授業中、瑠奈は昨日見た夢のことを考えていた。夢の内容は”彼女”との初めての出会いだった。なぜ今になってこの夢を見るようになったのだろうか。
「では瑠奈、この問題を答えてみろ」
千冬が瑠奈を指定した。
「わかりません」
瑠奈は即答する。
その瞬間、千冬は瑠奈の顔面に向かって出席簿を投げつける。なんの予備動作もない鮮やかな動きだった。
周りの生徒には千冬の目の前から出席簿が発射されたよな摩訶不思議な光景に見えるだろうが、生憎銃は銃弾を放つとき、予備動作などない。
それに、出席簿の速度など、ライフル弾に比べて生ぬるい。
「はあ・・・」
瑠奈はまるで出席簿が飛んでくるのがわかっていたかのように、頭を僅か右に動かし、出席簿をかわしてため息をする。
「ちっ」
静かな教室に、出席簿が落ちる音と千冬の舌打ちが響くのであった。
ーーーーーーー
キーン コーン カーン コーン
4時間目の授業終了のチャイムがなり、授業が終了する。周りの生徒は席を立ち、昼食をとるため食堂に向かい始める。瑠奈も食堂に向かおうと、席を立ったとき
「瑠奈、せっかくだし一緒に食事でもどうだ?」
一夏が瑠奈を昼食にさそった。昼食を誘うときのセリフが完全にナンパ男のセリフだ。
「喜んで」
特に昼に用事はないので話に乗ることにする。ただ食堂に向かう時に、瑠奈は1つの疑問を感じた。それは
「なぜ、箒とセシリアがついてくるの?」
なぜか、箒とセシリアが一夏に引っ付いてついてきたことだ。
「別にいいだろう・・・」
箒が瑠奈を睨みつける。まるで一夏を誰にも渡さないと周りに見せつけるように
瑠奈としては箒にそうゆう表情はしてほしくない。箒に睨まれて怖いからではなく、男に一夏を渡さないと威嚇している箒を見ててかわいそうになってくるからだ。そんな感じで一夏御一行は歩き出した。
食堂に入った瞬間
「遅いわよ! 一夏!!」
ラーメンを乗せたお盆を持ちながら、鈴が話かけてきた。それにしての鈴は気が付くのが早かった。まるで食堂の入り口を見張っていたかのように。一夏と鈴が楽しそうに話していると
「ごめん、鈴そこをどいてくれない?食券がとれない」
と瑠奈が鈴を注意すると
「うっさいわね! わかってるわよ」
なぜか鈴が怒った。なぜここで怒るのか疑問に思ったが、とりあえず瑠奈は食券機の前に行き、好物であるカレーを注文する。
瑠奈に続き、一夏やセシリアも昼食を受け取りテーブルに座る。そして瑠奈がカレーを食べようとすると
「一夏、そろそろどうゆう関係か説明してほしいのだが・・・」
我慢の限界というように箒が口を開く。それに続き
「そ、そうですわ!一夏さん、この方は誰なんですの!?ま、まさか恋人とか・・・」
セシリアも口を開く。なぜそこで友人ではなく恋人という単語が真っ先にでてくるのだろうか。
「べ、べつに付き合っているわけじゃ・・・・」
「そうだぞ。なにいっているんだよ?ただの幼馴染だよ」
一夏のその言葉で鈴は一気に不機嫌そうになった。それと反対に
「お、幼馴染・・・・」
箒とセシリアは安心するような表情になった。
どうやら鈴は一夏にとって2人目の幼馴染、セカンド幼馴染らしい。
ちなみにファースト幼馴染は箒と一夏は言っていたがいたが瑠奈はそこら辺も束から聞かされていたため知っていた。どうでもいいが幼馴染にファーストやセカンドがあるのだろうか。
このとき瑠奈はなぜ鈴がIS学園に転校してきたかわかった。おそらく幼馴染である一夏に会いにわざわざIS学園に転校してきた、というところだろう。
しかし、たかが幼馴染の関係でIS学園にくるだろうか?。そんなことを考えていると
「一夏、あんたクラス代表なんでしょ?」
「そうだけど..」
「ふ、ふーん。あ、あのさぁ、よかったらISをみてあげてもいいけど」
「え、本当か!」
一夏がそういったとき
バン!! 箒とセシリアが机を叩いたため、大きな音が食堂に響く。
「一夏を教えるのは私の役目だ。だいたい、鈴は2組だろう、敵の施しは受けん!」
「一夏さんのコーチは、イギリスの代表候補生であるこのセシリア・オルコットが努めます!!」
必至な表情で箒とセシリアは鈴の提案を却下した。その時
「静かにしてくれないか」
ずっと口を閉じていた瑠奈が男口調でいった。
「なんだと!」
「なんですって!」
箒とセシリアは怒った様子で瑠奈の方を向き反論しようとするが
「あ・・・う・・・」
2人とも瑠奈の目をみて言葉を失ってしまう。瑠奈が恐ろしい目で2人を睨みつけていたからだ。
瑠奈は騒がしい人間や場所は嫌いだ。別に常に静かにしていろと言うつもりではないが、時と場所を考えてほしい。
「周りには、ほかにも食事している人もいるんだ。静かにしてくれ」
瑠奈が怒ったような口調で二人を注意した。もう高校生なのだから静かに食事ぐらいできてあたりまえだろう。それにISを一夏に教えるという話も、コーチが増えて悪いことなど何もない。
敵だろうが味方だろうが、一夏のためを思っているのなら、人の手は借りるべきだろう。現に一夏は弱いのだから。
それなのに箒やセシリアは「自分がおしえたい」という私情を優先して一夏のことを何も考えていない。そんなことでは一夏にISを教えることはあろか、人に物事を教える資格すらない。
2人は瑠奈に注意に従い、静かに食事を再開した。
ーーーーーーー
昼食を終え、食休みをしていると
「そういえば、瑠奈って中国だと有名人になっているわよ」
鈴が驚きの言葉を口にした。
「どうゆう意味!?」
瑠奈が驚いた表情で鈴に聞いた。
「なんだっけ、イギリス代表候補生との戦闘の映像が世界で流れているのよ。ふつうだったら庶民はISのことなんて興味ないんだけど、瑠奈があまりにもかわいいっていう理由で有名になっているのよ」
瑠奈は完全に失念していた。瑠奈とセシリアの試合でどこかの生徒が試合を撮影していて、国に送り付けていたとしてもなんの不思議ではない。
「それで、かわいい外見をしているのに蹴りとかパンチとかえげつない攻撃をくりだしているから、巷では”超攻撃型プレイヤー”ってよばれていてファンクラブとかグッズとか売られているのよ」
「なんだそのプロレスラーみたいなあだ名は。あと、物販の話なんて持ちかけられたこともないんだけど」
中国で広まっているのなら、間違いなく、瑠奈の存在は全世界に知られている。時間帯的に考えると、早い奴はそろそろ動き始める頃合いか。
これはかなり危ない状況だ。瑠奈はIS学園にいるから手をだせない状況だがそのうち条約を破って襲ってくる人間もではじめるだろう。
厄介なことになったものだ。
「それでファンクラブとかできてー」
瑠奈の心境を知らない鈴は、次々と中国の状況を説明していった。
しかし、事態の危険性を知らないことが、鈴の唯一の幸いと言ったところだろうか。
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