虹の軌跡Ⅱ Prism of 《ARCUS》   作:テッチー

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第92話 バリアハート寄航日(三日目②) ~振り向いてラビリンス

「待ち合わせまでは!?」

「あと三十分!」

「みんな急いで! 特急で仕上げるわ!」

「ゴーゴーゴー!!」

 空き室の真ん中に置かれた椅子に、ラウラは座らされている。この騒乱の渦中の人物である彼女は、しかしその慌ただしさには介入していない。

 おとなしく、されるがままだった。

 ブリジットが爪にマニキュアを塗る。ポーラが唇に淡い色のルージュを引く。モニカが控えめに香水をふる。コレットがおしゃれなネックレスを見繕ってくれる。

 こんな化粧は初めてだ。いや、はじめての園遊会の時はずいぶんとめかし込んだ覚えもあるが、それは屋敷の専属メイドであるプラナがやってくれていた。

 落ちつかない。そういう姿になっていく自分にむずがゆさを感じる。なんだろう。公の場に出る身だしなみとは、また違う。特定の誰かの為に着飾るというのは、何とも言えない気恥ずかしさがあるものだった。

「本当は服も可愛いのにしたいんだけどね。さすがに用意できなくて」

 言いながら、モニカがリボンの角度を調整する。

 服は普段の旅装だ。休日用の私服など、カレイジャスには持ち込んでいない。香水やマニキュアなどの小物類は、全てコレットが職人通りの人たちから受け取ったものだ。

 今モニカが付けてくれているリボンも普段愛用しているシルク製ではなく、ちょっとこじゃれたカチューシャ型のアクセサリーだった。

 おずおずとラウラは口を開く。

「服は別に気にしないが……とりあえず私はどうすればいいのだ?」

 デートというものの進め方が不明だ。しかも今回に限ってはこちらから誘った形なので、相手にリードを任せるというのも違う気がする。

 レグラムならともかく、バリアハートに土地勘はない。大都市だからそれなりに良いスポットもあるのだろうが、ラウラにはその場所がわからない。下手にうろつけば、それだけで何もしないまま時間を消費してしまう。

 コレットは市内の見取り図を取り出してみせた。いくつかの道が赤いペンで塗られている。

「昨日の内にブリジットさんとルート選定しておいたから。道順の通りに動いて、マーキングしてある店に入っていけばいいよ。あとはこっちでサポートするしね」

「なんだ、その手際の良さは。……サポートとは?」

「適時指示を出すってこと。安心して。二人の邪魔にはならないようにするよ」

「難しいだろう。全員が顔見知りだ。リィンが気づく」

「心配ご無用。私たちは変装していくから」

 これも職人通りの人から譲ってもらったアクセサリー類を使うつもりだそうだ。まだ荷開けもしていない木箱には、キャップやら眼鏡やら、そもそも何のつもりでコレットに渡したのかさえ不明な物も多いらしい。

 デートをする二人を、変装して後ろから追う。その行為自体に既視感を覚えたのと同時、なぜか一抹の不安がよぎった。

「せっかくの機会なんだし、緊張してばかりじゃダメよ。楽しむのを忘れないでね」

 マニキュアを塗り終えた爪に、ブリジットがドライヤーで緩めの冷風を当ててくれる。待ち合わせに間に合うよう、乾燥時間の短縮だ。透明感のある綺麗な桃色だが、果たしてリィンはそこに目を向けてくれるのか。

 考えを読まれたのか、ポーラが低い声でつぶやいた。

「もしリィン君が気付かないようだったら、今日まで無為に生きてきた怠慢を、その罪を思い知らせてあげる」

「い、いや、そこまではいい。気付くことにも期待していない」

「まあ鈍感そうだもんね、彼。どうしてもだったら実力行使で行きなさい」

「その程度で攻撃するのは良くないと思うが」

「なんでも物理に訴えないの。最終手段は色気たっぷりに脱いじゃいなさい。どんな朴念仁も一撃よ」

「できるわけなかろう! 正気を疑われる!」

 大体そんなことをして……したとしたら、リィンは少しでもうろたえたりするのだろうか。仮に狼狽しなかったら、それはそれで私が大いに傷つく羽目になるのだが。想像しただけで立ち直れない。諸刃の剣とはこういうものか。

「うぅ……」

「最終手段だって。本気にしないでちょうだい」

「こんな時までいじめないの。そろそろ時間よ」

 ブリジットがポーラをたしなめる。約束の二時まで、もうまもなく。

 コレットたちは各々の変装に取りかかり、ラウラは一足先に待ち合わせ場所まで向かうことになった。

 ああ、もう。心臓が破裂しそうだ。

 

 

《◆◇◆振り向いてラビリンス◇◆◇》

 

 

