虹の軌跡Ⅱ Prism of 《ARCUS》   作:テッチー

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第78話 剣を求めて

《剣を求めて》

 

 ルーレを滞在地として数日。その間に多くの学院生たちとも合流できた。

 自ら艦に足を運んできたレックス、ベリル。ちょっと遅れはしたものの、マキアスの情報で再会できたリンデ、ヒューゴ。アリサとミリアムが不意の遭遇を果たしたマルガリータ。夜間の飛行試運転中に通信を拾えたドロテ、フィデリオ。偶然発見できたエミリー、ニコラス。合計九名だ。

 賑やかさと頼もしさが増してきた乗組員リストを眺めつつ、アルフィン・ライゼ・アルノールは会議の内容に耳を傾けた。

「――なるほど、ヴァリマールの新しい剣か。うん、確かにいい案かもしれない」

 技術部門代表として出席しているジョルジュは、納得した様子で首をうなずかせる。二階会議室にて行われている今日の定例ミーティングは、カレイジャスの行動方針を決めるものではなかった。

 今後ますます激化するであろう戦いに備えての、現行戦力の見直しと増強である。とはいえ、どこからも支援提供を受けるわけにはいかない《紅き翼》としては、簡単に解決できない問題でもあった。

 そこでリィンの出した案が、ヴァリマールの新たな剣。

 やはり騎神は主戦力を担い、戦略レベルで外せない存在だ。その攻撃力の向上は、そのままカレイジャスの突破力に直結する。

「否定するわけじゃないが、新たな剣の有用性がどの程度か知りたいな。今のブレードでは不十分なのかい?」

 アンゼリカが質問した。先のゲルハルト戦で脱臼した彼女の右肩には、固定用の包帯が巻かれている。もちろん骨の整復は済んでいるが、無理に動かさない為の処置だ。

 彼女の問いにリィンは答える。どことなく顔色が優れない気がした。

「機甲兵用のブレードでは霊力を刀身に宿らせることができないんです。おそらくは武器の相性の問題で」

「ふむ、太刀ならそれができると。では霊力を刃に宿らせるとどうなる?」

「攻撃力の一点で言えば、オルディーネと並ぶことになります。それに太刀型の剣なら、八葉の技もダイレクトに反映させることができます」

 アルフィンは手元のファイルをめくると、以前の戦闘報告書に目を通した。

 ユミルで蒼の騎神と交戦した時は、霊力の強制回復ができなかったことで、出力低下による劣勢を余儀なくされた。そして霊力の宿ったダブルセイバーの一撃にブレードを弾かれ、さらにブースターの推力にも押し負けている。

 続いて先のルーレ戦では、《レイヴン》での高速飛行中に霊力の前面展開を果たし、空気抵抗を無効化することで最高速度の限界を破っている。

 これらの事象から、霊力は騎神にとって極めて応用性の高いエネルギー源だとわかる。転化する部位によって、攻撃、防御、速度などを格段に跳ね上げられるのだ。

 さらにそこに騎神リンクを併用すれば、一対一で太刀打ちできる相手はそういないだろう。

 確かにオルディーネにも届き得る力だ。

「けどヴァリマールが扱う太刀となると……それこそ難しいかもね」

 会議進行役のトワが息をつく。

「どんな材料がいるか、だれが精製するか、そのサイズも含めて、そもそも技術的に可能なのか。私たちにはその判断ができないよ」

 トワはジョルジュをちらと見る。ジョルジュは首を横に振った。可能か否かは、彼でも断言しかねるようだ。

 この会議に出ているのは、トワ、アンゼリカ、ジョルジュの幹部陣に、実行部隊を担うⅦ組、そしてオブザーバー役のサラだった。ちなみに別室では、新たに厨房管理長に就任したニコラスが、食材確保と調理に関する打ち合わせをシャロンとしている。

 資料から目を上げ、アルフィンは言った。

「必須なのはやはり技術者ですね。それも一流の。グエンさんにはお願いできませんか?」

「お祖父さまは……難しいかもしれません。今はノルドを離れるつもりはないようですし」

「そうですか……」

 アリサが難しいというなら難しいのだろう。無理を承知で孫娘から頼んで欲しいとは、アルフィンには言えなかった。

 実は以前にレイゼルのメンテナンス技師として、カレイジャスに乗艦してくれないかとグエンに話を持ちかけたことがあった。返答はNO。時代の転換期の中核にいるべきは、老いた身ではない。彼はそう言って断ったのだ。

 それに太刀となると、単なる機械工学とは勝手も異なってくる。

「G・シュミット」

 ひどく苦々しげな声が、難航しかけていた会議の空気を割る。毒杯を煽るように喉を絞ったのはジョルジュだ。

「シュミット博士になら頼めるかもしれない。ちょっと難ありだけど……会うことができて、興味を持ってもらうことができれば、なんとかなると思う」

「会えるんですか!?」

「い、一応面識はあるからね。どうしたんだい?」

 マキアスが思わずというふうに身を乗り出す。彼はステファンの事情を全員に説明した。シュミット博士に連れ去られ、そして連絡が取れなくなってしまっているチェス部の先輩のことを。

