虹の軌跡Ⅱ Prism of 《ARCUS》   作:テッチー

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第35話 ユミル休息日(二日目)~フィーネさんレボリューションズ

 男子たちが料理と称された何かを食し、ことごとく煉獄送りにされるおよそ六時間前。

 エリゼはその部屋の扉をノックしていた。

 かれこれ三十分は続けているが、室内からの応答は未だにない。

「フィーさん、ミリアムさん! もうお昼ですよ」

 彼女たちの部屋である。今日も今日とて、午前十一時を過ぎても一向に起きてくる気配のない二人。

 ここ数日、エリゼは使命感と責任感からフィーたちを起こそうと何度も試みていた。しかしその全ては失敗に終わっている。

 昨日などは最終手段として、部屋の扉を外そうかとも考えていたくらいだ。

 もっともそれは実行寸前に、ちょっとした勘違いからセリーヌといっしょにエマとリィンを追跡することになったので、中断せざるを得なかったが。

 ノックを継続。貫かれる沈黙。

「うう……」

 これだけ叫んでいるのだから、絶対に目は覚めているはずなのに。きっとベッドから出るのが億劫なだけだ。毛布にくるまって無視を決め込む二人の姿が容易に想像できる。

「正午を過ぎる前には起きてもらいます。ドア外しちゃいますよ!?」

 やはり反応はない。ならば今日こそ本気だ。すでに扉の仕組みは調べている。狙うは上下部に見える蝶つがい。こんなシンプルな木製ドアを外すなど、ドライバー一つあれば事足りるのだ。

「バギンスさんから工具箱を借りないと。あ、私の身長だと踏み台もいるかしら」

「エリゼちゃん?」

 突破準備の為に一階に降りようとしたところで、後ろから声をかけられる。アリサの声だ。

 振り返ってみればアリサだけではなく、ラウラとエマもいた。

「皆さんおそろいで、どうしたんですか?」

「フィーとミリアムに用事があってな。というかエリゼにもだが」

「私にも?」

 エリゼの名を呼ぶのに戸惑っていたラウラだったが、もう呼び捨ての『エリゼ』に定着しつつある。

「そうだ。実は今日の午後に女子だけで集まろうと思ってな。軽食を囲みながら雑談に興じる程度なのだが。いわゆる女子会というやつだ」

「女子会……!」

 エリゼの通う聖アストライア女学院は、がちがちの規則に縛られた全寮制のお嬢様学校だ。

 生徒同士の寮室の行き来でさえ制限されるあの領域で、交友目的とはいえ私的な会合を開くなど、まずありえない。

 粛々としているエリゼだが、彼女とて十五歳の女子である。友達同士での気兼ねないおしゃべりはもちろん楽しい。

「そなたも一緒にどうかと思ってな」

「私も誘って下さるのですか?」

「当たり前だろう。もしかして都合が悪かったか? 何か予定があるなら無理にとは言わないが」

「予定なんかありません。ぜひ参加させて下さい!」

 ずいと前に出る。あまりの勢いにラウラが身をそらせた。

「お、おお、そうか。それはよかった。ところでエリゼもフィーたちに用があるのか?」

「あ、そうでした。用と言いますか、実は――」

 経緯を説明する。話を聞き終えるや、エマがエリゼの手を取った。

「エ、エマさん?」

「フィーちゃんたちの生活習慣を正す為にがんばってくれていたなんて……私、感動しました」

「そんな大層なことは――」

「いいえ!」

 ぐっと握る手が強くなる。

「トリスタで皆さんと分かれて、心配だったことの一つです。フィーちゃんは規則正しい生活を送れているか、ミリアムちゃんはお菓子ばかり食べて栄養が偏っていないか……他にもたくさんのことが心配で心配でなりませんでした」

