信念を貫く者   作:G-qaz

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初めての方は始めまして。お久しぶりの方お久しぶりです。いろいろあって間が空いてしまいました。にじファンからの移転作品となります。お楽しみいただけたら幸いです。


prologue

世界は絶望から始まる

歯車はここから廻りだす

 

prologue

 ~はじまり~

 

 そこは誰も立ち入らない場所。聖域でも、忌避すべき場所でもあった。

 つくりとしては、そこかしこに施された装飾から宮殿を思い浮かぶ。いや、細々した通路からは迷宮としての印象も強い。

 

 そんな通路を黒き衣をまとった人影が一つ進んでいく。

 

 顔すら覆ったローブのようなものを纏ったその影。

 その者は、知る者が見れば「始まりの魔法使い」「造物主」と呼んだだろう。知らなければ、ただただその未知の存在に圧倒され恐怖するだけであるが。

 

 

「決めねばならぬ…。もはや、猶予もない」

 

 

 窺い知れぬその姿。しかし、一人つぶやくその声色から、何か焦燥感と思しきものに突き動かされているようにも感じた。

 

 早足にその通路を進んだ先に、両扉があり造物主はその扉を開け放ち中へと入った。

 

 

 

 

 その部屋は、結構な広さを持っていた。数十人が入っても余裕がありそうなほどであった。

 

 部屋の中は薄暗かったが、円を模って作られたのか、壁は曲線を描きながら建てられていることが分かる。中心には、魔方陣を連想させる六芒星が刻まれていた。六芒星の頂点に対応するかのように柱が6本立っていた。

 

 不気味なほどにシンメトリーを感じさせる彫刻、刻印は、よりその部屋を特別な何かに仕立て上げているようである。

 

 造物主は、部屋の中央に立つ。

 

「これが成されれば僥倖ではある。しかし、我がこのような真似を考えるとはな…」

 

 なにか可笑しいのか。愉快そうに笑い声をもらす。

 

 

 

 造物主が呪文のようなものをつぶやいていく。するとそれに呼応するかのように、六芒星が刻まれた地面が光を放ち始めた。

 

「…我は求める。全てを絶ち、善と悪を道標にさせしものよ。我を下し、全てを為せるものを…」

 

 紡いでいく言葉は、どこか諦観と希望が織り交ざった感情が吐露されているようにも感じる。

 

 部屋全体が光に包まれ、魔方陣が浮かび上がっていく。幾多の魔方陣が造物主を囲み、幾重にも重なっていく。

 

 

 

 造物主が唱え終わると同時に、魔方陣は造物主の目の前に浮かび上がり…弾けた。

 

 弾けたと同時に、魔方陣いや、部屋に充満しながらも安定していた魔力が暴走を始める。

 

「っ」

 それは、造物主にも想定外だったようで手を前に掲げその余波を防ぐ。しかし、部屋全体に余波は広まり、容易に部屋を崩していく。

 

 余波は、吹きすさぶ嵐となって、部屋の柱を折り、壁を砕き、天井を穿った。

 

 数秒後には、見るも無残な姿となった部屋と立ち尽くす造物主だけになっていた。

 

「やはり、世迷言であったな…しかし、これで為すべきことは定まった」

 

 

 

 どこか落ち込んだ様子を垣間見せた後、翻ってその部屋から立ち去っていく造物主。

 

 

 

 

 

 地面に刻まれた六芒星は消えていた。

 


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