 低く呻ったジョルジュは、固い表情になって目頭を揉んだ。

「そうだったのか、ステファンくんが……。これはまずいかもしれない。手続きの上での面会をするつもりだったけど、急ぐ必要が出てきた」

「どうしてですか?」

「あの人は興味を持った対象は、とことんまで調べ尽くす。博士が彼のどこに興味を持ったかはわからないが――」

 マキアスの問いに渋面を浮かべたまま、「ただその研究手段は、相手が人であることを考慮しない」と続けた言葉には、不吉と呼べるものしかなかった。

 会議の流れを見守っていたサラが、ここで提案した。

「一度ブレイクタイムをいれましょう。急いで対応すべき件だけど、頭が煮詰まるといい案も出ないわ」

「……そうですね。それじゃ休憩にします。再開は十五分後で」

 トワが区切り、それぞれが席を立つ。

 アルフィンもそれに続こうとした時、リィンの様子がおかしいことに気付いた。

「リィンさん? 大丈夫ですか?」

 席を立ったものの、立ち尽くしたまま動かないリィンは、アルフィンの呼びかけにも応えない。

 不意にその体がぐらりと傾いた。

「え、リィンさん!?」

 駆け寄るよりも早く、彼は床に崩れ落ちた。接触した椅子が倒れ、けたたましい音が響く。

 意識の途切れたリィンを取り囲み、会議室は騒然となった。

 

 

《――剣を求めて――》

 

 

「意識はすぐに戻りましたが、ひとまず医務室で安静にしてもらっています。どうやら今回は騎神の過剰行使による反動ではなく、普通に体調不良だったようですね」

 再び会議室。エマの診立てを聞いて、一同は胸をなで下ろす。担架で運ぶより早いからと、彼女がリィンを連れて転移術で医務室に直行したのだ。

 今は厨房ミーティングを切り上げたシャロンが、彼を看病してくれている。

 原因は複合的なものだ。

 黒竜関戦での心身の疲労に続き、アリサとの夜の外出でどしゃ降りの雨に見舞われ、艦に戻ってからは“人には言えない騒動”で滅多打ちにされ、その後も体調不良の前兆があるにも関わらず、ラウラとの外出に付き合ったり、マキアスのバイク指導に立ち会ったり。他にも色々やらかして、一時は甲板の先にくくりつけられていたとも聞く。

 リィンを労わろうという皆の想いとは逆に、なぜかいつもより痛めつけられていたのだ。彼はタフだが、鉄で作られているわけではない。疲弊が重なれば、消耗もする。

 ただ唯一の救いはラウラの手料理を食べなかったことか。

「うっ……」

 その思考に至ったアルフィンは、あの夜の味をも思い出し、人知れず小さくえづいた。

 アレのあとは胃の中がぐるぐるとシェイクされる感覚が続いた。舌から味覚が失われ、体のしびれも二時間は取れなかった。不可避のトラウマだ。

「殿下? 殿下もお顔色が優れないようですが」

「えっ!? 大したことはないんです。リィンさんが心配なだけで!」

 誰あろうラウラに声をかけられ、アルフィンは嗚咽を飲み込んだ。

 リィンさんはああいうのを日常的に食べていたのね。今のわたくしと同じような気持ちで、ラウラさんにありのままの事実を伝えるに伝えられず。ああ、とても気持ちがわかる。秘密を共有してしまった、この何とも言えない背徳感と連帯感。

 今度リィンさんとお食事をご一緒したいわ。素朴な料理を同じテーブルで慎ましやかに頂きたいの。

 ひとまずはリィン抜きで会議が再開される。

 ヴァリマールの太刀を作るにはG・シュミットの協力が必要。同時にシュミットのそばにはステファンがおり、さらに身の安全が保証できない状況。

 現在の問題は、この二点だ。

「ルーレ工科大学に潜入しよう。それしかない」

 両手の指を顔前で組み合わせ、ジョルジュは嘆息をついた。

「僕の名前を出せば博士との面会はできると思う。でも手続きとスケジュール調整に時間がかかる。これ以上、日を伸ばすのはまずい」

「潜入……ジョルジュ君、でもそれは」

 トワが不安げにもらすと、「わかってる。不法侵入だ」と、心得た声音で答える。

「部外者の僕たちが承諾を得ずに、部外秘の資料が多く存在する研究棟の奥に入り込む。万が一ばれたりしたら、取り繕う術はないね。よしんば厳重注意で済んだとしても、それ以降にシュミット博士に会うことはまず無理だろう」 

