虹の軌跡Ⅱ Prism of 《ARCUS》   作:テッチー

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第66話 灰白の昇華

「こうして君たちに会えたことは嬉しく思う。しかし今回の件からは手を引いてほしい」

 ルーレ一層区にあるドヴァンス食堂。貸切状態の店内で、ここに至ったリィンたちの経緯を聞いて、その上でアンゼリカが言った第一声はそれだった。

 まったく予想しないわけではなかったが、それでも「なぜですか?」とリィンは問い返す。

「説明したとおりさ。これは私の実家が招いた状況でもある。突き詰めてしまえば、ただの親子ゲンカなんだよ。君たちは巻き込めないし、助力を受けるわけにもいかない」

 貴族連合のやり方を批判したアンゼリカに、彼女の父であるゲルハルト・ログナーは聞く耳を持たず、『正しさを主張するなら、力ずくで納得させてみろ』と極論を突き付けてきた。対する彼女も彼女で『ならば望み通りにしよう』と宣言し、単身屋敷を飛び出したのだ。

 幸いアンゼリカに賛同する者たちもいた。人数こそ少ないものの、彼らの協力を受けながら、来たる衝突に備えているという。このドヴァンス食堂も彼女を慕う協力組織の一つとのことだ。

 領邦軍にしてみれば正規軍に向けるべき警戒の目を、身内の姫君にも割かなくてはならないのだから厄介この上ない。早々に捕らえたいというのが本音のところだろう。

「それで、その格好ですか」

「シスター服、けっこう似合ってるね」

 合流したばかりのエマとフィーが言った。

 なぜか彼女らの手には、紙ナプキンに包まれたフィッシュフライがある。怪訝そうにマキアスが事情を訊いたが、エマははぐらかしていた。

「ああ、そうそう。ラインフォルト社の前で偉そうにしていた男がいただろう?」

「ええ、イリーナ会長の代行だとか」

 ラウラが言った。

「彼はハイデル・ログナー。元々は第一開発部の責任者で、私の叔父にあたる。仮にイリーナ会長が病気療養中だとしても、通常なら彼に指揮権が渡ることなどないはずだが」

「つまり、内部に根が回っていたと?」

「多分、クーデター勃発前からね。概ねはシナリオ通りなのだろう。これで理解してもらえたと思うが、ルーレの現状には深くログナー家が絡んでいる」

 リィンが言う。

「だから、アンゼリカ先輩自身がカタをつける。そういうことですか」

「一族の者としての責務さ。正直に言えばささやかな反抗心もあるがね。君たちの脱出ルートは確保しよう。今ならまだ――」

「ここまで来て、引き返すつもりもありません」

 きっぱりとそう告げる。アンゼリカは目をしばたたいた。

「あくまでもカレイジャスの活動として、ザクセン鉄鉱山の不当占拠と運用を止めに来ました。その目的の為に必要な一つが、イリーナ会長の解放です。これはアルフィン殿下から承認も頂いています」

「なるほど。私への助力が目的でルーレを訪れたわけではないと」

「もちろん先輩の安否を確かめたかったのもあります」

 だがあくまでも《紅き翼》からの派遣として来ている以上、それを第一の理由として据えるわけにはいかなかった。

 この線引きが、果たしてアンゼリカに伝わるのか――

「ふむ……なんとなく分かってきた。しかしイリーナさんの身を自由にするだけでは不十分だね。結局のところ圧の大元――すなわち私の親父殿が引き下がらない限り、ラインフォルト社の運営に制限はかかってくる」

 そこで一度言葉を切る。アンゼリカは今一度視線を全員に回して、小さく肩をすくめてみせた。

「君たちのことだ。帰れと言っても聞いてもらえないんだろう?」

「はい」

「……道を譲らないのはお互い様か」

 即答するリィンと同意のメンバーに、アンゼリカは説得を諦めたようだった。

「私のプランを伝えよう。その上で、君たちの介入理由に重なる部分だけ共に行動する。このスタンスで問題ないかい?」

「俺たちの事情に合わせてもらう形ですみません」

「かまわないさ。私にも利はある」

 自分たちの事情。端的に言えば、《紅き翼》の特質上、“アンゼリカとゲルハルトの親子ゲンカ”への直接干渉はできないが、“イリーナ・ラインフォルトの解放に繋がる事柄”に関してであれば――表立って明言はできなくとも――協力という形を取れる。 

 その辺りの理由をアンゼリカは察してくれたようだった。

「ではさっそくブリーフィングを始めようか。君たちがこのタイミングで現れたのは僥倖と言えるかもしれない」

 卓上に大きめの地図を広げ、おもむろにペンでマーキングしていく。

 印は三つ。一つ目がザクセン鉄鉱山、二つ目がラインフォルト本社ビル、そして三つ目が黒竜関。

「すでに準備はできている。こちらから仕掛けてやろうじゃないか」

 不敵に笑むアンゼリカの手の内で、くるくると軽快にペンが踊っていた。

 

