虹の軌跡Ⅱ Prism of 《ARCUS》   作:テッチー

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第31話 ユミル休息日(一日目)~猫と妹の追跡

 

 窓から外を眺める。一面の銀世界とはこういう景色を言うのだろう。

 路面や家の屋根を染める雪化粧。白い街並みが広がっている。

 もちろん昼を過ぎるころには住人の靴跡だらけになってしまうけれど、一日経てばまたリセットされるというのが風情だ。

 こんな安穏とした感想を思えるのは、自分が雪の降る地方の出身ではないからか。実際、郷の人たちは交通の不便やら雪かき労働やらで、悠長なことを言っていられまい。

「窓を開けるのは……さすがにやめておこうかしら」

 ちょっとだけ換気をと考えもしたが、きっと一分もしない内に凍えてしまう。

 伸ばしかけた手を引いて、エマは窓から離れた。

 合流した仲間たちが鳳翼館に泊まっていることは聞いていたが、まさか一人一室も与えられていたとは。

 この時勢で旅行客がいないからというのもあるだろうが、三食に加えて温泉付きという、至れり尽くせりの厚遇だった。

 そろそろ約束の時間だ。

 鏡台の前に座り、軽く身だしなみをチェックする。ふと視界の端に、台に置いたままのそれが映り込んだ。

 一枚の古ぼけた封書。

 異変に見舞われたローエングリン城。あの破れた肖像画の部屋にあったものだ。

 中から三つ折りにされた便箋を抜き出し、丁寧に開く。何度も読み返してはいたが、エマは改めて目を通してみた。

「……どうして」

 なぜこれがあの場所にあったのか。それは疑問ではない。封を開けた時点で答えは判明している。

 問題は内容。なぜこんなことを書いてあるのかが、エマには理解できなかった。

 コンコン、とドアをノックする音がする。

「委員長、入っていいか?」

「え? は、はい、ちょっと待って下さいね」

 慌てて便箋を封に戻し、とりあえず枕の下へと隠す。

「すみません、お待たせしました」

「いや、急かしたならすまない」

 扉を開けるとリィンが立っていた。どこか控え目な態度だ。単身で女性の部屋を訪れることを遠慮していたのだろう。

 基本的に彼は紳士なのだ。余計な不可抗力を発動させなければの話だが。

「もう十時を過ぎていますし、気にしないで下さい。ところで、どうでしたか?」

「あったよ。母さんに頼んでもらってきた」

「助かりました。ありがとうございます」

 よかった。これで何とかなる。手さげカゴに入ったそれを受け取ると、エマは嬉しそうに言った。

「もう俺に手伝えることはないか? できることがあれば言ってくれ」

「トリスタでもユミルでもリィンさんは変わりませんね。でしたら、こんなお願いをしてもいいでしょうか」

 室内に引き返すと、エマは鏡台のイスを適当な位置に置き変えた。リィンに向き直り、彼女は言う。

「これができあがるまで、よかったらお話相手になってくれませんか?」

 

 

 ☆☆☆《ユミル休息日 ~猫と妹の追跡》☆☆☆

 

 