 確実にシュミットと会う為、ステファンを見捨てるか。

 ステファンとシュミットの両方に会う為、ギリギリの綱渡りをするか。

「ジョルジュ先輩の言う方法でお願します!」

 彼の後輩たるマキアスに、前者の選択はなかった。懇願の目を向け、全員に同意を求める。

「もちろん気持ちはみんなマキアス君といっしょだよ。でも私たちはあくまでも《紅き翼》のクルー。今回のことも行動に移すなら、承諾がいるよ」

 卓上に置いていた艦長帽を持ち、トワの目がアルフィンに向く。

 現在の指揮系統として、艦の方向性を定めるのがトワ艦長なら、その行動を認可する最終決裁者がアルフィン皇女となる。

 開催される会議の全てにおいて、もっとも重要な席にアルフィンは座っているのだ。

「そうですね……」

 姿勢を正し、思案するアルフィン。

 なにやら穏やかではない雰囲気が漂っているが、現時点で人命救助を掲げるには少々大げさだ。

 ヴァリマールの剣を作成するにしたって、それはこちらの都合。本来はやはり正規の手続きを踏むのが道理だろう。

 皇族の宣言による正当性の保証とは、言わばグレーゾーンの行動に大義を与えるものであって、無限の効力を発揮するわけではない。ブラックゾーンのど真ん中を白く染めることはできないのだ。

 要するに、どんな後ろ盾がいようと悪いことをしたら捕まるという話である。

 むむーっと難しい顔を浮かべて一秒。

「認可しちゃいますっ」

 語尾を弾ませて、アルフィンは了承した。

 自分に集中していた全員の目が、『え、いいの?』みたいな感じで丸くなる。皆の代弁として、トワが確認の口を開いた。

「で、殿下? ありがたいんですけど、ちょっと決断が早すぎるような?」

「大丈夫です。ばっちりですから」

「な、なにがでしょう?」

 気合いがばっちり、だった。

 先日、ラインフォルト社のハイデル・ログナーを押さえる為、カレイジャスはルーレ空港に強制着陸した。その折、領邦軍に包囲されてしまったが、アルフィンが我が身を盾役とすることで時間を稼ぎ、結果として艦を守ることができた。

 怖かったが、誇らしくもあった。飾りの皇女としてではなく、みんなの役に立てたことが。

 ハイデル拿捕の一報が届いて領邦軍が撤退した後、艦に戻ったアルフィンを待っていたのは多大な心配と、それ以上の称賛だった。

 嬉しかった。立場を越えて、本当の意味で仲間になれた気がしたから。

 だから、また困っているみんなを助けたい。

「任せて下さい。全部の責任はわたくしが負います。ただですね。一つ条件があるのですが――」

 自信たっぷりに宣言してから、アルフィンは人差し指を立ててみせた。

 

 ●

 

「工科大に忍び込む!? そんなことになったのか……」

 ステファンの身を案じてなら仕方ないのかもしれないが、それにしてもリスクが高い。しかもそのままシュミットに、ヴァリマールの太刀作りの依頼をするという。

 ステファンという研究対象を奪われる形になるのに、そう簡単に応じてもらえるのだろうか。

 全ては博士の興味が向くかどうかに尽きる。

「で、いつだ?」

 身を起こそうとしたリィンは、「今夜だが、そなたは休みだ」と、ラウラにあっさり上体をベットに押し戻された。

 ずり落ちた掛布を胸まで戻しつつ、ラウラは言い含めた。

「自分の体調がわかっているのか? 今日は安静にしておくよう、シャロン殿からも言われているだろう」

 様子を見に来てくれたラウラと入れ違いで、シャロンは医務室を離れている。三十分は戻りませんのでと、わざわざ告げて。汗拭き用のタオルを取りに行ってくれるそうだが、そんなに時間のかかるものなのか。