 空港のゲート口に着くと、そこにはすでにリィンの姿があった。

 こちらの姿を見留めると、軽く片手を掲げてくる。普段と変わった様子がない。ナチュラルだ。そのあっさりした態度にラウラは軽い不満を覚えた。

 なんなのだ。こちらは緊張の極みだというのに。自分を過大評価するわけではない。しかし女子にデートに誘われて、そうも普通にしていられるものなのか。

 変に身構えられるのも困るが、慣れた感じでいられるのもどこか釈然としない。

「……待たせたな」

 少々面白くないものを感じつつリィンに歩み寄っていく。「俺も今来たところだ」と振り向けられた顔を見て、彼がそこまで余裕だったわけではないとわかった。

 表情に戸惑いがある。どこかそわそわしている。ちょっとだけ安心したが、同時に意識されているとも理解し、ラウラはわざとらしい咳払いで場を取り繕った。

「まあなんだ。デートというのは言葉のあやでな。その……少し気晴らしに付き合って欲しかった次第だ」

「そういうことか。はは、変に身構えてたよ」

 身構えていたのか。どういう意味でだろうか。ここで真意を問い質す勇気はない……。

「それで、どこに行く? 悪いんだが、俺は市街の地理に明るくないぞ」

「問題ない。誘った手前、私が先導しよう」

「へえ、詳しいのか?」

「え? あっ、えっと、父上に連れられて何度か足を運んだことがあるのだ。無用な詮索をするでない!」

「す、すまない。今のって聞いたらダメなのか……?」

 事前にロードマップを頭に叩き込んでいるなどと、口を滑らせても言うわけにはいかない。あくまでこちらも自然に振る舞わねば。一騎討ちの真剣勝負がごとく、心情を悟られてはいけない。いや、悟らせたいのだったか? もー早くもわけがわからん。

「そなた、昼食は済ませたのか? まだに決まっているだろう」

「なんで決まってるんだよ。確かにまだだけど。午前中は演奏会だったし、そのあとはドックにいたから食べる時間がなくて」

「食べていようといまいとランチに行くことは決定事項だ。さあ、店まで案内する」

「質問する意味……」

 行軍よろしく、ラウラはきびきびと歩き出した。

 

 二人がやってきたのは、中央区の外れにあるこじんまりしたカフェだった。

「いい感じの店だな」

 女性店員に通された席に座り、店内を見回しながらリィンが言った。

 カウンター、テーブル、椅子、床に至るまで木造で、シックな色合いで統一されている。ヒーリングミュージックというのだろうか、柔らかな旋律の音楽も流れていて、落ち着いて食事を楽しめる雰囲気があった。昼食時からは外れたからか、今は客が二人以外にいない。

 リィンの向かいにラウラも腰かける。

「そうだろう。料理も美味しいらしい」

「初めてきたのか?」

「ち、違う。美味しいらしいに決まっていると言うつもりだったのだ」

「言葉がおかしいんだが……」

「細かいことを気にするな」

 もちろん初めてだが、それは言わない。メニュー表を先にリィンに手渡して、ラウラは水の注がれたグラスに口をつけた。

 ちょっと良さげなランチであれば《ソルシエラ》でも問題はなかった。しかしコレットたちに、この店を強く勧められたのだ。実際、隠れた良店という印象だが、取り立てて名物料理があるわけではなさそうだ。

 手作り弁当を持参しようかとも相談したら、すさまじい剣幕で阻止された。こういう時はやはり店を利用する方がいいと。

 メニューに悩んだあげく、リィンとラウラは日替わり定食を頼むことにした。

 オーダーして間もなく、カランカランと入口の鈴の音が鳴る。他の客が来店したようだ。

「ん!?」

 なんとはなしにそちらに目をやって、ラウラは噴き出しかけた。

 その人物は高級感のある黒いコートに身を包み、首元には動物の毛皮らしき首巻きをしている。大きめのサングラスを顔にかけ、指の全てにゴテゴテしたリングを煌めかせていた。

 ヒールの高いブーツでかつかつと床を鳴らしながら、二人の横を通り過ぎて行く女性はモニカだった。セレブ然とした装いで、傍目の印象がまったく違うのでリィンは気がついていないが、ラウラにはわかる。髪型も少し変えてあるが、赤みがかったブラウンヘアーは間違いなく彼女だ。

 モニカはラウラたちのテーブルの一つ後ろに座った。リィンには見えず、ラウラからは見える位置。おもむろにスケッチブックを取り出すと、それをこれみよがしに見せてくる。

 そこには『私に気にせず会話を続けて』と書かれていた。

 《ソルシエラ》ではなく、この店を選んだ理由はそれか。指示出しをするポジションをキープしやすいのだ。

 だとしても振れる話はとっさに思い浮かばず、

「最近どうだ?」

 面白みゼロの問い掛けをしてしまった。

 だがリィンはすんなり話の幅を広げてくれる。意外にもトークスキルが高い。いくつか進展のあったことを聞いた。

「――そうか。ゼムリアストーンの太刀はクララ先輩が作ってくれるのか。しかしなぜ今まで動こうとしなかったのだろうな?」

「さっぱりだ。逆になんで今作ろうと思ったのかもわからない」

 気まぐれとも違うように思えた。クララの中で何かが動いたのだろうが、それこそ知りようもないことである。唯一わかっていることは、これからこき使われるジョルジュの睡眠時間が消えるであろうということだけだ。

