虹の軌跡Ⅱ Prism of 《ARCUS》   作:テッチー

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第98話 東部巡回④ ~巡らせてクロスロード

《――片割れし者へ捧ぐ――》

 

 先日の焼き討ちもあって、もっとも不安定な状況であろうと予想されるのがケルディックだった。しかしさすがは商人の町と言うべきか、傷は癒えなくとも足を止めていない。大人も子供も誰もが家の外に出て、忙しなく復旧作業に勤しんでいる。

 すでに材木を素組みしただけの簡素な屋台が並び始めた大市。その一帯のど真ん中でマキアスとハイベルは対峙していた。まるで決闘の直前のようだ。

「聞いたぞ、マキアス・レーグニッツ」

「何をです」

「君は麗しくも気高く決して何人にも触れることを許されないクレア大尉の、お、お、御胸を、正面から揉みしだいたそうだな……っ!」

 ハイベルはぎりっと奥歯を(きし)った。マキアスは眼鏡のブリッジを人差し指で押し上げる。

「……そのことですか。僕はあの時の意識が……いえ、言い訳はしません。ええ、事実ですよ」

「その罪、百回死してなお余りある! それで、右か、左か!?」

「両方です」

「なっ!? どうだったんだ!? どういう感じなんだ!」

「天使が生み出した奇跡のマシュマロとだけ言っておきましょう」

「貴様あああっ!!」

 ハイベルの憤りが気の突風となって、マキアスを強く押した。

「ぐっ! クレア大尉にはちゃんと謝りましたよ! 死ぬほど謝ったし、なんなら死にますとも言いました! 誤解は解けています!」

「誤解も何もあったものか。罪は罪だろう! たとえ女神が許しても僕は絶対に君を――待て。あの後すぐにカレイジャスは出港したはず。いつ話をする時間があったんだ?」

「ふっ、これですよ」

 余裕の笑みを見せて、マキアスは《ARCUS》を掲げてみせた。

「ま、まさか君は!?」

「そうです。大尉の通信機のプライベートチャンネルを知っているんです」

「ごああっ!」

 今度はマキアスから謎の気が放たれた。優位性の大きさが物理力に変換され、ハイベルを一歩二歩と後退させる。

「……マキアスくん。どうやら君を甘く見ていたらしい。僕もこれを出さねばならないようだ」

「先輩が何を持ち出そうとも――そ、それはっ!?」

「括目するといい」

 ハイベルが学院服の内ポケットから取り出したのは、一枚の写真。クレアのバストアップ写真だった。

「写真部のレックス君から購入した。詳しい額は言えないが、正直引くほどの大金を支払ったさ」

「うおおお!」

 圧迫が押し寄せ、ビシッとマキアスの眼鏡のレンズにヒビが入る。

「もう虫の息のようだね。さあ、追い打ちと行こうか!」

 続けて内ポケットから取り出したのは、青い布のような何か。

「なんです、それは」

「クレインが発足した正義戦隊というのがあってね。これはそのメンバーが着用するマスクさ。教えてあげよう。クレア大尉も隊員の一人なんだ」

「つ、つまりそのマスクは……!?」

「そう、御大尉が御着用なされた御マスクだ!!」

「ぎゃあああ!!」

 マキアスと眼鏡が悲鳴を上げる。フレームがひん曲がり、レンズの亀裂が深くなった。

「というか、なんで先輩の懐から大尉のマスクが出てくるんだ! この変態眼鏡!」

「君にだけは言われたくないな! 僕はマスクが痛まないよう適正に管理しているだけだ。普段は二重の金庫に閉まってある!」

「くそお……」

 大市に恋のハリケーンが吹き荒ぶ。

 悶気の嵐に巻き込まれた材木が、せっかく修復しかかっていた仮店舗に突っ込んでいった。お店のいくつかがメキメキと倒壊していく。巡回に来た奴らのせいで、ケルディックの人々は逃げ惑っていた。

「どうだい、マキアス・レーグニッツ! これ以上のものなんて君はもっていないだろう!?」

「くそっ、くそ……!」

「ははは! 僕の勝ちだ!」

「くそ……これを出さなくちゃならないなんてな……」

「は?」

 マキアスが取り出したのはタッパーだ。その中に小さな黒色の物体が入っている。

「それはチョコレートか? そんなものがなんだって――」

「手作りだ」

「なに?」

「クレア大尉の手作りチョコレートだと言った!」

 震える指でチョコをつまみ、口元へと運ぶ。

「な、なんでそんなものを持って――や、やめろお!」

 制止しようと腕を伸ばすハイベルの前で、マキアスはチョコをぱくりと食べた。

 眼鏡が輝きを取り戻し、レンズから眩いレーザー光が放たれた。閃光はハイベルを飲み込んで、遥か後方へと吹き飛ばす。

 ハイベルは屋台の一つに頭から突撃した。がらがらとトタン屋根が崩れ、彼の上から降り注ぐ。かろうじて見える足はピクピクと痙攣し、やがてだらりと力を失った。

「際どい戦いだった。……好敵手とは認めないけどな」

 その場に腰を落とし、マキアスも動けない。

 チョコレートの残りは、あと一つになっていた。

 