 

《――灰白の昇華――》

 

 

 後ろの壁は一面がガラス張りで、ルーレの街並みを一望することができた。

 積み重なるように何層にも分かれた市街地は、そのまま街の発展模様を表している。

 何かを作っては試行錯誤を重ね、また新しいものを作る。そうした繰り返しの上に今日に至るルーレの繁栄はあり、その象徴こそがこのラインフォルト社なのだ。

「いい眺めだね、まったくすばらしい」

 そして今、その企業の頂点に私が立っている。

 ラインフォルト本社ビルの24階。イリーナ・ラインフォルトの執務机に腰をかけ、ハイデル・ログナーはティーカップを片手にくつろいでいた。

「さすがに茶葉も最高級か。西部からの取り寄せかな」

 戸棚にしまわれていた紅茶を勝手に拝借した次第だが、一口すすると味わい深い香りが口中に広がった。

 文句なしの風味には違いない。しかし自ら淹れなければならないことが煩わしい。

 確かラインフォルト家には専属のメイドがいたはずだったが、どこにも見当たらない。有能らしいとは聞き及んでいるから、傍らに置いて雑務をさせてやろうと思っていたのに。

 まあいい。動かせる人間などいくらでもいる。

「……ふむ」

 一つ気になることがあった。

 本社ビルに入る前に不意に現れた、やたらと騒ぐ妙なシスターのことだ。あの目つきには、どこか見覚えがある。

 記憶をたどってみても、思い当たる人物はいない。気のせいかもしれなかったが。

 念には念を入れておこう。

 ハイデルは机上の内線機に手を伸ばした。

「あー私だ。いやなに、少し気にかかることがあってね。ザクセン鉄鋼山にはいくつか定点カメラが設置されていただろう。――ああ、そうだ。その映像を今からリアルタイムでこちらに回してほしい。導力波の中継をすれば可能のはずだ。急ぎで頼むよ」

 思い過ごしであれば、それに越したことはない。が、万が一のリスクに備えることもトップたる資質の一つ。

「一応あれの準備もしておくか。……くくく」

 一人で笑んで、違う部下に指示を出す。

 本来は部署の異なる人間にあれこれ指図するなどできないが、いまや全ての指揮系統が己の手の内にある。 

 言葉どころか、指先の動き一つで事足りてしまうのだ。

 この椅子の座り心地は、なかなかどうして悪くない。

 

 ●

 

 連なる岩壁に囲まれた曲がりくねった山道の遥か先に、ザクセン鉄鋼山はあった。

 200年に渡って帝国の発展を支え続けてきた場所で、現在ではラインフォルト社とノルティア州が皇帝からの委託という形で共同管理を行っている。

「相変わらずの規模だな。巡回の猟兵の姿は見えないが……」

 物陰に隠れながら、リィンは鉄鋼山の全容を見渡した。アンゼリカのつかんでいる情報では、ここを守っているのは猟兵だ。しかし鉱員の姿は変わらずにある。操業自体は行われているようだ。

 長年の採掘によって大きくくり抜かれた山肌からは、くすんだ灰色の巨大な三本のパイプが伸びている。そこを通って加工前の鉄鋼原料が隣接する製鉄所へ運ばれているのだと、以前アリサから教わったことがあった。

 内部に続く搬入口付近には大小様々なコンテナが積み重なっていて、その脇に位置するのがルーレに直結する線路である。

 おそらくはその線路の最奥にアイゼングラーフ号が停泊しているのだろう。

「猟兵が近くにいないのは、アイゼングラーフの警備に人手を回しているのかもしれない。重要なのはそっちだろうしな。ここからどう動く?」

 ショットガンの弾数をチェックするマキアスは、戦闘を避けられないと踏んでいる。彼の見立て通り、スペースが広すぎて身を隠しながら潜入することは困難だ。

 リィンも太刀の鍔元の具合を確かめる。ゆるみ、がたつきはない。

「委員長の転移術で入口まで飛ぶ?」

「この距離ならやれなくはないですね。行きましょうか?」

「いや、それは控えておこう」

 フィーの提案に同意しかけたエマを、アンゼリカが止めた。

「エマ君の転移術とやらは便利だが、相応の体力も消費するというじゃないか。使うべき局面はここではない」

 エマが魔女であることは、道中で彼女自身の口から伝えてもらっている。アンゼリカは特に驚いた様子も見せず、『君がほうきで空を飛ぶ光景を、真下から心行くまで眺めてみたいね。眼福という以外に言葉が見つからない』と、(よこし)まな妄想に浸っているだけだった。

 ほうきで飛ぶ。怪しげな調薬。不思議な魔法。それらはおとぎ話のイメージが定着しただけであって、実際の役割は“世界の根幹に関わる歴史の伝承”――というのはエマの談である。