 リィンは椅子に座り、エマはベッドに腰掛けていた。

「なるほど、レグラムでもずっと作っていたのか」

「そうなんです。でも途中で材料がなくなってしまって」

 会話をしながらも、手の動きは止まらない。かぎ針を使って、手際よく毛糸を編み込んでいく。エマが作っているのはマフラーだった。

 作業工程はすでに半分以上を終えている。今は昼前。このペースなら割と早くに仕上がりそうだ。それで件のマフラーは誰の為のものかと言えば、

「セリーヌも喜ぶだろうな」

「どうでしょう。素直じゃないですから」

 これほどの期間をセリーヌと離れ離れに過ごすのは初めてだった。彼女を想い、再会したら渡そうと少しずつ編み進めていたのだ。

 渡したところで『人間の考えることは分からない』だとか言って、そっぽを向くのは目に見えているけど。

「セリーヌとの付き合いは長いのか?」

「生まれた時からですね。本格的に魔女の修業に入る前も、使い魔として私のそばにいてくれました。姉妹も同然に育ったんです」

 どちらが姉で妹かと問われれば、少し困るところではあるが。自分が姉のようでもあるし、妹のようでもある。その逆も然りで、セリーヌにとっても多分同じだろう。

「……委員長、実は前から思っていたんだが」

「え?」

 突然真剣な眼差しで、リィンはエマの目を見つめた。

「あ、あの……?」

「訊きたいことがあるんだ」

 二人きりの部屋。マフラーを編んでいるところをセリーヌに見つかりたくなかったから、部屋の鍵は閉めている。

 何を訊くつもりなのか。ベッドに座っていることが、急に落ち着かなくなってきた。

「委員長」

「は、はい!」

「もしかしてその眼鏡って伊達なのか?」

「は、はい?」

「今みたいに細かい作業もスムーズにこなしてるし、まあ、何となくなんだが」

「………」

「委員長?」

 そうだった。彼はリィン・シュバルツァーなのだ。肩の力が抜けるのを感じながら、エマは他意の欠片もない朴念仁の顔を見返した。

「ええ、そうです。このレンズに度は入っていません。決して視力がいいわけではないですけど、魔女の術を併用すれば不便を感じることもありません」

「……訊いたらまずいことだったか? なんだか怒っているような気が……」

 起伏のない口調でエマは言う。

「怒ってはいません」

「それならよかった」

「よくもありませんが」

「ど、どっちなんだ!?」

 焦るリィンに、困ったように笑いかける。

「冗談ですよ。気にしないで下さい」

 何が冗談なのかも、彼には分かっていないようだ。しきりに首をひねっている。

「でもなんで伊達眼鏡なんかかけてるんだ?」

「魔女である私と、Ⅶ組である私。その境目の象徴がこの伊達眼鏡……なんでしょうね。故郷にいた頃、眼鏡はかけていませんでしたし」

 つまりは偽りの自分を自覚させるものだ。使命。その一語はいついかなる時も、心に留めておかなければならないから。クロウが己の本分は《C》だと言い切ったように、自分の本分は魔女であると忘れない為に。

 それがたとえ、どんなに居心地のいい場所であっても。

 結果から言えば、彼と違って私は、自分の役割に徹し切ることができなかったのかもしれないが。

「もう隠す必要もなくなりました。だから外してもいいんですけどね。どうでしょうか?」

 試しに眼鏡を取ってみる。あっさりと彼はこう言った。

「どっちでもいいんじゃないか?」

「いえ、もう少し考えて頂けると……」

「眼鏡をかけていてもいなくても、委員長だしな」

 何の気なしの言葉が、胸を突く。

 どちらか片方が本当で、もう片方が偽ということもない。魔女でⅦ組で。そんなエマ・ミルスティンが自分たちの知る委員長なのだと、リィンはそう言っているのだ。

「そう、でしたね。ふふ、ありがとうございます」

「なんで礼を言われるのかは分からないが……ただ、眼鏡を取った委員長も新鮮だな。そっちもいいと思うけど」

「……簡単にそんなこと言ったらダメですよ」

 意識せずにこういうことを口にするから、この人は。私はリィンさんの導き手だけど、“そっちの方面”はとても導けそうにない。

 手が止まっている自分に気付いた。いけない、もう少しだからがんばらないと。エマは毛糸に手を伸ばす。

「あら? 白い毛糸ってもう無いんですか?」 

「毛糸なら何でもいいのかと思って、目に付いたのを適当に持ってきたんだ。白が必要だったのか」

「私ったら色の指定をするのを忘れていました……ごめんなさい」

 セリーヌの黒毛と対照的な色にしようと白色を選んだのだ。

 かごの中に赤色や青色は多くあるが、白色の毛糸は残りが少ない。これだけだと足りない。

「だったら屋敷に取りに行こう。使い差しを持って来てしまったが、新しいものもあったように思う」

「いいんですか?」

「もちろんだ。またここに戻ってくるのも手間だし、なんなら残りの作業は俺の部屋でやるといい」

「え」

 言葉の意味を反芻する。言葉通りの意味と理解する。

「ええ!? それはちょっとよくないような……?」

「セリーヌに見つかりたくないんだろ? 鳳翼館よりは気を払わなくていいと思うが」

「ええっと、理屈は分かりますが」

「遠慮しなくていい。じゃあ、行くか」

「そ、そんな強引に。どうか私の話も聞いて下さい……ああ」

 どうやら行くしかないらしい。半分あきらめて、エマはベッドから腰を上げた。

 

 ● ● ●

 

