奈ぁ!?」

 

顔色が悪く、息が切れ、へろへろになりながらも走り続けている瑠奈がいた。

あんなに強い瑠奈が持久走でこんなにへばっているのはかなり意外なことだ。

タイムを測定していた千冬や真耶を大きく目を見開いて驚いている。

 

 

動物食である野生のチーターは地上最速の動物とされ、動物界では最強の瞬発力を有しているが、その反面長い距離を走ることはできないため、約400mも走ったら全力疾走することができない。

 

瑠奈はこのチーターと同じような筋肉のつくりであり、長時間の激しい運動をすることができない。

まだいけるという気力があっても体が付いて行かないのだ。

長時間の運動に向かない瑠奈の体とこの持久走はまさに最悪の組み合わせだ。

 

「はぁ・・・はぁ・・・・・うぷ・・おぇぇぇぇ」

 

さらに、体が限界を迎えしゃがみ込むと嘔吐してしまう。

その姿は日頃の瑠奈では想像できないほど弱弱しくて情けない姿だ。

 

「おい!瑠奈大丈夫か!?」

 

一夏が寄ろうとすると

 

「お前たちは走ることに集中しろ!!すみません山田先生、担架と水をお願いします」

 

とりあえず放置しておくわけにはいかないので千冬と真耶は瑠奈を担架に乗せ、回収した。

 

「大丈夫か?」

 

「すみません、ミヒロさん・・・」

 

「だれが、ミヒロさんだ」

 

その後、数分休みまた走ったが3回嘔吐し、5回倒れ、20分かけ完走した瞬間6回目の失神が起きて倒れ、放課後までの数時間、地獄をさまよい、地獄の門番とかなり仲良くなることができた。

 

 

 

ーーーーー

 

放課後

 

アリーナで浮かぶ2つの人物があった。

片方は

 

「行きますわよ」

 

セシリアのブルー・ティアーズで、もう片方は

 

「いつでもどうぞ」

 

瑠奈のエクストリームだ。

放課後、瑠奈はよくセシリアの対戦相手をしていた。

といっても、お互いを高めあうような特訓ではなく、瑠奈がセシリアの戦い方を見てアドバイスをするというコーチのようなことだが。

 

「体調は大丈夫ですの?」

 

「大丈夫、だいぶ回復したから」

 

「そうですか・・・・・。それではいきますっ!」

 

そういい、セシリアは4つのビットを一気に切り離し、瑠奈を攻撃し始める。

 

「もっとだ!もっと弾幕を張って私を近づけないようにするんだ!」

 

そう叫びながら瑠奈はセシリアにちょくちょく攻撃を加えていく。

瑠奈はセシリアに数日前にある秘策を託した。

その秘策はビットの扱いについてだ。

 

セシリアは4つのビットをすべて敵に当てようとするため、どうしても個々のビットに操作の偏りが出てしまい、4つのビットの数の多さを生かし切れていない。

秘策とは敵を攻撃するビットを1つに絞るというものだ(・・・・・・・・・・・・・)

 

4つのビットで敵を狙おうとすれば1つ1つが単調な動きになってしまい、動きが読まれやすくなってしまう。

精度は上がるかもしれないが、根本的に敵に攻撃が当たらなくてはどうしようもない。

 

瑠奈の秘策の場合は4つのビットのうち、3つをけん制用としてつかい、敵を近づけないようにし、残り1つのビットで敵を攻撃する。

この作戦によって遠距離戦になるためブルー・ティアーズの性能を最大限に発揮できる。

もちろん、けん制用のビットの攻撃を当てることができたらなおさらいい。

 

無論、敵もただ黙ってやられるようなことはない。

弾幕をかいくぐって攻撃をしてくるだろう。

だから瑠奈は、ちょくちょくセシリアに攻撃をし、ビットの制御だけに意識を取られないようにする。

 

やはり、この戦法はかなり優秀なもので、前にセシリアは瑠奈に一撃だけ攻撃を当てたことがあった。

そのおきは、喜びと興奮のあまり、鼻をふんがふんがとならし、だらしのないにやけ顔になってしまっており、とてもじゃないが貴族とは思えない顔だった。

 

「セシリア!もういい!十分だ!」

 

瑠奈の静止の言葉でセシリアのビットの攻撃がやみ、降りてきた。

 

「基本はできてきたから、あとは敵の攻撃を避けることも意識するといい」

 

「わかりましたわ」

 

「あとはこの戦法の名前はどうするかだけど・・・」

 

「名前は決めてありますわ」

 

そうゆうとセシリアは胸を張ったため、形のいいバストがぷるんと揺れた。

 

「この戦法をセシリアスペシャルと名付けますわ!」

 

(だせぇ・・・・・)

 

「なにかいいまして?」

 

「いえ、なにも」

 

日本人は奥ゆかしいといわれているが、さすが外国人、自分の名前をつけるという豪快な性格をしている。

 

「それじゃあ、私はこれで」

 

「ええ、ありがとうございます」

 

そういい、瑠奈はアリーナを出ていった。

 

 

 

 

「ふぅ・・・・・・」

 

誰もいなくなったアリーナでセシリアは一人ため息をつく。

初めは、この時代で男女平等を掲げる変わった人間だと思っていたが、どうも最近彼女のことがわからなくなってきた。

本来、代表候補生同士は互いに特訓し合うことはあっても、相手を強くするようなアドバイスなどはしないのが普通だ。

 

 

ここで相手を一方的に強くなることを教えても将来、自分のライバルが強くなることしかない。

つまり、教える側の人間である瑠奈にはなにも得がないのだ。

なのに、瑠奈は自分を強くするために頑張ってくれている。

教えられる側になってみればわかるが、瑠奈が自分を教える時の目は本気で自分を強くしようとしている目だ。

 

 

 

なぜ、瑠奈は他人である自分のためにここまで頑張ってくれるのだろうか?

詳しいことはわからないが瑠奈の訓練を受けると確実に強くなっている。

セシリアにはその手ごたえを感じていた。

 

 

 

ーーーーー

 

次の日に朝

もうすぐSHRが始まるが瑠奈の姿はない。

しかし、これはいつものことだ。

それよりも1年1組では、ある噂でもちきりだった。

その噂は

 

「今日、転校生がくるんだってー」

 

「本当?」

 

「本当、本当。しかも2人だって!」

 

「へー」

 

というものだった。

IS学園は普通の高校とは違うのだからなにがあってもおかしくないのだが、明らかに転校してくるタイミングがおかしい、この前、鈴が転校してきたばかりだというのに。

しかも2人とも同じクラスというのもおかしい。

普通、別々の教室にするものではないのだろうか?。

生徒が転校生の噂をしていると

 

「SHRをはじめるぞ。さっさと席に座れ」

 

千冬が教室に入ってきたと同時に、真耶も教室に入ってきた。

 

「それでは山田先生、ホームルームをお願いします」

 

「は、はい。えっと今日は転校生を紹介します。しかも2人です。入ってきてください」

 

転校生が入ってきたとき、クラスがざわざわと騒がしくなる。

しかし、それは当然の反応だろう。

はいってきた2人の転校生の内、1人が一夏と同じ男子生徒の制服を着ていたのだから。

 

「それでは自己紹介をお願いします」

 

「はい!」

 

転校生の内、男子生徒の制服を着た生徒が元気にあいさつをする。

 

「みなさん、初めまして。僕の名前はーーー」

 

普段は姦しい女子たちだが男子生徒の挨拶であって不気味なほど静かに皆挨拶を聞いていた。

 

 

 




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