 ほうきで空を飛ぶのはともかく、怪しげな調薬も不思議な魔法もエマは扱っている気がしたが、リィンは余計な口を挟まなかった。

 アンゼリカが両の拳を打ち合わせる。

「正面突破で行こう。その前に作戦の最終確認だ。そうだな、ではラウラ君に頼めるか?」

「承知しました。まずはイリーナ会長の開放。そのまま彼女を引き連れてルーレに向かい、可能な限りハイデル取締の口から権限移行の旨を明言させる。全決裁権をイリーナ会長に戻した上で、黒竜関に構えるゲルハルト・ログナー候とアンゼリカ先輩が対決――で、いいですか?」

「問題ない。では注意点の補足をマキアス君」

「任せてください」

 役目を得た副委員長のメガネが光る。

「人手が限られている現状、複数地に人員を配置する作戦の同時進行ができない。故に段階毎のミッションフェイズを的確かつ迅速にこなしていく必要がある。つまり一度始めたら退けないし、中断さえできないということだ。それと黒竜関での戦闘だが――」

「上出来だ。そこからは私が言おう」

 マキアスの説明を遮り、アンゼリカが言葉を継ぐ。消化不良らしく、マキアスのメガネは曇っていた。

「親父殿との勝負は手出しの一切を無用で願いたい。たとえ私が劣勢だったり、あるいは敗北しようとも。君たちに頼むのは無粋な横やりが入らないための露払いだ」

 これは単純な話だった。

 ゲルハルトはアンゼリカに正しさの証明を力で求めた。要は彼女がゲルハルトを制すれば、ラインフォルト社どころか、彼は貴族連合からでさえ撤退する目算も高いそうだ。

 理由は性格によるところが大きい。

 アンゼリカの察しでは、ゲルハルトは皇帝の意に沿わぬクーデターに加担していることに、ある種の負い目を感じている節があるという。

 なにより一度口にしたことは曲げない気性である。

 詰まるところ、最終的にアンゼリカが勝てるかどうかなのだ。その一騎打ちに直接の加勢があっては意味がない。

「さて、確認はこんなものか。それでは皆、よろしく頼むよ」

 アンゼリカの号令を合図に、一同は鉄鋼山の入り口を目指して走った。

 

 敵はこちらの接近にすぐに気付いた。突然の事態に慌てる鉱員たちの間を抜けて、猟兵が武器を構えながら迫ってくる。

 基本装備は(なた)のような大剣とライフル。地味目なねずみ色のメットと装具に、リィンは見覚えがあった。

「ノルド高原にいた猟兵だ。確か《ニーズヘッグ》と言っていたか」

「ログナー家とも契約しているらしいが、まあ誰であっても関係ない」

 先行したアンゼリカが手近な一人を蹴り飛ばす。泰斗流の技の冴えは健在だった。

 フィーの双銃剣の乱射と、足元を狙うマキアスのショットガンが他数名を牽制する。ひるんでいる隙に駆動を済ませたエマの《ルミナスレイ》が隊列を分断し、それぞれに肉薄したリィンとラウラが剣閃をひらめかせた。

 すばやく敵の第一陣を無力化。

「止まるな、走れ!」

 愛用となった蒼耀剣をかざして、ラウラは全員を入口ゲートへと急かす。

 緊急用のシャッターが閉じられようとしていた。すでに半分近く降りている。

 全速力で走って順々に滑り込む。その途中でマキアスがこけた。「ぐむっ」とうめく声にフィーが振り返る。

「あ。リィン、マキアスが割れそうなんだけど」

「また眼鏡がか!?」

「ううん、今度は体の方」

「そうか、よかった……いやよくない!」

 厚みのある機械仕掛けの防火シャッターが、彼の胴体を真っ二つにしようとしている。

 リィンとフィーは二人がかりでマキアスの両腕をつかみ、安全圏へと引っ張り出す。数秒遅れていたら足が潰されているタイミングだった。

「す、すまない。助かった」

「安心するのはあと。早く走って」

 フィーに言われ、マキアスは再び足を動かす。また同じようなことがあってはかなわない。全員の状況を視界に入れておくため、また背面からの追撃にも備えてリィンは最後尾についた。