 そしてもう一つが、

「カレル離宮にエリゼが!?」

「ああ、ミリアムからの情報だ。確定じゃないが、信憑性は高いそうだ」

「むしろミリアムはどこからその情報を?」

「貴族連合のアルティナかららしい。いっしょに遊びに出かけて、その帰り際に教えてくれたとか」

「それは信憑性が高いと言えないだろう……。いずれにせよ次の目的地はそこか?」

「そうしたいのは山々なんだけどな。まだ無理だ。トワ会長にも言われたよ」

 周囲を天然の岩壁に囲まれているから、カレイジャスでないと乗り込めないが、肝心の突入理由が今のところ弱い。不確定過ぎて動きようがないのだ。加えてヘイムダルの近くという立地の難題もある。

 せめてあと一つ。貴族連合と関係のない第三者からも、エリゼに関する情報が入手できればいいのだが。

「焦っても仕方がない。トリスタに戻ることができれば、ヘイムダル方面への道も開ける。居場所の目途がついただけでも前進だ」

 自分に言い聞かすようにしてリィンはいう。本当ならすぐにでも向かいたいだろうに。

「そうだな。明日からは東部の全域を範囲にして巡回行動を行うらしい。その中で見つかる糸口もあるだろう。私も力を尽くそう」

「ありがとう。頼りにしている」

 と、そこでモニカが再びスケッチブックを卓上に立てる。『話題に味気がない。もっと行動で攻めて』と書かれていた。

「そ、そんなことを言われても困るぞ」

「え、頼りにするのが?」

 つい声に出してしまっていた。

「あ!? ああ! 頼りにはしてくれ。ぜひしてくれ!」

「いいのか? じゃあ頼らせてもらうからな」

 スケッチブックが一枚めくられる。『一つのジュースを二つのストローで一緒に飲むべし!』という指示が、ハートマークで囲われていた。

「ぜったい無理!」

「どっちなんだよ!?」

 

 

 なんだかスタイリッシュなポーズを決めるマネキンが、ラウラの前に立っている。そのマネキンは白いフレアスカートにピンクのブラウスを身に付けていた。

 清楚な装いと尖ったポーズがアンマッチのような気もしたが、それもひっくるめての流行りなのかもしれない。その辺には疎い自覚があるので、ラウラは迂闊な口を開かないようにした。