 ――時間は少し遡る。

 リィンよりも早く、エリゼは鳳翼館を訪れていた。

 目的は一つ。いつまでも寝ているフィーとミリアムを叩き起こす為である。

 トリスタではエマの役割だった彼女たちの生活管理を――誰かに頼まれたわけではないが――エリゼは自主的にやっていた。エマが合流しても、その使命感は揺らがない。

 今日の戦果はと言うと、初戦は敗退。

 扉に鍵を掛けられていたのだ。いつの間にやら、そんな小細工を思いついていたらしい。

 一度引き下がって策を練る。その最中に出会ったラウラと朝食を一緒に食べた後、エリゼは再びフィーたちの部屋の前まで足を運んでいた。

 時刻は十時を過ぎているが、今から仕切り直しの二回戦である。

「次は負けません」

 もはや勝ち負けの域だ。一人意気込んで、手始めに扉をノックしてみる。しかし案の定と言うべきか、部屋の中からの応答はなかった。

 それはそうだ。これだけで事が済むなら、ここまで苦労はしていない。

 強めにノックして外から声をかける。

「フィーさん、ミリアムさん! もう十時ですよ。早く起きて下さい!」

 返事はない。

「今日の朝食はヴェルナーさん特性のハムエッグです。早く来ないとなくなっちゃいますよ。私が全部たべちゃいますよ。全部ですよ?」

 搦め手にも応じない。ならば勧告からの警告だ。

「無駄な抵抗はやめて、すぐに出てきて下さい。でなければ強硬手段を用います」

 かたくなに貫かれる無言。ぷるぷると肩を震わすエリゼは、乾いた笑みをもらした。

 冗談だと思っているのでしょう。今日の私は本気ですから。バギンスさんにお願いして、この扉を外しちゃいますから。

 最後通告のノックをしようとした時だった。

 階段を登ってくる足音が聞こえた。エリゼは叩きかけた扉から手を引く。

「あ、兄様だわ」

 二階にやってきたのはリィンだった。

 しかしリィンはエリゼに気付かず、反対側の部屋へと歩いていった。

「あれはエマさんの部屋……?」

 自分の位置から部屋の中の人物は見えないが、確かそうだったはずだ。少し話をした後、リィンはその室内へと足を踏み入れた。

「え!?」

 兄様が入った。女性の一人部屋なのに。しかも中から招かれたようにも見える。

「ど、どどど、どういうこと?」

 フィーたちを起こすことなど、一瞬で忘却の彼方だ。

 ぎこちない動きでその部屋の前に移動する。リィンが出てくる気配はない。意味なく部屋の前を何往復かしてみる。まだ出てこない。

 仕方なく二階の談話スペース、そのソファーに一人腰かける。

 そわそわする。ダメだ、落ち着かない。二人は部屋の中で何をしているのだろう。

 辛抱強く待つこと――早一時間。

「………」

 信じられない。まだ出てこない。肩にずーんと重い物がのしかかる。不安に胃を絞めつけられるような感覚が、泣きたいくらいに持続する。

 二人で何をやってるんですか。ちょっと誰か説明して欲しいんですけど。

「アンタ、ずっと一人で座ってるわね。暇なの?」

「あ、セリーヌさん」

 足元に一匹の黒猫がいた。彼女はぴょんとソファーに飛び乗る。

「世界の終わりに直面したみたいな顔してるけど」

「そんな顔してません……」

「いや、してるわよ」

 リィンがエマの部屋に入って出てこないことを、セリーヌに説明してみた。

「気になるんだったら、開けてみればいいんじゃないの」

「簡単に言いますけど、そんなの無理です」

「ドアノブ回して押すだけよ」

「物理的な話じゃなくてですね……」

 気のない素振りでセリーヌはエマの部屋に向かった。本当に開ける気なのか? 焦ったエリゼは彼女の後を追う。

「だ、ダメです。入っちゃいけない感じかもしれませんし」

「別にいいじゃない。用事があるとか適当に言えば。というか入っちゃいけない感じって何なのよ」

 言いながら早足のセリーヌ。

「もしかしてセリーヌさんも気になってたりするんですか?」

「そ、そんなわけないでしょ」

 ドアの前で立ち止まる。中から話し声が聞こえた。しかし内容までは分からない。

「さあ、開きなさい」

「わ、私がですか!?」

「どうやって私が開けるのよ」

 セリーヌは前足をプラプラ振ってみせた。これではドアノブを回せないアピールだ。

「今まではどうしていたんですか?」

「エマが扉を少し開けてくれてたか、閉まっていても術でドアを開いたりしてたわね」

「だったら今もそれをしたらいいじゃないですか。私、見てますから」

「アンタが開けるのが一番てっとり早いの。ほら早くしなさいよ。アタシが見ててあげるから」

「ずるいです!」

「どっちがよ!」

 実行犯になりたくない二人である。しばし揉めたが、最終的にどちらも折れなかった。そしてどちらも部屋の中が気になったままだ。

「扉に耳を当てたら、会話くらい聞こえるんじゃない?」

「それもダメでしょう……」

 セリーヌの提案をエリゼは却下した。

 あまり行儀のいいものではない。いきなり部屋に踏み込むよりは、マシと言えなくもなかったが。

「あっそ。アタシは聞くけど」

 ぴんと耳を立てたセリーヌは、横顔をぴたりと扉に当てた。

「あっ、ダメですってば」

「うるさいわね。静かにしてないと聞こえないでしょ。アンタはもう聞かないって決めたんだから、向こうに行っててくれる?」

「う、うぅ……」

 じいっとセリーヌを見つめる。

「そんな顔したって、アタシが聞いた内容は教えてあげないわよ」

「セリーヌさんのいじわる」

 葛藤に葛藤を重ねた末、結局エリゼも扉に耳をつけた。良心の呵責に苛まれながら、ひどく遠慮がちに。

 木製のドア越しだから反響したような声だったが、それでも端々の会話は聞き取れた。

(――きき――があるんだ)

 兄様の声だ。きき……何だろう。訊きたいことがあるんだ、か? 眼鏡がどうこうと言っている様だけど、訊きたいのは眼鏡のこと? 