 ★ ★ ★

 

 

 

《――刻み付けて、ラヴァー――》

 

「さすがに疲れたね。少し休憩しよう」

 4F会議室。今後の方針を話し合い、区切りがついた頃合いでアンゼリカが言った。

「うん。食堂に降りて軽いものでも食べよっか」

 トワは同意し、「うぅ~」とこり固まった肩を回す。頭が重い。これが肩こりというものなのか。自覚するほどの症状は初めてかもしれない。

 エマちゃんはよく肩こりに悩まされていると聞くけど、私にそれがない理由はわからない。多分、永遠に解き明かせない謎なんだと思う。現実から目を逸らしているわけではなく。

「なんだ。肩が凝っているのかい? どれどれ」

 背後に回ったアンゼリカは片手でうなじ付近をつかむと、もみもみと揉んだ。

「もう、アンちゃんてば……あ、でも気持ちいいかも……」

「そうだろう。素手で戦う武道家は、この手の施術の知識を持っている人が多い。自分のメンテナンスは自分でするってことでね」

「へえ~」

 圧迫と弛緩を繰り返すことで筋肉がほぐれ、血の循環が促されていく。疲労物質が血液と共に流れて溶けていく感じだ。リズムも力加減も絶妙で、心地良い眠気が降りてきた。

「ふああぁ。んんぅ。……そういえばアンちゃんの肩の具合はどうなの?」

「経過良好。リハビリも兼ねて、簡単な運動も始めているよ」

「そっか。良かった」

 黒竜関でのゲルハルト・ログナーとの戦いで、アンゼリカは右肩を脱臼し、さらにそれを無理やり整復し、続けざまにゼロ・インパクトを使っている。

 今も右肩は包帯で巻かれて固定中だ。だから彼女はオーロックス砦での作戦にも加われなかった。

「自分が不甲斐ないね。はあ」

「ため息なんてアンちゃんらしくないよ。副艦長として、ずいぶん支えてもらってるし」

「そう言ってもらえると嬉しいな。はあはあ」

「アンちゃん、ちょっと、手の位置が……えっと」

 肩を揉んでいたはずの左手が、だんだんと服の内側に滑り込んでいく。

「ひゃあっ! あぅっ、や、やめっ」

「はあはあはあはあ、ふははあ!」

 息遣いが荒い。目が血走っている。トワはたまらず部屋の外に逃げ出した。

「ふふ、冗談だよ」

「とてもそうは思えなかったけど……」

 通路に二人が出たところで、突然の轟音が激しく船体を揺さぶった。

「な、なに!? 砲撃!?」

「違う! 衝撃は内部からだ! 爆弾でも仕掛けられていたか!?」

 ブリッジに損害確認をする暇もない。轟音は断続的に続く。こけそうになるトワを、アンゼリカが支えた。さすがにこのタイミングで服の中に手は入れてこない。

「おかしいな。衝撃はこのフロアを中心に発生しているが……炎も煙もない。臭いもない」

「よ、よくわかるね。衝撃の中心とか……」

「ついて来たまえ。あの部屋だ」

 アンゼリカが向かったのは、訓練室の一つだった。

 扉を開けて中をのぞいてみると、複数の打ち稽古用の模型人形に囲まれて、マルガリータ・ドレスデンが立っていた。

「熱いわぁ……この想い、止められないぃ!」

 マルガリータが動く。瞬時に人形との間合いを詰め、高速のヘッドバットを見舞う。人形の頭部は一撃でもげ、痛々しく床に転がった。それを太い腕でむんずとつかみ上げる。

「ず、頭突きの練習?」

「そういうことだったか。違うよ、トワ。彼女の姿をもう一度見てごらん」

「うん、見たけど」

「どう見えるかな?」

「生首を携えた狂戦士としか……」

 ブッシュウとマルガリータ嬢の鼻から蒸気が噴出された。続けざまにもう一体の人形にヘッドバッド。今度は頭部が砕け散った。

「ふっ。言葉にするのは無粋だが、あれはキスの練習だね。それも極めて情熱的な」

「き……す……?」

 あれほどバイオレンスなキスが存在するのだろうか。しかし訓練室の中を注意深く観察してみると、壁面にはおびただしい数のキスマークがあった。いや、キスマークと呼べるほど生易しいものではない。剣や銃、アーツさえ阻む特殊コーティングを施された装甲壁面が、分厚い唇の形にへこんでいる。