 《ル・サージュ》バリアハート支店。トリスタにもあったブティックショップだ。清潔感のある店内には、多種多様な衣服が並べられている。

 用意されたデートルートの二番目の指定地はここだった。

「ふーむ。ブティックなどあまり来ないが……」

 ひとりごちつつ、適当な衣類を手に取ってみる。デザインを気にしないこともないが、やはり動きやすいものがいい。機能性重視という点では、フィーと似通う感性があった。

 リィンはメンズコーナーで服を物色している。意外にも服選びは好きらしい。彼の目はキラキラしていて、その手の服はギラギラだ。

 ラウラに疑問が浮かぶ。

 コレットたちがブティックに行くように勧めてきたのはなぜだろう。男性女性で服の種類は違うのに。これでは必然、別々の売場に分かれてしまうではないか。

「何やってるの、もう」

「あっ?」

 後ろに誰か立っていた。活動的なパンツスタイルに、帽子とマスクを着用している。

「その声はコレットか。まさか私があっさり背後を取られるとは」

「はい、剣士的な発言禁止」

 びしっと注意される。

「せっかく二人で来てるのになんで離れてるのよー」

「それは互いの着るものが違うわけだし……」

「ちがうちがーう。そこはこれ。『こんなのどう? 似合う?』みたいな感じで服選びに付き合ってもらうの! 何気なくリィン君の好みなんか聞いちゃったりしてさあ」

「な、なるほど。そんな意図があったか」

「リィン君もリィン君だけどね。そこは男の子の方が気を回さなきゃだもん。けっきょくリボンとかマニキュアとか気づいてないっぽいし」

「それは……うん。そうだな……」

 確かにちょっと残念だった。なにか言ってくれるのを、心のどこかで期待していたのかもしれない。

「でも大丈夫。リィン君側にもサポーターがつくから」

「接触する気か? それはまずいぞ」

 慌ててリィンに振り向く。

 時すでに遅く、すでに彼の後ろにもう一人が位置していた。フードを目深にかぶった怪しい人物。体躯からポーラだとわかる。彼女はリィンに小声で告げた。

「動くな」

 ムチのグリップを背中に押し当てる。リィンの動きが強張った。

「だ、誰だ?」

「騒ぐな。振り向くな。質問も許さない。訊かれたことだけに答えろ」

「くそっ、貴族連合の手の者か!?」

「質問は許さないと言った」

「ぐあっ!」

 ゴリッとグリップが背にめり込む。リィンにしてみれば、銃口を突き付けられているのと変わりない。

 口調と声色を変えているので、不測の襲撃者がポーラだとは見抜けないようだ。

「体の向きを変えろ。ゆっくりと。妙な動きはするな。忘れられない痛みを味わうことになるぞ。そうだ、そっちだ。あの女を見ろ」

 真剣そのものの面持ちで、リィンはラウラを視界に入れた。

「どうだ。いつもと同じか? 違うところがあるだろう。言え」

「どういうことだ? ラウラの知り合いなのか?」

「学習能力が足りないと見える」

 ゴリゴリッと、腰椎のあたりを容赦なく圧迫する。あれではサポーターじゃなくて刺客だ。

「わ、わかった。言う通りにする」

 リィンがこちらを凝視してくる。爆弾処理中のような緊迫感だ。ムードもなにもあったものではない。

「リボンだ。リボンがいつもと違う」

 正解だ。観察してわかるなら、もっと早くに言ってくれたらいいのに。

「まだあるだろう」

「他にも? ええっと……」

 ラウラはさりげなく爪を見せながら、指を口元にまで持ち上げた。薄い色だがルージュとマニキュアを塗ってある。

「そうか! ほくろの位置だな!」

「削ぎ落とすぞ」

「ど、どこを!?」

 私の顔にほくろはない。そもそもほくろが動くものか。どこを見ての『そうか!』だ。とうとうリィンは言い当てることができなかった。

 険しさを帯びたポーラの目が、リィンの腕に抱えられたままの攻め過ぎた衣服を一瞥する。

「こんなゴテゴテで趣味の悪い服ばかり見る暇があるんなら、ちょっとはあの娘のことを見なさいよ。このミッドナイトヘブンが」

「がはっ……!」

 即死級の一撃だった。

 

 

「……本当に知り合いじゃないのか?」

「うむ、検討もつかない」

「目的はわからなかったけど、まあ殺気もなかったからな。警戒だけしておくか」

 その程度の対応でいいのか。というかあったぞ、殺気。

 憔悴しきった様子のリィンは、店内の壁にもたれかかっている。相当心をえぐられたようだ。

 ブティックから場所を変えて、ここはアクセサリーショップである。

 職人通りだと本格的過ぎるものしかないとの理由から、ショッピングモール界隈にある店をコレットがチョイスした。ポップでライトな品が目白押しなのだとか。

 なるほど、宝飾系だけではなく、女子が好みそうな小物アイテムも豊富だ。軽快なBGMも流れている。もっともどれがポップでどれがライトなのかは、ラウラには今一つわからなかったが。

「ずいぶんカラフルな店内だな。アルフィン殿下は好きそうだが……」

「流行りの店だそうだ。値段が手ごろで、学生もよく利用するのだとか」

 先ほどの《ル・サージュ》もそうだったが、内戦の煽りを受けて品数が減少するようなことはないらしい。さすがはバリアハートというべきか。あるいはアルバレアのお膝元というべきか。