 自分が考えているような事ではなかったと、エリゼは胸を撫で下ろしたが、

(眼鏡――新鮮……もいいと思う――)

「こ、これってエマのこと口説いてる? 眼鏡から褒めるとか斬新過ぎだけど」

「くどっ!?」

 脳天から足先まで戦慄が走る。意外なことにセリーヌも驚いていた。二人はさらに強く耳を扉に押し当てる。

 リィンとエマの会話は続いている。全てを聞き取れないのがもどかしい。

 急にエマが焦ったような声をあげた。

「どうしたんでしょうか」

「静かにして」

 ベッドの軋む音がした。そこにリィンの声が重なる。

(遠慮しなくたって――じゃあ――)

(そ、そんな強引に――……ああ)

 雷鳴が轟いた。火山が噴火した。竜巻が吹き荒れた。大地が割砕した。エリゼの脳内にそんな天変地異のイメージが巻き起こった。

 遠慮しなくていい? そんな強引に?

 何という、何ということだろう。

「突入します」

 感情の欠片もない声音で告げ、エリゼは無表情のままドアノブに手をかけた。

 ノックなどすでに頭の片隅にもない。セリーヌが反応するより早くノブを回す。しかし途中で止まる。内側から鍵がかかっていた。

「そ、そんな」

 全ての状況が、恐れていた展開を裏付けていた。もはや確定である。肩を落とし、うなだれるエリゼ。

 よほど不憫に思ったのか、一緒に驚いていたはずのセリーヌでさえ彼女のフォローに回っていた。

「だ、大丈夫? 気をしっかり持ちなさいよ?」

「……セリーヌさん」

 鉛でも動かすような鈍重さで、ゆっくりと顔を上げる。

「魔術でこの扉を消し飛ばして下さい」

「落ち着きなさいって」

「ああ、そうです。フィーさんにまた手榴弾を貸してもらえば。今度は閃光弾じゃなくてちゃんとしたのを」

「やめなさい、やめなさい。領主の娘が郷の名物旅館を爆破するとか洒落にならないわ」

 我を失いかけてフィーの部屋に戻ろうとするエリゼを、セリーヌは必死に引き止める。

 ガチャ、と不意に扉が開いた。中からリィンとエマが出てくる。 

「ん、どうしたんだ二人とも」

「アンタねえ……!」

 平然とした態度のリィンに、セリーヌは憤りを隠せていなかった。

「セリーヌ? もしかして私に用事?」

 彼の後ろからエマも顔を出す。セリーヌを見るなり、エマは手さげカゴを後ろ手に回した。それに気付いたセリーヌは顔をしかめる。

「何隠したのよ」

「別になんでもないわ」

「教えなさいよ」

「セリーヌには関係ないの。ね、リィンさん」

「あ、ああ」

 同意を求められて、リィンはこくりとうなずく。

 二人だけのヒミツ。ただの秘密ではなく、『ヒ・ミ・ツ』的なニュアンス。それがとどめだった。完膚なきまでにエリゼは打ちのめされた。

「エリゼ?」

「……いいえ、大丈夫です。何も問題ありません……」

 石化寸前のエリゼは乾ききった笑みを浮かべる。無理やりの笑顔に頬は引きつっていた。

 不思議そうにしながらもリィンとエマはその場を離れ、二人して鳳翼館の外へと出ていってしまった。

 

 ● ● ●

 