「夜まで休めば問題ない。みんなに迷惑はかけたくないし、行く」

「うん、ダメだ」

 聞く耳持たず、ラウラは即答する。

「今回は一班編成で動く。そなたが必ず班員になる必要はない。それと、仲間に対して迷惑をかけるなどと軽々に口にするな」

「……怒っているのか?」

「ああ、怒っているな」

 そっぽを向いたラウラの横顔は、存外子供っぽく見えた。ちょっとだけむくれてしまっている。

「すまない。今回は頼らせてもらう」

「いつも頼れ」

 また言葉を間違えたらしい。つっけんどんな返答に内心焦ったが、ラウラの表情は幾分柔らかくなっていた。

「わかったらおとなしくだぞ。とりあえず粥でも作ってくるから」

「ほ、本気なのか……!?」

「どうして今冗談を言う必要がある」

 なぜだ。自分の体調を気遣えという本人が、なぜ俺にとどめを刺そうとしているんだ。

 ベッド横の椅子から立ち上がったラウラは、「ああ、そういえば」と、思い出したようにこちらを見る。

「そなたにシュークリームを作ると言っていたのに、結局渡せずじまいだったな」

「あ、ああ。お呼びがかからなかったから、てっきり失敗したものだと思ってたんだが」

 ならいつもは成功かと問われれば、首をひねらざるを得ないが。

「失礼な。ちゃんと成功したものもある。まあ、一つだけだったが……。実はそれをアルフィン殿下に召し上がって頂いたので、そなたの分がなくなってしまったのだ」

 耳を疑った。

「殿下が!? 召し上がったのか!? ラウラのシュークリームを!?」

「ふふ、そう残念がるでない。講評も頂いたし、そなたにはよりクオリティを高めたものを振る舞うつもりだ」

「そんなことを……いやそれより、殿下の反応は?」

「他に類を見ない独創的な味だと仰られた。もう少し詳しくお聞きしたかったのだが、早々に退室してしまわれてな。なんでも急用を思い出したとのことで」

 リィンは息を呑んだ。

 事件だ。帝国史始まって以来の大事件が起きていたのだ。

 これほどの事態が謝罪だけで済むのか。とりあえず殿下に会わなければ。

 いや、その前に今から作るという粥を回避せねば。煉獄アレンジの果てに、粥の定義からかけ離れた何かが出来上がるのは目に見えている。

「待ってくれラウラ。潜入作戦のことをこれから詰めていくんだろう。俺のために粥を作っている時間はないはずだ。ないはずなんだ!」

「なんだ、その力説は? 粥くらい手間もなく作れる。それに私は潜入班ではない」

「そ、そうなのか。ならフィーあたりか」

「フィーも入っていない」

 潜入ミッションなど彼女の十八番なのに。不思議に思うリィンに、ラウラは困り顔を浮かべた。

「実はアルフィン殿下から行動の認可を頂く際に、直々の条件を出されてな……」

 

 ●

 

「それじゃあ皆さん。気を引き締めていきましょう」

 闇夜に包まれたルーレ工科大学の正門前、潜入メンバーの中心で号令をかけたのはアルフィンだった。『了解です』と小声で応じる一同は、しかし一様に不安げな表情を隠せていない。

 その中でユーシスが念押しの確認をする。

「ここまで来てなんですが……本当によろしいのですか?」

「よろしいです、よろしいです。うふふ、潜入ミッションだなんて、なんだかドキドキしちゃいますわね」

 軽い足取りでくるりとターンするアルフィンは、普段の赤いドレスではなく、聖アストライア女学院の制服である。さすがにあのドレスは目立つ上に動きにくい。その点制服なら身軽だし、黒がメインカラーなので暗がりにも紛れやすい。

 “わたくしを潜入班に入れて下さい”

 アルフィンの出した条件はそれだ。

 当然のごとく反対されたので、理由立てて説明したところ、それでもトワには難色を示された。ならばと、ごり押し、熱弁し、さらには泣き落とし、その末にどうにか承諾を得ることができたのだった。敵地への侵入というわけではなく、身の危険度が低かったという理由も大きい。

 実際、アルフィンが出張ることにメリットはある。

 最悪の事態――たとえば潜入中に誰かに発見されても、緊急事態だっただのとアルフィンが素性を明かせば、その場を乗り切れるかもしれない。少なくとも情状酌量の余地もなく、軍に突き出される事態は避けられるだろう。

 加えて彼女が直接姿を見せることは、G・シュミットとの交渉でも優位に働く可能性がある。ジョルジュに言わせれば、それが決め手にはならないだろうが、話をする席くらいは用意してもらえると思う、とのことだ。

「さっそく作戦開始です。どうぞよろしくお願いします」

 見回すメンバーは全員が男子。ユーシス、マキアス、エリオット、ガイウス、ジョルジュである。

 万全を期すべき皇女の警護は、アルフィン自身が選定した。

 ある程度工科大の内部に詳しいジョルジュは必須として、以外の班員は彼女の一存だ。ここはまったく揉めることなく、『では殿方の皆々様、わたくしをお守りくださいね』というシンプルな一声で、必殺の逆ハーレムが形成されたのだ。

「いつまでつっ立てるのよ。さっさと行って目的済ませてくれる? 夜の0時回ってんだから、眠たくってしょうがないわ」

 気だるそうに言って、セリーヌがアルフィンの肩にぴょんと飛び乗った。逆ハーレムの中で、アルフィン以外の唯一の女子である彼女は、万が一の保険でもある。

 どのような理由かで作戦を失敗し、無理にでも逃げる必要ができたときの最終手段。すなわち転移術使いの同行は外せなかった。

 “見たところ”と“見えているところ”しか行けない転移術では、エマでもセリーヌでも同行の条件は変わらない。ならば人数が増えても支障のないセリーヌでという判断だ。

 閉まっている正門の柵と、その奥に設置されている守衛室に順に目をやると、最後にアルフィンはガイウスへと向き直った。

「警備員さんは近くにいますか?」

「今は離れているようです。問題ありません」

 一帯の気配を読み取ったガイウスはそう告げる。「わかった。多少の光なら気付かれなさそうね」と、了解したセリーヌが転移陣を展開した。

「昼に受付までは見に行ったからね。そこまで一気に飛ぶわよ」

 束の間に闇を晴らす光が弾け、皇女率いる潜入班は学内へと転移した。

 