 前衛の攻撃力低下が気になったが、それは杞憂だった。先頭を行くアンゼリカが、立ち塞がる猟兵たちを残らず沈めている。

 鉄板が張り巡らされた搬入区画の通路を抜け、リィンたちはホームへとたどり着いた。

「アイゼングラーフ号……!」

 光沢を放つ赤い装飾に流線型の車体デザインは、《鉄の伯爵》と渾名されるかの列車に間違いない。以前ガレリア要塞へ向かう途中、傍らを通り過ぎて行ったことがある。

 この中にイリーナ・ラインフォルトがいるはずだ。

 奥と手前、二つの発着場をつなぐ橋状の通路の上に一同は立っている。隣接する階段を使えばホームまで降りられるが、

「待て、侵入者ども!」

 猟兵が追い付いてきた。人数も多い。全てを相手にしている時間はない。

 リィンがそう思ったとき、けたたましい警笛の音が鳴り響き、アイゼングラーフがゆっくりと前進を始めた。

 誰の指示なのか、思っていたより対応が早い。ザクセン鉄鋼山から離れてしまえば、こちらには手を出す手段がなくなる。

「飛び降りる!」

 言うが早いかアンゼリカが一番に柵を乗り越えた。ごろんと受け身を取って、車体の屋根に危なげなく着地する。

「アンゼリカ先輩に続くぞ」

「こ、こわいですけど」

 二番手、三番手でラウラとエマが飛ぶ。

「高さは五アージュぐらいか……くそっ」

 悪態をつきながらマキアスも飛ぶ。直後にゴンッと痛そうな音がしたが、どうにか成功したみたいだ。

 すぐさまリィンとフィーも続こうとしたが――できなかった。

 回り込んできた数名の猟兵に行く手を阻まれる。

「突破するよ」

「ああ、やるぞ!」

 他に選択肢もなければ、もたついている暇もない。少しずつ速度を上げるアイゼングラーフが足元を過ぎていく。

 リィンは上体を片側にひねって、後ろ足に力を込めた。

 八葉一刀流《疾風》。敵の隙間を縫うように駆け抜け、すれ違いざまに連続して刺突を繰り出す。

 二人の剣を弾き飛ばした。しかし三人目にはかわされる。その猟兵は至近距離から銃を向けてきた。発砲。

 撃ったのはフィーだった。正確な援護射撃が相手の銃身を撃ち抜く。着弾の衝撃が男の手を痺れさせ、足も止めた。

「どいてもらう!」

 上段に構えた太刀に炎が宿る。生き物のように激しく猛る炎。白刃に火龍が渦を巻いた。

 一刀と共に爆ぜる熱波。刀身を溶断された猟兵がおののき、リィンから距離を取った。辺りに鉄の焦げる臭いが充満し、他の敵もうかつには踏み込んでこない。

 威嚇としては十分だ。道も開いた。

「行くぞ、フィー! 俺たちも飛ぶ――あっ!?」

 柵に足をかけかけたリィンが見たのは、完全にホームを出たアイゼングラーフの最後部車両だった。客室車両ではなく、大型のコンテナをいくつも牽引しているようだが。

 間に合わなかった。どうやっても届かない。アンゼリカたちが何かを叫んでいたが、聞き取ることはできなかった。

「こっちもけっこうまずいかも」

 柵から足を下ろしたリィンの横にフィーが並ぶ。

 振り返ると、増援で集まってきた猟兵たちが二人を囲んでいた。隙間なく銃口を向けられ、打開できる展望がない。

 状況は最悪だ。

 派手に暴れて敵を引き付けて、フィーだけでも逃さなくては。

(……使うしかないのか、鬼の力……)

 息を呑んで、胸のアザに手を添える。

 扱える自信はない。暴走する危険もある。それでも――

「それはダメ。エリゼにも止められてたでしょ」

 リィンの考えを見透かしたようにフィーは言った。

「閃光弾を足元に投げる。私が囮になるからリィンは逃げて」

「それこそダメだ。逃げ切れる可能性があるとしたらフィーの方だ」

「囮を務めた上で逃げ切るよ。だいじょうぶ」

 無理だ。第一、閃光弾を使おうとした時点で蜂の巣にされる。

 猟兵の一人が言った。

「生かして捕らえるつもりはない。情報も別にいらん。全員撃ち方構え」

 かちゃりと引き金に指がかかる音。

 なにか、なにか方法は――

 

(私ヲ呼ベ)

 