「セリーヌに気付かれるところでしたね」

「ああ、危ないところだった」

 エリゼたちの心中など知るはずもなく、リィンとエマはシュバルツァー邸へと歩を進めていた。

 手さげカゴの中に隠してある、作り途中のマフラーにエマは目を落とす。

 それなりに形になっている。白い毛糸さえあれば、一時間とかからず仕上がるだろう。

「あれは……」

 足湯場に人影を見つける。二人。ラウラとマキアスだった。エマに少し遅れてリィンもその光景に気付く。

「あそこの足湯はやっぱりクセになるよな。気に入ってくれたみたいでよかった」

 それ以上の感想は特にないようだった。「そうですね。私も後でいってみます」となどと返しつつ、エマは湯気にかすむ二人の姿を眺めた。

 ラウラの表情がどことなく沈んでいるように感じる。

 ユミルに帰ってから、アリサとラウラの様子がおかしい。普段通りではあるのだが、お互いに一歩引いていたり、遠慮し合っているようだった。

 言葉にはできないほどの、些細で微妙な違和感。その空気にエマは敏く勘付いていた。

「………」

「ど、どうしたんだ、委員長」

 じっとリィンの顔を見つめる。

 原因にも、おぼろげながら察しはついている。まさしく今、自分のとなりを歩いている彼だろう。

「リィンさん。ユミルに戻ってから――いえ戻る前に、アリサさんとラウラさんと何かありましたか?」

「何か? いや何もないと思うけど。そもそも精霊の道を通ってるあたりから、俺は気を失っていたみたいだしな。なんでそんなことを訊くんだ?」

「いいえ、お気になさらずに」

 確かに彼の意識はなかったが――それで彼が関係ないということにもならない。

 もちろんラウラの悩みの種に関して、リィンだけが原因だとも言い切れはしないが。

「……本当にいいんでしょうか。リィンさんの部屋をお借りして」

「遠慮しなくていいって言っただろ」

 どうにもよくない気がする。これ以上ややこしいことにならなければいいのだけど。

 朗らかに笑うリィンを横目に捉えつつ、エマは湧いてくる不安を振り払う。

 屋敷はもう目の前だ。

 

 

「リィンたち、アンタの家に向かってるわよ」

「進行方向からして間違いなさそうですけど……」

「絶対やましいことがあるのよ。さっきの態度見たでしょ。感じ悪いったらないわ」

「……やましいこと……うぅ」

 エリゼとセリーヌは家屋の陰や、遮蔽物の裏に隠れながらリィンとエマを追跡していた。

 詳細を確かめなければ、何一つ手に付かない。

 とはいえ尾行の真似事さえしたことのないエリゼである。それらしく身をかがめてコソコソと二人の後をつける様は、これ以上なく怪しさ満点だった。

「それにしても、アンタはこういうのよくないとか言ってなかった?」

「それとこれとは話が別です。そもそも妹が兄のことを知ろうとするのは普通です」

「普通……なの?」

「普通です。普通なんです!」

「分かったから大きい声出さないでよ。気付かれるから。ただでさえ気配の読める二人よ」

 リィンは対人、エマは霊的なものに対して、存在や空気感を察する能力がある。つまりは歩く高性能センサーがそろっているのだ。自動察知ではないものの、迂闊に距離は詰められない。

「まったく世話が焼けるわね」

「別に私一人でも大丈夫ですから、セリーヌさんは鳳翼館で休んでいてもいいんですよ」

「付き合ってあげるって言ってるでしょうが」

「やっぱり気になってるんでしょう?」

「そんなことないわ。あれよ……えーっと、何となくよ!」

「お、大きな声を出さないで下さい」

 仕方なくの体でついて来ているセリーヌだが、やはり彼女も気になるようだ。

「あー、足の裏が冷たい。屋敷までアタシを抱えなさいよ」

「え? 飛んでいったらいいじゃないですか」

「アンタね、使い魔が何でもできると思ってない?」

 その折、リィンたちは屋敷の中へと入っていた。

 

 ● ● ●

 