 丸眼鏡の奥でうるむ瞳は、娘を案じるお母さんのそれだった。

「ありがとうございます。エリゼちゃんには今まで苦労をかけました」

「そんな……そんなふうに言われたら、私……あ」

 ねぎらいの言葉が胸に沁みた。徒労に終わる努力の繰り返し。孤軍奮闘の日々を思い返したエリゼの目じりに涙がにじむ。

「もう大丈夫です。私が来ましたから」

「っエマさん!」

 ついに現れた強力過ぎる援軍に、たまらず抱き付く。変わらずの包容力が彼女の頭を優しくなでた。

 胸にうずめた顔いっぱいに柔らかな感触が広がる。安心が去来する一方、小さな敗北感を覚えたエリゼはゆっくりと体を離した。

 コホンと咳払いして、佇まいを整える。

「失礼を。取り乱してしまいました。フィーさんたちなんですが、この通り内側から鍵を閉められていて中に入れないんです。格なる上は扉を外そうと思っているんですが」

「エリゼちゃん、意外と行動派ね」

「勢いがあって好きだぞ、私は」

 目をしばたたくアリサに、うんうんとうなずくラウラ。

 その折、エマは扉を眺めていた。

「……横スライド式の簡易錠みたいですね。これくらいなら大丈夫ですよ」

「え?」

 おもむろに眼鏡を外し、持ち手の一点を凝視する。

 エマの瞳が妖光を発し、カタカタとドアノブ付近が揺れ始めた。

 カタンとドアの内側で小さな音。

「開錠しましたよ。さあ、入りましょうか」

 驚くエリゼににこやかに笑いかけて、エマは当然のように扉を開けた。

「エ、エマさん、すごいです」

「もう魔女の能力を隠す必要もないですからね。さすがに導力式の機械錠だと無理ですが、今みたいな単純な仕組みなら何とかなります」

 部屋にフィーとミリアムの姿はなかった。ベッドには乱雑に毛布が置いてあるだけだ。

「実はもう部屋を出てたりとか?」

「そんなはずは……」

 アリサはそう言うが、エリゼは納得できなかった。

「これを見てくれ。妙に冷えるから変だと思ったのだが」

 ラウラが他の三人を呼ぶ。窓が開いていた。その窓縁には小さな靴跡が二人分。

「まさか窓から外に逃げた……?」

「いえ、違います」

 エリゼの見解にエマが首を横に振る。

「窓縁に靴跡があるなら、飛び降りた地面にも跡が残るはず。ただでさえ雪が積もっていますしね。第一、起きたくない二人がわざわざ寒い外に逃げるとは考えられません」

 窓を閉めながらエマは言う。

「つまりはフェイク。廊下での会話が聞こえたから、急いで策を練ったんでしょう。外に逃げたと思わせて、私たちが退室した後に改めて寝ようという魂胆です」

「でもどこにもいません。クローゼットの中は空ですし……」

「ああ見えてフィーちゃんは用心深いですから、私たちがちゃんと退室したかを確認してからじゃないと出てこないでしょう」

 迷いのない足取りでベッド側に移動する。

「だとすれば必然、隠れ場所は彼女たちからは見えていて、私たちからは見えない場所ということになります」

 エマは身を屈めて、両腕をベッドの下に入れた。右手と左手がそれぞれ何かをつかむ。

 じたばたと抵抗する音。意に介さないエマ。微笑は浮かべたままだ。

 やがて小賢しいちびっこ二人が、ずりずりと引きずり出されてくる。

「うふふ、フィーちゃん、ミリアムちゃん。よく眠れましたか?」

「……おはよう、委員長」

「おはよー」

「それは朝の挨拶ですね。もうお昼ですよ」

「……こんにちは、委員長」

「にちは―」

 性懲りもなくベッド下に這い戻ろうとする二匹を、エマの合図でラウラとアリサが押さえ込む。迅速な拘束劇にエリゼは呆然と立ち尽くすのみだ。

 終始笑顔を絶やさず、お母さんは言った。

「まずはお顔を洗いましょうか。絶対に目が覚める冷たい水で」

 

 

《☆☆☆フィーネさんレボリューションズ☆☆☆》

 

 