 直接、頭に響く声。

 なぜ今? ここに来る気か。それこそ間に合わない。

 しかし懸念するよりも先に、リィンは拳を固めていた。ほとんど無我夢中で、声の主の名を叫ぶ。

「来い、ヴァリマール!!」

 その瞬間、リィンと猟兵たちの間に稲妻のようなスパークがほとばしった。

 屈曲した空間からにじみ出るように、青白い燐光を散らしながら、灰の騎神がその巨体を顕現させる。

「空間転移……? ミリアムとアガートラムみたい。リィン、そんなことできたの?」

「い、いや」

 目を丸くするフィーだが、当のリィンも困惑していた。狙ってやったわけではない。どちらかといえば、ヴァリマールが力を貸してくれたような感覚だ。

「き、騎士人形だと! いったいどこから!?」

「撃て、撃てえっ!」

 敵の銃撃を灰白の装甲が弾く。

 ヴァリマールは腕を持ち上げ、ぶんと払った。

 それだけで事は済んだ。悲鳴と悪罵を混じらせながら、猟兵の群れは蜘蛛の子を散らすように退散していく。

『ソナタヲ通ジテ、状況ハ理解シテイル。列車ヲ追ウノダロウ。早ク私ニ乗レ』

「それはそうなんだが……」

 この引っ掛かりはなんだ。逡巡したが、思い直す。今はアイゼングラーフに追いつかなくては。

 しかし通常のヴァリマールの推力だけでは不可能だ。幸いフィーとリンクすれば《レイヴン》の特性で、スピードを増強することはできるが、リンク範囲の制限があった。

 騎神リンクの有効距離はおよそ500アージュ。それ以上準契約者と離れれば、リンクブレイクを起こしてしまう。

 今からどれだけ飛ばしたとしても、こちらがアイゼングラーフに到達するまでに500アージュは過ぎるだろう。

 待て、それならば。

「フィー、俺と一緒にヴァリマールに乗るんだ」

「え、乗れるの?」

「準契約者なら(ケルン)に入ることができるはずだ」

 聞いたわけではなく知っていた。起動者になった時点でフィードバックされた知識だ。

 光が身を包んだ。戸惑うフィーの手を取り、ヴァリマールの核へと移動する。

 ただでさえ狭い操縦空間に二人である。フィーはリィンの膝上で横向きに座る形になった。

「これがヴァリマールの中……でもなんで私まで乗せたの?」

 興味深げに視線を動かしながらフィーが言う。この格好は気にならないようだった。

「ここで俺とリンクしてくれ。これならずっと近くにいるわけだから、範囲超過によるリンクブレイクは起こらない」

「なるほどね。でも大剣は?」

「なんのことだ?」

「大剣を持っては走れないんじゃない。ノルドの時もそうだったし」

「しまった……」

 重量のある機甲兵用のブレードを持ったままでは左右のバランスが崩れ、特に長距離での高速移動では支障を来たしてしまうのだ。

 双龍橋戦で介入した際に、初撃は《レイヴン》で特攻をかけたが、ブレードは後でカレイジャスから投下してもらっている。あれはそういう理由だ。

 剣はここに置いていくしかないのか。

『案ズルナ』

 ヴァリマールが正面モニターに機体の背面図を映し出した。

 ちょうど二つのブーストバインダーの中央に位置するように、大剣がマウントされている。

『コレナラばらんすガ傾クコトハナイダロウ』

「い、いつの間に」

『ツイ先日ダ。じょるじゅニ依頼シテ接続部ヲ追加作成シテモラッタ』

「依頼って誰が?」

『私ダ』

「……!?」

『彼ノ睡眠ヲ七時間削ルコトニナッタガ……問題ナイ』

 今までこんなことがあっただろうか。リィンは疑問を覚えた。疑問というよりこれは違和感だ。

「リィン、急がないと」

「ああ、すまない」

 フィーに言われて意識を据え直す。最優先事項を忘れるわけにはいかない。

 遠ざかっていくアイゼングラーフを強く見定め、リィンは下腹に力を込めた。同時、フィーとリンクをつなぐ。

 核が鳴動した。《レイヴン》の能力が反映され、ヴァリマールの内部フレームが黒く輝き始める。

 まだだ。この程度ではダメだ。このマスタークオーツは自分への負担も大きいから、これまでは力をセーブをしながら使っていた。それでも十分だった。

 しかし今は足りない。

「全開でいく。力を貸してくれ」

「了解」

 もっと速く。

 二人の意思が重なり、装甲の隙間から黒光がゆらと立ち昇る。巨人が闇をまとうような異様な光景だった。

 ヴァリマールが身をかがめ、前傾姿勢になる。バインダーが鋭く展開。踏みしめる足元が、ピシピシと蜘蛛の巣状にひび割れ始めた。

「しっかり俺につかまって、あと舌をかまないでくれ」

「わかった。私に遠慮しなくていい」

「悪いな。……行くぞ!!」

 解放。床を蹴ってロケットスタート。地雷が炸裂したかのような衝撃が襲ってきた。

 撃ち出された弾丸さながらに、ヴァリマールはホームから猛然と飛び出す。一秒前まで眼前にあった景色が、一瞬で後方へと流れていく。