 

 コツコツと廊下に足音が響く。日中なら気に留めないような微かな音だが、静まり返った夜間では思いのほか反響するものだった。

 一同は研究棟にまで進んでいた。

 照明の落ちた共用部に人影はなく、一歩足を進めるごとに冷えた空気がひそやかに震える。

 さすがは噂に名高いルーレ工科大学。内部は広く、研究室の数も多い。

「僕は元々、シュミット博士の弟子でね。トールズに入学する前、彼に師事していた時期がある」

 壁に張られたいくつかの掲示物に目をやりつつ、先頭を行くジョルジュがそう言った。

 素直にアルフィンは驚いた。

 かの天才博士は難儀な性格で有名だ。弟子など煩わしくて取らないというイメージが強いのだが、どういう経緯かでジョルジュはその才覚を認められたらしい。

 Ⅶ組の面々にしても初耳だったらしく、「それはすごいことじゃないですか!」とマキアスが口を衝き、それを「声のトーンを落とせ」とユーシスが冷ややかに諌める。「むっ……」と肩をすぼめるマキアスをよそに、横からエリオットが質問した。

「だったら工科大の推薦をもらえたんでしょう。どうしてここに進学しなかったんですか?」

「ついていけなかったんだよ、博士に」

 振り返らずに、ジョルジュは小さく笑った。

「技術ではなく思想にね。作ることが全ての人だったから、作ったあとのことは知らぬ存ぜぬ。それを誰がどう使おうが興味なし。もちろん発想力や妥協のなさは尊敬してるけど、僕の目指す先にいる人じゃなかった」

 作ることが楽しくて、それを使ってもらうことが嬉しいと彼はいう。楽しい先に嬉しいがあるなら、それは天職と言えるだろう。

 その言葉を聞いて、アルフィンはふと導力バイクにまたがるアンゼリカを思い浮かべた。

 その時、物思いに意識が向いていたせいか、うっかり床に足を引っ掛けてしまった。

「きゃっ!?」

「殿下!」

 前のめりになる体を、ユーシスがとっさに支えた。

「お怪我は? 足はくじいておりませんか?」

「ご、ごめんなさい。ありがとうございます」

「いえ、お気になさらず。……それにしてもお前は何をやっている?」

 非難の目はマキアスに向けられた。

「俺たちは護衛役でもあるのだ。俺が気付かなかったら、殿下は転倒されていたぞ」

「な、なんで僕だけに言うんだ!」

「お前が殿下の一番近くにいたからだ」

「うぐっ」

 言い返せずに喉を詰まらせるマキアスを、ユーシスはさらに責めた。

「ろくに動けないのなら、せめて殿下のお足元を照らせ。光るのだろう、その眼鏡は」

「光るか!」

「え、光らないのですか? それは困りました……」

 ユーシスの尻馬に乗る形で、アルフィンは残念がってみせる。冗談のつもりだったのだが、「も、申し訳ありません」と、マキアスは本気で受け取ったらしい。

「……ジョルジュ先輩、艦に戻ったら僕の眼鏡を改造して下さい」

「わかった。魔獣が引くレベルの光を発するように仕上げよう」

 ジョルジュなら本当に改造しそうだ。エリオットが焦ってマキアスを止めようとする。

「本当にいいの? 多分レンズを光らせるんだと思うけど、そんな至近距離の発光とかマキアスが失明するんじゃない?」

「もう決めたんだ。ユーシスにあそこまで言われて引き下がれるか。殿下が転ばないように、僕は命をかける」

「なにその決意……」

 彼らのやり取りを、アルフィンは興味深く眺めていた。

 年上の殿方たちの掛け合いはこんな感じなのね。子女の立ち振る舞いに厳しい女学院では、友人同士での大声はもちろん、喧騒なんかもご法度だったから、なんだかとても新鮮に感じる。

 果たしてわたくしの騎士様になって頂けるのは、どなたなのでしょう。

 それだけが目的の全てではないけれど、今回男性だけで班を固めたのには、そういう理由もなくはなかった。自らの横に立つ相手のイメージを掴めるかもしれないと思ったからだ。残念ながらその第一候補はこの場にいないが。