 エマの手にかかり、フィーとミリアムはあっという間に着替えさせられる。

 一度捕まってしまえば抵抗は無駄だと分かっているようで、二人ともおとなしく従っていた。

 身支度を済ました後は場所を変えて、現在はシュバルツァー邸である。

「女子会の場所は屋敷を使って下さい。大部屋もありますので」

 一階のリビング。そこに集まった面々にエリゼが言う。場所は未調達だったので、Ⅶ組女子にはありがたい提案だった。

「くああ」

 フィーがあくびをする。エリゼは呆れ顔で訊いた。

「あれだけ寝たのに、まだ寝足りないんですか?」

「成長期だからね」

「私も同い年なんですけど……」

 その横ではミリアムもあくびをしている。ちょっとでも目を離すと、二人してまた眠ってしまいそうだ。

「もう。せっかくフィーネさんになって勉強してきたのに、これじゃあ……」

「フィーネさん?」

 聞きなれない言葉に反応したのはエマだ。彼女はその名の由来を知らない。同じくレグラムで合流したラウラもである。

 余計なことは言わなくていいとフィーが目で訴えていたが、当然のようにスルーして、エリゼは現在進行中の『フィーネさんプロジェクト』のことを話した。

 服装、言葉遣い、立ち振る舞いを学ぶ、フィーとミリアムの為の淑女育成プログラム。ミリアムに関しては無理やり途中参加させた形だが。

「そんなすばらしい企画まで考えてくれていたなんて……!」 

 これこそがお母さんの悲願であり宿願。エマは強い感銘を受けていた。

「フィーちゃん、ミリアムちゃん」

 眼鏡がきらりと光った。にこやかにロックオンされたちびっこ達の身がこわばる。笑顔の意味を悟ったフィーは「待って。落ち着いて」と迫りくるエマを必死で止めようとした。

 もちろんエマは止まらない。ミリアムはフィーの後ろに隠れて、カタカタと震えている。

「女子会の準備とかあるんじゃないの? そんなことしてる時間はないと思う」

「時間はあるものではなく作るものですよ」

 言いながらゆっくりとにじり寄る。三つ編みおさげがゆらゆらと揺れていた。リビングの隅に追い詰められる二匹の子猫。

 フィーは助けを求める視線を飛ばす。エリゼもアリサもラウラも救援要請を受け流し、この後の段取りを話し合い始めた。残念ながら友軍は不在だ。

「さあ、こちらに来てください」

 すっと差し出された手が、フィーの白い頬をなでる。

 しなやかに緩やかに、しかし抵抗の意志を削ぐような手つきだった。

 抗えない感覚に陥ったフィーは、ミリアム共々肩を落とした。

 望まぬ変身の時間だ。

 

 まだ昼過ぎ。女子会は夕方から。作るまでもなく時間は十分にあった。

 エリゼの部屋に招かれた一同は、さっそくフィーとミリアムの改造に取りかかった。尚、先日セリーヌに見られたこともあり、エリゼの日記は彼女しか知らない場所に厳重に隠蔽されている。

「まずはお洋服ですね。どうしましょうか」

 こんな機会を夢見ていたのだろう。エマは楽しそうだ。反面、着せ替え人形にされるフィーたちのテンションは急降下だ。

「やるなら一思いにやって」

「尊厳ある扱いを希望するー!」

 もはや囚われの捕虜である。

「ああっ、このスカートはフリルがついてますよ。フィーちゃんとミリアムちゃんがヒラヒラを着てくれるなんて!」

 そして聞こえていないエマ。

 一度鳳翼館に行くと出ていったアリサが、紙袋を持って部屋に戻ってきた。

「お待たせ。今までとコンセプトを変えて、こんなのはどうかしら」

 取り出したのは二着のメイド服。

 それはラウラにも見覚えがあった。

「ああ、アルバレア城館に潜入した時のものか」

「シャロンが保管してくれてたの。とりあえずユーシスに返そうとしたんだけど、『そんなもの持っておけるか』って断られちゃったから」

「しかしフィーとミリアムにはサイズが合わないのではないか?」

「それは大丈夫。シャロンに裾直しとか全部やってもらったから」

「この短時間で? さすがと言うべきか……」

 一人一人のスリーサイズまで完璧に把握しているパーフェクトメイドである。見方を変えれば、歩く爆弾と言えなくもないが。うっかり口を滑らした時の被害が甚大だ。

「エマもこれでいい?」

「フリルがついてるから問題ありません」

 ヒラヒラなら何でもいいらしく、エマは快諾した。「いや、先に私たちに聞いて欲しいんだけど」と異議を訴えるフィーだが、毎度のことながら彼女には発言権と決定権が与えられていない。

 はぎ取られる衣服。着用させられるメイド服。

 黒のワンピースに白のフリルエプロンを組み合わせた形で、コットンレースのメイドキャップも忘れていない。

 メイドカスタマイズされたフィーネさん、そしてミリーちゃんの完成である。

 彼女たちの姿を見て、エリゼは満足そうに言った。

「お二人とも似合ってますよ」

「……やっぱり動きにくい」

「腰がきついだす」

 ミリアムは厳しいレッスンによって“ですます”口調が頭の中で混乱し、ミリーちゃんに変身した時に、なぜか“だす”口調の田舎娘になってしまうのだ。

 前回は緊張していたのが理由だったが、その口調に慣れたせいか今回は初めからデフォルト仕様になっている。

 お披露目もほどほどに、続いてはお決まりの淑女実技訓練だ。

 ラウラによる所作指導。

 アリサによるマナー指導。

 エリゼによる言葉遣い指導。

 その総監督を務めるエマ。

 みっちり一時間のレッスンである。

 いつも以上にハードな特訓を終えた時には、フィーとミリアムは疲労困憊でうなだれていた。エマが二人のそばまで歩み寄る。

「はい、二人ともおつかれさまでした」

「……お疲れでございます」

「ボクもだす……」

「それじゃ、行きましょうか」

『どこに?』

 異口同音に聞き返し、そろってエマの顔を見上げる。

「食事のお買い物です。フィーちゃんとミリアムちゃんで行ってきて下さい。必要な物のリストはここに書いてますから」

 メモ紙を渡されるフィー。

「行くのはいいけど先に着替えさせて」

「レッスンの成果を活かしながらの買い物なので、その服じゃないとダメですよ」

「ダメ?」

「はい」

「どうしても?」

「はい」

 こうなるとエマは揺らがない。無意味な押し問答だと理解したフィーは、ミリアムを連れてしぶしぶ玄関に向かう。

「私たちはお屋敷で別の準備をしてますから。気をつけて行ってきて下さいね。あ、ハンカチは持ってますか?」

「持ってるよ」

「雪の上は滑りやすいので走ったらいけませんよ」

「分かってるってば」

「言葉遣いが戻ってますよ?」

「分かって……ます」

 特訓の甲斐あって、以前よりは多少まともな丁寧語が扱えるようになったフィーネさんである。

 手を振るエマに見送られ、小さなメイド二人が屋敷を出た。

 