「それで、ラウラは目当てのものがあって来たのか?」

「うーん?」

 勧められるままに来ただけだから、別にこれといって欲しいものはない。だとしてすぐに店を出てしまうのも味気ない。

 ガラス製の陳列棚に視線を送りながら、ラウラは適当に商品を流し見ていく。

 その最中、目が留まった。いや、釘付けになった。視線の先にはネコだかタヌキだかを合成したような愛くるしいフォルムの人形がある。

 みっしぃだ。しかしこれは――

「ご当地みっしぃ……!」

 元々はクロスベルにあるテーマパークのマスコットキャラクターだが、近年ではエレボニアでも人気を博しているのだ。

 その中には地方ごとの特色でアレンジされた、バリエーション違いのみっしぃも存在している。

 今飾られているのは、ハンマーを持った職人みっしぃと、翡翠石で彫られたクリスタルみっしぃだ。バリアハートを象徴しているのだろう。

 リィンが横からのぞき込んで、

「そんなみっしぃもあるのか。職人みっしぃの眉毛、極太だな……」

「ふふ、昔気質の頑固さが良く表現できている。今にもテーブルをひっくり返しそうな激情があふれ出ているな」

「……かわいいのか、それ」

「愛着は湧く」

「ラウラがいいならいいんだが。俺はあっち見てくるから」

 みっしぃコーナーはまだ続いていた。なんというすばらしい店だ。トリスタとレグラムにも支店を出してもらえないものか。

 またしてもゴテゴテした服飾品に目を取られているリィンはさて置き、ラウラはみっしぃの展示に沿って、店の奥側へと進んでいく。

 神々しい羽の生えたエンジェルみっしぃ、コック帽をかぶったシェフみっしぃ、怪しいキノコに寄生されて自我を失いかけたパラサイトみっしぃなんていうキワモノもあった。

 なんだっていい。みっしぃはみっしぃなのだ。いつか世界中のみっしぃを買い占めよう。アルゼイド家の財を投入し尽くしてでも。

 少々危ない思考に陥りかけた時、ラウラの視界に新たなみっしぃが現れた。まさかの等身大みっしぃだった。商品棚の向こうから、手招きされている。

 みっしぃが私を呼んでいる。好きなものを疑わない無邪気な少女のような足取りで、ラウラは呼ばれるまま近付いた。

 みっしぃが握手をもとめてくる。無論応じる。

 差し出したラウラの手を、しかしみっしぃは素早く絡め取ってきた。

「な、なにを」

「静かにして」

 我に返るラウラの眼前に、みっしぃの顔が寄る。その着ぐるみの口元から、ブリジットの顔が垣間見えた。

「な、なぜそんなところに」

「どういうわけか私の変装だけこれなのよ。お店の人に試着させて下さいって頼むの恥ずかしかったんだから……」

「そなたはみーしぇ派だったか」

「そういう問題じゃないわ」

 ブリジットみっしぃは言う。

「またリィン君と離れて。いい? せっかくこういう場に来たのだから、ラウラの普段と違った一面を知ってもらわないと」

「また難しいことを言う。具体的にはどうすればいい?」

「ブティックショップの時と一緒よ。小物を身に付けて、リィン君に感想を言ってもらうといいわ。そうね……そこのメガネなんかかけたら印象が変わるんじゃないかしら」

 ブリジットが指し示す先には、マキアスの実用一点張りのような眼鏡ではなくて、おしゃれなデザインのメガネが数点並んでいる。

 ラウラは思い切ってピンク色のフレームのメガネを手に取った。

「私には似合わないかもしれないが」

「そんなことない。さあリィン君のところに行って」

 ぶにっと弾力のある肉球に背中を押され、不安と期待半分でリィンの元に戻る。彼はジャラジャラした銀色のチェーンを眺めて「……悪くないな」などとつぶやいていた。

 さっそくメガネを顔にかけ、ラウラはリィンに声をかける。

「リ、リィン。これ、どうだろう――っ?」

 視界がぐにゃっと湾曲する。遠近感がめちゃくちゃだ。レンズに度が入っている。伊達メガネではなかったのか。

 足元がもつれ、腰が棚にぶつかる。

「わっ」

「ラウラ!?」

 バランスを崩して倒れそうになったラウラを、間一髪リィンが抱きとめた。しかし勢いがついていたから、そのまま押し倒してしまう。

 床に尻もちをついたリィンの胸に、ラウラは体を預ける形になった。

「……! っ!」

 言葉にならない。「大丈夫か?」と気遣われるが、返答さえできなかった。

 こういう時はどうしたらいい。ヘルプ要請をしなければ。沸騰しそうな頭をどうにか動かし、懇願の視線をこちらの様子を見ているであろうサポーターへと飛ばす。

「はあ、ペアリング……いいなあ」

 太いしっぽをゆらゆら振りながら、何がしかのアイテムに目を奪われている。ブリジットみっしぃは見事に背中を向けていた。

 

 

 どうにも空回りしている気がする。私はいったい何をやっているのだろう。

 本来ならこの後もデートは続く予定だ。四つ目、五つ目の店と、コレットたちが組んでくれたコースがある。しかしラウラはそれを無視して、リィンを連れてバリアハートの外に出た。

 外壁の門をくぐって、街道に進み、近くの川縁まで移動する。

「こんなところに用事があるのか?」

 リィンが不思議そうに訊いてくる。彼には自分の気晴らしに付き合ってくれと言っていたのだった。

 ラウラはちらりと後ろを見やる。壁門の陰から、サポーターの四人が顔をのぞかせている。一人はみっしぃのままだ。なんでまだ店に着ぐるみを返却していないのだ。まさか購入したのか。うらやましい。

 街道まで出てしまえば遮蔽物もないし、人混みに紛れて接近することもできないだろう。助力はありがたいが、ここからは一人がいい。

 リィンといっしょに過ごせたデートは楽かったが、やはり私らしくなかった。年頃の女子らしくないとも自覚している。けれど振る舞いなど早々変えられない。言葉だってそうだ。