 うねる岩壁に沿いながら線路を辿っていては遅い。遮蔽物のない高度まで上昇し、茶色と灰色だけが広がる大地をまっすぐに飛ぶ。

「……見えた!」

 最後の岩壁を超えると平地になった。見通しのよくなった視界の中で、アイゼングラーフがルーレに向かって走っている。

 高度を下げて、地面すれすれを直進。少しずつ距離が縮まっていた。車両に取り付きさえすれば、あとは屋根を伝っていける。

 あと100……50……10アージュ。

 ヴァリマールが腕を伸ばす。最後部のコンテナに手がかかる刹那、再び距離が開いた。

 進路が直線になったから、アイゼングラーフがトップスピードに乗ったのだ。それとは反対にヴァリマールの速度は上がらない。このままでは引き離されてしまう。

「くそ、なんで!」

「たぶん、空気抵抗のせいだと思う……っ」

 正面からの加圧にさらされ、胸にしがみつくフィーが苦しそうに言った。

 ヴァリマールの造形に流体力学の概念はない。戦闘機動の飛翔はともかく、ここまでの長距離超速度の移動は、そもそも想定されていないのだ。

 それでもリィンは速度を上げようと試みる。

 上がらない。暴力的な風が巨大な手のひらと化して、無理やり押し返してくるようだった。

 アイゼングラーフから引き離されていく。どうにもならない――

『集中シロ。意識ヲ尖ラセ』

 その時、ヴァリマールが言った。

「なにを……?」

『私ヲ信ジロ。状況ヲ打開スル』

 リィンはようやく違和感の元に気づいた。

 出会ってから今日まで、彼から何かを提案してくることはなかった。戦闘中においては、あくまでも必要な情報を教えてくれるだけだ。

 それが大剣を背に装着できるよう求め、空間転移で自分の窮地に駆けつけ、今もまた何かをしようとしている。

 そして彼は自らの一人称を“私”とは言わない。

 この短期間で彼に何が起こったのか。リィンに知るすべはなかったが、直感がヴァリマールに従うべきだと告げていた。

「よくわからないが、頼む!」

『応!』

 突き出したヴァリマールの手が開き、そこに無数の輝きが生まれる。これは霊力だ。

 前方に集約されていた光がぱっと弾け、機体を覆うようにして円錐状の展開を果たした。

 途端、正面からの負荷が軽くなった。

 あらゆる物理法則に干渉されず、しかし確かに世界に関わるこの力が、押し迫る膨大な空気を流してくれている。

「フィー、まだいけるか!」

「ん……!」

 限界を超えた全力のフルブースト。漆黒の帯を引くヴァリマールが、分厚い大気の壁を貫いて飛ぶ。

 加速、加速、加速。後部のコンテナ群を抜き去り、六両目、五両目、四両目とさらに先を目指す。

 三両目の窓から仲間たちの姿が見えた。警護の猟兵と交戦中だ。狭い車内で苦戦を強いられている。

 ルーレ市の外壁も遠くに見えてきた。このペースではルーレに到着するまでに、おそらく先頭車両にいるであろうイリーナを奪還することは難しい。

 もし先に緊急連絡を回されているなら袋のネズミも同然だ。到着と同時に、最悪はイリーナもろとも口封じもあり得る。アクシデントにかこつければ、理由はいくらでもでっちあげられるのだ。

「止めるしかない!」

 最後の加速。二両目を抜き、立て続けに先頭車両も追い抜いて、その先端部に手をかける。さらに体を引き寄せ、正面に取り付く形となったヴァリマールはその速度のまま地に足をつけた。

「ぐっ、ああああ!」

 フィーとのリンクは切って《レイヴン》の特性を消しているものの、通常のヴァリマールの力だけで止められるものではなかった。

 通信状態にした《ARCUS》に向かって叫ぶ。

「重奏リンクを使う! ラウラ、マキアス!」

『了解だ!』

 まともな説明もできなかったが、こちらの切羽詰まった声に二人は即応してくれた。二つのリンクラインが、車両を透過してヴァリマールまで届く。

 《ブレイブ》と《アイアン》の特性が合成され、強大な攻撃力と強靭な防御力が同時に発現した。

 アイゼングラーフのすさまじい質量と勢いを真っ向から押さえつける。

 関節という関節が悲鳴をあげ、燃えるように赤熱する。レールと接地する両足からは盛大な火花が噴き上がり、機体が分解せんばかりに激震する。

「ぐうっ……っ!」

 騎神へのダメージは起動者であるリィンにも跳ね返る。ひどい激痛に体がばらばらになってしまいそうだった。

 霊力が瞬く間に減少していく。アイゼングラーフは止まらない。視界いっぱいに赤い車体が大映しになる。

 ここで終わらせるものか。絶対に止めてやる。

「うああああ!!」

 四肢に《ブレイブ》の力を集中させ、その上から《アイアン》の硬度を重ねがける。黄金色と緋色の光が交錯し、繽紛(ひんぷん)たる煌めきが散った。

 全ての力を総動員し、先頭車両を持ち上げる。

 ジョルジュから聞いたことがあった。帝国製の列車は先頭車両にのみ、高出力の導力モーターが備わっていると。つまりは後続の車両のすべてを一両目で引っ張っている形なのだ。