 シンプルな室内をぐるりと見回す。整理整頓は行き届いていて、埃一つ落ちていない。

 必要なものが、必要な分だけある。リィンの部屋の印象はそんなものだった。領主子息の部屋にしては少々簡素だが、同時に彼らしいとも思った。

 リィンが用意してくれた椅子に座り、エマはマフラー編みの続きに取り掛かる。

 白い毛糸は余っていて、事情を聞いたルシアが快く貸してくれた。リィンが自分の部屋を使うと言った時、彼女は戸惑ったようだったが、しかし何も言ってはこなかった。

 その気遣いがいたたまれない。弁明をしたかったのに、何を言うべきなのかがとっさに出てこなかった。

「ゆっくりしてくれ」

「あ、ありがとうございます」

「っと、忘れるところだった」

 リィンは戸口に向かうと、扉の鍵をかちゃりと閉めた。

「よし」

「え? ええ!?」

「これで誰も入ってこれないだろ。安心してマフラーを仕上げてくれ」

 心が休まらないんですけど。集中できるわけないじゃないですか。こんなことをラウラさんやアリサさんに知られたら私はどうなるんでしょう。

 試し切りの人形代わりか、矢の的代わりか。

「はあ……」

 深いため息。

 傍から見ていて、エマには分かっていた。アリサとラウラのリィンに対する気持ちが。分からないのは、彼女たちがどこまでその気持ちを自覚しているかだった。

 本棚を眺めているリィンの後ろ姿を見やり、エマはちょっとだけ作業の手を止めた。

 やっぱり“そっち側”も導かないとダメかしら。

 魔女の使命ではなく、一友人のお節介として。

「ん?」

「どうしたんですか?」

「アルバムの位置が変わってるような……」

「意外とそういうの気にするタイプなんですね」

 リィンはかぶりを振る。

「そういうわけじゃないんだが、ちょうど朝方に見たばかりだからさ。多分母さんが掃除してくれたんだろう」

 アルバムは取らず、そのままリィンはベッドに座った。一つしかない椅子はエマが使っているから、腰かける場所がそこしかないのだ。

 奇しくも鳳翼館とは逆の構図になってしまった。だからなんだという話だが。

 平常心。平常心が大事なのだ。彼に他意はない。

「そういえば委員長」

「なんでしょう!?」

 動揺が思いきり声に出る。

「小説はまだ書いているのか」

「さすがにレグラムでは書けませんでしたけど、どうしてですか?」

「バリアハートでドロテ先輩に会っただろ。それでちょっと思い出しただけだ」

「ああ……」

 あの噴水広場で、ドロテは意味不明な詩集を売っていた。この世で一番大切なものはお金だと言い切った彼女の瞳は、くすんだ硬貨と同種の鈍い光をまとっていた。

 自分の価値観を曲げてしまうほど、大変な苦労があったのだろう。小説を書くのはやめたようだったが、ドロテを責める気には到底なれなかった。

「心配ですけど、ゆっくり事情を聞く時間もありませんでしたし。それにドロテ部長ならきっと大丈夫ですよ。ああ見えてたくましい人ですから」

 自分に言い聞かせるような言葉だった。

「いつかまたあの部室で、たくさん小説の話をしたいですね」

「あ、あの小説か」

「……リィンさんは勘違いをしています。大体、あの手の小説はドロテ部長が書くもので、私はその添削をしているだけで――」

 そんな小説を思い浮かべたからだろうか、不意にあの用務員の顔が脳裏によぎる。

 価値観が曲がるどころか、倫理観さえ崩壊してしまった用務員。道を踏み外すにとどまらず、異次元のルートを開拓しつつある用務員。

 紫色のオーラを放つ、狂い咲きの用務員――ガイラーさん。

 レグラムの練武場の裏手で、彼は自分にこう言った。君こそが計画の中枢を担う、と。

 身震いが起きた。まるで悪魔のささやき。得体のしれない悪寒が足元から這い上がってくる。

「ど、どうした委員長。顔色が真っ青だぞ?」

「大丈夫です。少し冷えたかもしれません」

「すまない。今、部屋を暖めるよ」

 リィンは部屋の隅にある通気口を開けた。一階の暖炉で生まれた熱が、専用の空気管を通って各部屋に伝達される仕組みだ。

「あ。あたたかい」

「悪くないだろ。二階に暖炉は設置できないから、こうやって暖気を循環させるんだ」

「雪郷の知恵ですね」

「導力式の空調設備が欲しいんだが、出てきたばかりで高いしな。ラインフォルト社で扱ってるらしいから、アリサに頼んだら安くしてくれたりして……無理か、さすがに」

「どうでしょうね。もしかしたら将来、ユミルにはラインフォルト社製品が潤沢にそろうかもしれませんよ」

「どういう意味だ?」

「さあ」

 含んだ笑みを返答代わりにして、エマはマフラーを編んでいく。もう少しで完成だ。

 

 

 リィンたちに遅れること少し。エリゼとセリーヌもシュバルツァー邸に到着していた。

 自宅なのだが、エリゼはなぜか忍び足である。

 ルシアがいるであろうリビングにはよらず、そのまま二階に上がる。

 リィンの部屋の前まで来ると、やはり中から話し声が聞こえた。

「あの男、自分の部屋にエマを連れ込んでるわよ」

「兄様の不潔……!」

 もはやあの男呼ばわりのセリーヌ。そして不潔呼ばわりのエリゼ。

 心中穏やかではないエリゼは、ぎゅっとスカートの裾を握りしめた。

「また鍵を閉めてるわね、これ」

「不潔! 不潔です!」

「どうするの? 扉の材質が違うせいか、鳳翼館ほどは室内の声を聞き取れないし」

 扉につけていた耳を離し、セリーヌはエリゼを見上げた。

「そうですね……」

 兄の交友関係に口を挟むのは出過ぎた真似だと弁えている。しかしこれは妹の領分として看過できない事態だ。治外法権の行使をもって、事の真意を確かめねばならない。お行儀の悪さやマナーの云々は、この際度外視だ。

 なぜならこれは妹としての使命――いいえ、責務だから。

 そんなよく分からない理屈を押し通して、エリゼは決断した。

「正面突破は無理そうですし、窓から中の様子をうかがうのはどうでしょう」

「ここ二階なのに、どうやってよ。まさか壁伝いに行くわけ?」

「私には無理ですけど、セリーヌさんならできるんじゃ……」

「そんな期待の目で見るんじゃないわよ。できないし、やらないから」

「使い魔っていうぐらいですし、セリーヌさんは何でもできると思っていました」

「アンタには今度、使い魔の何たるかを教える必要がありそうね。というかアンタの使い魔じゃないんだけど!」

 エリゼは考える。他に何か方法は――

「あ」

 一つだけあった。彼女は上を見た。

「どうしたの?」

「セリーヌさん、屋根裏に行ってみましょう」

 