 ● ● ●

 

 メモ紙を開くと、こんなことが書かれていた。

『《千鳥》でお鍋の材料を買う』

『教会でハーブをもらう』

『《木霊亭》でデザートを買う』

 横からミリアムが手元をのぞき込む。

「わ、いっぱいあるよ。ボクたちだけで持ち切れるかな」

「何とかなると思うけど」

「どうやってさ?」

「軽いものから手に入れるようにしたらいいんじゃない? だから最初に行くのはハーブ。次にデザート。最後が鍋の材料」

「そっか。《千鳥》は屋敷のとなりだから一番後に回した方が楽だね。さすがフィー!」

「任せて」

 ブイサインを決めてから、フィーは教会へと歩を向ける。

 その後方の物陰では、

「フィーちゃんは適性なルート選択をしましたね。第一関門はクリアです」

 エマがうんうんとうなずいている。彼女の後ろに控えるアリサ、ラウラ、エリゼの三人も隠れて様子をうかがっていた。

 屋敷で別の用事をすると言ったのは、尾行を悟られない為の方便だった。

「首尾はどうですか?」

「上々だ」

「問題ありません」

「抜かりはないわ」

 エマの問いに各々返し、ちびっこ達の動向を見守る。

 おつかい実習のことをエマから内密に聞かされたアリサたちは、レッスン中に一人ずつ抜け出して、それぞれの仕掛けを施して回っていたのだ。

 そんなことをした目的は一つ。

 あらゆる障害や誘惑に負けることなく、フィーネさんとミリーちゃんは淑女を保ったままでいられるか。つまりは特訓の成果を測る為のテストだ。

「ですが、これは淑女検定C級の試験。まだまだこれからですよ」

 淑女検定とはエマが勝手に作ったランクアップ制度である。

 習得したスキルや知識に応じて、称号が付与されるのだ。その辺のさじ加減はもちろんエマ基準だが。

 現在、フィーはD級『ビギナーフィーネさん』で、ミリアムはE級『ファイトですね、ミリーちゃん』に設定されている。

 ちなみに最高位のS級は『フィーネさんオブ・ザ・ワールド』と『アルティメットですね、ミリーちゃん』らしい。

 二人は謎のランクを背負わされているなど思ってもいないだろう。

 まもなく教会に到着だ。

 

 

「ハーブが欲しいのでございます」

 礼拝堂の掃除をしていたリサは、目をぱちくりとさせて小さな来訪者を見返した。

 見慣れない使用人服の少女が二人。

 注視し、凝視し、ようやくリサは両手を打ち鳴らす。

「あ、もしかしてフィーちゃんにミリアムちゃん?」

 二人が肯定するとリサはおかしそうに笑った。

「どうしてそんな恰好をしているのかしら? 可愛いけれど」

「逃亡失敗したから……おつかいの刑なのです」

「もっと寝たかっただす」

「刑? だ、だす? ええと、ハーブが必要でしたね。ちょっと待っていて下さい」

 リサは保管庫から数枚のハーブを持って来て、フィーに手渡した。

「あとこれも」

「え?」

 手の平にころんと飴玉を乗せる。

「お祈りに来た子供用のキャンディーです。つまりアルフとキキ用ですが、良かったらお二人もどうぞ」

「私は子供じゃ――」

「ありがとうだす!」

 フィーがささやかな反論をするより早く、ミリアムがキャンディーに手を伸ばす。受け取ったその場で包み紙を開いて、彼女は飴玉を口に入れてしまった。

「あらあら。さ、フィーちゃんも食べて」

「でも私は」

「ふふ、遠慮しないで。おつかいだなんて偉いですね」

 優しい眼差し。包み込むような微笑み。

 フィーはエマと同種の匂いを感じ取った。

「……いただきます」

 この手のタイプにはなぜか逆らえない。素直にキャンディーを口に入れて、フィーは次の目的に向かうことにした。

 

 