 自分の言葉でなければ、伝わらないこともある。

 リィンに向き直る。澄んでいるけれど、どこか朴とつとした瞳が見返していた。

 朴念仁だ、そなたは、本当に。

 誰かに想われているなんて、どこまでも、いつまでも、気づきもせずに。

「最終手段……か」

 ラウラはおもむろに上着を脱ぐと、首元の飾りリボンをほどいた。ブラウスのボタンを外し、続いて腰の留め具も外す。肌にかかっているだけの衣服が、心許なく風に揺れた。

「ラッ、ラッ、ラウラ!? な、ななっ!」

 リィンがひどくうろたえている。

 最後に、身に付けていたスカートがぱさりと地面に落ちた。

「そう慌てるな。水着だ」

 愕然としているリィンに、ラウラは平然と言う。もちろん内心は平然ではなかったが。

「そ、そうか。水着か。良かっ――いや、なんで!?」

「服の下に着てきたのだ。少しばかり泳ごうと思う」

「泳ぐって、真冬だぞ!? あ、待て!」

 リィンの制止も構わず、川に飛び込んだ。上がる水しぶき。流れは緩く、深さは腰上程度。十分泳げる。

 呆然と川縁で立ち尽くすリィンをよそに、ラウラは鮮やかなクロールで川を横断した。刺さるような水の冷たさだったが、蒸気しかけた心身には丁度よかった。事情もわからずに様子だけ見ているモニカたちは、きっと口をあんぐりと開けていることだろう。

 二往復のあと、元の場所まで泳いで戻り、岸辺に上がる。

「だ、大丈夫か!? 震えてるじゃないか!」

 怒られてしまった。突飛な行動だったのは違いない。ちょっと申し訳なく思いつつ、ラウラはそばに置いていた自分のかばんを指さした。

「あの中にタオルが入っている。悪いが」

「すぐに持ってくる!」

 言ってる途中で駆け出す。リィンはタオルを取ってくると、それでラウラの髪の水気を拭った。

 心配している顔が間近で揺れる。吐く息が白い。

「……体は自分で拭くつもりだが」

「え、あっ、そうだな」

 言わなければ、隅々まで拭かれる勢いだった。焦って、タオルを手渡してくる。

 ややあって、体を拭き終えたラウラは服を着直した。

「ふう……寒中水泳はレグラムでもやっていたのだが、さすがに無理があったかもしれん」

「当たり前だ。なんだって急にこんなことを……」

「頭を冷やしたくてな。冷静になって話したかった。……数日前に医務室で、そなたに聞きたいことと、伝えたいことがあると言ったのを覚えているか?」

「ああ」

 おそらくこれは、リィンにしか聞けない。彼じゃないと、その答えは返ってこない。

「では問う。そなたはユン老師を尊敬しているか?」

「もちろん。おこがましいのを承知で、目標とする人の一人だ」

「ならばユン老師が敵になって、彼に剣を向けなければならない状況になったとしたら? 稽古の話ではない。そうだな、敵というより敵陣という方がわかりやすいかもしれない」

「それはどういう――」

「答えて欲しい。思うことを訊きたい」

 冗談の問い掛けではないと理解してくれたようだ。リィンは真剣に悩んでいた。しばらくして口が開く。

「……戦うだろうな、多分」

「なぜ戦える? どういう気持ちで戦う?」

「信念は曲げるなと教わった。疑念から目を逸らして、楽な道に迎合するなと教わった。尊敬する人だからこそ、俺はその教えに準じる」

 迷いのない断言だ。かくあるべし。この物言いは好きだった。

「だが敵として戦いたくはないだろう?」

「それはまあ、な。ただもしも老師が敵陣に立っているなら、俺はその理由を問い質そうとすると思う。だったら剣を交えるのが手っ取り早い。そういうの、ラウラならわかるだろ?」

 わかる。剣筋には心が映る。いかなる剣士も刃にだけは嘘が通らない。その一刀が信念の元に繰り出されているかは、一合で伝わる。これは絶対だ。

「ふふっ」

 ラウラは笑った。ずっとモヤモヤしていたものが、こんなに簡単に晴れてしまった。

 剣を交えねばわからない。逆に交えればわかる。何も知らない内から悩んで、それで身動きが取れなくなるなど、それこそ私らしくないではないか。

「オーロックス砦でデュバリィと戦った時、彼女から使徒の第七柱アリアンロードなる人物が、リアンヌ・サンドロット本人だと告げられた」

「それは……そんなことがありえるのか? 150年近く前の故人だぞ」

 獅子戦役の終結後まもなく、病死したとも謀死したとも伝えられる。死亡の原因こそ定かではないが、実在の人物だったことは間違いなく、いずれにせよ確実に没している。

「油断を誘うための嘘とは思えないし、そのような虚言を吐く相手でもない。真偽のほどはわからぬが、結果として私は動揺し、父上に伝授して頂いた獅子洸翔斬も放てなかった」