「ヴィンセントさまあ……」

 と言うあたり、意中の相手はトリスタに残っているであろう彼のようだ。

「……これは死んじゃうんじゃないかな」

「愛に死すとはロマンチックな話だ」

「ヴィンセント君は別に愛に殉じるわけじゃないと思うよ……」

 アンゼリカは笑う。

「私は彼女の一途さが好きだ。一種の美学だね。自分の気持ちに嘘がない」

「あー、うん。確かにね」

「ああいう真っ直ぐさは力だ。どこまでも想いに正直なマルガリータ君は尊敬に値する。世には薄っぺらな美を語る者もいるが、そういう輩にはぜひ彼女を紹介したいな」

 マルガリータは最後の人形の両肩を正面からホールドした。そしてヴィンセントに見立てたそれに、芳醇で甘美な口づけを――

「ん~……まっ!」

 溶岩のごとき灼熱の二枚貝が、ジュウウと人形の顔面を溶かし崩す。

「うん、実に情熱的じゃないか」

「情熱って物理だったんだ……」

 

 ☆ ☆ ☆

 

 

 

《猛将列伝のすすめ⑨》

 

 ハンドライトの光が頭のすぐ上をかすめていき、エリオットはあわてて身をかがめた。

 見つかったらどうしよう。肩を強張らせて、息を呑む。

 気配は悟られなかったようで、じきに足音は遠ざかっていった。

「はああ~、寿命が縮まる……」

 深いため息を吐き出すと、横にいるもう一人が言う。

「別に見つかっても大丈夫だよ。怒られるだけで済むよ」

 ミントの返答は楽観的だった。

 完全に太陽の沈んだ夜。威圧感たっぷりに構える双竜橋の入口――その死角となっている物陰に二人は潜んでいた。

「怒られて終わる話じゃないと思うな……」

「だいじょぶ、だいじょぶ」

 どこまでもミントは気楽な様子だ。

 現在の双竜橋には、ガレリア要塞に駐屯していた第四機甲師団が拠点を移している。つまり正規軍の本丸とも言える場所なのだ。

 もちろんエリオットの父親のオーラフ准将もいるし、姉のフィオナも滞在している。

「それにしても双竜橋への夜間巡回なんてよく承諾もらえたよね。どんな名目でトワ会長に話を通したのさ」

「え? トワ会長には何も話してないよ」

「だって外出許可書あるって……」

「うん、持ってきてる」

 ミントは件の外出許可書をエリオットに見せた。

「いや、ちょっと待って。なんで許可書の原本がここにあるの?」

 本来はこれを艦長に提出して、認可の署名をもらい、クルーは時間外や任務外の外出をするのである。

 だからこの用紙がここにあること自体がおかしい。よくよく見てみると、ほとんど白紙の状態だ。もちろんトワ・ハーシェルのサインもない。

「これを持ってれば外にお出かけしてもいいんだよね?」

「違うから! ああ~……やっちゃったよ」

 何の効力もない紙一枚を通行証のように掲げて、カレイジャスを抜け出してきてしまったのだ。要するに今の自分たちの行動はただの無断外出で、ばれたら反省文を書かされる程度には怒られる。いや、これから発展しかねない事態によっては始末書にもなり得る。

「しかも外出してるって誰も知らないから、僕らを置いてカレイジャスが発進しちゃう可能性もあるってことだよね」

「夜間巡回の予定はなかったし、明日まではケルディック近郊に停泊したままだよ。多分」

「多分って言ってるし……」

 後悔先に立たず。ミントから誘いがあった時に、段取りに穴がないかもっと疑ってかかるべきだった。

 彼女からの誘いというのは、〝お父さんに取られっぱなしの《猛将列伝》を回収しに行こうよ”だ。

 家族会議という名の裁判を経て、しかし結局エリオットの猛将疑惑は晴れず、判決は持ち越しとなっていた。一連の騒動の元凶たる本をオーラフが一時預かるという形で、その場は流れている。

 はっきり言ってしまえば、あんな本は消えてしまった方がいい。あれさえなければ、こんなややこしい誤解が生まれることもなかったはずだ。

 だからエリオットはミントへの協力を決めた。

 まず父が保有している《猛将列伝》を、こちらサイドに取り戻す。次に隙を突いてミントからも取り返す。そしてその呪いの書を処分する。焼却処分だ。

 本がなくなったとて自分の疑惑が晴れるわけではないが、これ以上の泥沼に足を突っ込むような事態は避けることができるだろう。逆にあれが残っているだけで、どんどん状況が悪くなっていく。