 ほどなくエリゼはセリーヌを連れて、自分の部屋を訪れていた。

 屋根裏は繋がっていて、二階のどの部屋からも登れるようになっている。部屋付けの押入れ――その中の上部に小さな入口があって、そこから屋根裏に入ることができるのだ。

 子供の頃はリィンと二人、よくそこで遊んだものだった。

「へえ。ここがアンタの部屋なのね? いい歳してぬいぐるみと一緒に寝てるの?」

「あ、ちょっと!」

 ベッドの上に置かれたウサギのぬいぐるみを、セリーヌはつんつんと突く。ずっと昔にテオが買ってくれたものだ。大切なものだから、枕元が定位置なのだ。

「無くても寝れますから!」

 ぬいぐるみを取り上げる脇を抜けて、今度は反対側の机に飛び乗るセリーヌ。

「なになに? 昔の日記があるじゃない。ちょっと見せなさいよ」

「きゃー!?」

「7月20日。今日は兄様が頭をなでて――」

「きゃー! きゃー! やめて下さい!!」

 どったばったと走り回った挙句、争いが収集したのは数分後だった。

「そこまで抵抗しなくてもいいでしょうが……」

「はあ、はあ……早く屋根裏に行きますよ……」

 エリゼの部屋の押し入れは、使わなくなった古着や雑品置き場になっている。中で積み重なった箱を申し訳程度に端によけて、二人は息も荒いまま屋根裏へと上がった。

 掃除は定期的にルシアがやってくれているから、目立つ汚れは少なかった。屋敷の構造上、天井中央部は吹き抜けになっているので、屋根裏の形状は凹型に近い。

 最後にここへ登ったのはいつだったか。記憶にある屋根裏よりも狭く感じた。心なしか天井も低くなった気がする。

「私が大きくなったから、かしら」

「なにか言った?」

「あ、すみません。独り言です」

 屋根裏に照明はない。一つだけ設置された窓が唯一の光源だ。あの窓からは郷の全部が見渡せて、子供の頃は特にお気に入りの場所だった。

 しかしそこには向かわない。リィンの部屋はすぐ隣だ。慎重に、足音を立てないように移動する。

 部屋の真上で、エリゼはうつ伏せになって聞き耳を立ててみた。鳳翼館の時と同じで、断片的な会話しか聞こえない。

 しばらくそうしていたが、だんだんと自分のしていることが虚しく思えてきた。分かっている。こんなことをやったって、なにが変わるわけでもないことくらい。

「……なんで顔うつむけてんのよ」

「そんな気分なんです」

「どんな気分よ」

「多分、セリーヌさんと同じような気分……かもしれません」

「ふん……」

 セリーヌも床に腹をつけ、面白くなさそうに鼻を鳴らした。

「エマとは生まれた時から一緒だったわ。あの子が泣く姿も笑う姿も見てきた。知らないことなんかないはずだった」

「………」

「それがアタシに秘密だって。別にいいんだけどね。でもそういうのって……なんか寂しいじゃない」

 珍しく本音がこぼれたセリーヌに、エリゼは小さく微笑んだ。

 ほら、私といっしょ。

 秘密が寂しいんじゃない。自分の関係ないところで、誰かと秘密を共有されているのが寂しいのだ。

 ずっと心だけはそばにいるつもりだったのに、知らない内に離れてしまっていたような感じがして。

 そういう日が来ることは心の片隅で覚悟していた。どれだけ慕っていても、兄と妹。少なくともリィンにとっては。

 でも、でも。

「もうちょっとだけ、私だけの兄様でいてくれたら良かったのに……なんて」

「それがアンタの――……エリゼの本音?」

「内緒ですよ」

 顔をうつむけたままで言う。

 心の内を見せ合う形になったが、気恥ずかしさはなかった。今ならどんな話でもできる気がする。アルフィンがとなりにいる感覚と似ていた。

「それでアタシたちはどうしたらいいの? こういう時、人間の感情が分からないのは不便だわ」

「もう十分理解しているように思いますけど……何でしょうね。きっとお二人の関係を認めてあげるのが、一番いいのだと思います」

「……仕方ないわね。ほんと、仕方なしによ?」

 大人の哀愁を漂わせる黒猫と少女が、そこにいた。

 もう立ち去ろうとエリゼが腰を上げかけた時、

(どうした――顔色が)

 リィンの声が届いた。とっさに動きを止める。

(少し冷えたかも――)

(今――あたためるよ)

 固まった表情で、顔を見合わせるエリゼとセリーヌ。

(あ。あたたかい)

(悪くないだろ――こうやって――)