 物事を決める際に直感は大切だ。お兄様もイマジネーションだかインスピレーションだか、そのような感じのものを大切にしていると聞いたことがあったようななかったような。

「みんな、待て。誰かが近付いてきている」

 気配を察知したらしいガイウスが、低い声で注意を促す。誰かと言わずとも巡回中の警備員だ。

 夜間の当直がそう何人もいるわけではないだろうが、こちらが警備ルート区域を探索している以上、鉢合わせない道理もなかった。

 通路奥の曲がり角から、揺れ動くライトの光が見えた。

「こっちだ!」

 ジョルジュが走り、一同は続く。少し通路を戻ったところにトイレがあった。

 ライトに照らされる前にと急ぎ、それぞれが分かれて駆け込む。

 セリーヌは手近な物陰へ。ガイウス、ユーシス、エリオットは男子トイレへ。アルフィン、ジョルジュ、マキアスはもう一方のトイレへと。

「って、こっちは女子トイレですよ!?」

「暗がりで表示が見えなくて……」

「ぼ、僕としたことが……」

 しかも同じ個室に三人詰めである。ただでさえ狭い空間なのにジョルジュの太っ腹のせいで、余計に圧迫感が増している。

 そのジョルジュがぼそりとつぶやいた。

「こんなことならあれを持ってくるべきだったかな」

「あれってなんですか?」

「《リベリオン》というマスタークオーツです。先日ベッキー君が掘り出し物を見つけたと言って持ってきてくれたんですよ。まあ、しっかり有料でしたけど」

「どんな効果があるんですか?」

「光の屈折率に作用するステルス――平たく言えば透明化ですね」

「それをこの女子トイレで言うのは色々問題があるような……アンゼリカさんには黙っていてあげます」

「な、なぜそこでアンの名前が?」

「お二人とも静かに」

 しーっと人差し指を口に当てるマキアスは、耳を澄まして警備員の足音を聞いていた。しばしのあと、そのままオッケーサインを作る。足音が遠ざかったらしい。さすがに個室の一つ一つまでは確認しないようだ。

 女子トイレから出た彼らを待っていたのは、先に男子トイレから出てきていたメンバーだった。

「まあ非常時ではあったからな」とガイウスがフォローを入れ、「仕方ない……でいいよね」とエリオットが続き、「この変態眼鏡が」と、ユーシスが蔑む目を一人に固定する。

 当然マキアスは反論した。

「なんで僕ばっかり! 今回はジョルジュ先輩の発言の方が危なかったんだぞ!」

「さあ早く行こう。博士の研究室はもうすぐだ」

 その話は打ち切りだと言わんばかりに、ジョルジュは歩調を早めた。

 

 ●

 

 G・シュミットの研究室は一つではない。

 ワンフロア丸々を彼の所有区とし、機材や資料の置き場としてはもちろん、部屋ごとに異なる研究を進めていたりもするそうだ。

 ならば、そのどこかにステファンがいるはず。

「でも、どこなんでしょうね……」

 アルフィンは薄暗い研究フロアに目を凝らした。

 長い通路を挟んで、左右にいくつもの扉が並んでいる。フロア構造は単調だが、なにしろ広い。一つ一つの部屋を捜索する時間はないし、まごついていると警備員がまたやってくるかもしれない。

「探すのは案外簡単ですよ。……あれを」

「え?」

 ジョルジュが指差す先。遠くに見えるドアの枠が、ほのかに浮き立ってみえる。扉の隙間から室内の光がもれているのだ。

「博士が研究に没頭する時は、朝も夜も関係ありません。この時間に照明の点いてる部屋があるなら、多分そこでしょう」

 足音を立てないよう、慎重にその部屋まで近付いていく。

 頭の位置を上下にずらしつつ、六人全員でドアの隙間から中の様子をのぞいてみると、

「ステファン先輩……!」

 マキアスが言う。眼鏡をかけた短髪の少年が研究室の奥に見えた。どうやら彼がステファンのようだ。

 直立するX型の磔台に両手両足を縛られたステファンは、ぐったりと首を垂らしている。その頭にコイルのついた怪しげな金属製のメットが被らされていた。が、ここからでは安否を確認できない。

 すぐに室内に押し入ろうとするマキアスを制止して、ひとまずはセリーヌに先行してもらう。

 ほどなく戻ってきた彼女は「誰もいない。チャンスだわ」と、皆を急かした。

 それを聞くが早いか、やはりマキアスが室内に駆け込み、アルフィンたちもその後を追った。

「先輩! 先輩!」

「……う、マキアス君……なのか」

 ステファンのまぶたが弱々しく持ち上がる。よかった、一応無事のようだ。

 四肢の拘束を解除しながら、ジョルジュが訊いた。

「いったいこれはどういう状況なんだ? シュミット博士は?」

「わからない。僕の脳を調べるらしくて、ここ数日は身体データばかり取られてたんだけど、今夜から直接実験に移行するとかで。博士は必要な機材を取りにいくって、さっき部屋を出て行ったよ」