 そのデメリットを排せるのなら、正規軍の拠点に侵入するリスクでさえも、エリオットにとっては飲むに値するものだったのだ。

 毒を食らわば皿まで。ここまで来た以上は必ず《猛将列伝》を手中に収める覚悟だが――

「ねえ、ミント。今さらだけどさ。なんなの、僕らのこの恰好!?」

「えへへ、備品庫にあったから持ってきたんだ。侵入者っぽいかと思って」

「侵入者っぽかったらダメなんだよ!」

 二人が着用しているのは、足先から頭までを覆い隠す、黒ずくめの全身スーツだった。

 

 ●

 

 搬入用の物資コンテナの陰や、構造の死角を繋ぎに使いながら、巡回兵の目をかいくぐって二人は着実に歩を進めていく。

 夜間は巡回の人数が、日中の三分の一以下になる。しかもその警戒先はもっぱら外部に向けられているから、一度内部に侵入できさえすれば、立ち回り次第で基地の奥を目指すことは可能だ。

「ある意味、怪盗紳士よりも怪しいかも……」

 ぼそりとつぶやいたエリオットは、絵にかいたような盗人の出で立ちをした己の身を省みる。

 私服で良かったのだ。それなら万が一見つかっても、カレイジャスから可及の報告で来たとか、父と姉への面会に来ただとか、適当な理由をでっちあげられたのに。

 どこの世界に全身黒づくめのボディスーツで重要な報告に来たり、家族に会いに来たりする輩がいるというのか。

「むむっ、前方から足音! 隠れるよ、エリオットくん!」

 片やミントはノリノリで、潜入ミッションを楽しみ始めたようだ。形から入って、役になりきるタイプらしい。

 何人目かの巡回兵をやり過ごし、二人はなおも進む。階段を使って三階へ。指令室のあるフロアだ。

「ちょっと待って」

 エリオットはミントを引き止めた。

「多分あの本は保管庫にあると思う。指令室は父さんが詰めてるはずだし、ここは離れよう」

「《猛将列伝》みたいな大切なものを普通の管理はしないよ。きっとお父さんの目に届くところに置いてるんじゃない?」

「あんなのが視界の端にずっとちらついてたら、僕への疑心暗鬼が募るばかりだよね……」

 気にしまいとすればするほど気にしてしまう心理だ。

「でもどのみち父さんがいたら確かめることもできないよ。やっぱり先に他のフロアに行こう」

「しっ!」

 指令室の扉が開いて、中からオーラフ・クレイグが出てきた。疲れが溜まっているのか、彼は目頭を揉みながら通路の反対方向へと歩いて行った。

「……休憩かな」

「よーし、今の内に!」

「思いきり良すぎ! まだ誰かいるかもしれないし、お願いだからもっと慎重になってよ!」

 しかしミントはためらいなく指令室に入ってしまった。元々オーラフ一人だったようで、幸いなことに誰の姿もなかった。

「金庫あったよー」

 あっさりミントが目当てを見つける。

 大きな部屋の隅に、異様な存在感を放つ無骨な金庫が鎮座していた。

 だが物々し過ぎる。さすがに本一つをしまうには大げさだ。万が一、正規軍の重要な情報が入っていようものなら、それこそ機密データを盗みに来た不審者だ。とんでもないことをしていると改めて理解し、同時に急に膝が震えてきた。

「帰ろう! ダメだ! 金庫なんか開けられないし、本が入ってる確証もない!」

「んっふー、任せて」

 ミントは腰のポーチから持参していた機器を取り出した。

 いくつかのメーターとボタンがついた端末。そこから伸びる三本のコードを金庫の正面、側面、背面に接続した。

「な、何してるの?」

「この金庫は導力錠だからね。演算で割り出した信号を外部から送って、ロック機能を騙すんだ。ダイヤル式だったらお手上げだったんだけど、最新のバージョンでむしろ助かっちゃった」

「こんな時だけ有能とか!」

 だが金庫を開けるのにどれくらい時間がかかるかはわからないという。

 施錠をせずにオーラフが指令室を離れたのは、すぐに戻ってくるつもりだからだろう。悠長にしてはいられない。

「あ、エリオットくん。あれお願いできる?」

「……うん、わかった」

 エリオットは持ってきた縄を窓の枠に何重にもくくりつけた。その作業をしながら質問する。

「ミントはその《猛将列伝》を取り戻してどうするつもり?」

「んー、あれってケインズさんから宣伝目的で渡されてた本なんだけど」

「ケインズさん……なんて迷惑なんだろう……」

「いったんゼンダー門に返してあげようかなあ」

「そういうのやめてよ。 ……でもなんでゼンダー門?」

「みんな元気がないって聞いたから」

「……?」

 ゼンダー門の人たちが元気がないのと、《猛将列伝》の所在がどのような関わりを持つか、エリオットには不明だ。

「あ、あなた達、誰ですか!?」

 悲鳴じみた声が戸口から飛んでくる。ビクリとして振り向くと、そこに立っていたのはフィオナ・クレイグだった。オーラフの為に持ってきたのだろうコーヒーカップがその手から落ち、絨毯敷きの床に黒い染みを滲ませている

