昼休み
普通の生徒は食堂や教室で昼食を食べている中、瑠奈は生徒会室にいた。理由は先日、本音がした爆弾発言を虚に報告するためだ。
「虚先輩、お願いですから本音の口止めをしておいてください」
「ごめんなさい。話の内容から本音は話してはいけないことだと理解しているのかとおもっていたのよ」
「昨日、本音はバームクーヘンを食べるのに夢中で話の内容なんて聞いていなかったと思いますよ・・・・本当に心臓が止まりかけたんですからね・・・」
虚にいってもしょうがないことなのだが、やはり愚痴らずにはいられない。
それほど朝のやりとりは瑠奈にとって綱渡り状態だったのだ。一歩まちがえれば終わっていた。
「ほんとうにごめんなさい。とりあえず本音にはしっかりとお仕置きと躾をしておくから許してね」
虚は微笑みながら瑠奈にそういうが、顔がわらっていても虚は目が笑っていなかった。明日、本音は生きているだろうか。もしかしたら、心に消えない傷でも負わされてしまうかもしれない。
「本当にあぶなかったわね。わかっているとおもうけど、男とばれたらいくら生徒会や織斑先生の力であっても転校してくるのは難しいわよ。だから早く白状して楽になりなさいって」
向かいで楯無が昼食を食べながらけらけらとわらって話かけてきた。どうやらこの状況を楯無は楽しんでいるようだ。
「わかっていますよ・・・・」
現在の状況が瑠奈にとって危険だということは瑠奈が一番わかっている。
ただ楯無や千冬のように瑠奈のことをしっている人間がいるというのは不幸中の幸いだ。本音は頼りにならないのでこの際、除外。
その頼ることが出来る存在が瑠奈の決心をぐらつかせている。
とにかく転校するしないはこの際おいておいて、現在瑠奈は男だということを怪しまれない必要がある。そこで瑠奈が思いついたこと、それは
「楯無先輩」
「なに?」
「どうやったら、女になれますかね?」
虚と楯無は一瞬、瑠奈の言っていることが理解できなかった。
ーーーー
「なんだ、女っぽい外見になりたいっていう意味だったのね。びっくりしたわ、てっきりそっちの道にはいるのかとおもったわ」
「さすがにこの年齢で性転換はしたくないですよ」
瑠奈は楯無にすこしでも男とばれないようにするため、女っぽい外見になるために手伝いをしてほしいと頼んだ。
そのうち男として転校するかもしれないがそれまでに男だとばれたら元も子もない。
しかし、転校してきたときに、それはそれでいじられることになるかもしれないが、背に腹は変えられない。
その時はその時にだ。
「そんなこといっても、これ以上女になるっていってもねぇ・・・」
楯無と虚は頭を悩ませる。瑠奈にこれ以上女のような外見にするといってもどうすればいいにだろうか?。腕や脚はもう十分細いし、顔も美人というほど整っている。
これ以上、女っぽくしたら逆に美人すぎて周りから怪しまれる。
なんかないかと楯無と虚は瑠奈の全身を見たとき、楯無と虚は瑠奈のある場所に視線が集中した。その場所とは
「な、なんですか?そんなに胸をみて?」
瑠奈の胸だ。男としては当然のことだが、瑠奈には胸がない。それはもう絶壁などというレベルではなく、逆にえぐれているのではないかというぐらいに。
「せっかくだし、胸になにかつけてみたらどう?」
「ブラでもつければいいんですか?」
「つけるほどのものがないでしょ。なにかつけるとしたら・・・あっ、そうだ」
突然、楯無がなにか思い出したような表情をし、急いだ様子で生徒会室をでていった。
「虚先輩」
「なに?」
「いやな予感がするんですけど」
その言葉に虚は苦笑いを浮かべることしかできなかった。
同じ生徒同士だからまともな意見がもらえると思っていた瑠奈が間抜けだった。やはり、安全面を考慮して千冬に聞くべきだっただろうか。
数分後