 そして懐への踏み込みを許した。そのあとの記憶はない。意識が戻ったのはベッドの上だった。

「けどもう吹っ切れたよ。そなたのおかげだ。気持ちが晴れた。次は惑わない」

「〝気晴らし”の役目は果たせたってことか。……やっぱりラウラはすごいよな。流派の奥義まで扱えて」

 リィンがかすかに目を伏せる。

「奥義も所詮は型の一つだ。そこにある理合を解し、どういう心持ちで体現するかが重要だろう。その意味では、私はまだ扱えていなかったことになる」

「心持ちか……。奥義の伝授なんか先さえ見えないし、なにより……鬼の力がいまだに制御できない。心のどこに芯を通せばいいのか、わからないんだ」

「そうか。やはりか」

 医務室で〝力”に関わる話をした時に、リィンからある種の焦りのようなものをラウラは感じていた。

 だから、これを伝えようと思っていた。

 彼の頬にそっと手を触れて、優しく顔を持ち上げる。

「できるよ、リィンなら。私が保証する」

 冷えた指先にリィンの体温を感じた。

「気休めなどではない。本当にそう思っている。信じている。私たちが――いや、いつだって私が支える。もしも鬼の力が暴走するなら、私が止めてみせる。だから不安な顔をするな。もっと頼って欲しい」

「ラウラ……ありがとう」

「それに、そなたは技とか奥義で勝負を決めるタイプではないな。そういったものに必要以上に囚われないほうがいい」

「意識したことはないが、そうなのか?」

「私の見立てだ。本当に倒すべき強大な敵は、全てを注ぎ込んだ一刀をもって切り伏せる。そなたはそういう剣士だと思う」

「……覚えておくよ。忘れない」

「うん」

 頬から指を離す。水面に魚が跳ねた。不規則な波紋が広がっていく。

「聞きたかったことと、伝えたかったことっていうのは、今の話か?」

「ん、そうだ」

 そのはずだ。最初からそのことを話すつもりだった。デートは中途半端になってしまったが、自分の目的は達した。今日はいい一日だった。友人たちには感謝しよう。

「冷えてきたし、そろそろ町に戻ろう。これ以上はラウラが風邪引きそうだしな」

「あ……」

 笑いながら、リィンが踵を返す。まだ帰りたくない。とっさにそう思うのと同時、ラウラは言っていた。

「待ってくれ!」

 虚をつかれたというふうに、足を止めたリィンが振り返る。

 なんで私は彼を引き止めた? もう何もないのに。

 違う。ある。本当に聞きたいこと、伝えたいことは――。

「ラウラ?」

「わ、私はっ」

 カタカタと足が震える。寒さのせいではない。ぎゅっとスカートの裾を握る。

「私はそなたの剣になると言った。なら、そなたは私の何になってくれる……?」

 これが精一杯だった。今日はここまでしか言えない。

 冷たい風が身をなぶっていくが、まったく寒さを感じない。体が溶鉱炉になったかのようだ。心臓の鼓動が早すぎて、立っているのがつらい。一歩も動いていないのに、息切れを起こしている。

 もう直視できなくて、ラウラは上目遣いでリィンを見た。

「何になるって……なにが?」

「~っ!」

 私がこれほど恥ずかしい思いをしているのに、この男は。爆発寸前なのだ、こっちは! 自爆スイッチがあるなら押すぞ、本当に!

「だから、私はそなたのことが好きだと言って――あ」

「え」

 一秒沈黙。

「あ、あ、ああーっ!?」

 爆発というか、暴発した。自爆というか、誤爆した。

 ぼしゅっとラウラは真っ赤になる。そしてリィンも顔を赤くしていた。

「ラ、ラウラ。今のって、ていうかいきなり過ぎて……」

「ち、違う! 違わないけど違うのだ! そういうのじゃなくて、いや、そういうのだけれども!」

 まったく不測の事態。ここでこんな感じになるつもりではなかった。ちょっとこう、察してくれればいいなって。少しでも気付いてくれたらいいなって。

 そなたは私の何になってくれる。それはそんな一言でも勇気は要ったよ。でもまさかその勇気がスリップして、飛び出していくとか思わないだろう。

 ダメだ。頭が真っ白になる。目が回る。呼吸が苦しい。吐きそう。うぇってなる。

「俺は――」

 リィンが何か言おうとしている。

 不意にアリサの顔が脳裏によぎった。言いようのない後ろめたさが、胸の奥に去来する。

「言うな! 待て!」

 思いがけず叫んだ。どんな答えであっても、今ここで聞いてはいけない。これはフェアじゃない。アリサだって同じ位置に立つべきだ。

 生来の生真面目さが、ラウラにそう思わせた。

「返事はトリスタに帰ってからでいい。えっと……いきなりですまなかった。だがさっきのは本心だ。ずっと、前からだ。本当は今日言うつもりじゃなくて、物の弾みで、けどそんな軽率な感じでもなくて……」