「それでは、デザートを買いに行くのです」

「はーい!」

 エマたちがいなくても、一応はフィーネさんモードを維持しているフィー。もっとも彼女たちが知らないだけで、四人の監視員は後ろからついて来ているわけだが。

 目指すは《木霊亭》。買うはデザート。

 ユミルの郷はさして広くないから、移動距離事態は短くで済む。

 その道中。二人の足が止まった。

 道の端に雪だるまがあったのだ。フィーたちが興味深げに近付いていく。

 民家の陰から様子をのぞいていたラウラが「よし」と拳を握った。

「あの雪だるまは私が作ったのだ。我ながら秀作だと思う」

「ああ、どうりで……」

 エリゼも納得する。

 枝で作ってある雪だるまの表情が、やたらと凛々しいのだ。ダンディなヒゲもついているから、おそらくモデルは彼女の父、ヴィクター・S・アルゼイドだろう。

 エマが言う。

「ですがあの剣匠だるまだけでは、そこまでフィーちゃんたちの気を引けないのでは?」

「気になる言葉が飛び出てきたが……まあいい。雪だるまの腕に注目してくれ」

「腕? ああ、腕代わりに刺している枝ですね。……あら、あれって枝じゃなくて――」

「うん、猫じゃらしだ。この時期には生えていないので、雑貨屋で購入したおもちゃみたいな物だがな」 

 効果はてき面だった。

 まるで猫がそうするように、フィーたちはビシビシッと猫じゃらしにパンチを繰り返している。びよよんびよよんと不規則に動く物体に心を完全に奪われていた。

「さすがはラウラさん。残念ですが、フィーちゃんもミリアムちゃんも淑女ポイント減点ですね」

 専用の評価用紙にさらさら書き込むエマにアリサが訊いた。

「今さらだけど何なのよ。淑女ポイントっていうのは……」

「淑女ランクに必要な点数です。ちなみにアリサさんはAランクですよ」

「わ、私のランクもあるの?」

 称号は『ブリリアントお嬢様』である。

 このまま剣聖だるまと戯れ続けるかと思われたが、目的を思い出したらしくフィーは不意に動きを止める。ひょいと猫じゃらしを抜き取ると、そのままメイド服のエプロンに差し込んだ。

 放置していくには惜しい一品だったのだろう。猫じゃらしを持って行かれたラウラが「やられた……!」と物陰から身を乗り出す。

「私の猫じゃらしが……あとでうまく回収せねば」

 どうやら彼女も気に入っていたらしい。

 

 程なく《木霊亭》に到着したフィーとミリアムは、デザートを求めて店内に足を踏み入れる。

 カウンターの奥から店主のジェラルドが姿を見せた。

「……ん? 誰かと思えば嬢ちゃんたちか。なんだその恰好は?」

 彼は強面だ。おまけに体躯は熊のようである。

 初見で出会ったなら、まず間違いなく身構えてしまうだろう。性格もぶっきらぼうだから、なおの事取っつきにくい。

 が、その辺りを気にしないのがこの二人である。

「デザートを買いに来たんだけ……ですけど」

「甘いものがいいだすね」

「そうか、ちょっと待っていろ。ちょうどいくつか新作を作っていたところでな」

 その風貌からは想像し難いが、ジェラルドの趣味兼特技はお菓子作りだ。無骨な太腕から生み出される繊細な甘味は、地元の人間しか知らない隠れ名物だったりする。

 調理場からジェラルドが持って来たのはチョコレートケーキだった。

「スポンジを三層に分けて、味の違うチョコクリーム薄く塗ってある。上部のコーティングと飾りは風味を損なわないようにして――あん?」

 説明など耳に入っていなかった。眼前のチョコケーキに視線が張り付いて離れない。

「……ちょっと試食するか?」

「いいえ、お店に悪いからぜひお願いします」

「おいおい、そんなの気にするな……って食うのかよ」

 淑女の慎みで遠慮をしようとがんばってみたが、言葉の最中で耐え切れなくなったフィーである。ケーキの魅力には勝てないのだ。

「どうだ?」

「おいしいのです」

「だす」

 試食と言いつつ、ホールの八分の一カットを存分に堪能する。口元についたチョコをぺろりとなめてミリアムが言った。

「一番おいしいのを選びたいから、もっとたくさん試食したいんだす」

「ああ? ったく仕方ねえな」

 言いつつもジェラルドはケーキやらゼリーやらクッキーやら、これでもかと盛り込んだ大皿を卓上にどんと置いた。

「好きなだけ食っていけ」

 自分の手作りお菓子を食べてくれることが嬉しいらしい。

 二人の目が輝く。夢が詰まった一皿だ。金銀財宝より価値がある。試食の域は軽く超えているが、それらの全てを遠慮の欠片もなく平らげた。

 結局、最終的に選んだのは最初に食べたチョコレートケーキだった。試作品だし、食べっぷりが気に入ったからと代金は取られなかった。

 

 