 どこか得意気なリィンの声。

 冷えたエマを、リィンがあたためている? どうやって。まさか。

(――ですね)

 エマが何かを言った。

「私は“ち”と聞き取れましたけど……」

「アタシは“え”が聞き取れたわ」

『………』

 沈黙。二語を組み合わせる。エマは知恵と言ったのだが、残念ながらその組み合わせにはたどり着かなかった。彼女たちは声をそろえて驚愕した。

『えっちですね!?』

 天変地異どころの話ではない。これは大崩壊。文明一つが消滅するほどの破壊力だ。

「……セリーヌさん」

「ええ。今回ばかりは力を貸すから」

 扉を吹き飛ばす。異口同音に二人はつぶやいた。

 

 

 部屋を出ると、廊下にはエリゼとセリーヌがいた。いたというか、たたずんでいた。

 しかもセリーヌは光に包まれていて、魔術の陣を展開している。明らかに攻撃系だった。

 予期しない光景にエマは焦る。

「な、なにやってるの、セリーヌ!?」

「そっちから扉を開けるなんて好都合だわ。どきなさいエマ。今からその男に制裁を与えるから」

「お、俺!?」

 いきなりの制裁宣言に身構えるリィン。セリーヌの横に立つエリゼの目は、どんよりと曇っている。

「エ、エリゼ? 部屋から声がしていたから、帰ってきているとは思ったけど」

「兄様。兄様……っ!」

 潤んだ瞳に爆発寸前の感情が揺らいでいた。

 エマは肩をすくめて、セリーヌに問う。

「もしかして、私たちが気になって追いかけてきていたの?」

「ち、違うわよ。そんなわけないでしょ」

「でもちょうど良かったかも。さっきできたところだから」

 完成したばかりの白いマフラーを取り出して、エマはセリーヌの首元に巻いてやった。長さも大きさも丁度である。

「え? なにこれ」

「再会したら渡そうと思って内緒で作っていたの」

 目を丸くするセリーヌ。

「まさか……秘密ってこのマフラーのこと?」

「そう。見つからないように作るのは苦労したんだから」

 それを聞いて、しばし静止する二人。

 やがてセリーヌといっしょに、エリゼもその場にへたり込んだ。全ての事情と経緯を理解したらしい。同時にリィンの処刑は立ち消えとなった。もっとも当の本人は、進行していた事態に最後まで気付くことはなかったが。

「あと、はい。エリゼちゃんにも」

 言いながらエマは彼女のそばに歩み寄る。差し出した手に持っていたのは、毛糸で作った小さな小物入れだった。

「わ、私にですか?」

「お近づきの印に。余った材料で作ったから、ちょっと小振りですけど」

「その……ありがとうございます。ずっと大切にします」

 もらったばかりのそれを大切そうに持って、エリゼは言った。

 一方のセリーヌは白いマフラーを黙ったまま眺めている。

「どう? あたたかい?」

「こういうことするから、人間の考えがよく分からないのよ」

 いつも通りの台詞のあと、いつも通りにそっぽを向いて、セリーヌは小声でつけ加えた。

「一応お礼は言っとくけど」

 

 

――END――

 

 

 

 




お付き合い頂きありがとうございます。

エマ回と言いつつ、セリーヌとエリゼ視点を半々の構成となっております。
リィンは爆発したらいいのだ。

では恒例のタイムテーブル。今回はざっくりこんな感じでした。

 7:30 ラウラ朝稽古
 9:00 エリゼとラウラ、朝食
10:00 エリゼがフィーたちの起床声かけ再開
10:30 リィンとエマ、部屋にてマフラー作り/目撃したエリゼは一時間待ち続ける
11:00 シャロンとアリサ、コショウまみれ。鳳翼館で体を洗い、再びシュバルツァー邸へ。
11:30 エリゼとセリーヌ、エマの部屋前で立ち聞き開始。
12:00 リィン、エマが屋敷に向かい、その後ろをエリゼ、セリーヌが尾行/アリサはリィンの部屋掃除終わり、その少し後にリィンたちは部屋に到着/屋敷内にアリサはいるが出会ってはいない/リィンに遅れてエリゼ、セリーヌも屋敷に着く。
13:00 マフラー完成。エリゼたちの誤解がとける。
14:00 ラウラとエリゼの会話。エリゼの呼び名が確定する。
17:00 アリサとラウラの会話。関係改善に至る。

という感じです。
この合間に次回の話も挟まってきます。時間の縛りがあると各人物の配置や移動経路が重要になってくるのですが、それを考えるのも楽しいですね。
女子組が続いたので次は男子!なのですが、寝ていたちびっこ二人もここで絡んできます。
次回でユミル休息日(一日目)が終了。次々回から二日目。まだ休息日の三分の一も消化していない!

引き続きお付き合い下されば幸いです。あ、今回のサイドストーリーはお休みでした。

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