「間一髪で間に合った感じか……。とりあえずステファン君を解放する。話はそれからにしよう」

「ステファン……? 僕は被験体第三号だろ?」

「き、気をしっかり持つんだ! 身体検査だけでいったいどんな扱いを受けたんだ!?」

 一号と二号の行方が気になるところだった。

 まもなく自動ロック式の鉄錠が開き、憔悴したステファンが膝をつく。取り外したメットは磔台に引っ掛けておいた。

 マキアスとユーシスがステファンの両脇を支え、彼を立たせたその時、

「誰だ、貴様らは!」

 突き通る硬い声が室内に反響した。

 戸口に白衣の男が立っている。無造作に後ろに撫でつけた白髪に、シワの入った険しい老年顔。明らかに不審者を見る目を向けられていた。

 アルフィンもその顔は知っている。彼がG・シュミット。帝国を代表する叡智の一人だ。

「その研究材料をどうするつもりだ! ええい、離れろ!」

 なだめようとするガイウスとユーシスを押しのけ、研究材料と言い切ったステファンを磔台に戻そうと、シュミットはずかずかと歩み寄ってくる。

「待って、待って下さい。僕です。ジョルジュ・ノームです」

「ジョルジュ? ジョルジュだと!? なぜお前がここにいる!?」

「それを説明しますから、ひとまず落ち着いて下さいって」

「さては研究成果を盗みに来おったな!? この恥知らずのファットマンが!」

「んなっ、言いましたね!」

 聞く耳を持たないシュミットは、悪罵をわめき散らしている。

 これでは話にならない。しかも彼の指先は壁付けの警報機に伸びていた。このままでは警備員が来て、大きな騒ぎになってしまう。

「みなさん、博士を止めてください!」

 とっさのアルフィンの号令で、他の男子たちもシュミットを押さえつけにかかった。とにもかくにも話をできる状態にしなければ。

 そして偶然が起こった。

 激しく抵抗するシュミットの右腕が、磔台の鉄手錠に勢いよくぶつかったのだ。衝撃にガチンとロックが作動し、その腕は固定される。

「は、博士!」

 すぐに取り外そうとするジョルジュに「これくらい自分で外せるわ!」と、シュミットが蹴りを入れる。

 のけぞってかわしたジョルジュは、崩れた体勢を戻そうと腕を振り回した。今度はそれがシュミットの左腕に当たった。跳ね上げられた左手首が、右同様に磔台の手錠に直撃。ガチンとかかるロック。

「ぬおっ? ジョルジュ、貴様……!」

「わざとじゃないです! ユーシス君、マキアス君、ロック解除するから博士の足を押さえてくれ」

『了解しました』

 異口同音に応じつつ、二手に分かれたマキアスとユーシスが両側からシュミットに近付く。

 そしてまったく同じタイミング、同じ格好で二人ともこけた。喜劇のようだった。床に散乱していた報告書類らしい用紙を踏んで、足を滑らせたのだろう。

 受け身を取ろうとした彼らの腕は、それぞれシュミットの左右の足を磔台に押し付ける形になった。ガチンガチンと両下肢も固定される。

 ガタガタと揺れたせいで、磔台の上部に引っ掛けてあったコイル付きメットが落ちてきた。スポッと白髪頭にフィットイン。

「おのれ貴様ら! これが狙いかあっ!!」

 額に青筋を浮き上がらせて、ぎゃんぎゃん憤るシュミット。

「おっ!?」

 そこにガイウスの焦った声が混じる。

 大した動きをしていなかったはずの彼も、律儀に書類を踏んで足を滑らせた。よく見たら先に足を滑らせたエリオットが、ガイウスを後ろから突き押したようだ。

 ガイウスのそばにはケーブルだらけの謎の機材があった。数本の黒いケーブルが繋がっている先は、磔台とコイル付きメットだ。

 アルフィンは予感した。

 あら、これって良くない流れでは。

「が、ガイウスさん! ダメです!」

 警告を飛ばすが遅かった。ガイウスの長い腕が、寸分違わず赤いスイッチを押し込んだ。

「んはおっ! あばばばば!」

 瞬間、シュミットの脳天にスパークが弾けた。手足の先までビンと強張り、激しくのけぞる。メットのコイルがぐるぐると回って、絶え間ない電撃を流し続けていた。

「まずいわよ、コレおっさんやばいわよ! 電気の影響でか、アタシも全身が毛羽立ってきたし!」

「ど、ど、どうしましょう」

 尻尾まで逆立つセリーヌは、使い古しのデッキブラシみたいになっている。

 戸惑いながらも、アルフィンは状況を冷静に整理した。

 磔台から動けないまま、シュミットは電気責め。男性陣はそろいもそろって床にこけている。固定しているものは転移できないので、セリーヌに頼る術もない。

 今一番早く行動できるのは自分だけだ。

 でもどうすれば。磔台に接近するのは危険だし、よしんば行ったとしてもロック解除の手順がわからない。ジョルジュは磔台の端末を操作していたようだが。

「端末……!」

 ガイウスが起動させた装置に視線を向ける。ひとまず電気さえ止められれば、あとは任せられる。

 アルフィンは卓上の装置まで走った。おそらくこれが外部電源だ。

「停止ボタンは……」

 いくつかのスイッチやレバー、ダイヤルがある。適当には触れない。ジョルジュに見てもらうべきか。

「ア、ア、ア、アオッ! アオッ! アッアッアッ!」

 口から黒煙を噴き出すシュミットの惨状を見るに、そんな時間はない。

 考えるのよ、アルフィン。一発必中の勘頼りじゃ、絶対失敗する。リスクが少なくて、助けられる確率が高い手段は……――見付けた。

 ダイヤルだ。出力調整ダイヤル。これを弱めればいい。

「お願い!」

 祈りながらアルフィンは、ダイヤルを《MINIMUM》の方へと回した。

 セリーヌが硬直して、見上げてくる。

「な、なにやってんの……?」

「出力を下げたんです。これで――」

「いや、アンタが回した方向、《MAXIMUM》ってなってるんだけど……」

「え」

 