 わずかに速度が落ち、徐々に減速していく。それでも200アージュ近く押し込まれてしまったが、やがてアイゼングラーフは完全に停止した。

 脱線させた一両目を慎重に地に下ろし、ヴァリマールは膝をつく。余力はかけらも残っていない。

「はあ、はあ……」

 息も絶え絶えにリィンがあえいでいると、耳障りなアラートが鳴り響いた。

 敵機の接近警報だ。最後部に牽引されていた数個のコンテナを突き破って、機甲兵が姿を見せている。

 ドラッケンが六機、シュピーゲルが二機。計八機がこちらに向かっている。元々ルーレに運ばれる予定だったのかはわからないが、彼らにとっては不幸中の幸いなのか、動けなくなった騎神の鹵獲か破壊をするつもりだ。搭乗しているのは猟兵ではなく領邦軍の兵士だろう。

「逃げるよ。さすがにもう戦えないでしょ。当初の作戦は失敗と考えるべき」

 モニターに映る機甲兵を一瞥してフィーが言った。

「だがヴァリマールを置いていくわけにはいかない。……ヴァリマール」

『ナンダ』

「俺を通じて状況は理解しているって言ったな。その状況、カレイジャスには伝えているか?」

『クララ主任ニ報告シテカラ出テキタ。主任カラ艦長ニハ伝ワッテイルハズダ』

「なら大丈夫だ」

 トワ会長なら様々な予測を立てた上で行動する。今の状況も可能性の一つとして考えてくれている。

 リィンは空を見上げた。

 遥か上空。雲の切れ間の向こうに、陽光を受ける紅い両翼が輝いていた。

 

 ●

 

「おいおい機甲兵も出てきたってよ!」

「なんだそれ。いつ情報だ」

「今だよ、たった今。ブリッジからの報告!」

 船倉ドックは騒々しさの真っただ中にあった。整備クルーたちが慌ただしく動き回っている。

 その中央を突っ切るように、アリサは走っていた。

「どいて下さい! どいて!」

 作業スタッフを押しのけて、ドックの一角を目指す。

 トワ会長が情報を教えてくれた。正確な状況はつかめないので、ヴァリマールからの報告と地上の映像を合わせた彼女の推察ではあったが。

 アンゼリカと合流したリィンたちはザクセン鉄鋼山に潜入したものの、敵の判断でイリーナを乗せたままアイゼングラーフが発進。ヴァリマールが力づくで列車を止めたが、動けない彼に複数機の機甲兵が迫っている。

 客観的な事実だけを拾うとそうなる。

 このままではリィンが危ない。当然イリーナも。

「アリサ君!」

 皆の中心で指示を出していたジョルジュが駆け寄ってきた。走る足は止めず、アリサは横目を彼に向けた。

「ジョルジュ先輩、いいですよね!?」

「ろくな起動試験もできてないけど、やむを得ないな。トワからの承認も得ている。まさかこんな形でのロールアウトになるなんて……」

 二人が向かう先に、一体の機甲兵が佇んでいた。多くのコードやモニターはすでに切り離され、スタンバイモードに入っている。

 一人の作業員がアリサの姿を見留めて、声を張り上げた。

「専属操縦士の到着だ。ハッチ開け!」

 遠隔操作で胸部のコックピットブロックが三重にスライド展開し、操縦席への入口ができる。

 ふと立ち止まり、アリサは自分専用の機甲兵の全容を見上げた。

 どこか女性的なスマートさがあって、シャープながらも力強さを感じさせるデザイン。

 剣は持たず、盾もない。両腕に直接装備する六角形のショートシールドがあるのみだ。体を守るどころか、その腕の一部分しかカバーできないような大きさであるが――それで十分だった。