「姉さ――」

 とっさに言いかけて、ぐっと留める。全身スーツのせいで目元しか見えていないから、フィオナには自分のことがわからない。それでいい。こんな姿をしているのが弟だと知ったら、双竜橋の屋上から身投げしかねない。

「な、なんなの!? 泥棒!? 変態!? どっち!? まさか両方を兼ね備える感じ!?」

「あ、やっと金庫が開いたよ。エリオッ――」

 普通に名前を呼ぼうとしたミントに、自分の言葉を押し被せる。

「だああ! エリッ……(えり)を! このスーツに襟をつけたら似合うんじゃないかな!?」

「そんな際どい全身タイツに襟をコーディネイトだなんて……やっぱり変態っ! しかもその襟は立たせるんでしょう!? 稀代のアブノーマルスタイルだわ!」

「どんなイメージ!?」

 姉さんの変態基準が厳しい。実の姉からここまで猛烈に変態呼ばわりされる日が来るとは、ほんの一年前は思いもしなかった。

 開いた金庫から《猛将列伝》をミントが回収する。本当に指令室で保管されていたなんて。

「フィオナさん、どうしました!?」

 室内にもう一人駆けこんでくる。ナイトハルト少佐がマントをひるがえして、フィオナの前に立った。

「変態が! 襟を立たせようとする変態がっ!」

「え、襟!? それはなんとも特殊な……!」

 ナイトハルトがサーベルを抜き放った。ぎらりと光る刀身が、二人に向けられる。

「撤退するよ、エリオッ――」

「襟をっ! 襟を――っ!!」

 ミントが口を滑らそうとするたび、言いたくもない襟宣言をする羽目になってしまった。もうこれでは依存症状の止まらない危ない襟ジャンキーだ。

 エリオットとミントは窓縁に走って、そこから飛び降りる。先ほど退路用にくくっておいた縄を伝って、外壁を降下。地面にまで到達する。

 同時、サイレンが鳴り響いた。兵士が出動してきた。幾重ものライトが双竜橋を照らす。

「ひいいい! 大事だよ! 大事になっちゃったよ!」

「じゃあ急いでカレイジャスに帰ろっか」

 逃走する犯罪者のごとく、二人は敷地の柵を飛び越えた。

 

 

「やはり機は逃せんでしょうな。機甲師団を動かすなら、今をおいてありますまい」

オーラフ・クレイグが自身の見解を述べると、通信先の相手であるゼクス・ヴァンダールは感嘆の息をついた。

『さすがはクレイグ准将。私も同意見です。行動を起こすのは、地理を見るに、トリスタを奪還したタイミングがもっとも良いかと』

「見事な慧眼。感服致す」

『隻眼ですがな』

 いったん間があって、『ふははは!』と太い笑い声が重なる。オヤジ特有の豪快なノリだ。

 第四機甲師団と第三機甲師団の定例報告。双竜橋の通信室からゼンダー門の通信室まで。ケルディック地方からノルド方面へ、いくつも設置された中継機に導力波を経由させて、遠距離通信を実現させている。

 まだ精度は完璧ではなく、ノイズや音飛び、声遅れなどが頻繁に起こるのは難点だが、それを差し引いても馬を走らせて密書のやり取りをするよりは万倍マシだった。

『では今日はこれにて――』

「待たれよ、ゼクス殿」

 通信終了の間際に、オーラフは言った。

「実は先だって、この双竜橋に賊が入りましてな」

『なんと。貴族連合の手のものでしょうか?』

「それはわかりませんが、ただ最初に賊に遭遇した娘の話では、きやつらはこのようなことを言ったそうです。〝ゼンダー門に返そう”と」

『ふむ……? 話が見えませんが。賊は何を返そうというのです』

「猛将烈伝」

 オーラフの声音が低くなった。

 ゼクスの雰囲気が変わる。

 顔の見えない通信先で、明らかに何らかの変化があった。

『……《猛将烈伝》が双竜橋にあると?』

「ほう。その言葉をなぜ貴公が知っておるのです。これは語るに落ちたというやつですかな」

『むしろこちらがお聞きしたい。先日まで我々が保有していた書籍が、いかな経緯で双竜橋にあるのかを』

「保有していた?」

『然り。朝夕のミーティングでは猛将のお言葉を全員で唱和し、三食の食事前には礼拝も欠かさず実施する。皆の奮い立つ活気の元だったのです。それがある日、ご神体である《猛将列伝》は忽然と姿を消した。今やゼンダー門は誰しもが消沈し、うなだれております。無論、私も。士気も守りもあったものではなく、数名の子供に石を投げられただけでこの拠点は陥落するでしょうな』