 口を開けども、とにかく釈明の言葉しか出てこない。何かを取り繕わずにはいられなかった。

 逆にリィンは言葉自体が出てきていない。

 きっとこれ以上は会話にならない。

「さ、先にカレイジャスに帰る。今日は楽しかった。礼を言う」

 一息に告げると、目も合わせずに後ろを向く。リィンが身じろぎする気配が背中に伝わったが、ラウラは元来た道を小走りで駆け出した。

 これからリィンとどう接したらいい。アリサには言うべきか。友人たちには伝えた方がいいのか。

 なに一つ、頭の中はまとまってくれなかった。

 

 

 ――続く――

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――another scene――

 

 

 馬車馬のごとくジョルジュが働かされていた。機材の運び込みで、何度も整備室とドックを往復している。

「何やってるのかしら。慌ただしいわね」

 レイゼルの修復状況を確認に来たアリサは、先にその光景を見とめて小首をかしげる。

『主任ガ新タナ剣ヲ作ルトイウノデ、ソノ下準備ニ駆リダサレテイルノダロウ』

 ひとりごちたつもりの言葉に返してきたのは、待機中のヴァリマールだった。アリサはその足元にまで移動する。

「ゼムリアストーンを加工するってこと? 方法が見つかったの?」

『主任ナラ可能ラシイ。具体的ナ方法ハ、私ハ把握シテイナイガ』

「そうなのね……」

 あまりクララと話したことはない。しかしガイウスの話を聞く分に偏屈な人のようだ。

 特にクリエイターや職人肌の人というのは、見えないスイッチがあって、そこを刺激されない限りは創造も行動もしない。

 その辺りの気難しさは、技術職と談議を交わす機会の多かったアリサには理解できる部分でもある。

 つまり今回はクララのスイッチが、何かのきっかけで動いたということだろう。そのきっかけというのが何なのかは想像もつかないが。

 レイゼルに視線を移す。

 フルストームモードでパージした各武装の再接続は、まもなく終了するようだ。できれば二度とあんな機動はしたくない。

 メンテナンスが終わりかけるレイゼルの横、ケストレルの修復はまだかかりそうだ。

 片刃ナイフ《レヴィル》で断線させた伝達系のケーブルはすでに繋がれているらしく、四肢は正常に動くようだが、問題はエンジンだった。

 並列式オーバルエンジン。限界値を越える出力を捻出する代償に、熱暴走も辞さない安全性のまったく保障できない代物。現在は外部リミッターを取り付けて、一定以上のエネルギーを生み出さないように抑えている。

 一応、機体の修理はすると聞いているが、あれでは誰も使わないだろう。アリサはそれでいいと思っていた。

『何カ用事ガアッタノデハナイカ?』

「あ、ええ。レイゼルの状況だけ見に来たんだけど、特に私のやることはなさそうね。そういえばリィンは?」

『ココニハイナイ』

 一緒にランチでもと思っていたのに。それにできれば訊いておきたいこともあった。

 今日の演奏会で、ラウラが騎神の(ケルン)に入った時のこと。やっぱり気になってしまう。

「じゃあどこにいるの?」

『黙秘スル』

「え? なんで?」

『りぃんカラ、ソノヨウニ指示ヲ受ケテイル』

 なによそれ、あやしい。わざわざ口止めするとかどういうこと。

「教えて。誰といっしょにいるの?」

『ソレモ言エナイ』

「つまり誰かとはいっしょにいるのね」

『……コレガ誘導尋問トイウモノカ』

「教えなさい」

 さっきより強めの口調で言う。ヴァリマールは反抗してきた。

『起動者ノ依頼ダ。何ガアロウト、私ハ答エナイ。諦メルガイイ』

「レイゼルのブレイズワイヤー撃ち込んで、電気流すわよ」

『ラウラ・S・アルゼイド。彼女トノ外出予定ガアルソウダ』

 やっぱり。そうなるとますます核の中で何があったのか気になる。変に詮索するのはどうかとも思うのだが、そわそわして仕方がない。

 その時、頭の上から、一枚のプリント用紙がひらひらと降ってきた。同時に、なぜかドックに姿を見せていたシャロンが叫ぶ。

「ああー! リィン様が口止めをする前にヴァリマールから入手した核内部の画像データを、誤って紙に印刷した挙句に、うっかり足を滑らせてお嬢様の頭上に放り投げてしまうなんてー! このシャロン、一生の不覚ですわー!」

 わーわーゎーとシャロンの語尾にエコーがかかる。

 アリサはその用紙を拾い上げた。

 そこにはリィンの膝の上に乗ったラウラが、密着姿勢で顔を近付けるシーンが写っていた。ご丁寧に写真の横には、心拍数やら体温やら、諸々のデータ付きで。

「な、なにこれ。ヴァリマール、この時の状況を説明しなさい!」

 反応なし。逃げのつもりか、ヴァリマールは機能を停止し、休眠状態に移行していた。シャロンも消えている。

「~っ」

 ラウラの性格のこと、何もないとは思う。

 でもどうしてだろう。変に胸がざわつくのは。

 

 

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