 メインカメラの役割をする両眼はドラッケンなどのゴーグルタイプではなく、ヴァリマールと同じデュアルアイタイプにしてもらっている。

 機体カラーリングはレッド。だが血潮のような赤ではなく、炎のような紅でもない。

 それは深く、ヴァーミリオンとも呼ばれる鮮やかな朱色だった。

「起動シークエンスは君に任せるよ。僕らは兵装の同期に取り掛かる」

「わかりました」

 離れていくジョルジュ。アリサは梯子を使って操縦席へと乗り込んだ。

 左右から二枚、上から一枚の装甲がスライドし、コックピットが閉じられる。オーバルエンジンを始動。導力が駆動系を伝い、エネルギーが上昇していく。

 導力圧臨界値に到達。

 正面の三面モニターが光を灯し、外の様子が映し出された。外部マイクが最後の突貫作業をするスタッフたちの声を拾う。

『腕部に《レヴィル》収納確認』

 近接戦用の特殊ナイフ。

『腰部に《オーディンズサン》固定。初回交戦時は通常モードのみ』

 中距離用のアサルトライフル。

『ショートシールドと《A》、《B》……右腕部四点、左腕部一点、内部ロールモーション異常なし』

 対機甲兵戦闘の双璧をなす要。

『慎重にケーブルで持ち上げろ……《ヴァルキリー》接続……信号受信。第一から第五ボルトまでドッキング』

 特殊移動用の背部ウイングユニット。

 これらが五つの武装、そして――

『翠耀回路、正常に作動。全兵装にリンク……――コンプリート』

 “この機体に一つだけ七耀の力を宿す”。

 グエンにそう言われたとき、アリサが選んだのはこの力だった。理由はいくつかあるが、グエンは理解を示し、翠耀の特性の全てを活かす装備を考案してくれた。

 比類なき力をその身に従え、ハイエンド仕様の機甲兵が目覚める。

「オールチェック終わりました。いつでもいけます」

『もう済んだのかい? こちらも装備の接続が終わったところだ。だけどまだ出せないよ』

 ジョルジュの焦った声が返ってくる。外部音声ではなく無線だ。

「なぜですか?」

『上空2000アージュだからだ。今、降下できる地点をブリッジのヴィヴィ君が探している』

「そんな悠長なこと、一分一秒も惜しいんです!」

『わかっているが、こればかりはどうにもならない。極力急ぐから――』

「私だけ先行します。降下用パラシュートをつけてください。一つ、いえ二つ!」

 ジョルジュの説得を遮って、アリサはマイクに声を吹き込んだ。

『無茶を言わないでくれ! そんなことできない!』

「このままカレイジャスが着陸できる地形を見つけられない可能性もあります。よしんば見つかったとして、滞空高度を下げている内に狙い撃ちされる可能性だって。だったら単身で地上に降りた方が早いし、リスクも少ないはずです」

『……――っ』

 ジョルジュは迷っているようだった。一秒、二秒、急かしたい気持ちを抑えて、アリサは辛抱強く待った。

 果てしなく長く感じた五秒後に、ジョルジュは首をうなずかせた。

『わかった。君の言うとおりにしよう』

「ありがとうございます。すみません」

 急ピッチでパラシュートの取り付け作業が行われる。見事な手際で、ものの数分の内に装着は終わった。

「動きます。離れてください」

 スティックレバーを操作し、巨体が一歩を踏み出した。そのままハッチ前へと移動する。

 そこでブリッジからの放送が入った。

『あーあー、つながってるのかなーこれ。あ、つながってる? もうしゃべっていいの?』

 この間の抜けた声はミントだ。

『機甲兵が定位置へ移動したみたいだから、五秒後に後部ハッチあけるねー』

 ドック内に悲鳴と絶叫が入り乱れる。

「五秒!? 五秒って言ったか! 全員退避、吹っ飛ぶぞ!」

「係留してない物品がありますけど!? やばいやばい、ぎゃあああ!」

「シュトラールとマッハ号だけはしっかり繋いどけ! 空を駆けるリアルペガサスになっちまうぞ!」

「ポーラ様に、ポーラ様に殺される!」

 阿鼻叫喚の中で、ゆっくりと巨大なハッチが上下に分かれて開いていく。ドック内に流れ込んできた高空の大気が激しく吹き荒れる。案の定いくつかの資材が外界へと吸い込まれ、消えていった。

 アリサの機甲兵は強風をものともせず、解放されたハッチ際に立っている。

 高度2000アージュ。眼下には白い雲が広がり、その間から大地の起伏がかろうじて捉えられた。

 この下に窮地の仲間たちと、母がいる。

「ふう……」

 深呼吸。マニュアルくらいは読んだことがあっても、実際の降下なんてもちろん初めてだ。しかも機甲兵で。

 大見得を切ったはいいが、自分にできるのか。自問自答するアリサは、束の間瞳を閉じた。

 懐中時計にオルゴールを仕込むように、機械の中に別種の結晶回路を組み込むのは、父様が秀でていた技術だと聞いた。

 その父様の技術を最大限に活かして、お祖父様がこの機体を組み上げてくれた。

 そしてその機体に私が乗り、母様を助けに行く。

 これ以上ないデビュー戦の舞台だ。成せないことなんて、一つもない。

『うーん、風の音が強いなあ。ねえ聞こえてる?』

 覚悟を固めて瞳を開けた時、ミントが話しかけてきた。

「ええ、聞こえてるわ。どうしたの?」

『機体コードの登録がまだなんだよねー。ブリッジで識別信号も出すから、それだけ言って降下して欲しいんだけど』

「機体コード……名前でいいのかしら?」

『うん、それで大丈夫』

 アリサは両サイドのスティックレバーに挟まれたコンソールパネルを操作し、機体情報を引き出した。

 確かに機体名が空欄になっている。名前はもう決めていたが、こちらでも登録するのを忘れていたのだ。

 キーボードを叩き、それを打ち込む。

 カレイジャスを、仲間を守る為の力。嵐のごとく戦場を駆け、敵を打ち倒す鋼の騎士。そう、あなたの名前は――

 力強くフットペダルを踏み込んで、アリサはその名を告げた。

「機甲兵《レイゼル》、発艦します!」

 

 

 ――続く――

 

 






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