 猛将は神。それが第三機甲師団の共通認識である。このゼクス・ヴァンダールも、かつてミントに《猛将列伝》を読まされ、毒されていた。

「そうであったか。元凶を見つけたぞ……!」

『なんですと?』

「おかしいとは思っていたのだ。天使のごときエリオットが、蛮族と変わらぬ振る舞いで描かれておることに。そなたらの勝手な偶像化が原因だったのであろう。トリスタのケインズとかいう者が発端とは聞いていたが、息子の悪評を広げたのは第三機甲師団ということか。いや、ゼクス殿がケインズ氏と水面下で繋がっている可能性さえある」

『なんの話か理解しかねますが、一つ申し上げておきましょう。ご子息は天使ではなく獣。5歳から75歳までがテリトリーの淫猥のケダモノです。横暴と蹂躙を常とし、あだなす者は尊厳から踏みにじって屈服させる。全ての漢たちの頂点に立つ血濡れの大魔王』

「よくも親の前で言ってくれたな……! ピアノで麗しい旋律を奏でる愛らしいエリオットの姿を見せてやりたい!」

『捉えた敵兵を横に並べて鍵盤に見立て、縦横無尽に鈍器で殴打しまくり、重なる絶叫でおぞましい旋律を奏でる猛将コンサートをご存じないようだ。《猛将列伝》第三章47ページの煉獄合唱会など圧巻ですぞ。七色の悲鳴が苦痛のメロディーを響かせ、血混じりの輪唱が大地を赤く染め上げて――』

「もうよい! 聞きたくない!」

 荒げた呼吸を落ち着けて、オーラフは通信マイクを今一度手繰り寄せた。

「なんにせよ、先の侵入者は第三師団の手の者であるのは間違いなさそうだ。いずれ白黒ははっきりさせてもらおう」

『猛将の訓示を受けた我々が、第四機甲師団の打撃力に劣ると仰る?』

 通信越しにも険悪な空気が伝わる。ビリビリと刺すような敵意が放たれていた。

「だが今は時期ではない。帝都奪還が控えているのでな」

『それは同意ですな』

「《紅き翼》もヘイムダル入りは目的の一つのはず。その時が来れば、突入の活路は私が開く。公私を混同するつもりはないが、もっともエリオットの力になるのは私が率いる第四機甲師団だ!」

『否。この時の為に第三機甲師団があったと評しても過言ではない。あらゆる障害を私の指揮で駆逐し、全総力をもって猛将の覇道をお支えしてみせよう』

 《猛将列伝》の存在が二つの機甲師団を反目させ、しかし貴族連合は絶対に討つという強い共通認識を生んでいた。

 片や息子、エリオット・クレイグの為。

 片や猛将、エリオット・クレイジーの為。

「第三機甲師団との決着をつけるのは、その後ということでいかがか」

『良いでしょう。猛将の眷属として、最強の称号が欲しいと思っていたところですので』

「結構」

『では猛々しき未来で相まみえましょうぞ』

 通信が切れる。

 オーラフは通路に出ると、窓の外を見やった。サイレンの音とライトの光が、絶え間なく聴覚と視覚を苛んでいる

 激突の時は近い。

 

 ★ ★ ★

 

 

 

《修道女の願い⑦》

 

「ケガというほど大層なものではないが」

 そう言って、ユーシスが右腕を差し出す。ロジーヌはその腕を支え、慎重に処置台まで誘導した。

「すり傷でも菌が入れば膿んだりもします。消毒しておきましょう」

「お前がそう言うならそうしよう」

 剣の稽古中に負ってしまった擦過傷の手当てに、ユーシスは医務室を訪れていた。〝少しでもケガをしたらすぐに私のところまで来てください。絶対ですよ”というロジーヌの言い付けをきっちり守っているのである。最近の彼は、彼女に対して素直だ。

「稽古は順調ですか? 私は武芸事のことはよくわからないのですが」

 てきぱきと処置に必要な物品をそろえながら、ロジーヌが訊く。

「魔導剣の扱いにはさすがに慣れたが、やはり中級アーツまでが限度だな。反動に体が耐えられん。まだ先の力があるとわかっているのに、それが使えんとは……」

 ユーシスは手を握って、開いてみる。先ほども中級アーツを使った魔導剣を発動させたところだ。指の先までのしびれがまだ残っていた。

 魔導剣の特性として、初級は中級へ、中級は上級レベルへと威力を引き上げる機能がある。正しく解説するなら、アーツとして広範囲に拡散するエネルギーを、刀身の周囲に押し留めることによるブーストアップだ。