 最後は《千鳥》。買うのは鍋の材料。

 当初は軽食程度を考えていたのだが、女子会の企画を知ったルシアが手料理を振る舞ってくれることになったのだ。

 次なる試練。

 《木霊亭》を出たフィーたちを待ち構えているのは、一匹の中型犬。

 またしても隠れて様子をうかがう監視員。今度は離れた木の裏からだ。

「これならどうかしら?」

「がんばって、バド……」

 シュバルツァー家の猟犬である。アリサが案を出し、エリゼが協力した形だ。

 ラウラとエマも成り行きを見守る。

「果たして効果があるだろうか」

「少し前までルビィちゃんのお世話もしていましたしね」

 二か月の間、学生寮で面倒を見ていた子犬の名だ。

「大丈夫よ。ほらよくあるでしょ。玄関先に犬が繋いであって、避けて通ってる内に道が分からなくなって迷子になるとか」

 エリゼが首を傾げる。

「いえ、私はありませんけど。もしかしてそれってアリサさんの実体験ですか?」

「そ、そんなわけないじゃない。子供の頃の話よ」

「あったんですね……」

 そんな感じのアクシデントを期待しての犬導入だ。バドは賢い。噛みつくことはしないが、エリゼの合図で吠えるなどの芸当はやってのける。

 フィーがバドを見つけた。

「あ、リィンのところの犬?」

 やはり二人とも怖がったりはしない。木の裏からエリゼは右手を掲げ、吠えるように指でサインを作った。

 合図通りにバドが一吠え。

「わひゃ!?」

 フィーはさして動じなかったが、ミリアムは驚いてしりもちを付いた。チョコレートケーキの箱をフィーが持っていたのは幸いだった。

 悪いことをしたと思ったのか、バドは耳を垂らして頭を伏せる。

「急に吠えたらダメだよ。あ、ダメなのでございますよ」

 クゥンと小さく鳴いて、バドはとぼとぼと屋敷に帰っていく。

 その悲しげな後ろ姿を眺めながらアリサは言った。

「うーん、今ひとつだったわね」

「無理をさせちゃったから、あとでバドに謝らないと……」

 申し訳なさそうにしているエリゼ。

 その折、ミリアムを起こしたフィーはすでに歩き出していた。

 

 