 

 

「意識混濁、面会謝絶。リハビリ期間も長くなるそうで、少なく見積もっても全治三か月だそうです」

 夜が明けて、諸々の処理が済んだ正午前。G・シュミットの容態を、トワが簡潔に告げた。

 カレイジャスの会議室には昨日のメンバーが全員顔をそろえている。大事を取って、リィンだけはまだ休息中だが。

 報告書を机に置くと、トワはどんよりと疲れの滲む目を持ち上げた。

 磔台からシュミットを解放して、近くの総合病院までセリーヌの転移術で救急搬送して、その後の手配は全てトワが段取りを付けてくれたのだ。

 とりわけ苦労したのは、工科大を納得させる説明だった。

 かねてよりの知り合いだったジョルジュは博士と個人的なアポを取り、先方から研究室に招かれた。その実験の最中に偶発的なトラブルが起こり、シュミットは誤作動した機械に感電してしまった。

 “それを私たちが助けました。”

 これを一連の顛末にしている。

 脳を最速回転させたトワのフルパワー弁論は、虚偽にも関わらず一切の矛盾を生まない完璧な理由付けで、最終的には大学側に感謝までさせた。

 一つ残る問題はシュミットが目覚めた時、彼の証言で真実が露呈してしまうことだが、そこは『事故のショックで意識が混同しているんですね。私たちがもっと早く助けていれば……』で押し通す手筈になっている。

 素直に謝りたい生来の良心と、《紅き翼》の活動を続けねばならない責任との狭間で、トワ艦長の精神はがりがり削られていた。

「なんでこんなことになっちゃったのかな?」

 憔悴気味のトワの問いに、潜入班を務めた男子陣は一様に顔をうつむかせた。

「いや、緊急を要する事態だったし……」

「あんなに紙が散乱しているとは……」

「博士が激しく暴れたので……」

「原因は一つには絞れないというか……」

「不幸な事故が連鎖したとしか……」

 歯切れも悪く、彼らは言う。その目がちらりと、とある人物に向けられた。全部の責任を負うと豪語した人物に。

「え? あら? わ、わたくし?」

 丸い瞳でアルフィンが見返すと、男子たちはまた下を向いた。

 殿下を責める気は毛頭ありません。でもひとまず何か仰って下さい。そうでないと、自分たちにこの場は収拾できません。

 そう訴えられている気がした。

「えー……っと、ですね」

 だって《ミニマム》と《マキシマム》を読み間違えちゃったんです。《MINIMUM》と《MAXIMUM》って似ているでしょう? せめて《LOW》とか《HIGH》とかなら分かりやすかったんですけど。今後の最重要改善点ですね。

 とまあ、これは言えない。

 なにせ帝国が誇る叡智に、こともあろうに皇女がとどめを刺したのだ。最大出力のロイヤルサンダーが炸裂し、白目を向いて『アビャア!』と叫んだシュミットの断末魔は、耳にこびりついて離れない。

 こほんと重々しく咳払いをして、

「博士が早く元気になりますよう、とりあえず皆さんで女神様にお祈りしましょうか」

 満面の笑みで提案してみる。他にすべきこともなく、静かに応じた全員が胸前で手を組み合わせた。

 ヴァリマールの新たな剣。その手がかりはきれいさっぱり消え去った。

 

 

 ――続く――

 

 




《剣を求めて》をお付き合い頂き、ありがとうございます。
今回からメインストーリー進行です。リィンが一時パーティから離れてしまいましたが、本編中その理由の一つに『カレイジャスの甲板にくくられていた』というのがあります。
これは前作の『ちょっとだけ閃Ⅱ(中編)の《Force majeure》』の出来事でした。
当時から、このタイミングでリィンが体調不良になることはうっすら考えていたので、その伏線としての意味合いもあったのですが、あまり意味のないことだったなと最近思い直しました。
わざわざ伏線を張らなくても、リィンを体調不良に追い込む理由など。

今回は珍しく、ほとんどアルフィン視点で進行しました。マキアス、ラウラあたりは非常に描きやすいのですが、アルフィンも実は描きやすかったりします。性格がストレートだからかもしれません。

さて近々本編とは別に、『夢にて夢みて』の続きの短編を各種データの下に更新します。なんでもありとなる夜の一時をお楽しみ頂ければ幸いです。

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