IS 進化のその先へ   作:小坂井

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12話も完成したので同時に出しておきます


11話 放課後パーティー

瑠奈が悩んでいるのをよそにクラスメイト達の質問が始まる。

 

「瑠奈って強いの?」

 

「どうやって強くなったの?」

 

「毎日、なに食べているの?」

 

やはり、イギリス代表候補生であるセシリアを圧倒という真実はクラスメイトの好奇心を瑠奈に向けたようだ。瑠奈がクラスメイトの質問に答えていると

 

「いや~、この前は驚いたよ~。まさかせっしーに勝っちゃうなんてね」

 

せっしーとはセシリアのことなのだろうか?。いつも思うのだが本音のあだ名のつけ方の法則が瑠奈には理解できない。

 

それと本音は瑠奈を男ということを知っているはずなのだが、まったく変化なく付き合ってくれる。初めは本音に距離を置かれたらどうしようかと考えていたが、無用な心配だったようだ。こうゆう人間は頼りにしていきたい。

 

「偶然勝てたんだよ」

 

そんなことを言って場を和ませていると

 

「それにすごいね~。男なのにISが扱えるなんて~。」

 

前言撤回。排除しなくては。

楯無や虚から口止めされていないのだろうか。瑠奈はいままでの人生で一番の危機を迎えていることを自覚していた。

 

これまでに沢山の敵に囲まれて銃を突き付けられたことや暗殺部隊に狙われたことなど、一般で言う”やばい状況”にはいくつか直面したことはあったが、よりによって目の前にいる1人の少女の存在に『人生の危機』を突き付けられるとは思わなかった。

 

だれか本音を黙らせてくれ。

これはかなりまずい状況だ。男として転校してくるという話を楯無からされたが、これは『男としてばれていない』ということが前提の話だ。

これでは選択肢以前に男として転校してくる権利すらなくなってしまう。

 

そんな走馬灯に近い思考で瑠奈が考えていると

 

「本音、なにいってるの~?」

 

「瑠奈は女でしょ?」

 

「まだ寝ぼけているの?」

 

クラスメイトが味方をしてくれた。おそらく本音のおっとりさと瑠奈の容姿がうまい具合に利用され誤魔化せたようだ。

緊張で過呼吸になりそうな呼吸をしていた瑠奈は、ほっと安心した。

 

最初からこんなんでやっていけるのだろうか。そんなことで瑠奈が不安になっていると

 

キーン  コーン カーン  コーン

 

休み時間終了のチャイムがなり教室に真耶と千冬が入ってきた。

 

「授業を始めるぞ、席につけ」

 

その声を聞いたらクラスメイトは名残惜しそうに席に戻っていった。そんな危なっかしい感じで瑠奈の1日は始まっていった。

 

 

 

 

 

瑠奈がセシリアを圧倒するという出来事があったが、そのせいかクラスで変わったところが3つあった。

 

1つめ、クラスで男をバカにするような言論がなくなった。これは瑠奈にとっていいことだ。ISを扱える、扱えない関係なしに男と女はこれからも仲良くしていかなければいけない関係なのだ。

 

 

2つめ、これはセシリアについてだ。1週間前のときのように、自分のことをエリートや代表候補生などと思い上がるようなことを言わなくなった。これもいいことだ。自分を天才やエリートなどと完成された人間だと勘違いしていると、努力をしなくなり、やがて他人に追い抜かれていく。それこそウサギとカメのウサギのように。

 

 

3つめ、これが一番の謎だった。これもセシリアについてだが、なぜかセシリアが一夏に好意を持つようになったことだ。本音に聞いたところ、「昨日の試合でおりむーの男らしさにほれたんだよ~」と答えたが昨日の試合のどこで一夏に惚れるような要素があったのだろうか?。謎だ。

 

 

 

 

ーーーー

 

 

「織斑一夏&小倉瑠奈、クラス代表おめでとーーーー!!」

 

放課後、食堂で1年1組の面子でクラス代表就任の打ち上げをやっていた。しかし瑠奈にとって突っ込みポイントが沢山ある打ち上げだ。

 

1、なぜ立候補してない自分の名前があるのだろうか?