「鍋の材料ってなんだすか」

「……ねぎ?」

 雑貨屋《千鳥》。買い物かごを片手に店内を右往左往する二人。

 何鍋なのかを聞いていないので材料をそろえるのに苦労していた。

 とりあえず野菜から適当に見繕っていると、がちゃりと入口扉が開く。

「ふー、今日は休憩が遅くなっちゃったな。カミラさん、まだサンドイッチ置いてる?」

 昼食を買いにラックがやってきた。

「少しずつだけどケーブルカーも動き始めてるし、これから忙しくなるかなあぁぁあああフィーネさああん!」

 店内にフィーの姿を見つけるや、彼女の前まで脇目も振らずに高速移動する。

「あ、ラック……さん」

 名前を“さん付け”ができるようになったフィーネさんである。

「おっ、おっ、お久しぶりですねっ! ってぶふぉおおお!? そ、その恰好は!?」

 メイド服姿を見るなり、ラックは気絶せんばかりの衝撃を受けた。

「いや、ちょっと理由が」

「フモオオ!! すごく似合ってフモオオオオ!!」

 聞いていない。猛牛のごとき荒い鼻息が周囲の空気を揺らす。

「ミリーちゃんも一緒なんだね!」

「こんにちはだす」

「だすだす! うん、今日も相変わらずいいだすだよ!」

 興奮しまくるラックは何を言っているのか、もはや意味不明だ。

 ひとしきり暴走した後で、彼はいくらか落ち着きを取り戻した。

「ところで今日はどうしたんだい。姉妹そろってお買い物?」

 ミリーちゃんはフィーネさんの妹。ラックの中ではそういう認識になっている。

 リサやジェラルドはフィーネさんとフィーが同一人物だとすぐに理解していたが、先入観のせいか純情が盲目にさせているせいか、彼はまったく気付く気配がない。

 フィーは説明した。女子同士での食事会があって、その買い出しに二人で来ていると。

 それだけの説明だった。しかしラックは過大――いや、極大解釈した。

「フ、フィーネさん! 皆の和を取り持つ為にそんな企画まで立てて、しかも自らが挙手して食材調達に足を運ぶなんて」

「……え」

「しかもフィーネさんって、確かヘイムダルから逃げてきたんだろ? 持ち合わせの路銀だって少ないはずなのに皆の為に身を削るなんて……くううっ、天使が目の前にいるよ」

「別に買い物用のお金はもらってるから――」

「大丈夫!」

 自信満々にラックは親指を立ててみせた。

「ここは俺が全額出そう。何、気にしないでくれ」

「え、でも」

「途中まで選んでるものを見るに鍋だよね。食材をそろえるのは任せてくれ。ユミル鍋ならフィーネさんより詳しいしさ」

 フィーが二の句を継ぐより先に買い物カゴを取り、ぽいぽいと野菜や肉を入れていく。

 あっという間に大量の材料が集まった。ラックはさっさと会計まで済ましてしまう。

「ええと、ありがと……ございます」

「ふっ、礼なら僕と君を引き合わせた女神にしてくれ」

 精一杯にひねり出した格好いい台詞だった。

 これだけ買ってもらって本当にいいのだろうか。さすがにそう思ったフィーはお金代わりに渡せる何かを考えた。

 しかし何もない。せいぜい雪だるまから取ってきた猫じゃらしぐらいである。

 ――いや、もう一つある。フィーは小声でミリアムに耳打ちした。

「え、あるよ? だけどさっき」

「いいからちょうだい」

 ミリアムから受け取ったそれは、一粒のキャンディーだった。リサからもらった数は三つ。残っていた一つである。

 手の平の飴を見て気付く。泥だらけだ。包み紙の中にも泥が染み込んでいる。

 バドに吠えられてしりもちを付いた時に、地面に押し付けてしまったのだ。これでは渡せない。

「ん、どうしたんだい?」

「これしかないから、ラック……さんにあげようと思ったのでございますけど」

「プ、プレゼント!? フィーネさんが!?」

「でも汚れてるから、また今度に」

「もちろん頂くさ!」

 泥キャンディーをもらったラックは嬉しそうに口に入れる。じゃりじゃりと音がしていたが、今の彼は甘さしか感じていない。

 泥を噛みながら彼は言う。

「フィーネさん。君は欲しいものってある?」

「欲しいもの? えっと……」

 フィーが返答に困っているとラックは続けた。

「二日後に雪合戦大会があるんだ。リィンの仲間たちとユミルの人たちを交えての」

 トヴァルが企画した雪合戦のことだ。フィーの耳にも話は入っている。

「チーム戦なんだけどね。優勝チームと個人MVPには特典があるらしい。欲しいものを何でも用意してくれるんだって」

「そうなのですか」

「実はユミルチームとしての望みはもう決まっているから、これは動かしようがないんだけど。ただ、もし俺がMVPを取ったらその権利をフィーネさんの為に使いたい」

「私の為に? どうして?」

「そうしたい気持ちに理由はいらないさ」

 がんがん捻出されるかっこいい言葉。

 踵を返したラックは颯爽と戸口に向かう。もし彼がマントを着用していたなら、雰囲気たっぷりにはためいていたことだろう。

「だから欲しいものを考えていて。俺の勝利はフィーネさんに捧げる」

 とっておきの決め台詞を言い放って、ラックは《千鳥》から去っていった。

 しばし呆気にとられる二人。

 ミリアムが思い出したように言った。

「どうせなら屋敷まで荷物を運んで欲しかっただす」

 

 ● ● ●

 