楯無が大きな袋をもってかえってきた。袋の中身をみてみると
「こ、これは・・・」
中には大量のがパッドはいってた。なぜ楯無がこんなものを大量に持っているのかという疑問はこの際、置いておくとする。
「どれが一番似合うかしらね~」
なぜか楯無はノリノリで袋の中身を物色し始める。このとき、自分は間違いを起こしていたことを改めて自覚した。
「これとかいいんじゃない?」
楯無がとりだしたのは、女性のなかでは大きくもなければ小さくもないサイズであるCカップのパッドだった。
「とりあえず、試着したいから上を脱いでね~」
楯無とこの場の雰囲気にのまれたのか、虚もノリノリで選びはじめた。やはり千冬あたりに相談するべきだっただろうか。
この時、瑠奈の中にあった小さな後悔が大きな後悔に変わった瞬間であった。このあと瑠奈はいままで誰にも見せたことない素肌をパッドという奇妙な理由でさらすことになったのであった。
それからしばらく経ち
「うん、ぴったりね」
楯無は満足そうに瑠奈をみていた。目の前にはパッドの上にブラをつけた瑠奈が恥ずかしそうに立っていた。
「あぁ・・・もうやだ・・・」
男でありながら、パットとブラをつける。
これで何も感じない人間は恐らく心が壊れているか、ニューハーフぐらいだろう。とにかく。まともな精神状況では耐えられない。
それに、女子の中にはスキンシップで目的でなのか、突如胸を揉んでくるという伏兵顔負けの奇襲を仕掛けてくる輩もいるらしく、警戒しなくてはならない。
「いやー、楽しい時間だったわね」
「そうですね、お嬢様」
初めは、しょうがないといった感じでつきあっていた虚も後半はニコニコとと変わらない笑みで楯無と話していた。
「とりあえず、それは皮膚接着剤でくっつけておくから、お風呂などに入るときはいってね」
楯無は瑠奈に悪魔の言葉を言い放つ。
つまり、瑠奈はほぼ毎日、楯無の前で素肌をさらさなければいけないことになる。瑠奈はなにか大きな危機を感じたが口に出すことができなかった。
「あ、あの・・・これで失礼します・・・」
これ以上、ここにいると自我が崩壊するような気がしたため瑠奈は、急いで生徒会室からでていった。
なんというか、心が壊れそうなぐらい痛い。
ーーーー
教室に戻る途中
「あ、あの・・・・」
瑠奈は後ろから声をかけられた。振り返ってみると1人の女子生徒が立っていた。リボンの色からして、前に会った黛とかいう新聞部や楯無と同じ2年生のようだ。
「・・・何か用ですか?」
「いや・・・その・・・」
話しかけられたのはいいが、2年生のその生徒はもじもじと恥ずかしそうに頬を赤らめている。
これはもしかすると、さっき楯無から聞いた”胸揉み伏兵”だろうか。
確かに、自分を襲いに来ないという保証はどこにもない。だが、こんなにも急に来るとは。
限りなく本物に近いとはいえ、胸を揉まれたり、スカートをめくられたりしたら、性別がばれる可能性がある。
残念ながら、遊びやスキンシップであろうと、この胸部や局部を触られるわけにはいかないのだ。
目の前の先輩に気付かれないように静かに戦闘態勢に入って警戒する。だが、視線をぐらつかせながら、先輩らしき生徒は両手を瑠奈に突き出してきた。
「これ!受け取って!!」
そのまま、前に歩いて1枚の手紙を強引に瑠奈に握らせる。ピンク糸の
「あの・・・これは・・・」
「へ、返事は急がないから!!」
そう大声で叫ぶと、赤くなった顔を手で覆い隠すと、その生徒は廊下を駆けていった。
今のやりとりを見ていた周囲の生徒からは『ヒュ~』と煽りのような声を上げてくる。
「・・・何だったんだ・・・今の・・・・」
小さく呟き、強引に握らされたことによって少し皺が付いてしまった便箋を見つめた。
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