 

2、昨日、試合して勝ったのはセシリアのはずなのになぜ一夏がクラス代表になっているのだろうか?

 

3、クラス代表は1クラス1人だったはずだ

 

瑠奈の3つの質問にクラスメイトはご丁寧に答えてくれた。

 

今日、クラス代表となるはずだったセシリアがなぜか代表を辞退し、一夏がクラス代表になるはずだったがそこで「小倉瑠奈」がクラス代表になるべきだというクラスメイト(瑠奈派)が登場した。

 

その一方で「織斑一夏」がクラス代表になるべきだというクラスメイト(一夏派)も現れ、争いはじめた。両者が戦いを始めるかと思われたとき、救世主(千冬)が現れ、言った。

 

「そんなに争うなら両者を代表にすればいいじゃないか」と。

 

その言葉で両者は平和になり、戦いに発展することはなかった。

 

ちなみに瑠奈は立候補者してないため、委員会などの表の仕事などは一夏がすることになるが当然、瑠奈にも仕事が入ってくる。

瑠奈がめんどくさい気分になっていると

 

「はいはーい、ごめんねー」

 

と眼鏡をかけた生徒が瑠奈に寄ってきた。リボンの色からすると2年生のようだ。

 

「どうも、はじめまして小倉瑠奈くん。わたしの名前は黛 薫子で新聞部の副部長をやっているんだけど、インタビューをいいかな?」

 

「はあ・・・どうぞ」

 

「じゃあまず、クラス代表になった感想をきかせて」

 

「えーと、その・・・」

 

急な無茶ぶりに言葉が詰まる。

花の女子高校生であったのなら、ここですらすらと胸の内を吐露できるものなのかもしれないが、男にはためらいを感じてしまう。

 

いっそのこと、心も女子生徒になりきるか?---いや、それはそれで大事なものを失いそうだ。

 

「遅ーい、しょうがないから適当に書いておくね」

 

瑠奈としては不安だったのだが他に手段がないので任せておくことにした。

 

「続いての質問。瑠奈くんのISはどういうIS?」

 

これは瑠奈がもっと聞いてほしくない質問だった。たしかに外見が変わっているISとして知りたい気持ちは理解できるが、料理の秘訣のようにペラペラと喋るわけにはいかない。

 

とりあえず、典型的で無難な返答をしておくとしよう。

 

「えーと、私のISはデータ収集が目的のISです。すみませんこれ以上は言えません」

 

本来ISは重要機密だ。そういえばクラスメイトは納得してくれる。そう言う風に、他人のプライバシーにズカズカと入ってこないのは嬉しいことだ。

 

「オッケー、答えてくれてありがとう。では最後の質問、これについてはどう思う」

 

そういい、黛はポケットから2~3枚の写真をとりだした。

 

「そ、それは・・・」

 

その写真を見たとき瑠奈は複雑な表情を浮かべる。なぜならその写真には瑠奈にとって黒歴史である女子の制服を着た瑠奈が写っていたからだ。いつの間に撮られていたのだろうか。

 

さっきはプライバシーにズカズカと入ってこないといったが、前言撤回。もろ、入ってきては荒らしてくる。

 

「いやー、この写真を今日売ってみたらすごい値段がついてね。いっそのこと学級新聞に出そうかとおもっているんだよ」

 

「いいアイデアだねー」

 

「写真はいくらで売る?」

 

「ポスターとか作っちゃう?」

 

瑠奈はクラスや学年のなかで『美しすぎる』と有名になっていた。

そのことを利用してクラスメイトは瑠奈を織斑一夏に次ぐ1年1組のマスコット計画が、瑠奈に無断で行われようとしていたのだ。

 

「はぁ・・・」

 

騒がしくクラスメイトが騒ぐ中で、瑠奈のため息が響く。

セシリアと戦っただけでここまで有名になるとは・・・・騙し通してみせると楯無に言ったのはいいが、こんなにも校内で注目される存在になるとは予想外だ。

 

「いっそのこと・・・タイで性転換でもしようかな・・・」

 

この現状に自棄になったのか、自分でもするつもりのないことを言ってしまう。

それほどまでに、小倉瑠奈の精神は追い詰められているのだ。

 

 




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