 ゆえに上級アーツを魔導剣として発動させた場合、おそらく最強の力を得るだろうが、その時は自分の体どころか、剣自体が崩壊する可能性が高い。

「使えなくていいですよ。体を壊してまで求めるような力は、いずれ心も壊します。自分が自分のままでいられる範囲の力が、人の分相応だと思います」

「武芸をわからんという割には核心を突く言葉だな。だが、そうか。……機会があればリィンにも教えてやってくれ」

「ユーシスさんが教えてあげて下さい。ご友人でしょう」

「友人か……。皮肉なものだ」

「え?」

 リィンの話だったが、脳裏に浮かんだのはマキアスの顔だ。

 街道で殴り合った時のあの表情は、きっと一生忘れられない。あそこまで感情をむき出し、またむき出されもしたのは生まれて初めてだった。あいつの本心からの怒りに、俺は救われたのだと思う。

「オーバーライズをすることで魔導剣のネックだったチャージ時間がなくなり、《スレイプニル》は真価を発揮した。俺のマスタークオーツの《ミストラル》は他の能力の強化――つまり重奏リンク時にのみ効果を生む。……仲間から離れようとした俺の力は、誰かと繋がっていないと全てを使うことができなかった」

「ユーシスさんらしいですよ。誇るべき力です。この先、何が立ちはだかったとしても、あなたは負けません」

「女神がそう言っているのか?」

「いいえ、私が言うのです」

「……下手な願掛けよりは効きそうだ」

 微笑むロジーヌは処置を再開する。消毒液を振って、ガーゼを当てて、救急箱に手を伸ばした時に、「あっ」と焦った声をあげた。

「そうでした。絆創膏なくなってたんです。レグラムで大量に使ったので……」

「そんなにケガ人がいたのか」

「ええ、アルゼイド流の門下生の方々が」

 町の外の見回りもしていると聞くし、なにかと生傷は耐えないのだろう。ケルディックの巡回班に絆創膏を買い足してくるよう、あとで連絡しておいてもらおう。

「手当てはここまでで構わん。大げさな傷でもないからな。では稽古に戻る」

「あ、で、でも……待って下さい。だ、だったら……」

 立ち上がったユーシスを、ロジーヌは引き止めた。

 彼女はもじもじと身をよじり、女神に祈りを捧げている。ややあって「……やります」と謎の決意と共に、胸前で手の形でハートマークを作った。

「痛いの痛いの飛んでいけ~! ラブキュンバッキューン!」

 ばっきゅーんきゅーんきゅーんとエコーがかかる。

 敬虔な修道女のいきなりの奇行に、ユーシスは固まった。時間も凍りつく。

「ど、どうした? いきなり……」

「あっ……」

 ロジーヌがはっと我に返る。

「ち、違うんです。絆創膏がなくなったらこうしたら元気が出るって聞いて。だから、元気がでるのかなって。 なので私がんばってみてっ、あ、あの……なんでもありません! 忘れてくださーい!」

 両手で顔を覆って、彼女は医務室の外へと飛び出してしまった。

 

 ●

 

『ラブキュンバッキューン!』

 カレイジャスのブリッジに大音声が響き渡る。ボリュームはマックス。スピーカーが音割れを起こすほどだった。

「どう?」

 満足そうに双子姉妹の妹、ヴィヴィは言った。

「どうもなにも……」

 双子姉妹の姉、リンデは肩をぷるぷると震わせる。

「なんでこれが録音されてるのよー!!」

「だって私もレグラムにいたし、何回も聞こえてきたし」

 大激怒するもヴィヴィはどこ吹く風だ。

 トワとアンゼリカは4階の会議室でミーティング中なので、ブリッジには姉妹の二人しかいない。

 不意にヴィヴィが『ちょっと聞いて欲しいものがあるんだけど』と鳴らしたのが、今の録音音声だった。

「やー、リンデがラブキュンバッキューンとかすごいわー。しかもロジーヌさんと声を合わせてるよね。これは男子の皆さんに売れると思うの」

「絶対やめて!」

「使い道は色々あるわよ。目覚まし時計のアラームに設定するとか。館内放送の周知音に使うとか」

「いやああ!」

「良いと思うけどね。『朝七時だよ、起きてね、ラブキュンバッキューン』って」

「どこがいいのよ!」

 他には〝ラブキュンバッキューン”と警告音がなってから、『これよりカレイジャスは作戦を開始します。総員、戦闘配備!』とトワ艦長からの放送が流れるわけである。士気が上がるか腐抜けるかのどちからだ。

「音声データを消して! 今すぐに!」

「や」

「消さないと――」

『ラブキュンバッキューン!』

 また音声が鳴る。ヴィヴィの手元の端末だけで操作できるようになっていた。

「意味なく鳴らすのダメだから!」

「意味があればいいんだ?」

「そんなこと言ってない!」

 ぎゃあぎゃあと絡み合うヴィヴィとリンデ。

 そんな双子姉妹の様子を、戸口から眺めている者がいた。

「……これは使えますわね」

 シャロン・クルーガーはそうつぶやくと、その歩先を整備ドックに向けた。

 