 1ミラも使わずにおつかいを終えたフィーとミリアム。ようやく彼女たちはメイド服から解放された。

 事情を訊いたエマたちは焦りまくっていた。ラックに謝ろうにも謝りようがないからだ。

 その後は鳳翼館にサラ、クレア、シャロンも誘いに行ったり、各々時間を有意義に使って――

 時刻は一八時。

 フィーが(ラックが)調達した材料で作ったルシア特製のユミル鍋を囲みながら、和気あいあいと女子会は開始された。

 ちなみに女子たちは料理の手伝いを申し出ていたが、腕の見せ所だと言い張るルシアがほとんど一人で作っている。

 それが絶望の未来を回避したことに繋がったなど、誰一人知るはずもないが。

 食事を終えた後はエリゼの部屋で談笑である。内乱の情勢や今後の動向などにはあえて触れず、年相応の会話を彼女たちは楽しんでいた。

「おば様がケーキを切って下さったわよ」

「ハーブティーも淹れてきましたよ」

 アリサとエリゼがトレイを手に一階から戻ってくる。

 リサからもらったハーブで作った紅茶と、ジェラルドの新作チョコケーキだ。

「それにしてもサラ教官たち遅いですね」

 時計を見ながらエマが言った。ラウラが難しい顔をする。

「ヴェルナー殿が倒れてしまわれたからな。男子たちの夕食を作ってから、こちらに向かうことになったそうだ」

「ヴェルナーさん……心配ですね」

 不安そうにしているエリゼの肩をぽんと叩く。

「ただの過労だから大丈夫だ。少し休めばすぐに回復なさるだろう」

「過労ですか」

「うむ。ずっと重責を背負っておられたのだ。この機に休養を取って頂こう」

 ミリアムの《ARCUS》から受信アラームが鳴る。

「あ、クレアからだ。今から来るのかな? ――やっほー、ミリアムだよ」

 十秒にも満たない簡単なやり取りだった。通信を終えたミリアムが不思議そうに《ARCUS》をホルダーに戻す。

「クレアたち来れそうにないんだってさ。リィンたちの蘇生と状態の経過観察がどうとか言ってたけど。クレアにしては珍しく焦ってる感じだったなー」

 彼らの惨状を想像できる者はいない。

 うつらうつらと舟を漕ぐフィーを見て、エマが苦笑する。

「あれだけ寝てたのにまだ眠いんですか?」

「ん……お腹いっぱいになったし、今日がんばって買い物したし」

「そうですね。フィーちゃんは淑女検定C級に合格です。『ノービスフィーネさん』の称号をあげちゃいます」

「別にいらない」

「でもマナーをお勉強するといいこともありますよ」

「あめ玉一個で鍋の材料が手に入る、とか?」

「そ、それは違うと思いますけど」

 貢がせまくりのフィーネさん。彼女に魔性が付加されつつあった。

 フィーは目をこすりながら立ち上がる。

「どこに行くんですか?」

「目を覚ましたいから顔洗ってくる」

 

 

 顔を洗ったついでに何気なしに外に出てみる。冷たい風に当たった方が眠気も飛ぶだろう。そんな考えもあった。

 寝るのは好きだが、皆とこんなふうに時間を共有する方が好きだ。眠ったらその時間が減ってしまう。

 陽はとっくに落ちて、辺りは暗い。

 近付く足音が聞こえた。目を向けると今日二回目に見る顔があった。

「あ、ラックだ」

「う……君か」

「どうしたの?」

「仕事終わりで帰るところ。そのついでにちょっと……」

 ラックは屋敷の二階を見上げた。女子たちの笑い声が外にもれている。彼は頬を緩めた。

「君も女子会ってやつに参加してるんだろ。その……フィーネさんは楽しんでいるかな?」

「フィーネさんは……うん、楽しいって言ってたよ。鍋もおいしかったってさ」

「よかった。それが知りたかったんだ。それじゃ俺は行くから」

 再び歩き出したラックだったが、数歩も歩かない内に足を止めた。ゆっくりとフィーに向き直る。

「君も雪合戦に出るんだよな」

「まあ、強制参加みたいだし」

「今日、俺は一つの約束をしたんだ。ある人に勝利を捧げるってね」

 ラックの膝は震えていた。キジ解体現場を直視してから、彼はフィーに対してトラウマを抱いている。面と向かって話すだけでも、かなり心身が披露するようだ。

「俺は壁を乗り越えなくちゃいけない。怖れていたら何も掴めないんだ。君を怖れていたらダメなんだ……」

 消え入りそうな声で、自分自身に言い聞かすようにつぶやく。

「パープルさんも《紫閃》としての力を使うと言っていた。MVPを狙う為には俺も全力を出す必要がある」

 街灯が明滅する。陰影がラックの表情を変えた。足はもう震えていない。

 決意に拳を固め、彼は言った。

「俺はユミル六柱が一人、《乱撃》のラック。フィーネさんの為に君を倒す」

 致命的な矛盾を孕んだ宣戦布告。薄闇に雪は降り続けていた。

 

 

 ――END――

 

 




だーれにもなーいしょでお出かけなの、どーこに行こうかなー(ok!you got it!)

そんな感じのはじめてのおつかいストーリーでした。男子組に比べるとずいぶん穏やかな女子組です。どこまでいけるか淑女検定。
休息日二日目はこれにて終了となります。この日の流れをまとめてみました。


11:00 フィー、ミリアム起床させられる。

11:30 フィーネさん、ミリーちゃんに変身。レッスン後にお買い物。

13:30 お買い物終了。全員、鳳翼館に移動。エマとアリサでシャロンを誘う。フィーとミリアムでクレアを誘う。ラウラがヴェルナー料理長を処刑。サラは話している女子達を見て、ジェラシー。トヴァルに料理勝負のセッティングを依頼。
(ちなみにサラはラウラが誘うはずだった。先に厨房に料理を作りに行ってしまったので、その時点でサラに女子会のことを伝え損ねている)

17:00 男子たちが処刑場に集結。未来を奪われかける。

18:00 お姉さんたちの介抱。トヴァルさんの好感度が死ぬ。男子たちは一命を取り留めたが、アフターケアでサラたちは鳳翼館に留まる。女子会参加は見送り

19:00 ラックの宣戦布告。

こんな感じです。ちなみに男子組のターニングポイントはラウラだったりします。
13:30時点で遅いと使えなくなると思って、先に厨房に行っているのですが、その前にサラに一言女子会のことを言っておけばよかったのです。
そうすればサラはシャロンたちも女子会に誘われているだけだと認識し、余計なジェラシーはしなかったでしょう。ともすればヴェルナーさんの運命も変わっていたかもしれません。男子たちが煉獄に行くことも……

さて、次は休息日三日目。これはショートショート詰め合わせスタイルで、前作終盤の『そんなトリスタの日常』形式でお送りします。

次回『そんなユミルの一日』。引き続きお楽しみ頂ければ幸いです。

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