 ★ ★ ★

 

 

 

《――分かれ道の入口は――》

 

 マキアスは大市の中心にへたり込んだままだった。ハイベルとの戦いですり減った精神と体力は、すぐには戻ってくれそうにない。

 ミラーデバイスをフルで使用する時は、未来予測に近い域で全ての可能性を計算する。クレア大尉ほどの頭脳を持ち合わせていないにもかかわらず、彼女の思考ルーティンを真似するのだから、使用後はひどい頭痛に襲われてしまう。過度の負担による知恵熱とでも言うべきか。

 そんな自分を見かねて、大尉は糖分補給用にと手作りチョコレートを渡してくれたのだ。

 最初は容器いっぱいに詰まっていたクレアチョコも、あと一つ。

「はあ……意地になり過ぎたか。反省だ」

 しかし後には引けないバトルだったのだ。致し方あるまい。

 マキアスは遠くで損壊した出店に目をやる。へしゃげて潰れた骨組みの隙間から、ハイベルの足が見えた。動き出す気配はない。

「さて、行くか」

 そしてわざわざ起こしてやる義務もない。僕は勝利し、彼は敗北した。その結果が全てだ。これを機に立場を弁えて、クレア大尉に余計なちょっかいをかけるのを止めて欲しいものだ。

「待ちや、マキアス・レーグニッツ」

「ん?」

 立ち上がると、腕組みをしたベッキーが眼前に待ち構えていた。

「どうしたんだ?」

「どうしたもこうしたもあらへんわ……」

 ぎゅっと組んだ腕が締まり、下唇を噛む。真っ赤に腫らした目でベッキーはマキアスをにらんだ。

「うちの体をもてあそんだこと、忘れたとは言わさへんで!」

「はあああ!?」

 ざわつく大市。子供の頃から市場に出入りしているベッキーは、商人たちにとって娘のようでもあり、マスコット的な存在でもあった。「まじかよ、ベッキーちゃん……」「相手は誰だ!?」「あの眼鏡か……」とか、そこかしこから非難の声が上がる。

「覚えがない! 覚えがないぞ! 濡れ衣だ!」

「しらばっくれんな! うちの……うちの、胸をなあ……、思う存分に味わい尽くしたくせに!!」

『なにいいい!?』

 マキアスだけでなく、ギャラリーからの絶叫も重なる。

 いったいいつのことだ。まさかクレア大尉の一件があった日か。なぜかあの時は記憶が曖昧で、自分の行動が断片的にしか思い出せない。つまり大尉以外にも僕は……!

「ま、待て! 他意はないんだ!」

「そら本意しかないやろ! この性欲の権化が! レンズを淫らに光らすな!」

「不幸な思い違いだ! 僕はどうすればいい!?」

「どうすればいいやって!? はん! 決まってるやろ! せ、せ、せせせ……」

 頬を赤くして、ベッキーは叫んだ。

「責任取らんかーいっ!!」

 言うだけ言って、踵を返して逃げ去ってしまう。残されたマキアスは呆然としていたが、

「よお、兄ちゃん」

 背後に気配を感じた時には、首根っこを捕まえられていた。振り向くことさえできないマキアスの耳に、「ベッキーの父親のライモンちゅー者ですわ……」と背すじが凍りつくほどの冷えた声音で囁かれる。

「なんや、娘を手籠めにしたって? そんで責任取ってくれるんやって? なあ、未来のお婿さんよお。子供の名前はなんにするんや? 眼鏡二号か? ん?」

「な、なんだそれ、ぐああ……っ」

 首が握りしめられる。窒息は狙っていない。頸椎をへし折る気だ。ぶわっと体が浮き上がる。

「商人の道は甘くないで。将来設計立てた上で、頭丸めて出直してこんかい、ワレァ!!」

 砲丸投げのようにぶん投げられる。アーチを描いて飛んだマキアスは、ハイベルが突っ込んだ出店に自身も突っ込む羽目になった。

 朦朧とする頭に、ライモンのセリフがわんわんと反響している。

 将来設計、という言葉だ。現実感のない言葉が、妙に心に残る。

 そういえばあまり考えたことはなかった。トールズ士官学院を今までのように通い直せるかもわからないが、だとしてもその先のことは何も決めていない。

 もしも学院を卒業できたなら、僕はどの道を歩むのだろう。みんなはどうするのだろう。この先行きの見えない内戦下でこそ、それが重要なことのように思えた。

 もう少し考えを巡らそうと思ったが、それより早くに追加の建材が落ちてきて、マキアスの思考はゼロになった。

 

 

 ――つづく――

 


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